- 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト - http://manseiki.net -

「囲い込み的な業者や施設がある」 ── 今後の改定に向け武久会長が指摘

Posted By araihiro On 2021年1月14日 @ 2:14 PM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 令和3年度介護報酬改定に向けて運営基準等の改正案をまとめた1月13日の会議で、日本慢性期医療協会の武久洋三会長は「自分のグループの通所・訪問サービスに限定して対応するような囲い込み的な業者や施設がある」と指摘した上で、今後の対応について見解を求めた。厚生労働省の担当者は「現状についてのご指摘を踏まえ、一定程度、対応をさせていただきたい」と述べた。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第198回会合をオンライン形式で開催した。

 会議の冒頭、委員の交代について報告があった。これまで12年以上にわたり委員を務めた武久会長の後任として、新たに当会の田中志子常任理事が委員に就任した。この日は、田中委員の代理として武久会長が参考人として出席した。
 
 田中委員は、群馬県の認知症疾患医療センターに指定されている内田病院などを運営しており、昨年12月2・3日に開催された「第28回日本慢性期医療学会」では学会長を務めた。
.

運営基準の省令を答申後に公布

 同分科会では、昨年12月18日の会合で次期改定に関する審議報告を大筋でまとめ、23日に最終版をホームページ上で公表している。

 この日の分科会で厚労省は、審議報告のうち運営基準等の改正案を示し、おおむね了承された。

 今後について田中分科会長は「社会保障審議会長に報告し、その後、社会保障審議会長から厚生労働大臣に答申する手順となっている」と伝えた。

 続いて厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長が「当分科会より了承の旨のご報告をいただいた運営基準の省令については、社会保障審議会からの答申を得た後、公布する予定」と述べて閉会となった。
.

サ高住、「利用者以外にもサービス提供を」

 この日の議論に用いたのは、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の改正の主な内容について」と題する16ページの資料。

 眞鍋課長は「昨年12月2日、12月9日、その後(23日)に審議報告を取りまとめていただいたが、その中で示した基準等の改正の主な内容についてまとめたもので、基本的に中身は変わっていない」とした上で、主なポイントに絞って説明した。

 この中で、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)等における適正なサービス提供の確保について、「事業所と同一の建物に居住する利用者に対してサービス提供を行う場合には、当該建物に居住する利用者以外に対してもサービス提供を行うよう努める」としている。
.

国や都道府県の何らかの強力な支援を

 質疑で武久会長は「要介護者や要支援者が独自に自分で好きなサービスを選べるということが介護保険の建前である」との考えを示した上で、「囲い込み的な業者または施設もある現状に対して、何らかの対応をしていただけるのだろうか」と尋ねた。

 眞鍋課長は、サ高住等の対応策を挙げた上で、「私どもとしては、そういった現状についてのご指摘を踏まえ、一定程度、対応をさせていただきたい」と答えた。

 武久会長はまた、新型コロナウイルスなど感染症への対応策として小規模施設でのクラスター発生をめぐる課題を挙げ、「国や都道府県の何らかの強力な支援などがないと非常に厳しい状況に陥る」と指摘した。

 武久会長の発言要旨は以下のとおり。

■ 新型コロナなど感染症への対応について
 今回の改定は、あらゆる分野において非常に適切な改定をしていただいたと思うが、新型コロナウイルス感染症への対応案について述べたい。
 現在、小規模の有料老人ホームなどでクラスターが発生し、運営ができなくなるような事態が各地で起こっている。小規模な施設ほど苦労されていると思う。
 一度、このようなクラスターが発生すると、多くのベッドが空いてしまう。私の法人が運営する老健の一部でもクラスターが発生した。3カ月、4カ月経っても空きベッドが多い状況が続いている。
 そのため、こうした問題に対して国や都道府県の何らかの強力な支援がないと非常に厳しい状況に陥る。従って、新型コロナへの対応について、今後はこうした視点も加味していただきたい。

.
■ 適正なサービス提供の確保について
 民間の医療法人や社会福祉法人に多いのだが、居住系サービスを提供する施設などに入所している利用者に対して、自分のグループの通所・訪問サービスに限定して対応するというような極端な事業所も散見されると聞いている。
 私は、要介護者や要支援者が独自に自分で好きなサービスを選べるということが介護保険の建前であると思うのだが、一部でこのような、いわゆる囲い込み的な事業所または施設もある。
 こうした現状があることに対して、何らかの対応をしていただけるのだろうか。課長のお考えをお聞きしたい。

.
【厚労省老健局老人保健課・眞鍋馨課長】
 今回の基準等の改正の内容の中において、例えば「サービス付き高齢者向け住宅等における適正なサービス提供の確保」として、「事業所と同一の建物に居住する利用者に対してサービス提供を行う場合には、当該建物に居住する利用者以外に対してもサービス提供を行うよう努めることとする」としており、今回の改正案の中に入っている。私どもとしては、そういった現状についてのご指摘を踏まえ、一定程度、対応をさせていただきたいと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


.



Article printed from 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト: http://manseiki.net

URL to article: http://manseiki.net/?p=7196

Copyright © 2011 Japan association of medical and care facilities. All rights reserved.