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「介護医療院は人気の高い施設」 ── 鈴木会長、調査結果を発表

Posted By araihiro On 2021年10月14日 @ 5:17 PM In 会長メッセージ,協会の活動等,役員メッセージ | No Comments

 日本介護医療院協会の鈴木龍太会長は10月13日、同協会の会員病院などを対象に実施した調査結果を発表し、「介護医療院は人気の高い施設」との認識を示した。介護医療院の開設には63.7%が「良かった」と回答した。鈴木会長は「介護医療院の創設は好意的に受け止められている」と評価した。

 日本慢性期医療協会は同日、10月の定例記者会見をオンライン形式で開催し、鈴木会長が介護医療院に関する2021年度の調査結果を発表。次いで、武久洋三会長が療養病床の死亡退院率に関する調査結果などを示した。司会進行は日慢協の矢野諭副会長が務めた。
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2021年10月13日の記者会見
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■ 介護医療院は「新しい制度での成功例」
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 会見では、はじめに日慢協の組織である日本介護医療院協会の鈴木会長が調査結果を説明。回答のあった150施設ではⅠ型が8割を占めており、稼働率はⅠ型95.8%、Ⅱ型92.9%だった。

 鈴木会長は「私が運営している鶴巻温泉病院の介護医療院も最近はほぼ満床で動いているので、人気の高い施設であると言える」と述べた。

 介護医療院の開設も好意的に受け止められていた。調査によると、介護医療院を開設して「良かった」が6割を占めたのに対し、「悪かった」は2.7%と少なかった。鈴木会長は「新しい制度での成功例と言える」と述べた。

 鈴木会長は、10月14日・15日に開催された「第29回日本慢性期医療学会」で学会長を務めた。
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■ 医療区分を廃止し看護必要度に統一すべき
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 続いて、武久会長が療養病床の実態に関する調査結果を発表。特定集中治療室(ICU)などの重症患者と同様の医療行為を実施していることを示し、「病棟種別ごとに評価は異なる」と指摘した。

 武久会長は「重症患者が死亡するような状況での医療行為には、本来、病棟種別による差はあるべきではない。特定集中治療室は手厚い治療を行うが、療養病床では適当でよいなどということは許されるべきではない」とし、中心静脈栄養を入れる場合にも、輸液ポンプや心電図モニター、シリンジポンプの管理などが必要であることを説明した。

 その上で、武久会長は「本来、死期が近い重症患者に対して、ICUか療養病床かで治療内容の差があってはならない。死は誰にでもやってくるものであり、助けられる命は助けるべきであり、そのような診療制度にすべき」とし、「医療区分制度を廃止して重症度、医療・看護必要度に統一すべき時期が来ている」との考えを示した。

 この日の会見の模様は以下のとおり。なお、会見資料は日本慢性期医療協会のホームページをご覧いただきたい。
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「経過措置」病床からの移行は少ない

[矢野諭副会長]
 ただいまより、令和3年10月の日本慢性期医療協会・定例記者会見を開催する。本日は、最初に日本介護医療院協会会長で当会常任理事の鈴木龍太先生にお話しいただく。鈴木先生は明日から開催される「第29回日本慢性期医療学会」の学会長をお務めになられる。次いで、武久洋三会長から療養病棟に入院している患者像に関する調査などについてご説明いただく。では、まず鈴木先生からお願いしたい。
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01_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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[鈴木龍太常任理事(日本介護医療院協会会長)]
 当会では2019年から毎年、介護医療院を持つ会員病院にアンケート調査をしている。このほど、その結果がまとまった。2021年度調査結果を抜粋してご説明申し上げる。

 まず、介護医療院の開設状況は21年6月時点で601施設、3万7,071床となっている。昨年3月から6月にかけて大幅に伸びている。4月に開設できれば移行支援定着加算が1年間算定できるので、皆さん頑張って開設したと思われる。
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02_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 その後は緩やかな伸びだが、少しずつ増えている。21年3月末での全国施設数は572施設で、3万5,442床。3か月で29施設、1,629床増加しているが、増加スピードは遅い。Ⅰ型74%、Ⅱ型26%である。

 移行状況を見ると、介護系から522施設、3万206床となっており、全体の80%は介護系。ほとんどが介護療養病床からの移行である。
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03_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 このうち、介護療養型老健が93施設4,692床である。介護療養型老健は約9,000床あったが、今では約半分の4,692床が介護医療院に移行している。

