- 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト - http://manseiki.net -

「特定看護師に診療報酬上の加算を」 ── 池端副会長、令和4年度改定の議論で

Posted By araihiro On 2021年7月22日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 令和4年度診療報酬改定に向けて、働き方改革の推進などがテーマとなった厚生労働省の会合で日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は、特定行為研修を修了した看護師数が伸び悩んでいる現状を指摘した上で、「診療報酬上の加算等、あるいは基準等を付けることが非常に重要ではないか」と提案した。

 厚労省は7月21日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)の第484回総会をオンライン形式で開き、当会からは池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の総会に「個別事項(その1)」として、①医薬品の適切な使用の推進、②働き方改革の推進、③歯科用貴金属材料の基準材料価格改定、④不妊治療の保険適用──の4つのテーマを提示。それぞれについて課題や論点を示した上で、委員の意見を聴いた。

 質疑で池端副会長は、①②④について意見等を述べた。①については、後発医薬品の使用促進について、不祥事問題に触れながら「アクセルとブレーキをどうするか、非常に難しい問題」との認識を示し、今後の対応などについて見解を求めた。

 ②については、特定看護師を診療報酬上で評価する必要性を指摘したほか、医師事務作業補助者の対象拡大などを求めた。④では、不妊治療の保険適用と現在の助成制度との関係などについて質問した。

 池端副会長の主な発言要旨は以下のとおり。

■ 後発医薬品の使用促進について
.
 城守委員、島委員、有澤委員の意見に賛同したい。その上で、私見も含めてお話ししたい。
 まず、後発医薬品の使用促進について。80%目標の達成を目指した副作用と言えるのかは分からないが、小林化工さん等をはじめとした、企業のコンプライアンスの問題に関しては私も非常に危惧するところである。
 小林化工さんは私の出身の福井県の企業であり、昨日も県の薬事審議会で経過を縷々、検討させていただいた。行政処分は終わっているが、企業の再建に至るまでにはとても見込みが立っていない状況にある。県も、こうした事態が二度と起こらないように、県内の関連企業等に抜き打ち調査をする方針である。
 もちろん、厳格な規制も重要ではあるが、あまりにも締め付けすぎて、後発品メーカーが萎縮してしまってもいけない。アクセルとブレーキをどうするか、非常に難しい問題である。業者も玉石混交の面がある。
 そこで、今回の不祥事を踏まえ、厚労省として今後、どのような基準で監査等を行っていく方針であるか、教えていただきたい。

.
【厚労省医政局経済課・林俊宏課長】
 池端委員から、後発医薬品メーカーの不祥事の監査についての方針について、ご質問があった。ご指摘のとおり、われわれも無通告監査で全てが解決するわけではなく、これはいわば例外的な対応だと認識している。基本的には、県が中心となった立入検査をするが、質を向上するということとあわせて、基本的には事業者が自発的にしっかりとGMP、GQPを守っていただくことが重要だと考えているので、そういった形で指導をしっかりとやっていきたいと考えている。
.
■ 処方医が変更不可にする理由について
.
 処方箋の変更不可欄について、以前、支払側から「変更不可の項目は要らないのではないか」というご意見があった。
 しかし、私自身が知る限り、この変更不可にチェックを入れているのは処方医の独断ではなくて、ほとんどが患者さんの意思である。「いったん変更したが、やはり元の薬に戻してほしい」「変更した薬を飲んだら調子が悪い」と言われることもある。科学的根拠があるかどうかは別として、本人の訴えがあったことに対してチェックを入れることがほとんどではないかという印象を持っている。
 そのため、変更不可にしない場合には、調剤薬局から毎回、「後発品にしませんか」と言われ、これに対して、すごく不安感を感じる患者さん、特に高齢者の方が多いのも事実である。私自身も本当に少ない例ではあるが、変更不可のチェックを入れることがある。
 そこで質問だが、処方医が変更不可を入れている理由が分かるようなアンケート調査等が行われていれば、その内容を教えていただきたい。

.
【厚労省保険局医療課・紀平哲也薬剤管理官】
 後発品への変更不可、あるいは、使用しない理由などについては、研究班や検証調査で取ったデータがあるので、次回以降、お示ししたいと思う。
.
■ 処方箋の変更不可欄について
.
 委員から、患者の希望により処方箋の変更不可欄にレ点を付けるのはおかしい、との意見が出されたことについて : ちょっと心外なので反論させていただきたい。もちろん、きちんと説明はしている。患者さんから言われたから「はい、そうですか」と変更不可にしているつもりはない。後発品を使用しにくい薬剤もある。例えば、精神安定剤や催眠薬、不安薬などに関しては、変更すると逆に眠れなくなったと、ご本人がおっしゃることもある。薬にはプラセボ効果があり、信じているものは効くという効果もある。見た目が変わっただけでも不安から効かなくなる。ご承知のとおり、ワクチン接種でもそう。不安感から、かえって、いろんな症状が出てしまう。動悸がしたり頭痛がしたりすることもある。これは、「0、100」ではいかない。それが医療というものの難しさだと思う。
 そうした問題も含めて、一定程度の変更不可をせざるを得ないことがある。それをご理解いただきたいと思う。
 ワクチンが95%効くと言っても、打ちたくないという人が一定数はいる。そこは認めるということと同じように、薬を変えると調子が悪くなったと感じて訴えられることに対して、それは正直に患者さんの権利として認めていくべきではないだろうか。そこまで駄目だと言うのであれば、先発品を全てなくさなければいけないことにもなる。それは少し極論ではないかと思うので、ご理解いただければと思う。

