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「全ての病院が受け入れても足りない」 ── 池端副会長、中医協で現状を訴え

Posted By araihiro On 2021年9月16日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 「コロナ割り当て医療機関のうち、本当に受け入れている所はどれくらいあるのか」──。9月末期限の経過措置を延長する方針が示された厚生労働省の会合で支払側の委員が難色を示した。日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「民間病院を含めた全ての病院が受け入れても足りない」と現状を訴え、支払側委員は今回の提案を了承した。

 厚労省は9月15日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)の第488回総会をオンライン形式で開催し、当会からは池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の総会に、令和2年度改定の経過措置等を来年3月末まで延長する方針を示し、最終的には了承されたが、その対象範囲をめぐり議論があった。
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今後半年間、「正確には予測できない」

 厚労省は同日の総会で、コロナに対応している医療機関のうち一部を除いて延長する方針を提示。具体的には、①重点医療機関、②協力医療機関、③コロナ病床割り当て医療機関──については延長するとした。

 厚労省保険局医療課の井内努課長は「コロナの状況が今はいったん落ち着きつつある中、またワクチンも進んでいるが、コロナの重点医療機関、協力医療機関、割り当て医療機関については、今後半年間の間にどのような変化が起きるかはまだ正確には予測できない」と説明した。

 その上で、井内努課長は「経過措置は延長、年間実績は令和元年の実績を使えるようにして、それ(①②③)以外の所は9月30日で経過措置を終了し、年間実績はもともとのルールどおり運用をしていただいてはどうか」と提案し、診療側は大筋で了承した。
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01スライド_P45_【総-9】令和2年度診療報酬改定における経過措置等への対応について_2021年9月15日の中医協総会

              2021年9月15日の中医協総会資料「総-9」P45から抜粋
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きめ細かい対応を心掛けたい

 質疑の冒頭、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「全ての医療機関が何らかの影響を受けていることは間違いない。医療界は全体としてコロナ対応に奔走している」とし、今回の対象から外れた医療機関への対応について質問した。

 城守委員は「施設基準の届出を行うことになったり、また実績について急いで計算したりする必要がある。不明点も出てくると思うが、どのような対応をしていただけるか」と尋ねた。

 井内課長は、今回の調査で基準を満たせなかった医療機関を把握していることを説明し、「厚生局を通じて個別対応を実施できるかと考えており、われわれとしては、できる限り、きめ細かい対応を心掛けたいと考えている」と答えた。
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想定と違えば再度、中医協で議論

 同じく診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)は「新基準を適用する医療機関であっても地域医療の担い手であることには違いなく、これらの医療機関において施設基準を満たさなくなることによって医療機関の機能が損なわれ、地域医療は崩壊することも考えられる」とし、今後の対応について質問した。

 具体的には、「今後、届出を受け付けたり、さらに医療機関からの相談が発生したりする中で現状の数字と大きく異なるような実態が明らかとなる可能性も否定できない」と懸念し、「その場合、どのように対応するのか確認させていただきたい」と尋ねた。

 井内課長は「きめ細かい対応で、該当する医療機関が混乱しないように努めたい」と改めて強調した上で、「(経過措置等の終了により)大きなダメージを受ける医療機関が多数で、今回の調査の想定とは違うような数字が出てくるようなことが、もし分かれば、その場合には事務局で整理をさせていただき、再度、中医協で議論していただけるような準備はしたい」と答えた。

 島委員は「丁寧な対応や指導を行っていただけるのであれば、今回の事務局案を支持したい」と了承した。
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どれぐらいの規模か見えない

 一方、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「非常に重要なデータが欠けている」と切り出し、今回報告のあった①重点、②協力、③割り当て等のうち、③の数などが不明であることを指摘。約8,300病院の中で「割り当て医療機関がどれぐらいの規模があるのかが全く見えない」と不満を表した。

