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介護医療院の開設、約7割が「良かった」 ── 鈴木会長、調査結果を発表

Posted By araihiro On 2020年12月2日 @ 11:11 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会は12月1日、定例記者会見を開き、協会内組織である日本介護医療院協会が実施した調査結果を発表した。それによると、「介護医療院の開設は総合的に良かったか」という質問に対して約7割が「良かった」と回答した。日本介護医療院協会の鈴木龍太会長は「総合的に見て、かなり好意的に受け止められている」と述べた。

 今回の調査は、日本介護医療院協会の会員など396施設を対象に今年8月に実施し、143施設から回答を得た。介護医療院への移行による経営への影響や今後の課題などを調べている。
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「比較的良い数字になっている」

 調査によると、移行前よりも「収益が増えた」が59.6%、「変わらず」は22.8%だった。鈴木会長は「比較的良い数字になっていると思う」と評価。介護医療院の開設によるメリットについては、移行定着支援加算や助成金、収益増加などの回答が多かった。

 こうした経営面での回答に続いて多かったのが「介護療養病床・経過措置が廃止になる心配がなくなった」という回答で45.8%を占めた。鈴木会長は「経営者のメンタル面でも良い効果をもたらしている」と述べた。

 こうした結果を受け、日本慢性期医療協会の武久洋三会長は「当会では介護医療院をプラスの方向で捉えている」との認識を示した上で、「国が医療と介護の施設のバランスを考え誘導していこうという時に、該当する病床や施設がそれに協力しないことは問題だ。行政が示す方向性に積極的に協力して、より良い介護医療院をつくっていただきたい」と述べた。
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不公平感をなくすため、「つらい状況」

 一方、今後の課題も浮き彫りになった。技能や経験のある職員にさらに加算する「特定処遇改善加算」を約4割が取得していなかった。鈴木会長は「同じ施設で働く病院の介護職に対して不公平感があるため、ちょっと躊躇しているように思われる」と指摘し、併設病院の状況も伝えた。

 調査によると、介護保険の処遇改善加算が支給されない病院の介護職員に対し、約6割が処遇改善を実施しており、その財源を「病院の持ち出し」とした回答が9割近くに上った。鈴木会長は「不公平感をなくすように頑張っており、かなりつらい状況だと思う」とコメントした。

 介護医療院の運営上、苦労している事項に関する質問では、「看護師、介護士、ケアマネ確保」の回答が最も多く、「生活施設としての環境整備」という回答も多かった。鈴木会長は「病院と違って生活施設であるため、その特徴をどのように出すかで苦労している」と伝えた。

 この日の会見の模様は以下のとおり。なお、会見資料は日本慢性期医療協会のホームページをご覧いただきたい。
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02_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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■ 2020年最後の記者会見

[武久洋三会長]
 2020年最後の記者会見である。冬に入り、大変な状況になっている。当会の記者会見は通例、第2木曜日に開催しているが、明日は第28回日本慢性期医療学会をオンラインで開催するため、本日の会見となった。

 私は東京の本部に来ているが、オンラインで記者会見をさせていただきたい。今回の司会は、私が務めさせていただく。

 本日の議題は2つある。1つは、明日から始まる第28回日本慢性期医療学会のご案内。もう1つは日本介護医療院協会が実施した介護医療院の調査結果についてご報告を申し上げる。

 日本介護医療院協会は制度発足時に協会内組織として始まり、徐々に会員数も増えている。介護療養病床から介護医療院への移行状況や今後の課題などについて、日本介護医療院協会会長の鈴木龍太先生からお話をしていただく。

 まず、第28回日本慢性期医療学会学会長の田中志子先生から、明日の学会についてご説明をお願いしたいと思う。
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■ 明るい未来を描けるように

[田中志子学会長]
 いよいよ明日から28回目の日本慢性期医療学会が開催する。おかげさまで425の演題が集まった。現在の参加状況は、会員施設が284施設、賛助会員が5施設、非会員が13施設で計302施設、個人登録80名にご参加いただいている。

 新型コロナウイルスの影響により、今回は早い段階でオンライン開催に決定する結論を出した。初のオンライン開催となる。そして、初めての女性学会長ということで非常に力も入っている。

