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基金の使い方、「現場が肌で感じるように」 ── 医療介護総合確保促進会議で武久会長

Posted By araihiro On 2020年11月12日 @ 5:17 PM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 消費税財源を活用して地域の医療・介護体制を充実させるための基金の使い方について、日本慢性期医療協会の武久洋三会長は11月11日の会合で「国の予算だが自治体に丸投げ」と苦言を呈した上で、「もう少し、現場が肌で感じるような予算の使い方がされればいい」と述べた。

 厚労省は同日、医療介護総合確保促進会議(座長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第14回会合をオンライン形式で開催し、当会からは武久会長が構成員として出席した。

 この会議は、地域医療介護総合確保基金の執行状況などを報告するため、最近は年1回のペースで開催されている。構成員は総勢30人で、「医療・介護に関わるトップの方々が集まる」(厚労省・山下護課長)。

 そのため、基金事業が医療・介護体制にどのような影響を与えたのかという「効果検証」を進めるべきとの声が根強くあり、昨年末に開かれた前回の会合では、効果検証のために「開催頻度を増やすべき」との意見もあった。

 今回の会合でも同様の意見があった。厚労省保険局医療介護連携政策課の山下護課長は、新型コロナウイルスの影響などで開催が難しかったことを説明した上で、「これだけのお金が消費税を財源として投入されているので、しっかりと効果を検証できるように努めてまいりたい」と理解を求めた。
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02_厚労省保険局医療介護連携政策課・山下護課長_20201111_第14回医療介護総合確保促進会議
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基金の配分、「指導できるのか」

 今回の会合で厚労省は、基金の執行状況や令和2年度の内示状況などを示し、構成員の意見を聴いた。質疑では、基金の使い方と、そのコントロールをめぐる議論があった。

 安藤伸樹構成員(全国健康保険協会理事長)は介護分の基金の配分について、施設8割に対して人材確保が2割にとどまっている点を指摘し、「介護従事者の確保に関する事業のほうに、もっと重点的に力を入れたほうがいい」と主張。その上で、「これについて指導などはできるのだろうか」と質問した。

 厚労省の担当者は「施設整備の事業と人材確保事業はそれぞれ融通を利かせることが可能になっている」とし、自治体の裁量に広く委ねられていることを説明した。
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基金で大きな県立病院をつくる

 民間病院を代表する立場の加納繁照構成員(日本医療法人協会会長)は、令和2年度「医療分」の内示額について、兵庫県が東京に次いで多額である点を指摘。「県立病院のために、また大きなお金が出ているのではないか」と追及した。

 その上で、加納構成員は「民間病院がたくさん頑張っている地域に大きな県立病院をつくることが地域医療構想の目的なのか。300床あまりの病院が合併して720床の巨大病院に変化し、2床しか減らないのに基金が使われる」と疑問を呈し、「地域医療を頑張ってきた病院をなくすために基金を使うことに対し、厚労省はどういう見解を持っているのか」と迫った。

 厚労省の担当者は「地域の調整会議などで地域の実情に応じての方針を策定された。周辺の医療機関とも調整しながら進めたものと理解している」と回答。「いろいろな影響があるとのご指摘については、私から兵庫県に改めて問い合わせたい」と理解を求めた。
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基金で民間の人材派遣会社を利する

 これに対し、公的病院を代表する立場の仙賀裕構成員(日本病院会副会長)が反論。「トータルで見ると、民のほうに61.4%使われているという数字がある。各県によって公と民の配分の違いがある」と指摘した。

 その上で、仙賀構成員は人材確保に関する事業に言及し、「基金によって民間の人材派遣会社を利することにならないのか」と問題提起した。

 これに厚労省の担当者が「適正な利益であれば特段、問題になるものではない」と答えると、安藤構成員(全国健康保険協会理事長)が「人材派遣の会社に基金を使ってもよいということは絶対にあり得ない」と語気を強めた。
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勝手にやることは要綱上できない

 こうした議論を踏まえ、武久会長は「県庁の都合で恣意的に予算を執行できるような体制になっているような感じはしていた」と明かした上で、「研修などを実施するために、こんなに何億も要るのだろうか」と基金の使い方に疑問を呈した。

 その上で武久会長は「われわれ現場にとって、『この予算があって良かったな』とか、『影響があったな』と感じることが少ないように思う。もう少し、現場が肌で感じるような予算の使い方がされればいい」と指摘し、自治体に対するコントロールについて厚労省の見解を求めた。

 厚労省老健局の齋藤良太課長は「われわれが提示したメニューの中で、これをやる、やらないということは可能だが、われわれが提示していないもので都道府県が勝手にやるようなことは当然、要綱上できない」とし、医政局の長谷川学室長は「都道府県と市町村において連携を取りながら進めていただいている」と説明した。

 武久会長の発言要旨は以下のとおり。
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03_20201111_第14回医療介護総合確保促進会議

〇武久洋三会長
 加納先生もおっしゃっていたが、この予算は国の予算でありながら、県庁がある程度、自分の都合で恣意的に予算を執行できるように体制になっているという感じはしていた。
 私のいる徳島県では、施設はこれ以上もう要らないので施設にあまりウェイトを置いていないのかもしれないが、初期研修医の養成や研修などを実施するために、こんなに何億も要るのかなという感じはしている。基金は国の予算であるが、ほとんど各地の県庁などに丸投げと言うか、判断を自由にしていいという建前になっているようにも思える。
 確かに、各都道府県によって施設の整備状況も違うし、また職員の雇用条件も違うので、それぞれの県の状況によって使い方を変えるのは当然ではあるが、われわれ現場にとって、「この予算があって良かったな」とか、「影響があったな」と感じることが少ないように思う。
 基金事業が始まってから、すでに何年も経っている。もう少し、現場が肌で感じるような予算の使い方がされるとよい。そうしたコントロールを厚労省はされているとは思うが、ほとんど自治体に任せているのだろうか。そこが少し疑問であるので、ご説明いただきたい。

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〇厚労省老健局高齢者支援課・齋藤良太課長
 基金の中で、どういうふうに現場のニーズを、という点について、われわれとしても現場の都道府県から基金の拡充のニーズなどを聞いている。例えば、今年つくったものでは、大規模改修などへの支援をしてほしいとか、人材確保のための寮の整備に支援をしてほしいというようなお声を聞きながら、われわれとしては支援メニューの拡充を行っているところである。
 市町村が自由勝手にできるかについては、われわれが提示したメニューの中で、これをやる、やらないというようなことは可能であるが、われわれが提示していないもので都道府県が勝手にやるというようなことは当然、要綱上できない。
 われわれは必要であると感じてメニューの拡大をしているので、そういったものをきちんと活用していただけるように都道府県に促している。

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〇厚労省医政局医師確保等地域医療対策室・長谷川学室長
 医療分についても各都道府県で事業の募集を行っているが、事業者の申請等を市町村からもお受けして、取りまとめさせていただいている。都道府県と市町村において連携を取りながら進めていただいている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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