 医療療養1・2からの移行は120施設4,221床で、予想外に多い。看護配置25対1で医療療養2であった「経過措置」からは36施設1,466床で、最近は全く増えていない。経過措置病床は約6万床あったが、現在は8,000床ぐらいしか残っていない。ほとんどが介護医療院に移行せず、医療療養2など、ほかの病床に移行したと考えられる。

 新設の累計は466床。少しずつ増えている。今年4月から6月にかけて、6施設205床が新設されている。その内訳を見ると、特に多いのが大阪(Ⅰ型100床)、次いで宮崎(Ⅱ型80床) である。都市部では、総量規制内でも新設は可能なので、ぜひ自治体に相談していただきたい。
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稼働は高く、92~96%

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04_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 今年8月、介護医療院596施設(会員250施設、非会員346施設)を対象に調査を実施し、150施設から回答を得た。回答率は25%、療養床計1万376床28%である。
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05_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 回答のあった150施設の内訳を見ると、Ⅰ型が8割を占めており、Ⅰ型115施設8,584床で、Ⅰ型36施設1,792床だった。全国のⅠ型は74%、Ⅱ型26%だが、今回のアンケート調査の回答はⅠ型83%、Ⅱ型17%となっている。

 稼働は高く、92~96%。Ⅰ型95.8%、Ⅱ型92.9%だった。私が運営している鶴巻温泉病院の介護医療院も最近はほぼ満床で動いているので、人気の高い施設であると言える。
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介護療養病床からの移行が多い

 介護医療院への移行前の施設を見ると、Ⅰ型では介護療養病床、Ⅱ型では介護療養型老健が多く、これは想定通りであった。
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06_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 Ⅰ型では介護療養病床が83%、医療療養1が10%。Ⅱ型では介護療養型老健が41%、介護療養病床が18%、医療療養2が17%となっている。介護療養診療所と医療療養経過措置からの移行は少ない。

 平均要介護度は、19年から21年にかけて、ほとんど変わりがない。Ⅰ型では4.3で、3年間ほぼ変化していない。Ⅱ型は転換型老健からの移行が多いので要介護度が少し軽い。
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07_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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移行定着支援加算の廃止の影響も

 今年6月の介護保険算定単価を調べた。Ⅰ型は昨年、1万5,802円(1人/日)、今年は1万5,162円(同)だった。Ⅰ型、Ⅱ型ともに、昨年より収入が減っている。その原因は、おそらく移行定着支援加算の廃止の影響ではないかと思われる。
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08_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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介護医療院を有効に利用

 入所について、類型による相違を調べた。回復期リハ、地域包括ケア、急性期の病棟は、「在宅復帰系」としてまとめている。

 入所は、Ⅰ型では自院からの転棟が60%近い。Ⅱ型では自院、他院の在宅復帰系病棟から半数程度を占める。昨年はⅡ型で自院の在宅復帰系病棟からが半数近くを占めていたが、今年度は適度に分散した印象である。
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09_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 回復期リハ病棟や地域包括ケア病棟を持つ病院側からすると、老健に送るよりも介護医療院に送るほうが在宅復帰率を取れるので、介護医療院を有効に利用しているという面もある。
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リハビリで在宅復帰も目指せる

 退所については、想定通りだが「死亡退所」が多い。ただ、Ⅱ型で独立型は死亡退所が33%と少なく、自他院の病棟へ転出している。夜間・休日に医師が不在のため治療転院していると考えられる。
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10_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 医師がいないのでそこで看取るというよりは、急変というかたちで病院に移って、そこで亡くなる場合もあるのではないか。夜間、医師がいるかどうかで、この数字に差が出てくると思う。

 また、Ⅱ型では自宅のほか、自宅系介護施設への退所も10%以上ある。これはリハビリの効果だろうか。介護医療院も在宅復帰が目指せることを示している。

 もともと、回復期リハビリ病棟や地域包括ケア病棟に入院していた患者さんが期限が過ぎて介護医療院に移り、リハビリを続けて自宅へ帰れるようになる場合がある。介護医療院は決して終のすみかだけではなく、在宅復帰も目指せる介護施設であると言える。
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本人参加の意思確認カンファは少ない

 介護医療院における意思確認カンファレンスの実施状況はどうか。アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は本人の参加が必要になるので、ACPと言われてもACPはできていない。