 現在、COVID-19の第3波が来ているので、オンライン開催にしたことは良かったと思う。皆さまに直接お目にかかれないことはとても残念だが、オンライン形式であれば子育て中の人も聴講できる。オンラインの利点を生かしていきたい。

 テーマは予定どおり進めている。「2040年へ向けた健康長寿と地域共生社会 ~慢性期医療の役割」である。新型感染症がこれからどのように私たちに影響を与えるのか、大変悩ましいと思うが、そんな中でも明るい未来を描けるようなディスカッションができればいいと考えている。

 オンライン開催ながら一般演題も集まっている。コロナ禍でこちらへお越しになれないシンポジストの先生方もいらっしゃるが、事前録画をしていただいて、シンポジウムがきちんと行えるようになっている。また、役員病院の有志の先生方に病院紹介ビデオを作っていただいた。シンポジウムの合間に配信したい。見所満載の大作ぞろいであるので、ぜひご覧いただきたい。

 さらに、オンラインならではの特色を出したいと考え、群馬県慢性期医療協会で準備を進めてきた。こんな時期だからこそ、ご自宅に居ながらにして群馬県の名産をお買い求めいただけるWEB物産展を開催している。群馬県民の心の拠り所である上毛かるたや観光地のご紹介もしているので、WEB上ではあるがぜひお立ち寄りいただきたい。こんにゃく、りんごなど、群馬の名産を学会みやげとしてお買い求めいただければと考えている。

 例年同様に企業の展示も行っている。ランチョンセミナーにあたる共催セミナーも行う。12月4日は「スポンサースペシャルサンクスセミナーデー」として4つの企業共催セミナーを開催する。

 記念講演は「夢は叶う」と題し、持続可能な社会を考えた100%リサイクルを実現させた岩元美智彦先生(日本環境設計株式会社取締役会長)にご講演いただく。バック・トゥ・ザ・フューチャーの映画の中にあるように、ゴミでデロリアンという車を走らせたようなお話でとてもワクワクするので、ぜひお楽しみいただきたい。

 さあ、新しい時代の始まりである。頑張って2日間の学会を盛り上げていきたいと思う。
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■ 介護療養病床からの移行が最多

[武久洋三会長]
 続いて、「日本介護医療院協会2020年度調査結果」について、鈴木会長からご説明いただく。
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[鈴木龍太会長]
 日本介護医療院協会では毎年調査を実施する方針にしており、今回が2回目の調査となる。まず現状をご説明する。
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07_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 介護医療院の開設数は2020年3月から6月にかけて大幅に増えたが、6月から9月はやや伸びが鈍っている。全国で539施設、33,820床の開設があった。このうち介護系からの移行が全体の84%である。やはり介護療養病床からの移行が最も多い。
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08_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 転換型老健は9,000床あったが、このうち4,500床が介護医療院に移行している。経過措置からはほとんど移行していない。新設が6施設150床ある。東京が1施設24床、新潟で120床の新設があったと聞いている。
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■ Ⅰ型は9割近くが病院内施設

 今回の調査結果についてご説明する。今年8月に396施設を対象に実施し、143施設から回答を得た。396施設のうち日本介護医療院協会の会員は218施設なので、組織率は約6割である。
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09_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 回答のあった143施設の療養床数は計9,688床。1施設の療養床数は平均67.7床である。143施設のうち、Ⅰ型が95施設、Ⅱ型は30施設となっている。
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11_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 移行前の施設を見ると、介護療養病床から移行したのがⅠ型では85%で、ほとんどが介護療養病床から移行している。Ⅱ型は老健タイプであるので転換型老健から移行したものが50%近くあった。
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12_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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■「収益が増えた」約6割、「変わらず」約2割

 介護医療院の平均要介護度はどうなっているか。Ⅰ型は2019年度が4.31、Ⅱ型が3.96だった。2020年度のⅠ型は4.3と変わらないが、Ⅱ型は4.1とやや上がっている。新しく入ってくる方々の要介護度が少し高いのではないかと思われる。