.
■ 働き方改革の推進について
.
 医師の働き方改革に関して、タスクシフト、タスクシェアは非常に重要であり、特に、薬剤師、特定看護師、医師事務作業補助者の3職種は特に有効なものだと思っている。推進していただくことが望ましい。
 医師事務作業補助者に関しては、回復期や慢性期も含めて全ての病床に、さらなる補助、手当て等が必要であると思う。
 特定看護師については、一定程度、数が増えてはいるが、修了者総数は令和3年3月現在で3,307名、延べ人数は約2万人となっている。当初は10万人の養成を計画していたと思うが、その進捗状況について、数字等があれば教えていただきたい。
 特定看護師は急性期に中心にタスクシフト、タスクシェアが叫ばれているが、私はむしろ、この特定行為研修を修了した看護師は慢性期や在宅、老健施設等でも十分機能する職種であり、新たな看護師になるのではないかと思っている。そして、特定看護師がタスクシェアに大いにつながると思っているので、診療報酬上の加算等、あるいは基準等を付けていただくことが非常に重要ではないかと思う。

.
■ 紹介状なし受診の定額負担について
.
 大病院の先生方も、できれば専門の外来等は残して、それ以外は地域のかかりつけの先生にお願いしたいという気持ちは持っていると思う。
 しかし、病院の経営上、やはり外来という報酬を全く捨てることはできない。経営上の問題も一部あるのではないかと思う。そのため、北風的な方法よりも、むしろ根本的に外来を縮小して入院に特化することによって一定程度の経営が成り立つような、そういう報酬上のシフトが必要ではないか。なかなか結論が出ない問題だとは思うが、そういう根本的な考え方も必要ではないかと感じている。

.
■ 看護補助者の評価について
.
 最近、看護補助者の確保がなかなか難しいという意見があった。慢性期では医療療養と介護施設を両方持っている施設でも同じような現象が起きている。つまり、介護保険施設の介護職員に対しては処遇改善加算等があるので、ある程度は給与を確保できるのだが、医療保険の病院で看護補助者として働く場合には、介護施設の介護職員と大きな給与格差を生じてしまう。そのため、医療機関に介護職員が流れてこないという状況が全国的に見られる。
 そこで、病院で働く介護職員、すなわち看護補助者に対する加算の在り方を考える必要がある。介護保険では介護職員、病院では看護補助者という名目になっている。しかし、働いている実態は同じだと思うので、われわれは問題意識を持っている。

.
■ 不妊治療の保険適用について
.
〇池端幸彦副会長
 今回、事務局から示された3つの論点に関しては、各委員がおっしゃったように、私も基本的には賛同させていただきたい。
 ただ、その財源ということも含めて、ご質問したい。現在、不妊治療には手術療法や薬物療法など一部、保険適用となっている部分と、保険適用外となっている人工授精(AIH)のほか、体外受精や顕微授精などの特定不妊治療がある。このうち、特定不妊治療については、不妊に悩む方への特定治療支援事業の対象として、国費で助成されている。
 この特定治療支援事業の内容を見ると、1回30万円で、令和2年度第三次補正予算で370億円が計上されている。これについて、私も認識不足で申し訳ないのだが、この370億円がどれくらい消化されているのか。全額消化されているのかどうか。この特定治療支援事業では、30万円以内で全額補助が出ることになっているが、それ以外は自己負担になっているという理解でいいのかどうか。
 もし、特定不妊治療が保険適用になった場合には、自己負担が発生することになる。そこで、自己負担が発生したことに対して、その部分を、例えば、この支援事業で補うとか、あるいは、さらに別の治療等に特定不妊治療を拡大していくのか。特定不妊治療の現状と、保険診療となった場合の、この支援策との関係性について、現在、何か検討されていることがあれば、お伺いしたい。

.
〇厚労省子ども家庭局母子保健課・小林秀幸課長
 池端委員から、現行の特定治療支援事業が今後どうなるのかについて、ご指摘をいただいた。
 閣議決定された工程表の中では、現行の助成制度自体は令和3年度で終了して、令和4年度からは、有効性・安全性が確認された治療法については保険適用に移行するということであるので、基本的にはこの助成制度自体は来年度からは保険に移行するという認識を持っている。
 また、執行率について、ご指摘いただいた。今、手元に資料がないが、治療実績は出ている。年間、14万人程度が受けて、給付をされている状況である。基本的には、この30万円までの治療費の場合はその全額を負担する。30万を超える場合には、その分は自己負担をしていただくという運用がなされている。

.
〇池端幸彦副会長
 今の説明では、ちょっとうがった見方をすると、特定不妊治療として公費を使っていたものを診療報酬に財源を付け替えただけで、利用者に本当に大きなメリットがあるかどうか、ちょっと疑問に感じてしまったのだが、いかがだろうか。
.
〇厚労省子ども家庭局母子保健課・小林秀幸課長
 現行の制度については、個別の治療の内容いかんにかかわらず、体外受精、顕微授精を行っている場合には一律30万円。一部の治療については凍結をしたものからの、治療については10万円。そういう一律の金額を給付するという方法であるが、今後、中医協で、ご議論をいただきながら、患者さん視点も踏まえて、細かい制度設計をお願いできればと考えている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


.



Article printed from 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト: http://manseiki.net

URL to article: http://manseiki.net/?p=7611

Copyright © 2011 Japan association of medical and care facilities. All rights reserved.