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「病院等での勤務を10年に通算できるか」── 社保審分科会で武久会長

Posted By araihiro On 2018年11月23日 @ 11:11 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 月額平均8万円相当の処遇改善が期待される介護職員の勤続年数「10年以上」の考え方について日本慢性期医療協会の武久洋三会長は11月22日、介護人材の更なる処遇改善策について審議した厚生労働省の会議で、「病院の一般病床などに勤務した期間を10年に通算できるか」と質問しました。厚労省の担当者は「その取り扱いについても、ご議論をたまわりたい」と回答しました。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)の介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大理事長)の第165回会合を開き、当協会からは武久会長が委員として出席しました。

 この日の議題は、①介護人材の処遇改善について、②介護保険サービスに関する消費税の取扱い等について──の2項目で、このうち①が議論の中心となりました。

 同日の会合で厚労省は、これまでの議論などを踏まえ、事業所内での配分についてA~Cの3パターンを示しました。

 Aは「経験・技能のある介護職員に全て配分」とし、Bは「経験・技能のある介護職員に加え、他の介護職員に配分」、Cは「経験・技能のある介護職員、他の介護職員に加え、その他の職種に配分」としています。

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01_P13介護人材の処遇改善について

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 武久会長は、こうした提案などを踏まえ、次のように述べました。

 「安倍首相が1,000億円を投入し、10年以上勤めていたら賃金を8万円上げるというニュースが新聞のトップで流れました。私が運営している事業所の介護職員も『10年いると8万円も上がるんだ』と言って、あの当時は話題になっておりました。
 しかし、10年勤務した人みんなに8万円をくれるのではない雰囲気です。あの報道から考えると、『私、10年経ったのに2万円しかくれないの?』と職員から言われるのではないかと思いますが、これは公平性という点ではある程度、仕方がないとは思います。
 この10年という期間の問題ですが、例えば大きな全国チェーンの訪問介護の所であれば、東京事業所から他の事業所に移るとか、また医療法人と社会福祉法人の両方あるようなグループの所では、3年ごと、4年ごとに勤務場所が変わるような場合もあります。この10年をどう見るかということがネックになると思います。
 いろいろな事業所を持っている所が多くあります。特にわれわれのように慢性期医療に携わっている所は、病院と介護施設、さらには通所系も訪問系も展開している所がありますから、これを通算できるのかどうか。
 そのあたりは、ある程度はっきりさせていただきたいということと、トータルで支給して頂いて、それを各事業所が適宜分配するという方法がいいのかどうか。10年以上勤務した職員を各事業所で把握することはできますが、それを監査する場合にはかなり複雑になるでしょう。
 先ほど申しました、いろいろな事業所なり、違う企業体あるいは同一のグループのあちらこちらで勤務したという場合の10年間の算定の仕方について、お聞かせ願えればと思います。以上です。」

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02_厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長_20181122
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 これに対し、厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は、次のように答えました。

 「まず、先ほどの図で申し上げますと、9ページ「論点」の『経験・技能のある介護職員』、論点2のご指摘だと思いますけれども、『勤続10年以上の介護福祉士を基本としつつ、一定柔軟に運用できるようにしてはどうか』とお示ししており、それをどうすべきかというご指摘かと思います。
 ここは今までも、いくつかご意見を頂いているところでございます。

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03_P4介護人材の処遇改善

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 4ページ「これまでの議論における主な意見」の『経験・技能のある職員の考え方』の所に『対象者の選び方について、定着促進等の観点から、10年以上の考え方について、同一事業所、同一法人ではなく業界単位で考えることにしても良いのではないか』というご意見を書いているところでございます。
 こういうことを踏まえて、ご議論をいただければと思います。以上です。」

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05_介護給付費分科会全体風景20181122
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 その後、各委員の発言がしばらく続いたあとに、武久会長が改めて次のように質問しました。

 「先ほども申しましたが、4ページ「これまでの議論における主な意見」に書かれている10年以上の考え方について眞鍋課長から説明を受けましたけれども、これは委員の意見であって、厚労省側の考え方が示されているのではないと思います。
 基本的に、介護福祉士で10年以上の方に対して支給された金額を、介護福祉士ではない介護職員にも配るというのもよいとは思いますが、実際問題として、先ほど言いました10年の考え方がひっかかってきます。病院の中でも介護療養病床とか介護医療院は介護事業所になると思うので、この10年の中に入ると思います。病院の中のデイケア等も入ると思います。
 しかし、医療療養病床や地域包括ケア病床、一般病床などで勤務した期間は、今の判断では、算定範囲の10年におそらく入らないのではないでしょうか。
 実は、7対1の病棟でも患者の平均年齢が70歳以上になっており、後期高齢者の割合が7割近いという状況です。看護専門の方は、『介護は看護の一部である』と今でも主張されておりますが、介護の職員が非常に増えておりまして、その中でも国家資格である介護福祉士が増えています。『看護が介護も含む』という考え方から、専門化した介護の分野という考え方に変わってきております。従って、急性期病院にも高齢者がたくさんいる状況ですと、そこでも介護福祉士の存在が非常に重要になってきます。
 現状では、こういう医療保険の病棟に勤務した期間は10年間には算定しないことになるのではないかと思いますけれども、後期高齢者が非常に増えている状況では医療の病床でも介護職員が多く必要です。
 医療・介護を現在のような仕組みで分けていることについて、もう少し、お考えいただければと思います。10年の中には、医療保険の病棟に勤務している期間は入らないと、現在のところは理解してもよいのかということをもう1回確認させてください。よろしくお願いいたします。」

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 これに対し、眞鍋課長は次のように答えました。

 「9ページ「論点」にありますとおり、そこもご議論の対象であろうと思っています。原則から考えますと、そのように取り扱うのが適当だと思いますけれども、私どもとしては、事業所内の配分のところにおいては、『勤続10年以上の介護福祉士を基本としつつ、一定程度、柔軟に運用できるようにしてはどうか』というように、アロワンスを認めてはどうかというご提案をしております。この取り扱いについてもご議論をたまわれればと思っております。」

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06_P9介護人材の処遇改善について

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                          (取材・執筆=新井裕充) 



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