 病院内か独立型かを見ると、Ⅰ型は9割近くが病院内施設である。Ⅱ型には独立型も一部ある。Ⅱ型でも病院内にあれば医師が当直できるので、医師が24時間いる老健タイプの介護施設ということになり、とても便利に使えると思う。
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13_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 介護保険算定単価も調べた。1日どのくらいの単価となっているか。正確でないかもしれないが、1万5,802円となっている。Ⅱ型は1万3,220円だった。

 以前の収益と比べてどうかを見ると、「前よりも収益が増えた」が60%ぐらい、「変わらず」が約20%で、比較的良い数字になっていると思う。
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■ 在宅復帰が必要な病床からの入所が多い
 
 介護医療院にどこから入所しているか。Ⅰ型・Ⅱ型ともに、自院の回復期リハや地域包括ケア、急性期病床からの入所が多かった。
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14_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 すなわち、在宅復帰が必要な「在宅向け病床」から入所している。その割合については、Ⅰ型とⅡ型で、やや違いが見られた。Ⅰ型では、自院の「在宅向け病床」から22%、他院の「在宅向け病床」から26%。上記以外の病床は、おそらく療養病床だろう。

 これに対し、Ⅱ型は、自院の「在宅向け病床」から44%で、他院の「在宅向け病床」からはさほど多くない。

 介護医療院が自宅とみなされるため、「在宅向け病床」からの入所が多い。同じ病院内にある介護医療院に入所すると在宅復帰になるので、これを上手に使っている。在宅復帰になるため回復期リハや地域包括ケアなどから移るということが結構、頻繁に行われていると考えられる。
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■ Ⅰ型の「死亡退所」は51.7%、Ⅱ型は30.5%

 退所はどうか。Ⅰ型で最も多いのは「死亡退所」で51.7%となっている。介護医療院には医師がいるので、介護医療院が看取りの場所でもあるということは、確かにこの数字にも出ている。
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15_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 これに対し、Ⅱ型の「死亡退所」は30.5%にとどまる。昨年の調査でも同様の結果だった。Ⅰ型よりも「死亡退所」が減っている一方で、自院の回復期リハ、地域包括ケア、急性期の病棟への退所が増えている。これはおそらく治療のための転棟であると考えられる。

 Ⅱ型では、「自宅」や「自宅系老人施設」に移る人が約2割いる。介護医療院は終の棲家かと言えば、決してそうではなく、リハビリをきちんと提供することによって自宅にも帰っていることが示されていると思う。
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■ ACPは介護医療院の前段階で実施すべき

 介護医療院のⅠ型では、看取りの意思を確認するためのカンファレンスが義務化されている。ターミナルケアに該当する者の割合が5~10%いることが求められている。

 当時、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)という言葉がよく使われていたが、その後、厚労省はACPの愛称を「人生会議」とした。看取りのカンファレンスとアドバンス・ケア・プランニングは同じようなイメージで捉えられ、介護医療院でも看取りのカンファレンスをACPという形で実施している場合もあるらしい。

 しかし、ACPの定義では、入所者ご本人が参加していることが必要である。そこで、実際にご本人が参加できているのかを調べてみた。
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16_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 意思を確認するカンファレンスは今年4月から6月にかけて1,933回実施されているが、このうち本人が参加できているカンファレンスは26回(1.3%)だった。当院でも、本人が参加できたのは28回のうち2回(7%)だった。

 介護医療院には、要介護4・5の入所者も多い。今回の調査では、ご本人が意思を示せる場合がほとんどないことが示されている。ACPは介護医療院で実施するのではなく、もっと前の段階で実施しなければいけないだろうと思っている。

 なお、話し合った内容について見ると、「蘇生処置」が最も多く、次いで「看取りの場所」、「栄養手段」などとなっている。
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■ リハビリも積極的に実施している

 リハビリテーションの実施状況はどうか。理学療法が最も多く、143施設のうち105施設(73.4%)で実施されている。理学療法では、100床あたり67例に594回実施しているので、1人の患者あたり8.8回となる。理学療法と作業療法は月にほぼ8~9回、言語聴覚療法は7~8回程度の実施である。
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17_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 介護医療院でのリハビリは1人に対しPT・OT・STの各10回で計30回可能だが、それ以上の実施分は減算になる。それでも、減算になるリハビリを1人あたり10回ぐらい実施しているので、かなり積極的にリハビリをしているというデータが出ている。こうした取り組みによって、在宅復帰もできているのではないかと推測できる。

