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「全ての医療機関が逼迫している」 ── 池端副会長、コロナ対応の特例を評価

Posted By araihiro On 2020年12月19日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 新型コロナの影響を踏まえた診療報酬上の「特例的な対応案」について審議した12月18日の中医協総会で日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は、コロナ患者に対応しているか否かにかかわらず「全ての医療機関が逼迫している」と窮状を訴え、「この点数をぜひ決めていただきたい」と求めた。

 厚生労働省は同日、中医協の薬価専門部会総会を都内で開催し、欠席委員を除く全ての委員が会場に集まった。会議の模様はYouTubeでライブ配信された。当会からは池端副会長が診療側委員として出席した。

 この日に先立つ14日、厚労省は令和3年度予算や薬価改定などに関する大臣折衝を見据え、小児診療や転院支援などを評価する方針を持ち回り形式の総会で決定した。
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01スライド_P20_新型コロナウイルス感染症に伴う医療保険制度の対応について_20201218中医協総会

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 続く今回18日の総会では、感染予防策などの取り組みを診療報酬上で評価する方針を新たに提案。激しい議論はあったものの、最終的には原案どおり承認された。
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誰もがウイルスを保有している可能性

 厚労省は同日の総会で、「誰もがウイルスを保有している可能性があることを考慮して、外来や入院を問わず、全ての患者の診療に対して感染予防策の徹底が必要であること等を踏まえ、特例的に以下の対応をすることとしてはどうか」と提案した。

 具体的には、一定の感染予防策を講じた場合には「外来診療、入院診療等の際に以下の点数に相当する加算等を算定できる」とし、「初診・再診(医科・歯科)等については、1回当たり5点」とした。
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02スライド_P13_新型コロナウイルス感染症に伴う医療保険制度の対応について_20201218中医協総会

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「エビデンスが全くない」と支払側が批判

 質疑で、支払側の委員は14日の持ち回り開催などに触れながら、十分な審議が尽くされていないことを問題視。今回の評価について「エビデンスがない」と苦言を呈した。

 支払側委員は、感染予防策について厚労省が示した3医療機関に対するヒアリング結果について「わずか3件の医療機関の調査」とし、「エビデンスが全くないことについて非常に遺憾」と述べた。
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03_スライド_P12_新型コロナウイルス感染症に伴う医療保険制度の対応について_20201218中医協総会

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「コロナ対応をしているのか疑問」との声も

 支払側委員はまた、今回の特例的対応が実施される来年4月まで審議時間があることから、「なぜ点数配分まで今日決めなければいけないのか非常に疑問」と不満を表した。

 患者を代表する立場の委員は「マスクをつけない患者に対して何も注意しない病院や薬局もある」と指摘し、「本当にコロナ対応をしているのか疑問に思うところが多々ある」とコメントした。
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職員のモチベーション、限界に来ている

 池端副会長は、福井県医師会の会長としてコロナ対策の指揮をとっている立場も踏まえながら現状を説明。「医師や看護師だけでなく事務職員やセラピストなど、全ての職員が玄関に立ってトリアージに協力するなど本当に頑張ってくれている」としながらも、「職員のモチベーションを保つのがギリギリで、限界に来ている」と強調した。

 その上で、今回の対応案について「これは応援になると思うし、職員のモチベーションを上げる意味でも大きな一歩なので私は歓迎する」と評価した。

 審議が十分に尽くされなかった点など支払側からの指摘に対しては「ごもっともな意見もある」と理解を示しながらも、「新型コロナ感染症による現状をどう見るか。これは災害である」との認識を示し、緊急時の特例的な対応として承認するよう支払側に求めた。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

〇池端幸彦副会長
 今までの議論、それぞれごもっともなご意見もあるかと思う。私は現場の立場でお話しさせていただきたい。
 まず、「たった3医療機関のヒアリング」という意見があった。私は日本慢性期医療協会の立場で中医協の委員を拝命させていただいているが、県医師会の会長という立場では、コロナ対策に対して陣頭指揮をとっている。
 福井県の場合は、全国の感染拡大が始まる前に一時、対人口比でナンバーワンになるような大きな感染を起こし、医療提供体制の逼迫状態がかなり厳しくなった経験がある。
 その後、半年が経ち、いろいろな経緯はあったが、全ての医療機関は間違いなく、今回示されたような感染予防策を実施している。県医師会の会長として、それは断言させていただきたい。
 そして、医師や看護師だけでなく事務職員やセラピストなど、全ての職員が玄関に立ってトリアージに協力するなど本当に頑張ってくれている。
 ところが、この賞与の時期になって、そうした努力に報いることができない。むしろ今までよりも減らさなければいけない医療機関もある。職員のモチベーションを保つのがギリギリのところに来ている。
 今回の特例は来年4月からなので、「なぜ、今なのか」との指摘があった。これに対して申し上げると、医療従事者に頑張ってほしいという温かい言葉は頂くが、言葉だけではもう限界に来ている。そうした状況の中で、せめて4月から今回の特例が実施されるのであれば、これは応援になると思うし、職員のモチベーションを上げる意味でも大きな一歩だと歓迎する。
 いろいろなご意見はあるかと思う。院内トリアージの評価について実証されてない、あるいはエビデンスがないという意見もある。しかし、これは新型コロナ感染症による現状をどう見るかの違いだと思う。
 これは災害である。いわば火事と同じだ。ボーボーと火が燃えている時に「エビデンスがあるから、ないから」と言うのだろうか。むしろ、どうやって火を消すかを考える。とにかく消せることを全部やろうと考え、やれることを全てやって、あとできちんと検証すればいい。災害時に「エビデンス、エビデンス」と言って、結局、全焼してしまったらどうなるのか。それほど今、現場は逼迫している。
 そういう現状をぜひご理解いただきたい。私自身、現場で這いつくばっている医療従事者の1人として声を大にして申し上げたい。
 今回、これでも十分とは言えないと私は思うが、こうした特例を考えていただいた。今までの特例はコロナ患者に対応している医療機関への支援であったが、一方で、「われわれは全ての患者さんに感染予防策を講じているのに評価されない」との声もあった。コロナ患者をみているかみないかによって選別されてしまうという声が慢性期医療の現場からも出ていた。
 コロナ患者をみているかどうかにかかわらず、全ての医療機関が逼迫しているということをぜひご理解いただいて、今回の案は通していただきたい。
 こうした厳しい状況の中で、薬価改定が実施されるが、今回の特例と抱き合わせならば、なんとか医療現場の方々に説明できるかなという気もしている。そういう意味でも、この点数をぜひ決めていただきたい。私は現場の代表として、ここで言わせていただく。
 今回の評価は、しっかり感染対策をやっていることを患者に明示する意味もある。先ほど、「感染予防策が不十分である」との指摘があったが、もし万が一そのようなことがあれば、それはきちんと正さなければいけない。そうした良い関係や緊張が保たれることによって地域の感染対策レベルが上がる。これが今回の特例の二次的な目標になると言える。ぜひ医療側もしっかり肝に銘じて、この加算を受けたいと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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