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ADL評価は「BIと自立度基準で」 ── 令和3年度改定に向け、武久会長

Posted By araihiro On 2020年11月6日 @ 11:11 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は11月5日、令和3年度の介護報酬改定に向けて自立支援や重度化防止の推進がテーマになった厚生労働省の会議で、Barthel Index(BI)について「非常に具体的な基準であり、リハビリ専門職でなくても判断しやすい」と評価した上で、「医療もBarthel Indexに合わせて、認知症は日常生活自立度判定基準を使えばいいのではないか」と提案した。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第191回会合をオンライン形式で開催し、前回に引き続き次期改定に向けた検討を進めた。

 この日の主なテーマは、①地域包括ケアシステムの推進、②自立支援・重度化防止の推進──の2項目だが、論点は多岐にわたった。

 ①については、「認知症への対応力強化」「看取りへの対応」「地域の特性に応じたサービスの確保」の三本柱で資料を構成し、6つの論点を提示。②については、介護の質の評価やリハビリ、栄養などを中心に14の論点を示した。

 このうち、①の「看取りへの対応」について武久会長は「改善の見込みがある低栄養が看取りに直結しないような方法が必要」とし、管理栄養士の評価に期待を込めた。
 
 ②の介護の質評価では、医療分野と介護分野で指標を統一させる必要性を改めて強調した上で、ADL維持等加算のアウトカムを評価する方法について、「Barthel Index」と「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」の併用を提案した。
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「訂正させていただく」

 平成30年度改定で新設されたADL維持等加算をめぐっては、算定率の低さが問題になっており、今年4月時点で2.38%の取得率にとどまっている。

 同分科会では、その原因についてBarthel Indexを指摘する声があり、これまでの会合で「Barthel Indexの入力の負担が大きい。介護業界でほとんど使われていない」などの意見があった。

 9月14日の第185回会合で武久会長は「医療保険ではFIMを使っている」と指摘した上で、「介護の世界に医療が非常に入っていっており、密接になってくる段階で、評価方法はできれば統一する方向でお願いできたらいいのではないか」と提案していた。

 今回の会合でも、ADL維持等加算を届出していない理由の2番目に「Barthel Indexを用いた評価の負担が大きい」との回答が挙げられている点を指摘し、算定率の向上に向けた見直しを求める意見があった。

 一方、武久会長は、資料に示されたBarthel Indexの評価表について「よく見ると、非常に具体的な判断基準が書かれている」とし、「Barthel Indexと認知症の自立度判定基準によって患者さんの状態を把握するほうがいいと思い直している」と述べ、以前の発言を「訂正させていただく」とした。
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P50__【資料2】自立支援・重度化防止の推進_20201105介護給付費分科会

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 武久会長の発言要旨は以下のとおり。

■ 看取りへの対応について
 まず、「資料1」(地域包括ケアシステムの推進)の「看取りへの対応」について述べる。一般的に、病院でも施設でも看取りをするということは必要である。がんや神経難病など、予後が非常に良くない場合には当然、看取りになる。
 しかし、病院の一部の医師によっては、改善する低栄養でも「高齢者で低栄養だ」ということだけで、「もう看取りだ」という判断をされる場合もある。
 介護保険制度では、管理栄養士を非常に重要視していただいた。介護保険施設の半数近くが低栄養になっているという例もある。その改善のために、一生懸命やったところを評価するというふうに介護保険で対応していただいて非常にありがたい。
 少なくとも、改善の見込みがある低栄養については看取りに直結しないような、何らかの方法が要るかと思う。
 というのは、医師によっては90歳で低栄養であれば、「もういいんじゃないか」というように思われることがある。しかし、然るべき対応をすれば非常に良くなる場合も多々ある。そのため、介護保険制度で管理栄養士を重用していただいていることに感謝したいと思う。

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■ ADL評価の方法について
 「資料2」(自立支援・重度化防止の推進)の50ページに、Barthel Indexの評価表が出ている。私は医師であるので、医療保険ではFIMを多用している。
 一方、介護保険ではBIが中心になっているので、私は以前、「同じ患者が介護から医療へ、医療から介護へ行くので、リハビリの指標として同じFIMを使ったらどうか」というような話をした。
 Barthel Indexについてあまりよく承知していなかったのだが、この50ページをよく見ると、具体的な判断基準が書かれている。非常に判断しやすい。しかも、リハビリの専門職でなくても判断しやすい。
 一方で、FIMは障害度を25%ごとに機能低下を区切り、51%か33%かということになって、ほんの2~3%違うことによってFIMの利得が1つ上がる。これが7項目あると7利得ということになる。FIMは非常に大きなリハビリテーションでの評価になっている。
 Barthel Indexでは認知症の項目が外れているが、認知症については認知症高齢者の日常生活自立度判定基準が多用されている。
 このBarthel Indexと認知症の自立度判定基準によって患者さんの状態を把握するほうがいいと私は思い直している。
 Barthel Indexというのは、「できるADL」を指しているし、FIMは「しているADL」というところで多少は違うが、医療保険と介護保険でリハビリに対する評価の基準が違うという状況はできれば同じにしたほうがいいと思う。
 私は以前、「FIMに合わせたら」と言ったが、現状としては、医療もBarthel Indexに合わせて、認知症の判定については日常生活自立度判定基準を使ったらいいのではないか。ということで、ここで訂正させていただく。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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