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収入の引上げ、「病院の介護職員も含まれるか」 ── 医療保険部会で池端副会長

Posted By araihiro On 2021年12月2日 @ 5:17 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 令和4年度診療報酬改定の基本方針の策定に向けた「骨子案」が示された厚生労働省の会合で日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は、重点課題の中で示された看護職の収入引上げに言及し、「医療現場の『看護補助者』である病院の介護職員も含まれるか」と質問した。厚労省の担当者は「柔軟な運用を認める予算措置も踏まえて議論が進められていく」と説明した。

 厚労省は12月1日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第147回会合を一部オンライン形式で開催し、当会からは池端副会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の会合に「令和4年度診療報酬改定の基本方針(骨子案)」を提示。4つの視点のうち、新興感染症への対応等(視点1)と働き方改革の推進等(視点2)を重点課題とした上で、視点2の「具体的方向性の例」として、「看護の現場で働く方々の収入の引上げ等」を挙げた。
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02_2021年12月1日の医療保険部会(全国都市会館)

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看護補助者も含まれるか

 質疑では、秋山智弥委員(日本看護協会副会長)が働き方改革等の「具体的方向性の例」について質問。勤務環境の改善に向けた取り組みについて、「看護補助者の確保の推進の内容は、ここに含まれるという理解でよろしいか」と尋ねた。

 厚労省保険局医療介護連携政策課の水谷忠由課長は「『各職種がそれぞれの高い専門性を十分に発揮するための』という修飾語を付けた。『各職種』と書いているのは、何か職種を限定するという趣旨ではない」と答えた。

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01スライド_【資料2】2021年12月1日の医療保険部会_ページ_06

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医療現場の介護職員、「病院の持ち出しで」

 続いて池端副会長は「今の秋山委員と少しかぶる内容になる」と前置きした上で、「医療現場の介護職員も入るという理解でよろしいか」と質問した。

 池端副会長は、病院に勤務する介護職員に処遇改善加算がない状況が続いていることを指摘し、「病院の持ち出しで処遇改善に対応している」と説明した。

 水谷課長は、11月19日に閣議決定された経済対策の該当部分の抜粋を示し、「看護補助者、理学療法士・作業療法士等のコメディカルの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める」と説明。「そうしたことを踏まえた上で議論が進められていくものと承知している」と答えた。

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02スライド_【参考資料1-3】2021年12月1日の医療保険部会_ページ_31

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上手な医療のかかり方を普及・啓発

 この日の会合では、薬剤給付の適正化に向けた取り組みも議題に挙がった。厚労省は、民間セクターのノウハウを積極的に活用する事例として三菱商事健康保険組合の「医療費適正化に繋がるセルフメディケーション推進事業」を紹介した。

 この取り組みの目的として、「軽度な症状の疾患にかかる医療費の割合が比較的大きい」「軽度な症状の疾患の医薬品費適正化も喫緊の課題」などが挙げられている。

 厚労省保険局保険課の江口満課長は「上手な医療のかかり方を普及・啓発することによる加入者の健康の維持増進および医療費の適正化の両立を目的として、この取り組みを実施されている」と伝えた。

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03スライド_【資料3】薬剤給付の適正化に向けた取組について_2021年12月1日の医療保険部会_ページ_5

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セルフメディケーションの推進を

 質疑で、佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は「薬剤給付の適正化について、上手な医療のかかり方やセルフメディケーションに関する啓発は大変重要。厚労省と連携して、さらに取り組んでいきたい」と述べた。

 これに藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)も「セルフメディケーションの推進に大変着目している。すぐに医療機関にかかるのではなく、まずは自分自身で健康を管理することが医療費の削減に極めて有効だ」と続いた。安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)も同様の意見を述べた。

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ハードルが若年層と違う

 一方、井深陽子委員(慶應義塾大学経済学部教授)は「こうした取り組みによって個人の行動変容を促そうとする試みは好事例」と評価しながらも、若年者と高齢者の違いを指摘した。

