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介護医療院への転換、「現段階では結構少ない」 ── 定例会見で武久会長

Posted By araihiro On 2019年2月15日 @ 11:11 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は2月14日の定例記者会見で、介護医療院への転換について「現段階では結構少ない」との認識を示した上で、転換促進に向けて「移行定着支援加算の算定期限を延長してはどうか」と提案しました。また、「一般病床からも介護医療院に早く転換させるべき」との考えを改めて示したほか、介護保険施設の機能の明確化を進める必要性も指摘しました。

 会見の冒頭で、武久会長は介護医療院の転換状況に触れ、「介護医療院は12月末時点でまだ113施設。13の県で介護医療院ができていない。介護療養病床は、5万3,352床のうち4,551床しか転換していない。現段階では、結構少ない」と述べ、転換促進に向けた方策を提言しました。

 続いて、15日から2日間にわたり開催される「第6回慢性期リハビリテーション学会」の概要について、慢性期リハビリテーション協会の橋本康子会長が説明し、「2040年以降を見据えたリハビリテーションのあり方などについて意見を交わしたい」と期待を込めました。

 同日の会見内容は以下のとおりです。会見資料は、日本慢性期医療協会のホームページに掲載しておりますので、そちらをご覧ください。

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2019年2月の定例記者会見

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介護医療院への転換、「現段階では結構少ない」

[武久洋三会長]
 先ほど、日本慢性期医療協会の理事会を開いた。非常に大きな改革が目白押しとなっている。それに対して、日本慢性期医療協会として、どのような対応をしていくかなどを話し合った。特に介護医療院については、非常に多くの時間を割いて意見を交わした。なかなか厳しい状況が続いているという認識のようである。

 2月の初めに1年ぶりにアンケートを採った。機能別の病棟編成をどのようにしたいかを集計している。来月には、結果をご報告させていただきたい。

 介護医療院への転換状況について、昨年12月31日までのデータが2月1日に公表された。今後、どのように対応すべきか。これが本日の主な内容である。昨年12月末時点で、介護医療院はまだ113施設。13の県で、介護医療院ができていない。

平成28年7月現在、25対1の医療療養が6万5,925床、平成29年10月現在の介護療養は5万3,352床で、これらを合わせた11万9,277床のうち、介護医療院に転換したのは7,414床で、わずか6.2%しか転換していない。介護療養病床は、5万3,352床のうち4,551床しか転換していない。現段階では、結構少ない。

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小さな市町村、「介護保険財政の安定化を」

 医療療養病床から介護医療院への転換が特に進んでいない。小さな市町村では、介護保険料が上がるのを懸念して、医療療養病床からの転換を認めようとしていない。これが大きな問題となっている。

 そこで、「地域医療介護総合確保基金」を使うべきとのご意見も一部にある。2018年度から、「医療機関のダウンサイジング」に向けた建物の改修や、不要となる建物・機器の処分、早期退職制度などにも活用することが認められているので、基金を活用すれば療養病棟から介護医療院への転換等も進むのではないかと思っている。

 過疎化が進む地方の市町村には高齢者が非常に多く、要介護者も多いので、介護保険財政が厳しくなり、保険料を上げなければならなくなる。介護保険制度が2000年にできたときは市町村単位ということで始まったが、小さな市町村は高齢化率も高く、人口がどんどん減っていく。

 介護保険制度が始まってから、そろそろ20年になる。介護保険財政が厳しい折、保険料を上げなければ財源がもたないという現状から改革をする必要があるだろう。すなわち、小さな市町村は介護保険財政を安定させるため、人口20万人程度の規模に集約して、介護保険の保険者としてはどうかをまず提案したい。

 介護保険サービスの提供量とも関係するが、全国の市町村でそれぞれ介護保険の保険料がばらばらである。将来、高齢化が進み、介護保険料が一部の市町村で高騰するようなことがないように対応すべきではないか。

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一般病床からも介護医療院に早く転換を

 限られた医療資源を最大限に生かし、医師や看護師が常駐する介護医療院は、これまでにない概念の介護保険施設であり、利便性も高い。

 25対1の医療療養病床や介護療養病床だけではなく、空床の目立つ一般病床からの転換の希望もある。一般病床からの転換ができれば、結果的に医療・介護費用を抑制できることが十分に考えられる。

 このままでは、来年3月までに介護医療院への転換が十分に進まない可能性もある。一般病床からも介護医療院に早く転換させてあげることも考えてはどうか。

 現在、病院病床の30万床以上のベッドが空いている状態になっている。一般病床が空いている割合が高い。これらの病床を介護のための病床として有効利用するために、療養病床だけではなく一般病床からも介護医療院に転換しやすくすれば、新しく介護施設をつくる必要がなく、効率的である。

