- 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト - http://manseiki.net -

ポリファーマシー対策の電子化を ── 処方見直しの推進に向け、池端副会長

Posted By araihiro On 2020年12月18日 @ 2:17 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 健康被害につながるような不適切な処方を見直すためのマニュアル(手順書)について審議した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「ポリファーマシー対策の電子化という項目を新たに加えてはどうか」と提案した。ほかの出席者から異論は出なかった。

 厚労省は12月17日、高齢者医薬品適正使用検討会(座長=印南一路・慶應義塾大学総合政策学部教授)の第12回会合を一部オンライン形式で開催した。池端副会長は同検討会の構成員として会場で出席した。

 この会議は平成29年4月に設置され、その後の検討を経て「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)、「同(各論編(療養環境別)」を策定。今年4月の持ち回り会議以来、約8カ月ぶりの開催となる。
.

ポリファーマシー対策の始め方と進め方

 今回の会合で厚労省は、減薬などの取り組みに関するアンケート調査から浮き彫りになった課題を提示。それを踏まえた実践的なマニュアルを示し、構成員の意見を聴いた。

 マニュアルのタイトルは「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方(案)」としている。
.

ポリファーマシーの手順書がない

 議論に先立ち、厚労省医薬・生活衛生局医薬安全対策課の駒井信子・副作用情報専門官が同検討会の目的を改めて確認。「安全性情報を提供し、関係者の適正使用を加速するため、既存の減薬ツールや処方実態などを踏まえて課題を整理し、対策を検討する」と説明した。

 その上で、今回のアンケート結果を提示。「ポリファーマシーの解消を目的とした手順書などがあるのは約6%、個々の患者のポリファーマシー対応のための特別なカンファレンスが行われているのは約5%だった」とし、現場の取り組みが進んでいない状況を伝えた。
.

手順書の作成を進めることとなった

 調査結果を踏まえ駒井専門官は「好事例をそのまま横展開することは難しい面もある」と指摘。「医療機関で活用できる、より実践的なモデルや手順書といったツールが必要ではないか」との認識を示した。

 その上で、「調査によって明らかになった課題を解決するツールとして、ポリファーマシー対策を行うための業務手順書の作成を進めることとなった」と説明。手順書の具体的な内容を紹介した。
 
 駒井専門官は「今回、ポリファーマシー対策に取り組むための課題を整理し、その対応策の案も併せて検討会に初めて提示させていただく。この案をたたき台として業務手順書案の方向性について、本日ご議論をお願いしたい」と意見を求めた。
.

医師が素直に聴いてくれない

 意見交換では、管理者のリーダーシップが議論になった。今回のマニュアルでは、調査で明らかになった「多職種連携が十分でない」という課題に対し、「管理者は、院内の多職種連携に協力するよう必要な指示を行うことが望ましい」とした。

 井上彰構成員(東北大大学院教授)は「薬剤師が医師にコメントをした際に、どうしても素直に聴いてくれない。重く見ない傾向が強い」と指摘し、「上からの協力や支持を取り付けるような工夫がないと難しい」と明かした。
.

管理者がしっかりとリードする

 美原盤構成員(全日本病院協会副会長)は「ただ単に多職種連携をしなさいというよりも、トップがポリファーマシー対策をしっかり立てるという宣言のような強い言葉が必要ではないか」と提案した。

 池端副会長は「最終的に、管理者が方向性を示すかどうかで大きく変わってくる」とし、「まず管理者がしっかりとリードするという記載があったほうが、このマニュアルが生きてくるように思う」とコメントした。
.

医療のデジタル化も進めていく

 今回のアンケート調査では、「お薬手帳がうまく活用されていない」との課題も明らかになった。マニュアルでは、その対応策を表にまとめている。
.

2020年12月17日の高齢者医薬品適正使用検討会「資料1」P6から抜粋

        2020年12月17日の高齢者医薬品適正使用検討会「資料1」P6から抜粋
.
 池端副会長は「来年からマイナンバーカードにお薬情報が入るので、何らかの形でそういうことも利用していくべきではないか」と指摘。デジタル庁の創設に向けた動きにも触れながら、「医療のデジタル化も進めなければいけない」とし、「ポリファーマシー対策の電子化という項目を新たに加えてはどうか」と提案した。

 池端副会長はまた、服薬情報の共有を地域でさらに進める必要性も指摘。「調剤薬局でポリファーマシーを把握できる可能性があるので、調剤薬局の薬剤師からの情報を医師に伝える仕組みも盛り込めるとよい」と提案した。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

〇池端幸彦副会長
 「お薬手帳がうまく活用されていない」という課題は、まさにそのとおりだと思う。ご承知のとおり、来年からマイナンバーカードに薬剤情報が入るので、何らかの形でそういうデータも利用していくべきではないか。そういう記載についても検討できればいいと思う。
 マイナンバーカードはこれから普及が始まるところなので、このマニュアルに記載すべきかどうかは、おまかせしたい。ただ、方向性としてはデジタル庁が発足すれば医療のデジタル化も一方で進めていかなければならないので、何らかの形でどこかにそういう記載があればよいという印象を持った。
 現在、デジタル化の動きが加速している。例えば電子処方箋もそうであるし、オンラインによるカンファレンス、Zoomなどを用いたWEB会議などが進んでいる。
 そこで、今回のマニュアルの中にも1つの大きなくくりとして、「デジタル化」や 「ポリファーマシー対策の電子化」という項目を新たに加えてはどうか。今後、ポリファーマシー対策を各医療機関で進めていく上で、そうした流れを示すことも必要であると思う。
 ポリファーマシー対策の実施に向けた外来患者への対応については、地域のかかりつけ医の処方箋が複数集まる調剤薬局でポリファーマシーを把握できる可能性があるので、調剤薬局の薬剤師からの情報を医師に伝える仕組みも盛り込めるとよい。
 このほか、入院患者への対応については、病棟薬剤師の位置付けがもう少し出てくるような表現をどこかに書けないか。大病院も中小病院も病棟薬剤師が必要なことはとてもよく分かっているが、配置がまだ不十分である。ポリファーマシー対策などに取り組む病棟薬剤師の位置付けを明確化することによって、主治医に代わって多剤処方などを把握する流れもできる。
 ポリファーマシー対策に向けた管理者の指導力に関する議論があった。私も美原構成員と全く同じ考えである。これまでの検討会の議論の中でも、最終的に管理者が方向性を示すか示さないかで動けるか動けないかが大きく変わってくるという意見が複数の委員から出されていたと思う。もう少し強い表現がいいかどうかは分からないが、まず管理者がしっかりとリードするという記載があったほうが、このマニュアルが生きてくるように思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


.



Article printed from 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト: http://manseiki.net

URL to article: http://manseiki.net/?p=7155

Copyright © 2011 Japan association of medical and care facilities. All rights reserved.