 今年4月から6月までの意思確認カンファレンスの実施状況は1,823回だが、そのうち本人が参加できたものは27回で1.5%にとどまる。前回の調査でも1.3%と少なく、改善はない。この事実を踏まえると、「本人の意思決定が基本」には少し無理があるように思える。
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11_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 要介護4以上の入所者には意思確認カンファレンスに本人が参加できないことを認識すべきである。「本人の意思決定が基本」を強調したいと言うのであれば、状態の良い時期に本人が参加するACPを開催すべきである。例えば最初に要介護認定をする時期にケアマネが介入するなどが考えられる。
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リハビリを積極的に実施

 リハビリテーションの実施状況はどうか。昨年同様、リハの実施頻度は高い。70%以上の施設で何らかのリハを実施している。
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12_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 特に理学療法が一番多い。100床あたり71例に592回実施しており、1人の患者あたり、8.3回実施していることになる。作業療法、言語聴覚療法も一定程度、実施しているので、リハビリを多く実施していると言える。

 理学療法、作業療法は月8~9回、言語聴覚療法は月7~8回の実施。さらに、減算されてしまうリハビリも積極的に実施している、

 LIFEの届け出は約半数で開始し、30%で準備している。10月以降、どんどん届出ができると思うので、今後、急速に増加すると思われる。
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13_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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病院の持ち出しで「処遇改善」

 では、現場で苦労していることは何か。最も苦労しているのは介護士の確保、次に看護師の確保である。さらに、抑制ゼロの対策、生活施設としての環境整備に苦労しており、これらは昨年と同様である。

 2021年に加わったのは「地域との交流・地域貢献」の項目で、これはコロナの影響により外出できないことが理由かもしれない。
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14_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 また、介護医療院は「自宅」という扱いになっているので、自宅としての環境整備も難しい課題である。これまで病院であった所を「自宅」の環境に整えるため、悩まれていると思う。

 そうした中で、介護職員に対する処遇改善はどうしているか。介護医療院に勤務する介護職は80%の施設で処遇改善加算を受けているが、特定処遇改善加算は半数の施設しか受けていない。

 同じ施設で働く病院の介護職(看護助手)との公平性を担保するため努力している状況もある。病院の持ち出しで、半数以上の施設が処遇改善を実施している。苦しい状況が推測される。これはどうにかしていただきたい。
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15_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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介護医療院の開設に好意的

 介護医療院を開設して良かったことは収入関係である。「収益が増加した」(34.4%)、「助成金で改修、新築ができた」(21.4%)という回答が多い。移行定着支援加算を頂けたことが大きい。

 また、「医療区分1の利用者の居場所ができた」(40.5%)、「介護療養病床・経過措置が廃止になる心配がなくなった」(41.2%)など、心理的な安心感も示されている。
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16_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 介護医療院の開設により「前より収益が増えた」との回答は前回調査で60%だったが、今回は50.3%と減少した。移行定着支援加算が廃止になった影響と考える。

 介護医療院の開設は総合的に良かったかを尋ねたところ、「良かった」は63.7%で、前回よりも少し下がった。移行定着支援加算がなくなり、収益上の利点がなくなったことと関係している。ただ、「悪かった」との回答は2.7%と少ない。この結果から、介護医療院の創設は好意的に受け止められていると言える。
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17_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 この3年間の結果を見ると、19、20年は70%であったが、2021年度は「良かった」が64%と今までよりも少し下がった。「悪かった」という回答はほとんどなく、今回も少ない。
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18_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 今回の調査結果をまとめた。稼働は95%程度で良好。リハビリの実施が多い。移行定着支援加算の廃止の影響で1日単価が約600円減った。苦労していることは人材確保や環境整備である。
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19_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 介護医療院により医療区分1の居場所ができて、経営者の不安が減った。介護医療院の創設は好意的に受け止められており、新しい制度での成功例と言える。
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20_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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 明日10月14日から15日の2日間にわたり、私が学会長を務める「第29回日本慢性期医療学会」を開催する。 オンデマンド配信も予定しているので、ぜひご覧になっていただきたい。私からの説明は以上である。
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21_介護医療院2021調査_2021年10月13日の記者会見資料(鈴木会長)

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[矢野諭副会長]
 鈴木会長、どうもありがとう。では、続いて武久会長、よろしくお願いしたい。
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01_2021年10月13日の記者会見資料(武久会長)

