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「勘違いしてしまう設問ではなかったか」 ── コロナ患者の受入で井川常任理事

Posted By araihiro On 2021年6月17日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 コロナ患者の受入に関するデータなどが示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎常任理事は「勘違いしてしまうような設問ではなかったか」と見解をただした。昨年4~10月に療養病床の受入が少ない結果について厚労省の担当者は同時期を「病床逼迫の状況前」とし、「その後の状況はまた幾分変わっている」と述べた。

 厚労省の調査によると、昨年4~10月にコロナ回復患者の転院を受け入れた療養病床は少数にとどまった。いわゆるポストコロナ患者の「受入有無」について、この7カ月に「0月」と回答したのは、療養病棟入院基本料を算定している557施設のうち500施設と多数を占めた。(=下表オレンジの棒グラフ)

 一方、4~10月全ての月で受け入れている施設もあった。
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スライド1_P124_【入-1-1】令和2年度調査結果(速報その2)_2021年6月16日の入院分科会

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入院調査の「速報 その2」を提示

 この調査結果は、6月16日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」の令和3年度第2回会合で示された。同分科会には、当会から井川常任理事が委員として参加した。

 今回の調査は入院医療に関する令和2年度の調査で、3月10日に「速報 その1」が示されている。

 その後、分析の基準などを変更して再集計し、今回は「速報 その2」として同分科会に提示した。
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主な項目は一般病棟、地ケア、回リハ等

 6月16日の議論に用いられた資料は「令和2年度調査結果(速報その2)概要」で、表紙を含めて158ページ。

 主な項目は、一般病棟入院基本料等、地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料、療養病棟入院基本料など。
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中医協基本問題小委員会に報告

 この日の会合では、厚労省担当者の説明に続いて質疑が前半(一般病棟入院基本料等)と後半(地域包括ケア、回復期リハ、療養等)に分けて実施された。

 議論を踏まえ、尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)は「若干、宿題を頂いたところもある。必要に応じて資料を修正した上で中医協診療報酬基本問題小委員会に報告したい。その際の文言等については私にご一任いただけるだろうか」と述べ、了承を得た。
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調査対象、「少し分析的に見る」

 今回の調査結果について井川常任理事は主に、①地域包括ケア病棟への自院からの転棟、②ポストコロナ患者の受入状況──の2点について意見を述べた。

 ①については、自院の一般病棟からの転棟割合「0%」が70施設中25施設だった点などを指摘し、調査対象について「一般病棟と地ケア病棟の両者を有する施設を選別して得られた70施設だろうか」と質問した。

 厚労省の担当者は、「0%」には地域包括ケア病棟のみの施設も含まれているとした上で、対象施設について「少し分析的に見るのはあり得る着眼点」との認識を示した。
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スライド2_P88_【入-1-1】令和2年度調査結果(速報その2)_2021年6月16日の入院分科会

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10月で切ると、こういう数字になる

 ポストコロナ患者の受入について地域包括ケアや回復期リハでは高い割合を示した。猪口雄二委員(日本医師会副会長)は「コロナ患者さんの回復後の受入、連携が相当進んできている」と評価した。

 一方、療養病棟では低い割合にとどまった。厚労省の担当者は「これを見て全くやっていなかったとか、そういうことを断じる必要はわれわれとしてはないと思っている」とした上で、「7カ月、引き受けておられる所もある」と理解を示した。

 この発言を受け、山本修一委員(地域医療機能推進機構理事)は「療養病棟を持つ先生方にお願いする急性期側の感覚からすると、第3波の年末以降、本当に切羽詰まって急性期が回らなくなる時に厚労省や各都道府県が動いて、かなり流れるようになった」と振り返り、「10月で切ると、こういう数字になる」とコメントした。

