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「病院の窓口が非常に混乱する」 ── 定額負担の拡大で池端副会長、「丁寧な議論を」

Posted By araihiro On 2020年12月3日 @ 11:17 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 紹介状なしで大病院を受診した場合の定額負担の拡大について議論した厚生労働省の会議で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「患者さん自身が負担の増額について理解ができず、病院窓口での支払いが増えて非常に混乱する恐れもある」と懸念した上で、「この制度を施行するのであれば、こうした問題についても丁寧に議論していただきたい」と求めた。厚労省の担当者は「制度の趣旨を丁寧に説明し、周知していく」と応じた。

 厚生労働省は12月2日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大学経済学部教授)の第136回会合を開き、これまでの議論を踏まえた整理案を示した。

 整理案では、後期高齢者の窓口負担割合や定額負担の拡大について「調整中」としている。この日の会合では、整理案の審議に先立ち定額負担の拡大について議論した。
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01_20201202_医療保険部会
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「例外的・限定的な取扱い」

 厚労省は前回会合で示した資料を修正し、今回の会合に提示。厚労省保険局保険課の姫野泰啓課長は「例外的・限定的な取扱いになることを改めて確認している」と説明した。
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【今回の資料】

P1抜粋_【資料2】定額負担の拡大について_20201202医療保険部会

               2020年12月2日の医療保険部会「資料2」P1から抜粋
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 前回示した資料では、「現行制度 → 新たな制度案」とし、5,000円から7,000円以上に増額することを表す図になっていたが、今回は矢印を削除。「外来機能分化に沿った受診」と「例外的・限定的な取扱」の2つに区分し、図の間に直線を引いている。
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【前回の資料】

P3抜粋_【資料2】定額負担の拡大について_20201125医療保険部会

               2020年11月26日の医療保険部会「資料2」P3から抜粋
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7,000円以上なら5.3%で「極めて例外的」

 資料説明の中で姫野課長は、定額負担額を引き上げた場合に対象患者が半減するとのデータを紹介した。

 具体的には、外来の初診患者全体に占める定額負担の徴収割合を挙げ、「定額負担5,000~7,000円の医療機関の場合は10.9%だが、これを7,000円以上に引き上げた場合には5.3%と極めて例外的になる」と解説した。

 その上で、姫野課長は「こういった施策を進めることによって、あえて紹介状なしで大病院を受診するということも例外的・限定的な取扱いにしていく」と理解を求めた。
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02_20201202_医療保険部会
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本来、なくしてしまうべき制度

 質疑で、松原謙二委員(日本医師会副会長)は「確かにこの仕組みはうまく動いている」と評価しながらも、「本来、なくしてしまうべき制度」との認識を示した。

 その上で松原委員は、180日を超えて入院した場合に減額されて選定療養になる仕組みに言及し、「これは本当に限定的なものであるが、今回はそれ以上に限定的だ」と強調した。
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定額負担を増額すれば「減っていく」

 池端副会長も「180日超入院」の選定療養に触れ、「例外的な取扱いを今回のスキームの説明の時に持ち出した」と指摘。「今回、極めて例外的・限定的であることが理解されたとしても、これが独り歩きすれば、保険給付を減額する方法として、またこのようなスキームを導入できることにつながる」と懸念した。

 池端副会長は、「いろいろ書き方を変えても、このスキームの内容には変わりがない」とし、「必ずしも保険の財源を減らすためのものではないこと、病診連携を進めるためのものであることを確認させていただきたい」と見解を求めた。

 姫野課長は「おっしゃるとおり、今回の提案は上手な医療のかかり方、病診連携をして外来機能の明確化をきちんと推進していくために設ける」と説明し、「定額負担の増額をしていくことで、あえて紹介状なしで大病院を受診する患者さんが減っていくことを目指す」との意向を示した。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。
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03_池端幸彦副会長_20201202_医療保険部会

〇池端幸彦副会長
  松原委員と趣旨は同じような内容だが、私からも少しお話をさせていただきたい。この問題については前回、前々回も意見を言わせていただいた。いろいろ書き方を変えても、このスキームの内容には変わりがない。患者さんから一定額を、例えば2,000円以上をもらい、それを控除するというスキームに変わりはない。
 今回の見直し案では、あえて「例外的・限定的な取扱」と書いてある。一方、今回のスキームは選定療養の「180日以上の入院」を参考にしているが、先ほど松原委員がおっしゃったように、これも極めて例外的な取扱いだったはずである。
 今回のスキームの説明の際に、この例外的な取扱いである「180日以上の入院」を持ち出して、すでにこのようにやっているから今回もできますよ、という理屈が通ってしまった。
 そう考えると今回、極めて例外的・限定的であることが理解されたとしても、これが独り歩きすれば、保険給付を減額する方法として、またこのようなスキームを導入できることにつながる。
 従って、今回の提案はあくまでも例外的・限定的であることを改めて確認させていただくとともに、これは必ずしも保険の財源を減らすためのものではないということ、病診連携を進めるためのものであることを確認させていただきたい。すなわち、病診連携がしっかりすれば、これはいずれなくなるスキームであることを確認させていただきたい。
 今回のスキームそのものには賛成はできないが、そのことをしっかり書いていただいた上で、なおかつ、丁寧な議論と説明を求めたい。
 患者さん自身が負担の増額について理解ができず、病院窓口での支払いが増えて非常に混乱する恐れもある。これは中医協マターの議論になるかもしれないが、この制度を施行するのであれば、こうした問題についても丁寧に議論していただきたい。

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〇厚労省保険局保険課・姫野泰啓課長
 池端委員がおっしゃったとおり、今回の提案は、そもそも上手な医療のかかり方、病診連携をしていく、外来の機能の明確化、そういった制度をきちんと推進していくために設けるという仕組みである。定額負担の増額をしていくことで、あえて紹介状なしで大病院を受診する患者さんが減っていくことを目指す制度である。
 そういった意味で、今回の取扱いは「例外的・限定的」と考えていることを改めて確認させていただく。今後、金額がご理解いただければ中医協での具体的な議論になっていくが、その際にも、こういった制度の趣旨については丁寧に説明をしながら周知していく必要があるということを改めて説明させていただきたいと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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