- 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト - http://manseiki.net -

「インセンティブをつけながら徐々に」 ── DPCデータの利活用で池端副会長

Posted By araihiro On 2021年11月25日 @ 5:17 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 DPCデータの利活用をめぐり、医療現場の負担を懸念する声が上がった厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「外来診療データ等も重要なデータ」と理解を示しながらも、「少しずつインセンティブをつけながら徐々に進めていく工程が必要ではないか」と慎重な対応を求めた。

 厚労省は11月24日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第499回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 この日の主なテーマは「入院(その5)」で、DPC制度の見直しや短期滞在手術等基本料などについて審議した。

 厚労省はDPCに関する論点の中で「退院患者調査(DPCデータ)」を挙げ、「外来診療データの取集の在り方について、どのように考えるか」と意見を求めた。
.

113-3_【総-2】入院(その5)DPC・短期滞在_2021年11月24日の中医協総会

.

医療現場の負担増、「本末転倒」

 質疑で、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「データの重要性はよく理解している」としながらも、「データ提出をすすめることで医療現場の業務負担が増大し、医療提供に支障をきたすようなことになっては本末転倒」と指摘した。

 その上で、長島委員は「まずはデータの入力と出力のために医療現場にどのような負担がどの程度生じるのかという実態の把握を行い、次に医療機関の負担を踏まえた上でのさらなる評価や負担の軽減策について検討すべき」とし、医療機関の負担に関する実態の把握について厚労省側の見解を求めた。
.

データ提出作業で「診療に影響が生じるか」

 支払側の佐保昌一委員(連合総合政策推進局長)は「内容の拡充については理解するが、データ提出作業により診療に影響が生じるのかどうかについては、さらに検討するための情報をいただきたい」と要望した。

 松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「外来診療の内容を入院と同様に、より詳細に把握できるように、外来の提出データの内容を工夫すべき」との考えを示した上で、「一部の委員から負担の話もあった」とし、「そういった観点に関する検討もぜひ必要だと思う」とコメントした。
.

医療機関の負担、「分からない」

 池端副会長は「長島委員のご質問に対する回答をお聞きしてからとは思うが」と前置きした上で、「電子カルテが一般の診療所、中小病院にまで広く普及しているとは言えない状況」と指摘。「数年にわたってのスパンの中で、少しずつインセンティブをつけながら徐々に進めていくべき」との考えを示した。

 委員の発言が一通り終わったところで厚労省保険局医療課の井内努課長が回答。「医療機関の負担について、どのようなデータ提出を想定されておられるのか分からないところではあるが、医療機関がこのデータを入力するのに具体的にどういった負担があるかというデータは持ち合わせていない」と述べた。
.

データ収集の方法、「広い視点で」

 DPCデータの収集をめぐっては、アウトカム評価への活用も議論になった。公益委員の飯塚敏晃委員(東京大学大学院経済学研究科教授)は「患者側が最も知りたい医療の質が分かるような公的なデータベースがない」との認識を示し、「DPCデータではそういうデータの把握が可能となる可能性が高い」と指摘した。

 その上で、飯塚委員は「DPCデータも含めて収集して公開していくことで、より患者にとってのDPC制度が良くなっていくのではないか」と述べた。
 
 これに対し、長島委員が反論。「アウトカムは極めて重要」と理解を示しながらも、「アウトカムを含む、例えば電子カルテ等の情報に関しては、現在、次世代医療基盤法に基づく匿名加工によるデータ収集というのが始まっており、これが大いに期待できる」と指摘。「さまざまなデータ収集の方法があるので、そういう広い視点で考えていく必要がある」と述べた。
.
2021年11月24日の中医協総会

【池端副会長の発言要旨】
 私は論点の中で、最後のDPCデータの外来診療データに係る点について、コメントさせていただく。  
 先ほどの長島委員からのご質問に対する回答もお聞きした上でとは思うが、いずれにしても、外来診療データ等も重要なデータとして、今後、広く取り集めていきたいという趣旨は理解しているつもりである。 
 一方で、今、電子カルテが一般の診療所、中小病院にまで広く普及しているとはまだ言えない状況がある。レセコンはほとんど進んでいるので、外来ファイルはそこから取れるにしても、特にICD10についての病名等はまだ入力されていない状況が多いのではないか。そういう実態も含めて、診療報酬改定のたびではなくて、もう少し大きなスパン、数年にわたってのスパンの中で、この問題にどうやって前向きに取り組んでいくか。
 タイムスケジュール的なこともお示しいただいた上で、少しずつインセンティブをつけながら徐々に進めていく、そういう工程が必要ではないか、そういう考え方が必要ではないか。急にやる、やらないということではなく、そういうことも考えていただいて、大きな工程表の中で進めていただきたいと思っている。よろしくお願い申し上げる。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


.



Article printed from 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト: http://manseiki.net

URL to article: http://manseiki.net/?p=7972

Copyright © 2011 Japan association of medical and care facilities. All rights reserved.