- 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト - http://manseiki.net -

コロナ患者の受け入れ数は自由記載欄に ── 5月12日の中医協で厚労省

Posted By araihiro On 2021年5月12日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会 | No Comments

 コロナ患者を受け入れた人数について、厚生労働省は自由記載欄に記入してもらう方法で対応し、具体的な患者数の調査は実施しない方針を決めた。5月12日の会合で厚労省の担当者は「調査の目的や分析方法、回答者負担等に鑑み、今回は各月の患者数については問う形式とはしないという議論もあったことを踏まえて現在の調査票になっている」と説明した。

 厚労省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)をオンライン形式で開催し、その模様を YouTube でライブ配信した。

 この日の中医協は、①診療報酬基本問題小委員会、②薬価専門部会、③総会──の3会合が開かれた。このうち③には、当会から池端幸彦副会長が診療側委員として出席した。

 最初に開かれた①基本問題小委員会では、4月28日の入院分科会での取りまとめを踏まえ、令和3年度の調査案を了承。③総会でも原案どおり承認された。委員の発言はなかった。

 ②薬価専門部会では、次期薬価改定に向けて業界団体のヒアリングが実施された。予定時間を30分以上オーバーしたため、続く③総会の審議はいわゆる「定例モノ」を中心に急ピッチで進み、9項目の議題を1時間弱で終えた。

 総会では、新薬の収載について支払側委員が有用性加算の在り方について問題提起した以外、委員の発言はなかった。厚労省の提案は全て原案どおり承認された。
.

一般医療への影響を見る必要がある

 厚労省は同日の基本問題小委員会に令和3年度調査案を示し、入院分科会の尾形裕也分科会が調査案の概要や今後のスケジュールなどを報告した。調査案をまとめた4月28日の分科会での議論には言及しなかった。

 質疑では、支払側委員が回収率の向上に努めるよう求めたほか、コロナ患者の受け入れに関する意見もあった。

 支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は主に2点を指摘。1つは、コロナ対応の医療機関の明確化、もう1つはコロナ患者の受け入れ規模(患者数)について。

 前者について幸野委員は、子どもの休校などで職員の出勤が困難になったような場合も「コロナ対応あり」の医療機関に含まれることを疑問視し、「実際にコロナ患者を受け入れた医療機関に絞って、そこがどうなっているかを見る必要がある」と強調した。

 その上で、幸野委員は「コロナ患者を受け入れた医療機関で一般医療がどんな影響を受けたかを見る必要があるので、そういう集計の仕方に変えてほしい」と求めた。
.

受け入れの規模が全く分からない集計

 幸野委員はまた、「受け入れの規模が全く分からない集計となっている」と苦言を呈し、患者数も調査するよう求めた。

 幸野委員は「重点医療機関のように、たくさんのコロナ患者を受け入れている機関もあれば数名のわずかな患者しか受け入れていない医療機関もある」との認識を示した上で、「その差が全く分からないまま、コロナ対応あり・なしで集計するのはどうなのか」と指摘した。

 その上で、幸野委員は「例えば6月1日時点での累計の受入患者数、または6月1日まで最大受け入れた数などを記入していただいてはどうか。事務局の考えを聞かせてほしい」と尋ねた。

 4月28日の入院分科会では、当会の井川誠一郎常任理事がコロナ患者の受け入れについて「有」「無」だけではなく患者数も調査するように強く求め、支払側の委員だけは賛成している。
.

自由記載欄に記入してもらう

 患者数に関する幸野委員の質問に対し、まず尾形分科会長が回答。「実は入院医療分科会においても、そういった意見はあった」と明かした。

 尾形分科会長は「新型コロナウイルス感染症患者を何人受け入れたのか、具体的な人数を調査したほうがいいのではないか、あるいは、それによって受け入れ人数に基づく新型コロナウイルス感染症の影響の違いが分析できるという意見が確かにあった」と伝えた。

 一方、これには複数の反対意見が出たことを紹介。「分析手法が複雑になりすぎて、むしろ分析の実施が難しくなる」「いつの時点の患者数かという定義の置き方が難しく正確な把握が困難」「人数を調査することで回答する医療機関の手間が増加する」などの意見を挙げ、自由記載欄に記入してもらう方法で対応する方針を示した。

 尾形分科会長は「両論あったことを踏まえると、分科会長としては、お示ししているような調査が現時点では良いのではないか」と理解を求めた。
.

【診-2参考】調査票_2021年5月12日の中医協小委員会_ページ_020

            2021年5月12日の中医協小委資料「診-2参考」P20より抜粋
.

患者数について問う形式とはしない

 厚労省保険局保険医療企画調査室の山田章平室長は「人数を問うような問いが立てられないかについては分科会長がお答えになったとおり」とし、「調査の目的や分析方法、回答者負担等に鑑み、今回は各月の患者数については問う形式とはしないというご議論もあったことを踏まえて現在の調査票になっている」と説明した。

 これに幸野委員は「累計で何人受け入れたかの質問を入れればいいだけ」としながらも、「尾形分科会長の言うとおり、書く欄があるということで、ここにぜひ書いていただくということで了承したい」と受け入れた。

 その後に開かれた総会で、山田室長は「基本問題小委の中で、回収率の向上について、もっと努力すべきとか、コロナ受入機関の範囲、コロナ患者の人数について、ご意見、ご議論をいただいた」と説明。委員の発言はなく、調査案は了承された。

 今回の調査は、9月以降に結果が報告される見通しとなっている。
.

【総-9-2】令和3年度調査の内容について_2021年5月12日の中医協総会_ページ_11

                          (取材・執筆=新井裕充) 


.



Article printed from 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト: http://manseiki.net

URL to article: http://manseiki.net/?p=7461

Copyright © 2011 Japan association of medical and care facilities. All rights reserved.