 「高齢者は基礎疾患を持っていたり、複数の薬剤を飲んでいたりという状況で、セルフメディケーションを考えるハードルが若年層とは少し違う」との認識を示し、「仮にセルフメディケーション推進を国民全体を対象とした取り組みとして進めていくのであれば、より多くの異なる背景を持つ対象者に対して実践と評価に基づき有効な施策を考えることが重要」との見解を示した。

 池端副会長は「適正化ありきのためのセルフメディケーションでは本末転倒」と苦言を呈し、「井深委員が指摘したように高齢者に関しては、より慎重にならざるをえない」と指摘した。

 池端副会長の主な発言要旨は以下のとおり。
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03_2021年12月1日の医療保険部会(全国都市会館)

■ 令和4年度改定の基本方針の骨子案について
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 基本方針全体については賛同したい。取りまとめに感謝したい。その上で、1点だけ確認させていただく。秋山委員と少しかぶる内容になるかと思うが、6ページの働き方改革等の「具体的な方向性」の中に、「令和3年11月に閣議決定された経済対策を踏まえ、看護の現場で働く方々の収入の引上げ等に係る必要な対応について検討するとともに、負担軽減に資する取組を推進」という記載がある。
 あまりご存じのない方も多いと思うが、医療現場には、「看護補助者」という言い方をする介護職員が一定程度いる。介護保険施設では、処遇改善交付金あるいは処遇改善加算という形で処遇が改善されてきたが、医療の現場における介護職員の処遇が全く改善されない状況がずっと続いており、ほとんど病院の持ち出しで処遇改善に対応している。
 そこで確認だが、介護職員は「看護補助者」という言い方をされているのだが、病院の介護職員も含まれるという理解でよろしいだろうか。

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【厚労省保険局医療介護連携政策課・水谷忠由課長】
 「参考資料1-3」の30ページに、11月19日に閣議決定された経済対策の該当部分の抜粋がある。看護については、まず地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、段階的に収入を3%程度引き上げていくこととし、収入を1%程度、月額4,000円引き上げるための措置を来年2月から前倒しで実施した上で、来年10月以降の更なる対応について令和4年度予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずるとしている。
 月額4,000円引き上げるための措置に注釈が付いており、「看護補助者、理学療法士・作業療法士等のコメディカルの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める」としている。今、申し上げた部分は補正予算で計上している予算措置の部分。改定の基本方針の中で、この経済対策を踏まえ、看護の現場で働く方々の収入の引上げ等に係る必要な対応について検討するということは、経済対策で言う来年10月以降のさらなる対応について、令和4年度予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずるというところに対応するが、全体として経済対策において、今、申し上げたような考え方で補助金等の予算措置も設計されている。そうしたことを踏まえた上で議論が進められていくものと承知している。

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■ 薬剤給付の適正化に向けた取り組みについて
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 セルフメディケーションについて述べたい。三菱商事健保組合の事業名が「医療費適正化に繋がるセルフメディケーション推進事業」となっている。意味は分かるが、セルフメディケーションそのものは、医療費適正化が主な目的ではない。
 セルフメディケーションとは、自分の体のことを自分でよく知り、ある程度は自分で管理するほうがかえって健康管理につながることもあり、それが主な目的である。その後に医療費適正化がついてくる。「医療費適正化に繋がるセルフメディケーション」では、主と従が逆だと思う。事業展開を進める上では、その辺に配慮していただきたい。適正化ありきのためのセルフメディケーションは本末転倒ではないか。
 セルフメディケーションについて井深委員が指摘したが、高齢者に関してはより慎重にならざるを得ない。私自身の経験でも、高齢者に対する説明は非常に難しい。お薬が多いからと自分で考え、適当に半分だけ飲んでいて、実は家にごそっとお薬が残っていることもある。こういうことを考えると、高齢者に対してはまた別の観点から、ポリファーマシーの対応等、いろいろな職種がそれぞれいろいろな情報を提供しながら進めていくべきである。「自分のことは自分で管理しましょうね」という話をするのはいいと思うが、あくまでも適正化が主ではない。これは強調しておきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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