 厚労省がこの日の総会に示したデータによると、全国約8,300病院のうち、①は1,323病院、②は942病院だが、③などの数字は示されていない。

 また、「施設基準要件を満たしていない」との報告があった医療機関の割合について、①は1.9%、②は2.8%と少ないが、③などの割合は示されていない。
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02スライド_P8_【総-9】令和2年度診療報酬改定における経過措置等への対応について_2021年9月15日の中医協総会

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線引きの判断をしかねる

 幸野委員は「③がどういう状況なのか。しっかりとデータを出していただかないと、線引きの判断をしかねる」とし、今回の提案を一部了承しない構えを見せた。

 また、③の医療機関について「本当にコロナを受け入れている所はどれくらいあるのかというデータが欠けている」とも指摘した。
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03スライド_P8_【総-9】令和2年度診療報酬改定における経過措置等への対応について_2021年9月15日の中医協総会

              2021年9月15日の中医協総会資料「総-9」P8から抜粋
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病床調整のため、正確な数値を

 同じく支払側の末松則子委員(三重県鈴鹿市長)は自治体代表の立場から発言。「地方と都市部でコロナの状況は違うので、正確な数値を可能な限り、出していただきたい」と要望した。

 末松委員は、今後も県内の病床調整が続く状況にあると説明した上で、「この数値をしっかり明らかにしていただく中で、今後の第6波や第7波での病床の調整や、医療機関との意見交換も含めて、この数値は大変大事である」と述べた。
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割り当て病院も多くの苦労をしている

 こうした支払側の意見に対し、池端副会長は「福井県の医師会長として現場の立場からの情報提供として申し上げたい」と現状を説明した。

 その上で、池端副会長は「③の割り当て医療機関でなくとも、民間病院を含めた全ての病院がコロナ患者を受け入れたが、それでも足りない」「施設基準を満たさないということは医療機関としての存亡に関わる」と理解を求めた。

 幸野委員は「重点医療機関、協力医療機関で線を引くべきと思っていたが、今、池端委員がおっしゃったように、割り当て病院も多くのご苦労をされており、頑張っていただくということで、経過措置に含めることは了承したい」と応じた。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。
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2021年9月15日の中医協総会

■ 経過措置等の延長について
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 幸野委員、末松委員からご意見があった。私は病院協会の代表として委員を拝命しているが、福井県の医師会長として現場の立場からの情報提供として申し上げたいと思う。
 幸野委員から、③の割り当て医療機関が実際に受け入れているのかという趣旨のご質問があった。少なくとも福井県においては、この第5波になって重点医療機関や疑似症患者の受け入れに手を挙げた医療機関だけでなく、民間病院を含めた全ての病院がコロナ患者を受け入れた。しかし、それでも足りないので、臨時病床をつくろうというスキームをつくった。
 今回、③の医療機関もコロナ受入病院として経過措置を延長していただくことは、今後の第6波、第7波に向けても非常に重要なことだと思うので、ぜひ、現場の事情をご理解いただければと思う。
 もちろん、全国的にどのような受入状況であるかという数字を私が持ち合わせているわけではないが、一地方の小さな県でもこういう状況なので、③の機能というのは非常に重要ではないかと思っている。

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■ 今後の対応について
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 先ほど城守委員、島委員もおっしゃったように、一定の条件で、きちんと丁寧な対応をしていただくということで、私も2号側として、今回の提案に了解させていただく。
 皆さんに知っておいていただきたいのは、今日は9月15日で、期限が切れるのは9月30日であるということ。2週間後に経過措置が終了して、10月1日から新たな体制に入るということの大変さを、ぜひ各委員にご理解いただきたい。
 2週間後に新しい体制になるということは、今から準備しても間に合わない。すでに分かっていることではないかと言われるかもしれないが、ひょっとしたら延長されるかもしれないと思っている医療機関もあるだろう。2週間後に経過措置が切れる医療機関に対して、ぜひ丁寧な対応をしていただきたい。
 施設基準を満たさないということは医療機関としての存亡に関わる。そういう条件だということを、どうかご理解いただき、ぜひ丁寧な対応をお願いしたいと要望する。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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