 井川常任理事の主な発言要旨は以下のとおり。

■ 地域包括ケア病棟への転棟割合について
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 コロナ対策でお忙しい中、非常に詳細なデータを出していただいて、事務局の方にお礼を申し上げる。
 このデータを全部見たところ、大事なことは、何%などの割合データがほとんどである。このため、母数というものが非常に重要なウェイトを占めると思う。例えば、88ページ。地域包括ケア病棟に一般病棟から移った割合のグラフがある。前回の改定で、地域包括ケア入院料の2と4で許可病床数が400以上に限定して6割未満という新しい基準が新設されたことに基づくデータの集積だろう。棒グラフの青色部分、すなわち地域包括ケア入院料1を見ると、5月も10月も70施設中25施設は自院の一般病棟からの転棟が「0%」と表示されている。
 そこで質問だが、この母数は、一般病棟と地域包括ケア病棟の両者を有する施設を選別して得られた70施設ということだろうか。もしそうでなければ、例えば、地域包括ケア病棟のみで構成されている病院、いわゆる「地ケア病院」というのが地域包括ケア病棟協会の把握でいけば、もう既に60施設ぐらいあるし、それから一般病棟を有しない施設も実際にある。そういうものが母数としてカウントされた場合は非常にあいまいなデータになってしまうのではないかという気がするが、その辺の把握はしていただいているのかをお伺いしたい。

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【厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐】
 88ページの「0%」の所には一般病床を持っている所と持っていない所があるのではないかというようなご指摘だと思っている。これは今、全部入っている。そのため、そこを少し分析的に見るというのはあり得る着眼点かなと思いながら、今、聞いていた。
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■ ポストコロナ患者の受入について
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 資料76ページ(地域包括ケア病棟・病室でのコロナ受入有無)以降を見ると、先ほど猪口委員がおっしゃったように、回復期リハ、地域包括ケアはポストコロナを頑張って取っておられて、地域包括ケアは思ったほどコロナウイルスの対策、治療病棟としての機能はそれほど果たしていないという感じが否めない状態である。
 慢性期の療養病床に関しては、コロナに関しては、ポストコロナもあまり取っておられない。
 新型コロナウイルス感染症の患者の受入医療機関からの転院患者の受入の有無という項目が、例えば、地域包括ケア、回復期リハでは82ページから、慢性期の療養型では124ページ、障害者では135ページに、それぞれ出ている。
 例えば、療養病床について124ページを見ていただくと、新型コロナウイルス感染症患者以外の患者の受入が「0月」というのが560施設中250ぐらいある。しかも、新型コロナ感染症治療後の患者の受入が「0月」が557施設中500施設ということになると、この期間中、昨年4月から10月までの期間に患者をほとんど受け入れていないことになってしまう。これは施設票であるので、その病院に患者さんが来たかどうかという問いだろうと思うが、そうすると、患者を受け入れていない病院ということになってしまう。
 たぶん、これは何らかの形で勘違いしてしまうような設問ではなかったかと心配している。特に4月頃はまだ第1波、第2波ぐらいであるので病床の逼迫率はそれほど高くなかった時期。しかも、近隣の急性期病院がコロナの患者さんを受け取っておられるかどうかもまだはっきり把握できていない。「どこどこ市民病院は取っておられる」という話はあっても、「ここの市民病院は取っていない」ということが実際に起きていた。そういう時期のデータであろうと思う。
 それを把握していなかったのか、もしくは、これは病床として、例えば、療養病床に入院した患者さんだけを考えて、そこに入って来られなかったと捉えたのか、という気がしているのだが、事務局のお考えはいかがかと思い、ご質問させていただく。

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【厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐】
 124ページ「転院患者受入の状況」についての質問である。破線の所に、①②とある。①は「新型コロナウイルス感染症患者以外の患者の受け入れ」、②は「新型コロナウイルス感染症治療後(検査陰性)の患者の受け入れ」で質問を構成しているので、まず、その流れがあるのだろうと思っている。
 さらに言うと、4月から10月は、例えば、年末以降の病床逼迫の状況の前になるので、そういった連携も、もちろん地域包括ケアでいろいろやっておられるデータもあるわけだが、状況としては異なる部分があったと受け止めているので、これを見て全くやっていなかったとか、そういうことを断じる必要は、われわれとしてはないかなと思っている。
 4月から10月の状況として、療養病棟では、①の「新型コロナウイルス感染症患者以外の患者」については0月の所もある一方で、7カ月、引き受けておられる所もある。一方で、コロナ治療後の、回復後の患者さんについては別に受け入れる、そういう素地にはなっていなかったというところは見て取れるかなとは思っている。
 ただ、これはあくまでも4月から10月であるので、その後の状況はまた幾分変わっている部分もあるのかなという推測をしているところである。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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