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費用対効果が良ければ薬価を上げる ── 池端副会長、中医協部会で

Posted By araihiro On 2021年4月22日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 医薬品などの価格を「費用対効果」で調整する仕組みについて議論した厚生労働省の会議で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「費用対効果を見て、費用対効果が非常に良ければ薬価を上げなければいけないこともあり得る」との認識を示し、医療費抑制に傾斜した議論を牽制した。

 厚労省は4月21日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)の「薬価専門部会」「費用対効果評価専門部会」をオンライン形式で開催した。

 当会からは、池端副会長が費用対効果評価専門部会に出席した。この日は総会は開かれなかった。
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少しずつ結果が出て感慨深い

 この日、最初に開かれた薬価専門部会は令和4年度薬価改定に向けたキックオフ。厚労省が示した「主な課題」を踏まえ、各委員が意見を述べた。

 続く費用対効果評価専門部会では、荒井耕委員(一橋大学大学院経営管理研究科教授)が引き続き部会長に選出された。

 就任のあいさつで、荒井部会長は「6年近く前、費用対効果評価制度の試行的導入の段階前から関わり、試行的導入を経て本格的に導入し、2年間が経った」と振り返り、「少しずつ結果が出ているので感慨深い。引き続き公正な議論を進めていけるよう議事を進めていきたい」と述べた。
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保険外併用療養を柔軟に活用・拡大

 費用対効果評価専門部会は2019年3月以来、約2年ぶりの開催。厚労省は同日の会合に「費用対効果評価制度の見直しに向けた今後の議論の進め方(案)」と題する資料を示した。

 厚労省の担当者は、これまでの経緯や関係審議会から出された意見などを紹介した上で、昨年12月18日に取りまとめられた政府方針(新経済・財政再生計画改革工程表2020)を紹介し、その抜粋部分を読み上げた。

 工程表では、「保険対象外の医薬品等に係る保険外併用療養を柔軟に活用・拡大することについて、(中略)関係審議会等において早期の結論を得るべく引き続き検討」としている。
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01スライド_P5抜粋_【費-2】令和4年度費用対改定の主な課題と進め方_2021年4月21日費用対効果部会

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根本的な大きな改正にはデータ不足

 続いて厚労省の担当者は「次期改定に向けた今後の議論の進め方(案)」を提示。「今後、関係業界や費用対効果評価専門組織からの意見聴取も行いつつ、検討項目を整理した上で、議論を深めることとしてはどうか」と意見を求めた。
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02スライド_P6抜粋_【費-2】令和4年度費用対改定の主な課題と進め方_2021年4月21日費用対効果部会

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 質疑の冒頭で、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は「保険償還の可否に用いない、いったん保険収載した上で価格調整に用いるという薬価制度などを補完する観点から活用するのが大原則であって、これをしっかりと守っていくべき」と強調。「根本的な大きな改正を行うにはデータが不足している」と、くぎを刺した。
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保険財政の持続可能性の確保を

 これに対し、社会保障審議会・医療保険部会で費用対効果評価の議論にも参加している支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「今後も革新的な高額医薬品等が増加していくことなどを踏まえると、保険財政の持続可能性の確保をこれまで以上に意識しなければならない」と改めて強調した。

 その上で、安藤委員は「費用対効果評価制度の保険収載への活用方法も含め、保険収載の在り方について改めて検討する必要があると思うので、医療保険部会との役割分担をしっかりとしつつ、中長期的な課題として議論を深めていくべき」と主張した。

 一方、同じく支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「費用対効果評価の実績は2016年から始まった試行的導入も含めて、数は限定的なので、この時点で大きな見直しはまだできないのではないか」との認識を示し、個別論点を挙げながら改善の必要性を指摘した。
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もっと厳しく切り込んでいい

 費用対効果評価制度は2019年4月から本格運用が開始され、リストアップされた16品目のうち、テリルジーやキムリアなど一部の高額医薬品について価格の引下げが決定している。

 幸野委員は、これらの引下げ幅について「労力を多く課した割には価格への反映が限定的という部分も感想としてある」と不満を表し、「費用対効果評価という制度自体の費用対効果を、やはり検証してみるべきではないか」と述べた。

 また、原価計算方式の開示度が低い場合の価格調整係数を挙げ、「もっと厳しく切り込んでいいのではないか。ぜひ議論していただきたい」と求めた。

 これに対し、池端副会長は「わずかしか下がらなかったということをもって費用対効果のシステムが駄目だという考え方はちょっと違うのではないか」などと反論した。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

 幸野委員の「費用対効果システムそのものの費用対効果も検討すべき」という意見について、少し反論させていただきたい。
 この費用対効果評価制度は、長年にわたり検討してきた経緯があり、これから人材も含めて育てていかなければいけない段階にある。そこで、このシステムそのものの費用対効果ということをあまり推し進めれば、当然、薬価を下げるための費用対効果のシステムということになってしまう。
 例えば、診療報酬の査定と同じような、ニアリーイコールというような考え方でスタートしてしまうのでは、せっかくの崇高なイメージが、やり方が違ってくるのではないかと思う。
 私はむしろ費用対効果を見て、費用対効果が非常に良ければ薬価を上げなければいけないということもあり得ることで、その額がわずかしか下がらなかったということをもって費用対効果のシステムが駄目だという考え方はちょっと違うのではないかという気がした。個人的な意見かもしれないが、反論させていただいた。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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