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小児・耳鼻科に「長期的な支援を」 ── 新型コロナの影響で池端副会長

Posted By araihiro On 2020年11月13日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 新型コロナウイルス感染症などの影響を踏まえ、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は11月12日の会合で、「小児科、耳鼻科関係については疾病構造、疾病割合そのものが変わってきている可能性があるのではないか」と指摘した上で、「長期的な支援が必要になる。場合によっては、診療報酬そのものの体系を根本的に見直さなければいけない」と問題提起した。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大学経済学部教授)の第133回会合を開催し、当会からは池端副会長が委員として出席した。
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約8カ月ぶりに会場で開催

 前回会合で「次回は会場にご参集を」と予告したとおり、今回は事務局や座長のほか14人の委員が会場に集結。5人はオンラインで参加した。会場での開催は、緊急事態宣言前の3月以来で、約8カ月ぶり。

 この日の会合で厚労省はまず、新型コロナの影響に伴う医療費や受診状況の動向などを報告。次いで、医療保険制度改革に向けて後期高齢者の窓口負担や大病院受診の定額負担など4つのテーマを検討した後、オンライン資格確認等システムの進捗状況などを報告して閉会した。
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「安易な受診が多い」「それは違う」

 この日の会合で、厚労省は新型コロナの影響に関するデータを提示。従来のメディアスよりも詳しく医療費の分析ができるように、電算処理されたレセプトを用いた分析結果を示した。

 厚労省の担当者は「疾病分類別や診療内容別の医療費の動向を見ていくことで、新型コロナウイルス感染症による受診状況の変化を具体的に見ていくことができると考えており、今後もこうした分析を継続していきたい」と述べた。

 報告によると、4・5月はいずれの診療科も減少しているが、小児科、耳鼻咽喉科の減少が顕著となっており、質疑では「受診控え」をめぐる議論があった。

 経済団体の委員は「受診控えが見られる中で、今まで安易に医療機関にかかっていたのではないか」と指摘。これに対し日本医師会の委員が「安易な受診が多いと言われると、『それは違うぞ』と申し上げたい」と反論する場面があった。
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04_松原謙二委員(日本医師会副会長)_20201112_医療保険部会
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診療報酬体系の根本的な見直しも

 池端副会長は、電子レセプトを用いた分析データのうち「年齢階級別」「疾病分類別」に着目し、「小児、学童児が依然として20%、30%減少している」と指摘。「私の肌感覚としても、新型コロナウイルス感染症対策によって明らかに感染症そのものの疾病が減っている印象を持っている」と述べた。

 その上で、池端副会長は「受診控えで経営が厳しいのではなく、特に小児科、耳鼻科関係については疾病構造、疾病割合そのものが変わってきている可能性がある」とコメント。小児・耳鼻科について「長期的な支援が必要」とし、「場合によっては、診療報酬そのものの体系を根本的に見直さなければいけないのではないか」と述べた。
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小児科の経営問題が生じている

 池端副会長の発言を受け、石上千博委員(日本労働組合総連合会副事務局長)は「今回のこういう減少が、さらに地域での小児科医の確保を難しくしていく可能性もあるし、経営の問題に発展する可能性がある」と指摘した。

 その上で石上委員は「少子化対策の1つとしても小児科医の確保は非常に重要だと思う。今後の対応を含めて、何かあれば伺いたい」と厚労省の見解を求めた。

 厚労省医政局の高宮裕介企画官は「小児科の経営問題が生じているという問題意識を踏まえ、小児科も含めた医療機関への支援について、さまざまな検討を行っている」とした上で、小児科医の偏在対策や医師養成課程における対策などを挙げ、「引き続き、対応に取り組んでいきたい」と述べた。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。
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■ 新型コロナの影響について
 本日お示しいただいた新型コロナの影響に関する「資料1」の15ページ(電子レセプトを用いた医科医療費の分析、年齢階級別)、16ページ(疾病分類別・入院)、17ページ(疾病分類別・入院外)の資料は非常に重要だと思う。
 今まで医療機関で診療が減っていたのは受診控えが中心と言われていたが、15ページを見ていただくと、明らかに小児あるいは学童児が依然として20%、30%減少している。
 一方で、16ページを見ていただくと、目、耳というのも感染症に関連するものではないか。そこがずっと続いている。私の肌感覚としても、新型コロナ対策によって、明らかに感染症そのものへの罹患が減っている印象を持っている。従って、これは受診控えで経営が厳しいのではなくて、特に小児科、耳鼻科関係については疾病の構造と言うか、疾病の割合そのものが変わってきている可能性があるのではないか。
 そのため、長期的な支援が必要になってくる。場合によっては、診療報酬そのものの体系を根本的に見直さなければいけないのではないか。そういう目線で、このデータをずっと追っていく必要があるのではないかという気がしている。
 実際に、現在インフルエンザは全国的に2桁と聞いている。昨年の同時期よりも明らかに減少している。そういう状況なども踏まえながら、今後の推移を注視していく必要がある。

