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LIFEに「ACPを組み入れてはどうか」 ── 次期改定に向け田中常任理事

Posted By araihiro On 2021年3月25日 @ 5:17 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 次期介護報酬改定に向けて今後のスケジュールなどが示された厚生労働省の会議で、日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は新たな科学的介護情報システム(LIFE)に「ACPを組み入れてはどうか」と提案した。

 厚労省は3月24日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第200回会合をオンライン形式で開催した。当会からは武久洋三会長の後任として委員に就任した田中常任理事が初めて出席した。

 厚労省は同日の会合に、今改定の影響を調査するための4項目を提示。その中で、「LIFEを活用した取組状況の把握」などを挙げた。
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P5抜粋2021年3月24日の介護給付費分科会「資料5」

               2021年3月24日の介護給付費分科会「資料5」から抜粋
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アドバイスをするような予算事業も

 質疑で小玉剛委員(日本歯科医師会常務理事)は、LIFEによる情報収集について「介護度別、年齢階級別、またサービスの加算の算定状況等を総合的に今後検討し、その情報をフィードバックしていただける形になると思うので非常に期待している」と評価した。

 その上で、小玉委員は「LIFEに参画する施設を増やして、n数を広げることが情報収集に非常に重要になる」と指摘し、「どのように対象を広げて参加施設を確保するか、現時点の考えがあれば教えていただきたい」と質問した。

 厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は「導入しやすい環境をつくっていくことが大事」との認識を示した上で、「来年度の予算事業では、アドバイスをするような予算事業も組みたいと思っているので、そうしたことを通じて、なるべく多くの事業所に参画していただきたい」と述べた。
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「認知症の人の幸せの評価」という尺度を

 小玉委員に続いて田中常任理事が発言。認知症専門医の立場から「認知症の人の幸せの評価というものの尺度がなかなか取れていない」と指摘した上で、ACPの実施を進める必要性を挙げ、「LIFEの項目にACPを組み入れてはどうか」と提案した。

 田中常任理事はまた、この日の会合で示された新型コロナへの特例的な対応についても発言。小規模な自治体の状況を説明した上で、介護医療院への移行についても「災害時のDMATのような専門チームの介入などをご検討いただいているのだろうか」と尋ねた。

 眞鍋課長は「さまざまな専門家の派遣、スキームが確立しており、実績も上がってきている」と答え、また、介護医療院への移行について「支援の具体的なやり方を工夫して、より現場に有効な形を考えたい」と述べた。

 田中常任理事の発言要旨は以下のとおり。

■ LIFEの項目について
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 今般の介護報酬改定は現場に非常に細かく配慮してくださった。感謝を申し上げたい。
 今回の改定において「LIFE」に大変期待し、頑張らなければいけないと思っている。認知症を専門にしている立場から見ると、認知症の人の幸せの評価というものの尺度がなかなか取れていないと心配している。要介護4・5の方が多い特養では、ACPがなかなか行われていない面もある。
 そこで、この「LIFE」の項目の中にACPの項目を組み入れてはどうか。まだ若くて慣れていない相談員に対し、一緒に考えるように投げかけるきっかけにもなる。今後の改定に向けて、検討していただければよいと考えている。

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■ 感染症等への対応について
 新型コロナウイルス感染症を踏まえた特例的な対応に関連して意見を述べたい。現在、私どものような小さな地方自治体においてはコロナのワクチン担当者と介護保険担当者らが重複して仕事をしているような状況もある。
 今回の資料によれば、介護療養病床から介護医療院への移行を「未定」としている所が26.9%となっている。コロナの影響で考えをまとめることが遅れている面もあるかと思う。そのため、昨今の感染症拡大時において、移行促進のための災害時のDMATのような専門チームの介入などをご検討いただいているのだろうか。

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【厚労省老健局老人保健課・眞鍋馨課長】
 感染が起きた時の対応で、さまざまな専門家の派遣、さまざまなスキームが確立しており、実績も上がってきている。
 一方で、介護療養病床の移行に関しては、私どもの予算として移行支援事業を平成30年から令和2年までさせていただいた。来年度も予算要求をさせていただいているので、その中で支援のフェイズは変えていかなければいけない。あるいは、支援の具体的なやり方を工夫して、より現場に有効な形を考えたい。移行に関しては現場の施設にきちんと意思決定の支援ができるようにしていきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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