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介護報酬、「人員基準に論理性はあるか」 ── 次期介護報酬改定に向け、武久会長

Posted By araihiro On 2020年7月9日 @ 11:11 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は7月8日、令和3年度の介護報酬改定に向けて議論した厚生労働省の会議で「法定人員の決め方に論理性がないと公的介護保険としてはまずいのではないか」と指摘し、「何を基準に、どなたが決めているのか」と質問した。厚労省の担当者は「皆さまで議論して決めていただくルールになっている」と答えた。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第179回会合をオンライン形式で開催した。

 次期改定に向けた今回のテーマは6項目。

 ①定期巡回・随時対応型訪問介護看護、②夜間対応型訪問介護、③小規模多機能型居宅介護、④看護小規模多機能型居宅介護、⑤認知症対応型共同生活介護、⑥特定施設入居者生活介護──について、それぞれ論点を示した上で委員の意見を聴いた。
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法定人員、どのように決めているのか

 質疑で、武久会長がまず着目したのが小規模多機能の「職員の充足率」に関するデータ。資料によると、「まったく足りない」と「あまり足りていない」の合計が50.5%となっている。
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P2_【資料4】小規模多機能型居宅介護

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 武久会長は、小規模多機能の厳しい運営状況を説明した上で、「介護保険での定数の法定人員の決め方について、私は実際の現場の調査に基づくと思っているのだが、どのように決めているのか」と質問した。

 厚労省の担当者は「毎年度の老健事業で、さまざまな実態を把握している。最終的には運営基準の中で、人員配置の基本的な考え方を書かせていただいているので、形の上では、この分科会の皆さまで議論いただいて、お決めいただくというルールになっている」と答えた。
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現場の者として、理屈がほしい

 武久会長はまた、認知症グループホームの夜勤体制について「2つのユニットがあっても、1つのユニットの職員は隣のユニットのケアに行ってはいけないという指導をされる場合もある」と指摘した上で、「1ユニットに1名以上の夜勤者が必ず必要であることの説明をお願いしたい」と質問した。
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P36_【資料6】認知症対応型共同生活介護

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 厚労省の担当者は「平成24年改定で、1ユニット1夜勤にしたが、その前に、グループホームでの事故等々もあったので、このような配置基準になっているのではないかと認識している」と答えた。
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P35_【資料6】認知症対応型共同生活介護

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 武久会長は「1つのユニットから隣のユニットに手伝いに行ってもいけないと都道府県から指導される場合があるが、全く論理性がない」と苦言を呈し、「われわれ現場の者としては、理屈があってほしい」と述べた。

 質疑応答の要旨は以下のとおり。

〇武久洋三会長
 日本慢性期医療協会は主に慢性期医療を担当している関係上、今日、ご説明いただいたようなサービスを併設している会員が多い。その状況をお話しするとともに、ご質問させていただきたいと思う。
 まず小規模多機能を併設している事業者が多いが、ほとんど8割が赤字になっている。例えば、土地を買って建物を建てて小規模多機能を運営しているが、定員を満たしている所でも、人を多めに雇うと間違いなく赤字になる。
 小規模多機能に関する「資料4」の2ページ(職員の状況)に、「職員の充足率」に関するデータが出ている。半分は足りていない。ということは、足りずに運営しているわけだから、監査に来たら「返せ」と言われる可能性があるのではないか。職員が足りてなくていいのだろうか。
 また、この小規模多機能だけ、このような資料があり、ほかの事業についてはない。なぜ、小規模多機能については「職員の充足率」に関するデータがあって、足りなくても許されるのかが分かりにくい。
 もう1つの質問は、グループホームについて。グループホームも現実としてはなかなか厳しい状況がある。
 「資料6」(認知症グループホーム)の36ページ(介護サービス事業所・施設における夜勤体制)を見ると、日本慢性期医療協会の会員の多くはこれらの施設をある程度、併設している。
 資料を見ると、特養や老健、介護医療院、介護療養型医療施設、認知症グループホームなどの基準が示されている。このうち認知症グループホームについては、夜勤の場合でも1ユニットに1人ということになっている。9名に1名が必要ということになっているが、これは要介護度が非常に重いことが理由なのか、それとも認知症度が非常に重いということなのか。
 グループホームは、2つのユニットがあっても、1つのユニットの職員は隣のユニットのケアに行ってはいけないというような指導をされている場合もある。昼間であれば、そういうケアの融通性は十分あり得ると思うが、この理由は何か。
 私どものグループホームでは、認知症が非常に重くて、徘徊がとても多いというような入所者よりは、認知症度は重いけれども、むしろ和やかに、ある程度、安定して共同生活ができるような人が多い。そういう意味でも、1ユニットに1名以上の夜勤者の配置を求められているということについて、ご説明をお願いしたい。