 介護医療院には医師が24時間いるので、医療行為が多くなる。その内訳を見てみると、「経鼻経管」「歯科治療」「膀胱カテーテル管理」が多い。これは当然だと思うが、「酸素投与」「点滴治療」「中心静脈ライン」も実施されている。
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18_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 医療行為は包括されているにもかかわらず、想定以上に頻回に実施されている。各種疾患に対して点滴治療が実施され、中心静脈ラインも必要な場合に実施していることが分かる。

 国民健康保険団体連合会から査定をされたことがあるかを尋ねたところ、「ある」との回答が22.6%だった。査定されているのは、ほとんがリハビリテーション特別診療費だった。
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19_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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■ 病院の介護職員の処遇改善は「持ち出し」

 介護職員の処遇改善加算の取得状況はどうなっているか。同加算を「受けている」という回答がほとんどで約84%に上ったが、「受けていない」と回答した施設もある。
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20_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 また、技能・経験のある職員にさらに加算する「介護職員等特定処遇改善加算」は少し減って57.9%だった。同じ施設で働く病院の介護職(看護助手)に対して不公平感があるため、躊躇しているように思われる。

 併設病院・病床の看護助手や介護職員に対して処遇改善を実施しているかを調べたところ、59.3%が実施していた。その財源は9割近くが「病院の持ち出し」となっており、苦しい状況が推測される。

 介護保険の介護職員に対する処遇改善加算は国から出るが、医療保険による病院の介護職員に対する処遇改善の費用は出ないため、不公平感をなくすように病院が持ち出しで頑張っており、かなりつらい状況だと思う。
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■ 苦労しているのは人材確保

 介護医療院の運営上、苦労している事項について調べたところ、やはり人材確保が最も多かった。
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21_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 「生活施設としての環境整備」という回答も多かった。介護医療院は病院と違って生活施設であるため、その特徴をどのように出すかについて苦労しているようだ。

 そして、「抑制ゼロ対策」もがなかなか難しいという回答が出ている。急性期病院から送られてくる時点ですでに抑制されているので、どのように外したらよいのかで悩んでしまうのではないか。

 介護文書の負担軽減に向けた取り組みが進んでいるが、「介護保険書類の煩雑さ」という回答もある。そのほか、「ターミナルの意識」が家族に意外と少ないので、これも課題になっている。
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■ 介護医療院の開設、約7割が「良かった」

 介護医療院を開設して良かったことは、移行定着支援加算や助成金、収益増加などの回答が多く、経営面でのメリットが多く挙げられている。
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22_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 そのほか、「医療区分1の利用者の居場所ができた」、「住まいとしての環境があるのがよい」という回答も3割程度ある。

 経営面での回答に続いて多かったのが「介護療養病床・経過措置が廃止になる心配がなくなった」という回答で、45.8%となっている。経営者のメンタル面でも良い効果をもたらしている。

 「介護医療院の開設は収益上良かったか」という質問に対しては、61%が「良かった」、「変わらず」が22%だった。「悪かった」という回答も8%あるが、ほとんどが「良かった」という回答である。
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23_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 「介護医療院の開設は総合的に良かったか」という質問については、昨年の調査と同様に約7割が「良かった」と回答している。「悪かった」という回答は、昨年の調査ではゼロだったが、今回は1施設あった。

 総合的に見て、かなり好意的に受け止められていると判断できる。
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■ 基本報酬の底上げを求める声が多い

 移行定着支援加算を期限どおり来年3月末で終了する方針がすでに示されており、総量規制の枠外であることを第8期介護保険事業計画でも継続する方針はすでに決まっている。こうした中で、今後の課題は何か。
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24_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 介護報酬改定への要望については、やはり介護医療院のサービス費の底上げを要望している。移行定着支援加算の93単位がなくなることを想定しているのだろう。この加算は経営上かなり助かった。介護職員の人件費が高騰していることもあり、基本報酬の底上げを求める声が多い。

