- 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト - http://manseiki.net -

介護医療院への移行、「手続きが煩雑」 ── 介護保険部会で橋本副会長が改善を訴え

Posted By araihiro On 2020年2月22日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会の橋本康子副会長は2月21日、第8期介護保険事業計画の基本方針などについて審議した厚生労働省の会議で「介護医療院への移行が進められているが、なかなか想定されたような数字にはなっていない」と指摘した上で、「手続きが煩雑という課題もあるので、改善していく必要がある」と訴えた。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)の介護保険部会(部会長=遠藤久夫部会長・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第90回会合を開き、令和3(2021)年4月からスタートする第8期計画の作成に向けたスケジュールなどを示した。

 厚労省の担当者はその中で、介護療養病床・医療療養病床の転換意向調査を都道府県が実施し、その結果を都道府県から市町村に報告する予定であることなどを説明。介護医療院の開設状況について、令和元(2019)年12月末時点で301施設・1万8,931療養床であることを伝えた。
.
20200221_介護保険部会
.

想定された数字になっていない

 質疑で、委員を務める武久洋三会長の代理人として出席した橋本副会長は、介護医療院への移行について「手続きの煩雑さも移行が進まない1つの要因ではないか」と指摘した上で改善を求めた。

 また、介護サービスの基盤整備に関連して、医療と介護の連携を進める上での課題を提示。「介護保険を取得すると医療保険が非常に使いにくくなる」と指摘した上で、「医療保険と介護保険の利用をシームレスにして、医療から介護に円滑に流れていくような仕組みも必要ではないか」と提言した。
.

ユニット型を推奨していく方針か

 橋本副会長はまた、地域医療介護総合確保基金に関連して、「補助金の額が多いユニット型を選択したいが、深刻な人材不足の中で、ユニット型への建て替えが非常に困難になっている」と現状を説明。「今後もユニット型を推奨していく方針か」と尋ねた。

 厚労省の担当者は「施設の老朽化の対策をしっかりとやっていかなければいけないと考えており、今回は大規模修繕や耐震化の整備などに支援を厚くしている」と説明した上で、「ユニット型の整備の推進を行っているという観点から、補助の厚さに違いが出てくることをご理解いただきたい」と回答した。
.
厚労省老健局老人保健課_20200221_介護保険部会

〇橋本康子副会長
 3点、意見を申し上げたい。まず11ページ(介護療養病床の推移等)、12ページ(介護医療院の開設状況)だが、ご存知のように介護療養病床が3年後に廃止になるということで、現在、介護医療院への移行が進められている。ただ、なかなか想定されたような数字にはなっていないように見受けられる。
 介護医療院への移行措置は進められているが、もっと積極的に進めていく必要がある。介護医療院は長期的な医療や介護を併せ持つ施設として、とても良い施設だと思っている。
 そのため当協会でも、いろいろな機会に介護医療院について説明させていただき、移行を推奨しているが、やはり手続きが煩雑という課題もある。それだけではないが、手続きの煩雑さも移行が進まない1つの要因ではないかと考えている。従って、手続きの煩雑さを改善していく必要もあるかと思う。
 また、移行定着支援加算の期間延長についても、検討する必要があると思っている。
 2点目は、6ページの「基本方針」について、「第8期計画において記載を充実する事項(案)」が示されているが、その中で、「2025・2040年を見据えたサービス基盤、人的基盤の整備」について、「地域医療構想との整合性」が挙げられている。
 医療から介護への移行を進めるにあたっては、医療と介護の連携が必要であるが、介護保険を取得すると医療保険が非常に使いにくくなるという問題がある。外来や訪問において介護保険が優先されてしまい、医療保険による疾病の治療が受けにくいという現状もある。そのため、医療保険と介護保険の利用をシームレスにして、医療から介護に円滑に流れていくような仕組みも必要ではないかと思う。
 3点目は、9ページ(地域医療介護総合確保基金)について。これは介護施設の大規模改修や建て替えなどへの支援であると考えているが、1つ質問したい。
 当協会には、多くの介護施設を運営されている会員もいる。その中で、介護施設を開設してから30年以上経過しており、建て替えや改築が必要になっているのだが、現在の制度ではユニット型と多床室に分かれており、補助金の額も大幅に異なっている。そこで、改修や建て替えをする場合に、補助金の額が多いユニット型を選択したいと考えるのだが、深刻な人材不足の中で、ユニット型への建て替えが非常に困難になっている。ユニット型にすると、どうしても人材が多めに必要となる。
 ユニット型のほうが利用者にとって良いのは理解している。そのため、ユニット型の補助金のほうを高くしているのは、ユニット型をどんどん作ってほしいと推奨しているのだろうか。今後もユニット型を勧めていく方針なのかをお尋ねしたい。

.
〇厚労省老健局高齢者支援課・齋藤良太課長
 われわれとしては、施設の老朽化の対策をしっかりとやっていかなければいけないと考えており、今回は大規模修繕や耐震化の整備などに支援を厚くし、新たに予算組みさせていただくということは全体の方向性としてやらせていただいている。
 ただ、その上で、多床室とユニットのバランスは必要だとは思うが、われわれとしてはユニット型の整備の推進を行っているという観点から、補助の厚さというものに違いが出てくるというのはご理解いただければと思う。

.
〇橋本副会長
 補助金をたくさん付けていただくのはすごくありがたい。ユニット型がよいのは私たちも分かっている。ただ、ユニット型にすると、人材が1.2倍から3倍ぐらい必要になってしまうということも考慮して、今後、検討していただきたいと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 



Article printed from 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト: http://manseiki.net

URL to article: http://manseiki.net/?p=6625

Copyright © 2011 Japan association of medical and care facilities. All rights reserved.