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介護医療院等への転換意向を発表 ── 3月14日の定例会見

Posted By araihiro On 2019年3月15日 @ 11:11 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会は3月14日の定例記者会見で、介護医療院等への転換意向に関するアンケート調査の結果を発表しました。それによると、医療療養病床25:1の半分以上が20:1に転換する意向を示しており、武久洋三会長は「病棟のレベルをどんどん上げようという動き」と指摘。「20:1に移行した次の段階としては、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟に動いていく」と見通しました。

 この調査は、日本慢性期医療協会の会員1,045病院を対象として今年1月に実施し、604病院(57.8%)から回答を得ました。調査によると、2018年度改定前、会員病院の医療療養病床25:1は7,008床あり、このうち20:1に3,971床(56.7%)が移行する予定という結果でした。介護医療院への移行予定は915床(Ⅰ型521床、Ⅱ型394床)にとどまっています。
 
 これに対し、介護療養病床の多くは介護医療院に転換する予定です。18年度改定前、会員病院の介護療養病床は計1万4,618床でした。このうち、介護医療院Ⅰ型に1万408床、Ⅱ型に819床と計1万1,227床が移行する予定で、それ以外は医療療養病床20:1、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟に移行する予定となっています。

 今回の調査結果を受け、武久会長は「25:1から介護医療院等に移る所が多いと思っていたが、全く逆の結果になった。日慢協の医療療養25:1は上昇志向が強いと感じている。25:1は、介護医療院に移ることをあまり望まない」とコメントしました。

 以下、会見の概要をお伝えいたします。会見資料は、日本慢性期医療協会のホームページに掲載しておりますので、ご参照ください。

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介護分野には手厚い感じがする

 
[武久洋三会長]
 介護医療院への転換など、各病院にとって選択の機会が増えたが、当協会の会員病院はどのような方向で考えているか。病床の転換に関する意向について、当協会の会員1,045病院を対象にアンケート調査を実施し、604病院から回答を得た。その集計結果がまとまったので本日の記者会見で発表する。

 先日の介護給付費分科会では、新たな処遇改善交付金に関する具体的な対応案が大筋でまとまった。介護の分野では10年以上勤務した介護福祉士の給与を最大で月8万円引き上げる。介護保険分野にはかつて措置制度があったため手厚い感じがする。

 一方で、医療保険の病床については、処遇改善交付金がない。同じ病院で、介護保険と医療保険の両方の病棟をお持ちの所は介護職員の配置に条件が変わり、苦労している。しかも、交付金が10年間勤務すれば8万円ということになってくると介護職員が病院に残らず、介護保険施設に集中するという可能性もある。

 日本慢性期医療協会は慢性期医療をきちんと行い、医療現場と介護現場は両方とも併設している機関が多いため、これを懸念している。介護給付費分科会でも意見を申し上げているが、老健局や医政局、保険局のセクショナリズム的な判断もあり、医療側にいる介護職員に対する処遇改善はなかなかうまくいっていないのが現状である。

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25:1の半分以上が20:1にシフト

 
 こうした背景を踏まえ、今回のアンケートの結果についてご説明したい。1,045病院に対して回答したのは604病院(回答率57.8%)だった。6割近い高回答率である。

 まず、2018年度改定前の604病院(10万5,247床)の予定について。医療療養病床25:1や介護療養病床から介護医療院への移行を誘導されているにもかかわらず、現時点までで、25:1の病棟は半分以上が20:1の医療療養病床にシフトしている。

 これはつまり、医療療養病床25:1は病棟のレベルをどんどん上げようという動きである。20:1に移行した次の段階としては、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟に動いていく意向だろう。

 一般病床7:1と10:1について見ると、今後も急性期一般病床として継続する予定は6,312床となっており、1,673床の減である。また、一般病床13:1と15:1も、地域一般病床として継続する予定は1,543床で、740床減となっている。すなわち、7:1と10:1、そして13:1と15:1も、将来は減らしていこうという傾向が出ている。

 これに対して、回復期リハビリテーション病棟の将来予定は1万2,975床で、1,087床の増加。地域包括ケア病棟の将来予定は7,300床であり、2,410床の増加となっている。障害者施設等も増加する予定である。

 介護医療院の予定について見ると、Ⅰ型は1万1,778床、Ⅱ型は1,734床で、計1万3,512床が設置される予定となっており、Ⅰ型に移りたいという回答が圧倒的に多い結果となった。介護療養病床は全国で5万床ぐらいあるが、当協会の会員病院からは介護医療院に1万3,512床しか移らない。

