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外来化学療法の連携体制で安心を ── がん対策の議論で池端副会長

Posted By araihiro On 2021年10月23日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 がん対策の推進などがテーマになった厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「化学療法による副反応等、いろいろな症状の変化に対し、まず、かかりつけ医に相談することも多いので、化学療法を実施している専門の医療機関と、かかりつけ医との連携もスムーズに進むような仕組みがさらに加わると、より安心できる体制ができるのではないか」と述べた。

 厚労省は10月22日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第492回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 この日の議題は、①個別事項(その2)について、②調剤(その2)について──の2項目。このうち①では、がん、難病、アレルギー疾患の対策に関する課題や論点を示し、委員の意見を聴いた。
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通院治療しながら仕事を続ける

 最初のテーマである「がん対策に係る評価」では、外来化学療法、栄養食事指導、がんゲノムプロファイリング検査、放射線内用療法について論点が示された。

 このうち、外来化学療法について厚労省は「多職種が協同して外来における化学療法を実施するとともに、緊急時における対応等が実施できるよう体制を構築している」と現状を説明。その上で、「近年、通院しながら抗がん剤治療を受ける患者が増えており、治療の副作用や症状等をコントロールしつつ、通院で治療を受けながら仕事を続けている場合が増えてきている」と指摘した。

 論点では、「患者が望む治療の場で、抗がん剤治療を実施できる環境を整えるに当たり、安心・安全な外来化学療法を推進していく観点から、外来化学療法加算等の評価についてどのように考えるか」としている。
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かかりつけ医と専門医の伴走で

 質疑で、池端副会長は資料12ページに示された「外来化学療法の評価のイメージ」を高く評価し、「こうした連携のイメージ図は非常に重要だと思っている。これから外来化学療法が進む方向にあると思うので、さらに連携できるような体制を望む」と期待を込めた。
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12_【総-1】個別事項(その2)_2021年10月22日の中医協総会

                2021年10月22日の中医協総会資料「総-1」P12より抜粋
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 池端副会長は「がんの拠点病院で外来化学療法を受けながら、一方で慢性疾患に関しては、かかりつけ医にかかって、伴走して診ていることも多い」とし、かかりつけ医と専門医療機関との連携をさらに進める必要性を述べた。

 池端副会長はこのほか、同日のテーマに挙がったアレルギー疾患対策、かかりつけ薬剤師・薬局の推進、保険薬局と保険医療機関との連携、医療的ケア児の薬学的管理などについて意見を述べた。

 池端副会長の主な発言要旨は以下のとおり。

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2021年10月22日の中医協総会

■ 外来化学療法の推進について
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 資料12ページに外来化学療法の評価のイメージ図がある。こうした連携のイメージ図は非常に重要だと思っている。これから外来化学療法が進む方向にあると思うので、ぜひ、さらに連携できるような体制を望む。
 そこで1つ提案したい。資料に「ホットライン等の、帰宅後も速やかに対応できる体制の整備」とある。これも重要であるが、一方で、外来化学療法を受けながら就労している患者さんの中には、生活習慣病等でかかりつけ医にかかっている方々も多い。そのような患者さんは、がんの拠点病院で外来化学療法を受けながら、一方で慢性疾患に関しては、かかりつけ医にかかっている。伴走して診ていることも多い。 
 そうした中で、化学療法による副反応等、あるいは、いろいろな症状の変化に対して、まず、かかりつけ医に相談することも多いので、化学療法を実施している専門の医療機関と、かかりつけの医師との連携もスムーズに進むような仕組みがさらに加わると、より安心できる体制ができるのではないか。

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■ アレルギー疾患対策について
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 アレルギー疾患対策は非常に重要である。学校については学校医がいる。保育園でも、アレルギーのお子さんが多く、お母様方から相談を受ける。保育園も相当、気を遣っているところがある。私は保育園を経営していることもあり、アレルギー疾患対策は非常に関心がある。今回、評価の在り方を前向きに検討することは非常にありがたい。
 論点では、「アレルギー疾患生活管理指導表を用いた、主治医から学校医等への情報提供」とあり、「学校医等」としている。この「学校医等」の中には、おそらく嘱託医も入っているイメージだと思う。
 一方、医療的ケア児に関わる主治医と学校医との連携については「主治医と学校医等との連携を推進」とし、「学校医等」という言葉が使われているが、ここには「学校医」だけしか入っていないと思う。できれば今回、保育園の嘱託医にもこういう情報提供を出すということを伝える意味では、ここに「嘱託医」という言葉も入れていただけると、より分かりやすいと思う。

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■ かかりつけ薬剤師・薬局の推進について
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 対物業務から対人業務への大きな流れは非常にいい視点だと思っている。しかし現状、どこまで対人業務にシフトをしているか。はなはだ疑問もある。今後、どう考えるか。ほかの委員と同様、私もお伺いしたいと思う。
 その上で、論点に沿って述べたい。まず、かかりつけ薬剤師・薬局の推進ということについて、前回の総会で、かかりつけ医機能の論点があったが、24時間連携が非常に難しいことが挙げられている。
 これに関して、実際、患者さんの立場になってどうかというと、深夜帯に、その連携が必要となる場合、あるいは急な出動が必要な場合は極めてまれである。
 そのため、連携しやすくするように、例えば基幹薬局等を設けて、深夜帯は24時間、その基幹薬局と連携することで認めるとか、そういった方法もあると思う。24時間対応は、どの職種でも厳しくなってきているのはご承知のとおりだと思うので、そういう対応もあると思っている。

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■ 保険薬局と保険医療機関との連携について
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 資料によると、退院時カンファレンスへの参加実績は1.6%で、薬局の方々の参加が非常に少ない。そこで、オンライン参加で増やしていく方向性は理解する。現在でも、やむを得ない場合にはオンラインで参加できる。
 私自身、実際に自分が参加している範囲で言えば、自院から退院する、あるいは他の基幹病院から退院する場合に私が在宅として関わるときは、全て訪問薬剤指導をする薬剤師は参加している。これは慣れの問題、その気持ちの問題でどうにでもなるような気がする。
 それを全てオンラインでよしとしてしまって本当にいいのかどうか。やはり一堂に会して、ということを原則にして、やむを得ない場合はオンラインということがあると思う。 
 対人の良さがある。この中医協総会もそうだが、対人の良さも大事である。最初に一度、会っておくことは非常に重要だと感じている。全てオンラインでOKにするのはどうなのかという感じはしている。

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■ 医療的ケア児の薬学的管理について
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 資料によると、医療的ケア児の調剤にかかる平均所要時間は約137.4分であり、大変なご努力で調剤している。私自身、そこまでとは思っていなかったので、数字を見て驚いた。
 一方で、これは対物業務の範囲なので、ここをどうするか。もう少し全体を見なければいけないのではないか。
 在宅の小児患者に対する薬学的管理指導は非常に有用であることを私自身も感じている。小児の専門医の先生からも、そのような声を聞いている。
 小児の薬剤は、その量、服用させる時間、剤形、服用方法等がきめ細かく決められている。そこを親御さんに伝えることを薬剤師に在宅でやっていただけるのは非常にありがたいので、小児患者に対する薬学的管理指導が進むことは非常に重要であると思う。さらにやりやすい環境をつくっていただくための改定であれば、ぜひ進めていただきたいと思うので、お願いしたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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