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〇厚労省老健局振興課・尾崎守正課長
 まず1つ目の小規模多機能の職員不足については、いわゆる人員基準を下回っているということではなく、人員基準を満たした上で、ご本人たちが理想とする職員数と比べてどれぐらい充足できているか、できていないかということを聞いている。半分の所はなかなか理想どおりになっていないという回答を頂いている。
 2点目のグループホームの夜勤の関係については、それぞれのグループホームの状況によって違ってくると思うが、夜勤の人数を何人にするかは、まさにこの分科会でご議論をいただいて決めていただいている内容である。
 「資料6」の35ページ(認知症グループホームの夜勤体制)でもご説明をさせていただいたが、累次の改正ごとに人数を多少、手厚めにしていることもある。
 平成24年の時には、1ユニットごと1夜勤に改正しているが、その前に、グループホームについては事故等々があったということもあり、今の配置基準になっているのではないかと、そのように認識しているところである。

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〇武久会長
 私が質問したのは、グループホームの入所者の平均要介護度はどのくらいかということと、認知症度の状態がほかの特養などよりもかなり重いのかどうか。
 要するに、ニーズが非常に多いから増やしたんだというような、合理的な、その理論が通らないとおかしな理屈になるので、グループホームの入所者の平均要介護度と、平均の認知症度、状態を教えていただきたい。

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〇尾崎課長
 グループホームについて、全体では、要介護度3以上の方が55%程度。平均要介護度は2.8となっている。
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〇武久会長
 グループホームには非常に要介護度が重い人が多いとか、認知症度が重いというような調査にはなっていないように感じるが、いかがだろうか。
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〇尾崎課長
 この段階で、ほかの施設と比べて夜勤を手厚くしている理由があるのかないのかは、なかなかお答えするのは難しいところである。
 ただいまご指摘いただいたような点も含めて、分科会でどうするのか、ご議論いただければありがたいと思う。

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〇田中滋分科会長(埼玉県立大学理事長)
 今後の分科会での委員の方々のご意見によると思う。先ほどの説明では、火災事故への対応が理由だったと。要介護度以外の理由があるという説明であった。
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〇武久会長
 小規模多機能を複数運営していると、宿泊が多い小規模多機能、通所が多い所、そう多くない所など、結構バリエーションがある。宿泊が多いと当然、スタッフが足りないということになる。「資料4」の2ページ(職員の状況)について、先ほど、尾崎課長は「定員はクリアしているが、不足感が強いだけだ」というふうにおっしゃった。
 しかし、いろいろある中で、小規模多機能だけ、こういう質問をしている。ほかの所はどうなのかが気になるところだ。
 現実に、11.5名いなければいけないところに対して、3名近く不足している所もあるという。すなわち、介護保険での法定人員の決め方は、私は実際の現場の調査に基づくのではないかと思っているのだが、どういう決め方で、この法定の人員を決めているのか。
 グループホームの場合、要介護度はそんなに重くはない。認知症の度合いについても、他人に危害を及ぼすようなものではなく、ちょっと徘徊するというような問題のある人がグループホームに入っている。
 1つのユニットから隣のユニットに手伝いに行ってもいけないなどということを都道府県から指導される時があるのだが、非常に論理性がない。定員をどのようにするのか、法定人員の決め方に論理性がないと、公的介護保険としてはちょっと問題があるのではないか。論理性がない基準によって監査を受けて指導を受ける。われわれ現場の者としては、やはり、そこは理屈があってほしいと思う。
 「資料4」の2ページには「職員の充足率」と書いてあるので、これは法定ではないかと思う。小規模多機能だけを調べた理由がお分かりであれば教えていただきたい。
 また、この法定人員の決め方というのは、何を基準に、どのように、どなたが決めているのかということも、あわせて質問したい。
 というのは、この介護給付費分科会では、そういう定員についての審議に、私は参加したことがない。よろしくお願いしたい。

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〇尾崎課長
 「資料2」の小規模多機能の関係については、毎年度の老健事業で、さまざまな実態を把握している。その中で、こういった調査も一緒にあわせて行ったということである。
 もう1点、その人員基準の決め方であるが、例えば、新しいサービスで言えばモデル事業みたいなものをやって、その中でどういう実態があったかということも見るし、昔からあるサービスについては予算事業の時に、どういう状態だったか、それも見ながら策定したりするところもある。
 そして最終的には、運営基準の中で人員配置についての基本的な考え方を書かせていただいている。
 どこまでのご説明が十分にできているかどうかという問題はあるが、形の上では、この場の分科会の皆さまで議論いただいて、お決めいただくというルールになっているということである。

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〇田中分科会長
 定員についてはいかがだろうか。
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〇尾崎課長
 定員についても同様である。
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                          (取材・執筆=新井裕充) 


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