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「療養病床は看取りの場ではない」 ── 入院分科会で池端副会長

Posted By araihiro On 2019年7月4日 @ 5:17 PM In 審議会,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は7月3日、次期改定に向けて療養病棟入院基本料などをテーマにした厚生労働省の会議で、「医療療養病床は決して看取りの場ではない。急性期病院から重度の患者を受け入れて治療したが、やむを得ず亡くなっている方が圧倒的に多い」と理解を求めた。

 厚労省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の2019年度第4回会合を開き、①療養病棟入院基本料、②障害者施設等入院基本料等、③医療資源の少ない地域、④入退院支援(その2)──の4項目を主な議題とした。

 厚労省はこの日の分科会に、18年度調査の結果を分析した資料を提示。療養病棟入院基本料については、医療区分や在宅復帰機能などに関する2つの論点を挙げ、委員の意見を求めた。
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064_2019年7月3日の入院分科会資料「入─1」

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治療した結果、やむを得ず亡くなっている

 質疑では、委員から「医療区分3であった方はかなりの方が死亡されているので、やはり看取りの場所になっているという感じもする」との指摘があった。調査によると、重度の患者が多い療養病棟(医療区分3)での死亡退院は約8割(79.2%)となっている。

 この発言に対し、同分科会に委員として出席した池端副会長は「医療療養病床の死亡退院が多いのは事実」としながらも、「医療療養病床が看取りの場かと言えば、決してそうではない。どんどん急性期から下りてきた重度の方を受け入れているので、治療した結果、やむを得ず亡くなっている方が圧倒的に多い。医療区分2・3が8割以上という療養病棟では、治療の段階の先に亡くなっているという現状がある」と理解を求めた。

20190703入院分科会
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IVHの患者さんの行き場がなくなってしまう

 医療区分3の患者に対する医療処置について、中心静脈栄養(IVH)をめぐる議論もあった。調査によると、療養病棟入院料1・2ともに中心静脈栄養が最も多く、半数以上を占めた。

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030_2019年7月3日の入院分科会資料「入─1」

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 これについて、委員から「本人や家族が『食べられないときは胃瘻を入れない』と決めていても、IVHだったら穴を開けないから抵抗がないということもあるかもしれない」との指摘があった。

 池端副会長は「中心静脈栄養のほとんどが急性期病院からの持ち込みであり、療養病床で中心静脈栄養を入れることは少ない」と強調。中心静脈栄養が5割を超えていることについては、「胃瘻を入れていても誤嚥したり嘔吐したりしてIVHになってしまう患者さんの行き場がないので、療養病棟に来るケースが最近とみに増えている」とし、「中心静脈栄養だけを入れて医療区分3はけしからんという議論になったら、そういう患者さんの行き場所がなくなってしまう」と説明した。
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1桁のn数で表を作成、「ちょっとどうなのか」

 池端副会長はまた、褥瘡に関するデータについて指摘。「3とかゼロというn数でこういう表を作っているのは、ちょっとどうなのか。整合性がないデータではないが、数字が少ないのが気になる」とコメントした。

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035_2019年7月3日の入院分科会資料「入─1」

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 入院時から退院時までの褥瘡の変化について厚労省が示した資料によると、入院時に発赤なしで退院時も発赤なし(変化なし)の患者が87.1%と多くを占めたが、悪化した患者もいた。厚労省の担当者は「良くなる方と悪くなる方が一定数ずついるという状況が見て取れる」と説明した。

 池端副会長は「1桁の数字がほとんどだが、数字、表の読み方としてどうなのか」と疑問を呈した。厚労省の担当者は「療養病棟は退院までの日数が長く、今回の調査期間では、退院された人を分母とする調査になっている。私どもの調査では、このぐらいの回答数が限界だと思っている」と答えた。

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介護医療院への転換、「行政側も一体的に考える必要がある」

 この日の分科会では、介護医療院への転換を促進すべきとの意見もあった。調査によると、療養病棟入院基本料の「経過措置1」の病棟を持つ33施設のうち他の病棟に転換する意向であるのは20施設(60.6%)だったが、「現状を維持」は12施設(36.4%)だった。

 この結果を踏まえ、保険者団体の委員は「転換を進めていただきたいのが切なる願い。医療保険ではなく介護保険から支払う制度に移るという決断を促していただきたい」と訴えた。

 池端副会長は「介護医療院への転換がスピードアップしている感はあるので引き続き促していきたい」と応じた上で、自治体などの対応を指摘。「行政側が介護療養型医療施設からの転換を優先している。医療療養病床からの転換は、介護保険財政からするとその分が持ち出しになって介護保険料が上がることをかなり意識している。しかし、転換のほうが(社会保障費全体でみれば)コストダウンになるはずなので行政側も一体的に考える必要があるのではないか」との見解を示した。

                          (取材・執筆=新井裕充) 



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