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介護療養の多くは介護医療院にシフト

 
 会員病院の医療療養病床20:1の転換意向について見てみる。2018年度改定前、医療療養20:1は4万3,235床あったが、将来もそのままにしておこうというのは3万8,139床(88.2%)で、約5,000ベッドはどこかへ動く。どこへ動くかというと、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟に1,000床ぐらいずつ動き、介護医療院へ動くのが約1,000床という見込みになっている。

 では、医療療養病床25:1はどうか。介護医療院に行くよりは医療療養20:1にシフトしたいという希望がある。2018年度改定前、25:1は7,008床だった。このうち、25:1のまま残るのは1,234床にとどまり、20:1に3,971床(56.7%)が移行する予定。介護医療院のⅠ型には521床、Ⅱ型に394床(計915床)が移行する予定である。

 介護療養病床について見ると、改定前は1万4,618床だった。このうち介護医療院Ⅰ型に1万408床、Ⅱ型に819床と計1万1,227床が移行する。介護療養病床の一部は、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟に多少動くが、大多数は介護医療院にシフトする。

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7:1の9割は、急性期一般を継続

 
 一般病床7:1の転換意向についても調べた。それによると会員病院の7:1は改定前、3,647床で、このうち3,286床(90.1%)が急性期一般病床として継続予定である。このほか400床ぐらいは医療療養20:1や回復期リハ病棟、地域包括ケア病棟等に移る。

 一般病床10:1については、改定前に4,338床あり、このうち2,872床(66.2%)が急性期一般病床として継続予定である。これ以外は、地域包括ケア病棟に526床(12.1%)、障害者施設等に411床(9.5%)等に移行する。

 一般病床13:1は改定前、973床しかなかった。このうち地域一般病床として継続予定であるのは536床(55.1%)で、244床(25.1%)が地域包括ケア病棟に移る。

 一般病床15:1の改定前病床数は1,310床。このうち729床(55.6%)が地域一般病床として継続予定である。移行を予定しているところでは、地域包括ケア病棟への395床(30.2%)が主な移行先である。

 回復期リハビリテーション病棟は改定前1万1,888床で、このうち回復期リハ病棟に残るのは1万904床(91.7%)。介護医療院に移行する予定が39床ある。未定が700床以上あることが特徴的だ。

 地域包括ケア病棟の改定前病床数は4,890床であった。将来予定は、地域包括ケア病棟を継続するところが4,448床(91.0%)である。回復期リハ病棟や地域一般病床に移る病床もでてくる予定となっている。

 障害者施設等の改定前病床数は4,988床。このうち障害者施設等を継続する予定が4,600床(92.2%)となっている。これ以外は、回復期リハ病棟や地域包括ケア病棟に動きたい所も少しある。介護医療院のⅠ型に移りたい所もある。

 特殊疾患病棟の改定前病床数は1,692床であった。将来予定は、特殊疾患病棟を継続する所が1,484床(87.7%)である。残りは、回復期リハ病棟や障害者施設等、医療療養20:1などに移る予定。

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日慢協の医療療養25:1は上昇志向が強い

 
 以上、今回のアンケート調査結果をまとめると、

 ① 2019年1月現在、医療療養25:1の半数がすでに医療療養20:1などへ移行しているが、介護療養病床の転換はまだ4割弱であり、介護医療院への転換が進んでいない。
 
 ② 介護医療院への転換は、Ⅰ型とⅡ型を合わせて1万3,500床程度が転換予定であり、うち1万1,800床程度がⅠ型である。
 
 ③ 一般病床・医療療養病床・介護療養病床において、「回復期リハ病棟」「地域包括ケア病棟」に転換した病院、もしくは転換予定の病院が見受けられる。

[司会(中川翼副会長)]
 ありがとうございました。約60%の回答率はかなり高いと思う。移行先をまだ決めかねている病院もあろうかと思うが、現状では、このような結果が出た。
 

[武久洋三会長]
 医療療養病床25:1から介護医療院等に移る所が多いかと思っていたが、全く逆の結果になった。日慢協の会員の25:1は上昇志向が強いと感じている。25:1は、介護医療院に移ることをあまり望まない。

 一方、介護療養病床は、9割近くが介護医療院に移る意向を示している。しかし、介護療養病床から医療療養病床20:1等に移っている所も結構あり、動きは早かったというイメージを持っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 



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