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このたびのみっともない事態

[武久洋三会長]
武久洋三会長_2021年10月13日の記者会見 昨年7月、テレビを観ていたら、コロナでECMOを装着していた重症患者が意識消失の状態から快方に向かったが、体重は20キロも減っていたという。1カ月間で60キロの人が40キロになってしまうとは、一体どういうことだろうかと思うが、いかがだろうか。

 急性期病院での新型コロナ治療は万全だったのか。熱が出たら必要カロリーも水分も通常の1.5倍以上必要であるという常識に沿った治療が行われていたのであろうか。

 例えば、「発熱なし」の場合には、エネルギー必要量は1,107キロカロリー、水分必要量は1,200ミリリットルだが、38度ぐらい熱が出ると、1,549キロカロリーは必要で、水分は1,500ミリリットル必要になる。38度では1,771キロカロリー、1,650ミリリットル。発熱がない時の1.4倍、1.6倍が必要となる。
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04_2021年10月13日の記者会見資料(武久会長)

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 与えられる栄養分や水分と、消費される栄養分や水分のバランスが取れるようにする必要がある。急性期病院のコロナ病棟で、きちんと対応されてきたのか。

 コロナ治療病院がポストコロナ患者をどんどん適切にポストコロナ病院に紹介してくれていたら、このたびのみっともないような事態には陥っていないはずだ。病床が詰まることはなかった。
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コロナ対応に日慢協が積極的に協力

 日慢協では、発症当初から新型コロナ対応に協力している。2020年2月13日、厚生労働省から当会に依頼があった。ダイヤモンド・プリンセス号から初めて下船する高齢者が和光市の税務大学校に宿泊待機してもらうので診療等の対応について要請があった。

 翌14日から19日まで、橋本康子副会長をはじめとする日慢協の役員病院から派遣された医師や看護師、薬剤師等のスタッフが協力。約70名の下船された高齢者らの診療や投薬、相談に応じた。

 受け入れ期間中、37~38度台の発熱が2日間続き、感染症対応医療機関へ搬送、一晩入院した方もいたが、PCR陰性のため再入居した。受け入れた下船者はPCR結果(陰性)後、2週間経ったことから全員帰宅された。

 東京城東病院がコロナ専用病床として受け入れを開始した際にも、各地の会員病院の対応は素晴らしかった。特に安藤高夫先生や富家隆樹先生の積極的な対応が日慢協の存在を高めてくれた。

 私の運営している博愛記念病院でも、このように対応している。昨年8月から今年10月までの約1年間で、ポストコロナの受け入れ患者数は68名。年齢は49~97歳で、男性26名、女性42名である。
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08_2021年10月13日の記者会見資料(武久会長)

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 自宅から来た方が半分以上で、介護施設や居住系施設から約30%、亡くなった方は1人のみ。

 このようにポストコロナ患者を積極的に受け入れる中で、陽性者がいることに注意は必要であるが、リハビリや治療により、ほとんどの人が元気で歩いて帰っている。このたびのコロナワクチンの効果は通常のインフルエンザワクチンとは比較にならないくらい効果があったと思っている。
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重症高齢者が療養病棟に集中

 前回の9月9日の記者会見では、療養病棟の死亡退院率が50%を超えているのではないか、療養病床で半分死ぬのではないかというご指摘があったので、その背景をご説明した。

 療養病棟の死亡退院割合が50%を超えているのは、急性期病院で長期入院していた重症の高齢患者が「特定除外制度」廃止によって、療養病棟に集中するようになったことによる影響が大きい。

 そして、同じ療養病棟であっても、併せ持つ病床構成によって死亡退院率は大きく異なり、地域内に在宅医療も含めてどのような医療資源が備わっているのかということなども関係しているのではないか、一概に死亡退院割合だけで病院のあり方を議論すべきではないと述べさせていただいた。

 死亡退院率が50%ということは、逆に言えば、医療区分2・3に重症患者が80%、90%もいるのに、その半分は良くなって帰っている。すごいことではないかと言えると思う。
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看取りのための入院は少ない

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11_2021年10月13日の記者会見資料(武久会長)

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 では、死亡退院患者が実際にどのような状況であるのか。このたび、療養病棟入院基本料1に入院している患者の状態像等調査を実施したので報告する。

