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消費税対応、「国民の健康を守り介護を担えるように」── 11月12日の介護分科会で武久会長

Posted By araihiro On 2018年11月13日 @ 11:11 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は11月12日、消費税引上げに向けた対応案について議論した厚生労働省の会議で、「国民の健康を守り介護を担えるようにしていただきたい」と述べました。武久会長は、給食や清掃など外部業者への委託費用について「人件費率が非常に高い医療・介護の分野において、人件費には消費税が掛からないと言いながら、実質、非常に大きく掛かっている。関連産業も含めて存亡の危機に瀕する可能性もある」と指摘しました。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)の介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大理事長)の第164回会合を開き、「介護保険サービスに関する消費税の取扱い等」を主な議題としました。当協会からは、武久会長が委員として出席しました。

 厚労省は同日の会合で、消費税引上げに向けた主な意見を整理した上で、「今後、平成29年度介護事業経営実態調査や団体ヒアリングの結果等を踏まえ、10%への引上げに向け、①介護報酬による上乗せ、②基準費用額、補足給付、③区分支給限度基準額等の対応についてどう考えるのか」との論点を提示。①~③について、それぞれ対応案を示しました。

 武久会長は、厚労省が示した論点や対応案、各委員の意見などを踏まえ、次のように述べました。

 「税金のこと、特に消費税のことは非常にわかりづらいのですが、人件費には消費税はかからないとなっていると思う。ところが、資料1の18ページから委託給食のことを考えると、平成29年調査の『食費』43,644円のうち、給料と思われる『調理員等』にかかる費用26,089円は、食費全体の約6割となる。
 要するに、委託では、委託費の中の人件費の分の消費税を払っていることになるのではないか。給食については約6割であるが、例えば清掃業務については、人件費以外はモップ代と洗剤ぐらいの消耗品であり、ほとんどは人件費と思われる。また、介護報酬の請求とか診療報酬の請求のような事務委託についてもほとんどが人件費である。
 そうすると、病院や施設側は消費税が今後15%、20%に上がっていくと仮定すると、人件費には消費税が掛からないのに委託することによって人件費に大きく消費税が掛かるというのであれば、自己防衛上から、自分で雇ったほうがよいということになり委託業者の運営がだんだん厳しくなる。
 最近は、委託給食も食材が上がってきたり人件費が上がってきたりして、委託費用の金額を上げるという動きもでてきている。利益を確保するために食事内容がだんだんと悪くなっているという話も時々聞く。入所者にとっては、『施設側が食事を出している』と思っているため、『そこの施設は食事が悪い』という評価になり、入所を避ける方向に動く可能性もある。
 基本的に、一番の問題は人材派遣の場合はまさに人件費にまるまる消費税が掛かること。介護給付費分科会での検討が適切かどうかは分からないが、人件費率が非常に高い医療・介護の分野において、人件費には消費税が掛からないと言いながら、実質、非常に大きく掛かっている。委託業者が存亡の危機に瀕する可能性もある。 
 消費税は、今は2%上がるだけだが、15%ぐらいにまで上がってくると、非常に大きな問題になる。
また、人件費のこととは別に、土地代には消費税はかからないと言いながら建築費には掛かる。そろそろ改築をしないといけない施設も沢山あると思うが、建築費が10億円掛かるとすると1億円の消費税になる。その1億円分の消費税を採算ベースに乗せるのは並大抵のことではない。
 消費税は、財務省の範疇のことであろうが、厚労省として、委託業務における人件費に対して、何らかの要望を財務省に出していただくと現場としては非常にありがたい。難しいかとは思うが、現状をご理解たまわり、施設や医療機関が順調に運営できて国民の健康を守り、介護を担えるようにしていただくというのが厚労省としての務めだと考えるので、人件費関連について、ご意見を承れれば大変ありがたい。以上です。」

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事務局_20181112介護給付費分科会
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 これに対し、厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は、次のように述べました。

 「やや分科会の議論を越えるかもしれないが、本来、施設で働かれる職員の方々はその施設の管理者、運営者である方がきちんと労働者として直接雇用を行い、そしてまた働き方改革なども踏まえて定着率が上がるようにすることだと思っている。
 どうしても直接雇用しにくい職であるとか、あるいはなかなか手が回らないところに関して、職員派遣を利用するという実態があることは承知している。
 私どもとしては、まずはきちんと事業所を運営する中で、どのような雇用形態がいいのか、そして、どこまで直接雇用で行い、どこからを派遣で補うのかということについては、どちらかと言うと、報酬の問題とは別に労働環境をどうとらえるかということで、施設として考えていただく話ではないかと思っている。
 その上で、では介護報酬で手当てをするという場合に、今の現場での働き方や、そして派遣で働いている方々の割合というものをきちんと把握をし、それがきちんとまかなわれるような、そういう報酬を設定していくことが大事だと思っている。以上です。」

                          (取材・執筆=新井裕充) 



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