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消費税の補てん、「次期改定で非常に重要」 ── 池端副会長、中医協総会で

Posted By araihiro On 2021年4月15日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は4月14日、令和4年度診療報酬改定に向けたスケジュールが示された厚生労働省の会合で「消費税の補てん問題は次期改定で非常に重要」との認識を示した上で、「きちんとした検証をお願いしたい」と求めた。

 厚労省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第478回会合をオンライン形式で開き、当会からは池端副会長が診療側委員として出席した。

 この日の議題は、新薬の収載や医療機器の保険適用など16項目。このうち14番目の議題「令和4年度診療報酬改定、薬価改定の議論の進め方」では、「主な検討スケジュール」のみが示された。
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【総-14】令和4年度診療報酬改定、薬価改定の議論の進め方_2021年4月14日中医協総会

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「現時点でのイメージ」と厚労省

 今後のスケジュールに関する説明の冒頭で、厚労省保険局医療課の井内努課長は「次期改定までのスケジュールを粗いものではあるが、現時点でのイメージということで示した」と説明した。

 その上で、中医協総会での議論について「7月頃から論点等の整理をしつつ、9月以降に具体的な議論」と伝えた。
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抜粋【総-14】令和4年度診療報酬改定、薬価改定の議論の進め方_2021年4月14日中医協総会
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「遅すぎる」と支払側

 質疑で、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「このスケジュールでは遅すぎる」と苦言を呈し、コロナ対応の臨時的・特例的措置やオンライン診療に関する議論などを「今まで以上に早く開始しなければいけない」と強調した。

 別の支払側委員からも同様の意見が出たが、井内課長は「それぞれの調査等もあり、何もない中で議論だけというわけにもいかない」と理解を求めた。
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「補てん状況の検討を」と診療側

 診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は「スケジュール案に異論はない」と了承しながらも、「この中に消費税分科会が書かれていない」と指摘し、「消費税分科会でも、補てん状況の検討を行うべき」と述べた。

 池端副会長も「消費税の補てん問題はコロナ禍の状況ではあるが、次期の改定で非常に重要な問題」とし、補てん状況に関する十分な検証を求めた。

 この日の総会では、不妊治療の保険適用をめぐる議論もあった。池端副会長は「産まない権利」などにも配慮する必要があるとの考えを改めて強調した。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

■ 次期改定に向けた議論の進め方について
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 私も松本委員がおっしゃったように、消費税の補てん問題というのはコロナ禍の状況ではあるが、次期の改定で非常に重要な問題だと思う。日本病院団体協議会としても非常に注目しているところなので、ぜひ、きちんとした検証をお願いしたい。
 質問だが、以前の中医協総会等でも議論のあった医療経済実態調査の単月調査についてお聞きしたい。コロナの影響を見るために単月調査をしていきたいという提案があり、一番ギリギリのところで7月ぐらいということだった。単月調査でコロナの影響度を見たいとのことだが、現在のコロナ禍の状況で、その単月調査を事務局としてどうお考えか、現時点でのお考えで結構なので、お聞かせいただきたい。

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【厚労省保険局保険医療企画調査室・山田章平室長】
 コロナの状況は日々大きく変わっている。現時点ではしっかりとしたものはないが、5月の中医協総会でお諮りしたいと思っている。その時点の最新の状況でお諮りし、ご議論いただきたい。
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■ 不妊治療の保険適用について
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 不妊治療に対する保険適用は大枠では私も大賛成である。ただし、保険適用になるということは、保険の制度から言えば保険事故に当たることを認めることになる。
産む権利、出産を希望する人が不妊治療を保険で行うということは、やぶさかではないが、「不妊」が保険事故になるということ、すなわち「疾病」になるということになると、一方で、産まない権利というか、それも少し考えていかないと、変な方向に進んでしまう可能性があると思う。その辺は慎重に議論すべきではないか。

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■ 不妊治療の地域格差について
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 不妊治療の補助金受給者について都道府県別のグラフがあったが、現状、全て保険適用外で行われている技術であるので、かなり地域差があるのではないか。都道府県によって、それを扱う診療所、病院等の地域差があるので、ここを一定程度そろえる必要がある。
 保険適用になると全国津々浦々、同じ扱い、同じ料金体系になるということになるので、その辺の実態調査もあわせて実施し、その上でどういう保険収載をするか、あるいは、どういうガイドラインを決めていくかが必要ではないか。
 そこで、地域差が分かるような、現状の医療機関の分布なども分かるようなものをお示しいただけるとありがたいが、それは可能か、お伺いしたい。

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【厚労省子ども家庭局母子保健課・小林秀幸課長】
 まず1点目の不妊治療への取り組みについて、治療を受けることを強要するようなことがあってはならないということは全くそのとおりであり、母子保健のわれわれの領域では「リプロダクティブ・ヘルス・ライツ」ということで、当事者の認識なり意向を尊重するということが基本的な姿勢である。
 2点目の地域格差があるかについては、対象医療機関の数に全体的な制約もある。首都圏とそれ以外の地域という取り方はしていない。基本的には都市部と地方部を比較して解析を行っているが、金額面には特に大きな差はなかったことが示されている。

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■ 不妊治療に関する議論の範囲について
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 今後、中医協で議論する範囲をどこまで広げるかによって議論の内容が変わってくる。不妊治療に関する参考資料では、「保険適用」と「保険適用外」の範囲が示されている。この「保険適用外」の項目について、全てここで議論するのか、それとも現状、国費で助成している体外受精や顕微授精などの「特定不妊治療」について保険適用するかを議論するのか。
 さらに、夫婦間で行われる人工授精についてAIHも含めての議論、あるいは、より踏み込んでAIDや卵子・胚提供、代理出産まで議論するかによって、これはとても中医協では議論しきれない、もっと広い議論になる。さまざまな議論も踏まえなければいけなくなるのではないかと思うので、少しここを絞った形で議論を進めないといけないのではないか。
 現在、事務局として、この保険適用を全部いったん議論にのせて、それから絞っていく形をとるのか、ある程度絞った形を想定しているのか、現時点での方向性が決まっていたら教えていただきたい。

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【厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・岡田就将室長】
 まず学会でのガイドライン、ここでのエビデンスの評価を踏まえて検討していくということで、現状、事務局内で何か固まったものというのはない。
 学会でのエビデンスを踏まえて、また、どの範囲を対象としていくのかも含めて、省内でも保険局のみならず子ども家庭局など関係部局とも連携しながら資料の整理を行い、中医協でご議論をいただきたいと考えている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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