 今年7月、当会の会員983病院を対象に実施し、135病院から回答をえた。患者数は1万1,656人(療養病棟入院基本料1を運営している病院)である。  

 7月26日に入院している患者の状態像、21年1~6月に療養病棟入院基本料1に入院した患者の入棟元と退院した患者の退院先はこのようになっている。
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12_2021年10月13日の記者会見資料(武久会長)

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 1~6月に死亡退院した患者の状況は次のとおりである。医療の必要なく看取りのための入院は本当に少なかった。重症者への対応も継続している。
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13_2021年10月13日の記者会見資料(武久会長)

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同じような医療行為の評価が異なる

 入院患者と死亡退院患者を比較して10%以上増加している処置等を見ると、中心静脈栄養の管理は32.0%に増える。静脈内注射も普通の入院中よりも45.5%と多くなる。酸素療法は80.7%。医師による診察の頻度も多い。このように重症者に対応している。
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15_2021年10月13日の記者会見資料(武久会長)

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 懸命な治療をしたにもかかわらず、残念ながら死亡退院された患者の死亡前7日間に提供された医療内容について調べてみると、かなり多くの医療行為が提供され、医師や看護師の頻回の回診やケアが行われていることが分かった。

 中心静脈栄養管理は多いと言われているが、10%程度である。当然、中心静脈栄養で継続的に点滴が入っていると、適切な量の輸液が行われたかということをチェックできる輸液ポンプが必要であるし、血圧が下がらないように引き上げるための薬は別ルートで行くとしてシリンジポンプと、それから心電図モニターの管理も行う。これは療養病床であろうと一般病床の重症病棟であろうと同じである。

 中心静脈栄養素を行う場合には、そのようにするのが医療的処置の常識である。ICUであっても療養病床であっても関係なく、患者の状態に応じて上記医療行為を実施している。しかし、同じような状態の重症患者が入院して同じような医療行為を実施しても、病棟種別ごとに評価は異なる。
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17_2021年10月13日の記者会見資料(武久会長)

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 特定集中治療室用・ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度でも、輸液ポンプや心電図モニター、シリンジポンプの管理が入っている。中心静脈栄養を入れる場合にも、療養病床ではこのような行為を実施している。

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18_2021年10月13日の記者会見資料(武久会長)

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19_2021年10月13日の記者会見資料(武久会長)

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20_2021年10月13日の記者会見資料(武久会長)

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療養病床とICU、入院費用が違う

 重症患者が死亡するような状況での医療行為には、本来、病棟種別による差はあるべきではない。特定集中治療室は手厚い治療を行うが、療養病床では適当でよいなどということは許されるべきではない。

 重症患者には何とか適切な治療を行い、病態を改善するために努力するのが医師の務めである。そこにはICUは一生懸命治療するが、療養病床は適当でよいなどという論理は通らない。しかし、入院費用は全く違う。

 治療可能なのに患者が死亡することは、医師としては非常に残念でならない。治療内容を見直し、反省することが通常の医師の姿である。重症で、治療が複雑な患者を治すことのできる医師が名医である。体力がある軽度の患者を治すことはどんな医師でもできる。

 本来、死期が近い重症患者に対して、ICUか療養病床かで治療内容の差があってはならないことである。死は誰にでもやってくるものであり、助けられる命は助けるべきであり、そのような診療制度にすべきである。

 医療区分制度を廃止して重症度、医療・看護必要度に統一すべき時期が来ていると思われる。
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療養病棟は慢性期治療病棟

 療養病棟入院料2で重症患者の受け入れが少ない病棟は、いずれ廃止するようである。重症患者の受け入れが少ないので、様子見程度の軽症患者の収容施設としての病床をなくそうとしている。

 療養病棟入院料1で医療区分2・3患者を80%以上受け入れていても、ただ入院させて、大した治療もしないような病棟は廃止するか、介護医療院に転換するべきではないか。

 療養病棟入院料1は慢性期治療病棟として期待されている。決して看取りの場所として推奨されているわけではない。

 良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない。日本慢性期医療協会は、非常に重体の患者さんを積極的に受け入れ、半分以上は良くして帰している。そのような努力をしている現場の先生方に感謝している。
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26_2021年10月13日の記者会見資料(武久会長)

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[矢野諭副会長]
 今回の調査では、かなり具体的な数字も入っているので、とても参考になると思う。アンケート結果には、現場の声が表れている。今後とも、日本慢性期医療協会をどうぞよろしくお願いしたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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