 介護医療院には医療行為が必要な入所者が多く、医療行為に対する報酬も必要である。こうした費用を考えると、移行定着支援加算がなくなるであれば、全体の底上げが必要であると考えているのだろう。

 また、リハビリテーションは4カ月目から減算されるため、減算までの期間の延長を求める声もあるほか、「緊急入所、送迎に加算を」「書類の削減、事務作業の軽減」などの要望も寄せられている。今後、これらを整理して要望を出したいと思っている。
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■「第3回介護医療院セミナー」のご案内

 最後に、「第3回介護医療院セミナー」のご案内をしたい。本日から2週間、無料で実施する。こちらのQRコードから YouTube にアクセスできるので、ぜひご覧いただきたい。
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25_【資料】日慢協会見_2020年12月1日

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 医療療養病床からの移行、ユニット型介護療養病床からの移行、療養型老健からの移行の3タイプの介護医療院の取り組みを紹介するセミナーで、2020年度日本介護医療院協会調査の詳細も紹介する。

 私からの説明は以上である。
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■ 介護医療院が必要な病院もある

[武久洋三会長]
 明日の学会は初めてのWEB開催である。やっぱりやってよかったと思える学会になることを願っている。

 介護医療院については、できるだけ移行してほしいと思っている。日本慢性期医療協会としては、医療療養病床への移行についても協力するが、それが不可能な場合には、やはり介護医療院に移行してほしい。介護医療院が病院の中の1つの部分として必要な病院も結構あると思う。

 厚労省の調査では、介護療養病床のままでいたいという施設が約3割あるが、介護医療院に移行して良かったという結果が先ほどの鈴木先生のご報告で示されている。当協会では、介護医療院をプラスの方向で捉えている。国が医療と介護の施設のバランスを考え誘導していこうという時に、該当する病床や施設がそれに協力しないことは問題だと思っている。

 93点の移行定着支援加算が来年の3月で終了するとしても、市町村によっては事務処理能力が非常に遅い所もある。11月26日の介護給付費分科会で私からお願いをしたが、2月に申請しても3月末までに許可が下りないのはあまりにもひどいので、せめて3月末までに受け付けた分については加算についても対応していただきたいと発言した。

 できれば早めに都道府県に相談に行っていただき、そこで検討しながら、93点をぜひ取っていただけるように頑張ってほしい。それによって施設内をリニューアルしたり、いろいろなことができると思うので、ぜひお願いしたいと思う。
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■ より良い介護医療院をつくっていただきたい

 病院という場所は看取りをする場所ではない。現実には急性期病院で、がん患者さんなどの看取りもしているが、病院は治療する場所である。

 介護医療院は看取りもするが、ご自宅に帰っている人もいる。従って、介護医療院がすべて看取りをする場所というような決め付け方を私はしていないし、皆さんもそのように考えていただくよう、お願いしたいと思う。

 もちろん、がん末期の看取りのような場合に介護医療院でお引き受けすることは当然のことであるので、そのような場合は介護医療院を利用していただければいいと思う。

 現在、介護療養型医療施設を持っている所は、そのまま残るなどということは言わないで、行政が示す方向性に積極的に協力して、より良い介護医療院をつくっていただきたいというのが日本慢性期医療協会の会長としてのスタンスである。
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■ コロナを撲滅していく強い施設を

 コロナの感染が拡大している。われわれ現場はますますリスクが高くなり、非常に厳しい状況だが、きちんと医療を守っていかなければいけない。

 慢性期の病院は急性期の公的病院のようにコロナに対して前面に立って対応してはいないが、急性期病院である程度まで回復した患者さんを受け入れてほしいという要請が各地で起こっている。

 日本慢性期医療協会としては、コロナに罹患した後の患者さんや、コロナによって体調が落ちてしまったような患者さんを積極的にお引き受けして、きちんと日常生活に戻してあげるという役割をしっかり果たしていかなければいけないと思っている。

 先ほど、当会の常任理事会でもこのような話をさせていただいた。急性期や慢性期などの役割は違っても、日本中の病院がコロナに対して全面的に対応することによってコロナを撲滅していく。そういう強い施設を日本慢性期医療協会の会員として目指していきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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