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ポリファーマシー対策の検証を幅広く ── 厚労省、次年度の高齢者事業で

Posted By araihiro On 2021年3月12日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 健康被害につながるような多剤処方の是正や減薬など、ポリファーマシー対策の取り組みを全国の病院に普及させるため、厚生労働省は3月11日の会合で「次年度の高齢者事業(案)」を示し、了承された。厚労省の担当者は「幅広く、さまざまな機能の医療機関で検証したい」と抱負を語った。日本老年医学会の秋下雅弘理事長も「多様性ある視点」を挙げた。当会の池端幸彦副会長への答弁。

 厚労省は同日、「高齢者医薬品適正使用検討会」(座長=印南一路・慶應義塾大学総合政策学部教授)の第13回会合を都内で開催し、会議メンバー(構成員)の多くはオンラインで参加した。当会からは池端副会長が出席した。

 厚労省は同日の会合に「次年度の高齢者事業(案)」を提示。減薬などに向けた病院での取り組み(高齢者のポリファーマシー対策)を定めた手順書を実用的なものにするため「モデル医療機関」で実際に活用し、今後の課題などを抽出したい考え。こうした提案は構成員の承認を得た。
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「資料3」次年度の高齢者事業について(案)_20210311_高齢者医薬品検討会

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実務で使えるかを検証したい

 高齢者のポリファーマシー対策などの事業について令和元年度は「100床以上の医療機関」に対する実態調査などを実施。続く令和2年度には、課題を解決するためのツールを作成するなど、有害事象につながるような減薬に向けた取り組みを進めてきた。

 令和3年度は、同検討会がまとめた具体的な手順書を実際に活用する医療機関を公募で選定し、学会発表などを通じて周知を図る予定としている。

 厚労省医薬安全対策課の駒井信子専門官は「この業務手順書は実際に使える内容だが、机上で作っている部分もあるので、実務で使えるものかを検証したい。ポリファーマシー対策に取り組む上で何か不足している部分はないのかなど、情報を収集していきたい」と説明した。

 この日の会合では、これまで検討を進めてきた「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方(案)」と題する手順書の最終版をまとめた。厚労省は次年度のモデル事業などを通じて全国的な普及を図る。
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幅広く、多様性のある視点で

 質疑で池端副会長は、令和元年度の事業で「100床以上の医療機関」に限定していたことを指摘。次年度の事業について「急性期、慢性期、回復期、病床種別の割合など、何かお考えがあるだろうか」と尋ねた。

 駒井信子専門官は「病床数を100床以上とするつもりはない。病床種別については、現在のところ特に考えていない。幅広く対象にしたい」と答えた。

 手順書の作成に関わった秋下座長代理は「令和元年度の好事例施設の調査では多様性のある調査を旨としていたので、今回のモデル事業もそういう視点で考えたほうがよい」とコメントした。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。
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高齢者医薬品検討会_20210311

■ 次年度の高齢者事業について
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〇池端幸彦副会長
 基本的なスキームはこれでいいと思うが、令和元年度のアンケート・好事例施設調査では「100床以上の医療機関」を対象としていた。今回の高齢者事業についても「100床以上の医療機関」を対象にするのか、あるいは急性期、慢性期、回復期、病床種別の割合など、何かお考えがあるのだろうか。
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〇厚労省医薬・生活衛生局医薬安全対策課・副作用情報専門官・駒井信子氏
 当時の調査はある程度の病院数があったので「100床以上の医療機関」を対象としたが、今後予定しているモデル医療機関における病床数については、現在のところ100床以上とするつもりはない。
 病床種別については、現在のところ特に考えていない。幅広く対象にしたい。先ほどの業務手順書案も、どちらかと言うと急性期病院の先生方を中心にご検討いただいている部分もあるとは思うので、そういった意味でも、さまざまな機能の医療機関で検証することができれば、また違った反映ができるのではないかと考えている。

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〇秋下雅弘座長代理(日本老年医学会理事長、東京大学大学院教授)
 今の池端先生がおっしゃったことに関して言うと、これは私の意見ということにはなるが、令和元年度の好事例施設の調査において、まさに医療機関の地域性や機能、そういったことで、かなり多様性を持たせた調査を行うことを旨としていたので、今回のモデル事業においても、おそらくそういう視点で考えたほうがよいのではないかと思う。同じような所を対象にして、どちらのほうがいいとか悪いとか、逆にそういうことがあってもどうかなと思う。今の池端先生のご指摘は大変重要であると思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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