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レセコン改修費、「基準額の倍以上もある」 ── 医療保険部会で池端副会長が指摘

Posted By araihiro On 2020年12月24日 @ 5:17 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 データヘルス改革の進捗状況などが示された厚生労働省の会合で日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は、オンライン資格確認等システムの導入に必要なレセコン改修等の費用が高額であることを指摘し、補助される基準額について「この金額の倍以上を要求するベンダーもある」と指摘した。

 厚労省は12月23日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大学経済学部教授)の第138回会合を都内で開き、議論の整理(案)を大筋でまとめたほか、データヘルス改革の進捗状況などを報告した。
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01写真_会議風景_2020年12月23日_医療保険部会
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「2分の1」から「実費補助」へ

 厚労省の担当者は説明の中で、「オンライン資格確認等システム」に関する追加的な財政補助の仕組みを紹介。マイナンバーカードも保険証として使える同システムの導入を加速させるため、令和3年3月までに申し込めば一定の上限まで補助する方針が決定したことを伝えた。 

 具体的には、レセコン改修等の費用について、これまでは「2分の1を補助」としていたが、見直し後は「実費補助」となった。

 ただ、補助額には上限がある。1台導入する場合は210.1万円、2台の場合は200.2万円、3台では190.3万円となっており、見直しの前後で上限額は増えていない。
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05_【資料3】データヘルス改革の進捗状況等について_20201223医療保険部会

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標準的な仕様であれば十分賄える

 質疑で池端副会長は、この上限額が実態と異なることを指摘。「どこでどのように決まったのか。ほとんどの病院がこの金額で改修できるという見込みのある金額なのだろうか」と質問した。

 厚労省保険局医療介護連携政策課の山下護課長は「標準的な医療機関であれば十分賄える」との認識を示した上で、「特別な仕様」がある場合など各医療機関の個別の事情で金額が変わることがあると説明した。
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02写真_厚労省事務局_2020年12月23日_医療保険部会
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ベンダーと強く交渉していいと判断した

 山下課長の説明に対し、池端副会長は「標準的なシステム改修であれば、この金額でベンダーと強く交渉していいと判断した」との理解を示した上で、「あまりにもこの額と違うような事例が出てくるようであれば、またご相談したい」と伝えた。

 池端副会長はこのほか、同日の部会でまとまった「議論の整理(案)」についても発言。大病院受診時の定額負担、後期高齢者の窓口負担について意見を述べた。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

■ データヘルス改革について
〇池端幸彦副会長
 「加速化プラン」を踏まえた追加的な財政補助について質問したい。これまで病院は顔認証付きカードリーダーが3台まで無償提供で、レセコン改修等については2分の1の補助だったが、見直し後はレセコン改修等の費用が一定額まで無償となった。
 ただ、この基準とする事業額がどこでどのように決まったのか分からない。ベンダーによっては、いまだにこの金額の倍以上を要求するケースもある。マイナンバーカードも保険証として使えるようにするために、ベンダーもまだまだ本気になっていないような気がする。現在のように高額では、結局のところ病院の持ち出しになってしまう。また、利用者がどのぐらい増えるのか不確定要素があるので、二の足を踏んでいる医療機関も少なくないと思う。
 そこで、お伺いしたい。「基準とする事業額」は、どこでどのように決まったのか。ほとんどの病院がこの金額で改修できるという見込みのある金額なのか。あるいは、ここまでしか補助できないので、それ以上は各医療機関でお願いしたいという意味なのか。お分かりになる範囲で教えていただきたい。いかがだろうか。

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〇厚労省保険局医療介護連携政策課・山下護課長
  負担分を決めたのは昨年である。どのような過程で決めたかと言うと、医療機関のシステムを担当しているさまざまなシステムベンダーにいろいろヒアリングをした。そうしたところ、価格のばらつきが非常にあった。その中で、妥当な金額にした。そのため、病院であっても診療所であっても、この金額の中に収まるだろう、でも2分の1は負担していただかないと、というのが昨年のことである。
 見直し後は、令和3年3月末までに申し込んでいただければ、この上限額までは出せるということになった。われわれとしては、標準的な医療機関であれば十分賄えると考えている。
 一方で、例えば自分たちだけの特別な仕様で用意するとか、受付とレセコンの場所が全然違う階にあって、工事がすごく大変であるとか、そういう個別の事情では、大変申し訳ないのだが、事業額がちょっと変わるというのはあり得ると思うが、その前提でやらせていただいている。

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〇池端幸彦副会長
 了解した。そういうことであれば、標準的なシステム改修であれば、この金額でベンダーと強く交渉していいと判断させていただきたい。
 ただ、あまりにもこの事業額と違うような事例が出てくるようであればまたご相談させていただきたいと思うので、よろしくお願いしたい。

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■ 大病院受診時の定額負担について

 定額負担の対象を200床以上の一般病院に拡大することについては、「大病院・中小病院・診療所の外来機能の明確化を行いつつ」とし、「手上げ方式にする」と明記していただいたことは一定の評価をしたい。
 一方、外来の保険診療分を控除するという手法については極めて遺憾であると思っているが、「例外的・限定的な取扱とする」としていただいたことは評価したい。
 ただ、やはりこの手法は継続すべきではなく、かかりつけ医と大病院との連携をしっかり進めていくような別の方法を引き続き検討していくべきである。
 大病院の定額負担については、窓口負担の混乱を避けるための対応について前回指摘させていただいた。整理案では、「制度趣旨について、国民への説明を丁寧に行うこと」と明記していただいた点も評価したい。

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■ 後期高齢者の窓口負担について
 後期高齢者の2割負担は「現役世代の負担軽減」という理由で進められてきた。後期高齢者支援金の伸びを抑制し、現役世代の負担を軽減するという議論であるが、実はその抑制効果は限定的である。
 参考資料をご覧いただきたい。後期高齢者支援金の伸びは2025年度時点で840億円マイナスとなり、1人当たりで見ると800円のマイナスとなる。
 しかし、840億円から公費100億円を除いた740億円の内訳は、事業主負担340億円、本人負担が400億円である。すなわち、1人当たりの本人負担分は800円ではなく400円程度しか軽減されない。
 後期高齢者の窓口負担を増やすのは「現役世代の負担を軽減するため」と言われているが、直接的には400円程度が減るだけであり、その一方で後期高齢者は年間3万円以上の負担増となる。「これは議論のすりかえではないか」という声が出ても不思議ではない。
 従って、今回のような手法をこれからもどんどん使って2割を3割にするという議論は避けるべきである。引き続き、根本的な検討をしていただきたいと思う。
 ただ、今回示された議論の整理案について修正等を求めるものではない。意見として申し上げておく。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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