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■ 後期高齢者の窓口負担等について
 2点、質問がある。1つは17ページ(後期高齢者の自己負担の推計分布状況)のグラフについて。加入者1人当たりの平均8.1万円が2割負担になっても倍になるわけではなく11.5万円と40%ぐらいの増になるとの推計が示されている。
 世代間格差を少しでもなくして、持続可能な医療保険制度とする上において、ある程度の負担増はやむを得ないことは私も認識はしているつもりだが、1割を2割にしても倍にならない理由を伺いたい。すなわち、高額医療費や低所得者対策等が考えられると思うが、ほかに理由があれば教えていただきたい。
 一方で、それを全部除いて、確実に負担が2倍になる後期高齢者の方がいると思う。何割ぐらいの方がそうなるのか、お示しいただけるのであれば教えていただきたい。
 というのは、9割給付が8割給付になったということならば、「それぐらいなら」と見方をする人もいるかもしれないが、今、払っている医療費が倍になる世帯もあるはずで、こうした人たちにとっては、かなり受診抑制につながる可能性が高い。
 従って、そうした人たちが後期高齢者全体の何割ぐらいを占めるか、そこに対してどういう対策を取るかは非常に重要な問題ではないかと思う。ぜひ、その割合が分かれば教えていただきたい。

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【厚労省保険局高齢者医療課・本後健課長】
 1点目のご質問は、池端委員ご指摘のとおりである。自己負担の限度額は、外来、入院とも1カ月あたりの限度があり、自己負担が1割から2割になっても限度額までということになるので、自己負担が2倍にならないという人もいらっしゃる。2倍になる人の数字であるが、これは精査が必要であるので少し検討させていただければと思う。
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■ 大病院受診時の定額負担について
 定額負担を任意で求めることができる200床以上の医療機関について、これを義務化するということは選定療養の考え方として根本的にかなりおかしいというか、問題ではないかと思っている。
 患者さん主体に考えれば、そこにはいろいろ理由があって受診している。しかも、これにはかなりの地域差がある。地域によっては200床以上でも、本当にかかりつけ医機能を担っている公的・私的病院がいっぱいある。こういう所を全て義務化してしまうと、患者さんの行き場所がなくなってしまう。
 そこで、まずは病診連携、病病連携をしっかり進めることが重要であり、その上で選定療養を自由に選択できるための制度設計を検討するのが筋ではないか。
 病院の収入構造にも問題がある。大学病院クラスでも外来の収入が一定程度ないと経営が成り立たない。そこに切り込んでいかない限り、厳しい経営状況は続く。例えば、外来をある程度確保しなければいけない病院では、200床以上に下げればどんどん厳しい経営にならざるを得ない。逆紹介を促進させて病診連携を図り、外来の機能分化を図る必要がある。
 北風政策をいくらやってもなかなか難しいのではないか。病院の収入構造の変革を考えながら、逆紹介を増やし、病診連携を図ることが本来の筋ではないか。
 今回のコロナ禍では、200床以上の病院がかかりつけ医機能を担いながら感染対策に当たっている。そうしたことも含め、もう一度、根本的にこの問題を考え直さなければいけないのではないか。

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■ 薬剤自己負担の見直しについて
 セルフメディケーションの推進に向けて、さまざまな資料が示された。もちろん、私もセルフメディケーションの流れに反対するつもりはない。しかし、本日の資料を見る限り、どうもスイッチOTCに関して、かなり前がかりな資料のみが出てきているように思う。
 もともとは医療機関で医師の下に、薬剤について一定の安全性を確認した上で、スイッチOTCに切り替えていた。そのように切り替えたスイッチOTCの市場がどの程度あるのか。そして、そこに大きな問題点がなかったのか。
 例えば抗潰瘍薬も出ている。それをむやみに自分の考えで飲んでいて、潰瘍が悪化した、あるいは別の病気が出たということがないのか。ぜひ、そういうデータも示していただいて議論を進めるべきである。
 前がかりな資料ばかりが出て、「行け行けドンドン」では少し難しいところがある。慎重に対応しなければいけないところがあるという気がしている。
 スイッチOTCがすでに何剤か出ているので、その市場規模やそれに基づく副作用等がないかどうかというデータがあれば、次回以降にぜひ示していただきたい。
 市販類似薬の保険適用に関する話もあった。スイッチOTCに関して言えば、市販類似薬は1錠、2錠飲めば、医療機関が出す薬になってしまう場合も随分ある。そこで大きな副作用や合併症が起きる可能性を一定程度危惧しながら慎重に進めることも必要である。ぜひ、そういう資料に基づいてチェックしながら進めていただきたい。

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■ オンライン資格確認等システムについて
 医療機関・薬局におけるオンライン資格確認システムの導入準備状況について、予定数が病院19.8%、医科診療所10.6%とまだ少ない。
 その課題について、「オンライン資格確認について、医療機関や薬局、システムベンダ等への周知が不十分」との記載がある。
 確かに、「システムベンダーへの周知が不十分」というのはまさにそのとおりだと思う。端末に関しては診療所に1台、病院には3台配付されるが、レセコンとのシステムを共有するための操作に関し、ベンダーに対して支払う費用が膨大であると聞いている。
 補助金は100万円単位だが、ベンダーから要求される費用は何百万も必要だと言われてしまい、二の足を踏んでいる診療所が非常に多い。
 従って、こうした問題もしっかり調べていただき、場合によってはその対応策も検討しないと、オンライン資格確認等システムは進まないのではないかという印象を持っている。これについてコメントがあれば、お願いしたい。

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【厚労省保険局医療介護連携政策課・山下護課長】
 おっしゃるとおり、私どももそのようなことを聞いているので、個別にシステムベンダーにヒアリングすることを通じて、きちんと対応していただくように取り組みたいと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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