 一方、入院費用の大変高い高度急性期でターミナル患者を入院治療する必要はないのではないか。ターミナル患者は緩和ケア病棟か介護医療院で看取るようにしてはどうか。

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介護保険施設の機能分化、「アウトカムが良い」

 介護医療院への転換がなかなか進んでいない現状を踏まえ、「移行定着支援加算」の算定期限を延長してはどうか。

 また、病院は治療をして病状を改善し、病気を治す所だという原則を明確にすべきである。そして介護保険施設は、それぞれの施設機能を明確に分けて運用できるようにしてはどうか。

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記者会見資料(平成31年2月14日)ページ19

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 介護医療院は要介護度も重く、病状も重い方のための施設で、看取り機能がある。老健は、比較的要介護度の軽い方の在宅復帰のための施設。特養は要介護度の重い人の収容施設。グループホームは認知症の方で、病状があまり重くない人の収容施設。そのほか、比較的元気ではあるが自宅で自立生活が困難な方のための施設等がある。

 特養には医療スタッフが昼夜いるわけではないので、医療スタッフが少ない特養での看取りを促進するよりも、医療スタッフが多くいる介護医療院での看取りを進めるべきではないか。

 現在、多くの種類の施設ができているが、機能的に分けて利用するほうが効率的である。また、あらゆる施設で最期まで看取るのは難しい。多くの種類の施設を効率的に機能別に運用するほうが、本人のためにはアウトカムが良い。

 医療スタッフがほとんどいない施設でも、一度入所すれば、そこで最期まで看取ることはスタッフに過大な業務となる。厚労省は機能を見事なまでに明確に分けて、いろいろな施設をつくってくれているので、現場にいる私たちスタッフは厚労省の指し示す方向に向かって、努力するべきではないかと思う。

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生活を豊かにする慢性期リハビリテーション

[池端幸彦副会長]
 続いて、明日から埼玉県川越市で開催する「第6回慢性期リハビリテーション学会」について、慢性期リハビリテーション協会の橋本康子会長からご説明いただく。

[橋本康子会長]
 第6回慢性期リハビリテーション学会のご案内をする前に、慢性期リハビリテーションについてご説明させていただきたい。慢性期リハビリテーションというのは、読んで字のごとく急性期のあとはすべて慢性期リハビリテーションである。急性期後の回復期、生活期、終末期、すべてを含めて、その期間に行うリハビリテーションを慢性期リハビリテーションであると私たちは考えている。

 先ほど武久会長もおっしゃったように、やはり機能をきちんと分けることが大事である。そのほうが円滑に医療・介護サービスを提供できる面もある。厚生労働省も機能分化や連携を重視して、いろいろな機能を持つ病院や設備をつくっている。もちろん急性期医療でもリハビリテーションは必要なのだが、急性期医療はやはり命を助けることが第一の目的であるので、そのあとの慢性期の間にきっちりとリハビリをしていくことが今後さらに必要ではないかと思う。

 とかくリハビリテーションというと、手足を動かしたり、歩いたり、そうした身体機能の回復だけを目的にしていると思われがちであるが、慢性期のリハビリテーションでは、生活をするために必要な動作、例えば食事をするとか、トイレで排泄するとか、服を着るとか、人とコミュニケーションを取るとか、そういった人が生きていく上で必要なことをできるようにするのが慢性期リハビリテーションである。

 それだけではない。就労や復職、旅行に行くことなど、人生のQOLを高めるとか、人の生活を豊かにするための支援をすることも慢性期リハビリテーションの重要な役割ではないかと思っている。

 今後、高齢化も進み、少子化で労働人口は減っていくというときに、やはり慢性期リハビリテーションをしっかり充実させて、労働人口を上げていく。なかなか大変かもしれないが、少なくとも仕事に就ける、復職ができる人を増やしていくことは大事な役割ではないかと思っている。

 そういったことを考えて、慢性期リハビリテーション医療に私たちは頑張って取り組んでいる。その成果を明日から始まる第6回慢性期リハビリテーション学会で示したい。シンポジウムには、日本リハビリテーション医学会理事長の久保俊一先生や、厚生労働省保険局医療課長補佐の小塩真史先生、それから厚生労働省老健局老人保健課の木内哲平先生をお招きした。日本慢性期医療協会の武久洋三会長を交えて、2040年以降を見据えたリハビリテーションのあり方などについて意見を交わしたいと思っている。

 シンポジウム2では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の各協会の会長にお越しいただくほか、基調講演や特別講演、教育講演などを通じて、地域包括ケアや医療・介護連携、介護医療院、在宅リハビリテーションの現状などもテーマにしている。ぜひ、ご参加いただければありがたい。以上である。

                          (取材・執筆=新井裕充) 



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