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中心静脈栄養と看取りに関する緊急調査の結果を公表 ── 池端副会長、9月19日の入院分科会で

Posted By araihiro On 2019年9月20日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は9月19日、次期改定に向けての入院医療について審議した厚生労働省の会議で、日慢協が実施した中心静脈栄養と看取りに関する緊急調査の結果を公表した。それによると、他院などで中心静脈栄養を実施した状態で療養病棟に入院した「持ち込み」は39.6%、看取りのためのみに入院していた患者は2.5%にとどまった。結果を受け池端副会長は「急性期病院において中心静脈栄養を入れる段階で、その是非をより慎重に検討すべき」とコメント。療養病棟の現状については、「医療を提供しつつ亡くなる患者が非常に増えている実態が明らかになった」と述べた。

 厚労省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の2019年度第7回会合を開き、医療区分やADL区分などについて再分析したデータを示した。

  資料は → https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000183658_00015.html
   厚労省の説明等は → http://chuikyo.news/20190919-additional-analysis/
   緊急調査の結果は → http://jamcf.jp/enquete.html#190925
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中医協「入院医療等の調査・評価分科会」20190919

 この中で厚労省は、中心静脈栄養について入院患者に占める割合を提示。「全体に占める割合が10%未満という所が多いが、入院患者のうち50%以上、中心静脈栄養されている方がいる医療機関が少なからずあるという状況が見て取れる」と報告した。

 こうした説明に続き、池端副会長が緊急調査の結果を報告した。これは日本慢性期医療協会の役員が運営する61病院を対象に実施したもので、療養病棟入院基本料1に3カ月間、入院している患者について中心静脈栄養と看取りの状況について調べている。

 池端副会長の報告について、詳しくは以下のとおり。

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中心静脈栄養を実施した患者は18.2%

[池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)]
 報告の機会を頂き、感謝を申し上げる。机上配布になっている資料をご覧いただきたい。

 本報告については、前回の分科会でご承認を頂いている。今年7月、日本慢性期医療協会の役員関連61病院で緊急に実施した調査結果を報告したい。これは療養病棟入院基本料1に3カ月間、入院している患者について中心静脈栄養と看取りに関して調べたものである。

 対象病院数は4,648床、入院患者数としては6,246名の分析になる。まず中心静脈栄養については、入院基本料1の入院患者のうちで実施した患者は2割弱(18.2%)だった。1日でも実施した患者を1人と数えているので、こういう数字になっている。
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他院からの「持ち込み」は39.6%

 他の医療機関または自宅等から中心静脈栄養を実施した状態で入院してきた患者が約4割(39.6%)だった。残り6割は自院の療養病床で中心静脈栄養を入れたと考えていい。

 中心静脈栄養を入れた患者1,135名のうち、自分の病棟で中心静脈栄養を中止した患者の割合は13.9%だった。中心静脈栄養を中止した患者さんが158名のうち約5割(52.5%)が経管栄養に変更した。残りの25%弱が経口摂取に変更できた。残りの20%は末梢静脈栄養に変更したという結果が出ている。

 中心静脈栄養を実施した患者のうち、代替可能な栄養法があるにもかかわらず中心静脈栄養を実施している患者は1,135名中17名(1.5%)だった。その17名中、本人・家族の希望によって実施している患者が94.1%。本人家族の希望以外の理由によって実施したのは1名(5.9%)だった。
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看取りのために入院していた患者は2.5%

 続いて、看取りに関する調査結果を報告する。療養病棟入院基本料1の入院患者のうち、全退院患者のうち死亡退院をした患者は4割5分(45.4%)であった。

 その死亡退院の患者869名中、容態の急変で死亡された方が15%、治療による回復を目指していたにもかかわらず死亡された患者が約4割(39.9%)となっている。

 医療の継続と看取りのために入院されていた患者は約4割であった。治る見込みは非常に厳しいけれども医療を継続しなければいけない患者がいる。結果的に看取りになった患者が44.3%だった。一方、医療の必要性がなく、看取りのために入院されていた、すなわち施設等に行くことが可能であった患者はわずか2.5%にとどまっている。

 この結果を見ていただいてもお分かりのように、決して看取りだけのために入院しているわけではない。「療養病床で看取りをそれほどしなくても、施設でもいいのではないか」という意見もあったが、そうではない。医療を提供しつつ亡くなる患者が非常に増えているという実態が明らかになったと思う。
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中心静脈栄養、「入れる段階でもう少し慎重に」

 中心静脈栄養に関しては、代替可能な手段があるにもかかわらずカテーテルを入れている方は極めて少ないこともこのデータから分かった。もちろん、中心静脈栄養を長期継続することを是としているわけではないが、転院してこられた時に既に中心静脈栄養のカテーテルを入れている患者が一定程度いらっしゃる。4割近くこうした患者がいることを考えると、急性期病院において中心静脈栄養を入れる段階で、その是非をより慎重に検討すべきであり、療養病床で検討できればもう少し違った結果になる。

 いったん入れたカテーテルを抜くことは極めて困難である。例えば、経管栄養でも一度装着されてしまうと抜くということは難しい。中心静脈栄養を入れた状態で入院した患者は、栄養摂取の手段として入れているわけなので、他の代替可能な手段がなければ、このカテーテルを抜くということは死に直結する。他院の医師が何らかの理由で入れたカテーテルを抜くということは、かなり厳しい話し合いになることもある。そういうことも踏まえ、こういうデータが出たということをご理解いただきたい。

 ただ、今回の調査は当協会の役員病院を対象に実施したため、いわば意識が高い病院のデータである点であることも申し添えたい。以上である。

                          (取材・執筆=新井裕充) 



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