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「一般病床の4.3平米は6年以内に廃止を」 ── 11月8日の定例会見で武久会長

Posted By araihiro On 2018年11月9日 @ 11:11 AM In 会長メッセージ,協会の活動等 | No Comments

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は11月8日の定例記者会見で、「一般病床の4.3平米は6年以内に廃止してはどうか」との考えを示しました。武久会長は「終戦から73年。1950年ごろまでは、6畳一間に家族4、5人が寝ていたが、いまやみんな1人1部屋。ところが、病気になって入院したら6人部屋。とても狭い。朝起きて、隣に手を伸ばせば、向こうのベッドの人と握手ができる。いつまでもこれでいくのか」と疑問を呈しました。

 この日の会見のテーマは、①4.3㎡/床の病床は6年以内に廃止してはどうか、②老健から介護医療院への転換を認めてはどうか──の2項目です。

 ①について武久会長は、地域包括ケア病棟では4.3平米と6.4平米との間に1日最大5,200円の差が付いていることを指摘し、「1カ月で15万6,000円、1年間で187万円。100床で考えると1億8,720万円、10年間では18億7,200万円となる」と説明。「このお金で病室環境の改善をせよ、すなわち4.3平米から6.4平米にせよという優しい思いやりではないか。6.4平米にするなら、この金額で改装の費用は十分に出る。どうして動かないのか、不思議でならない」と述べました。

 ②については、老健に関する調査結果などを示した上で、「老健のすべてを同一機能に集約するのはなかなか厳しい」との見解を提示。介護医療院の創設に触れながら、「老健は病院からの在宅復帰先から外れることになった。ぜひ老健から介護医療院にも転向できるようにしてほしい」と主張しました。

 以下、会見の要旨をお伝えいたします。会見資料は、日本慢性期医療協会のホームページ(http://jamcf.jp/chairman/2018/chairman181108.html)に掲載されておりますので、ご参照ください。

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02_11月8日の記者会見

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一般病床の4.3平米は6年以内に廃止してはどうか

[武久洋三会長]
 今年も終わりに近づいてきた。報酬改定が終わり半年以上が経った。今後どうなるか。現状はどうか。そんなことも含めながらお話をしたい。

 世の中の流れ、医療機関の流れがどのような方向に動くか。われわれは、ある程度予測をしながら病院や施設の運営をしなければならない。そういう意味で、非常に重要なポイントがたくさんある。この記者会見を機会とし、いろいろなことを勉強させていただきたいと思う。皆さんも、この医療・介護業界で長くおられるため、非常によく分かっておられる。われわれが考えていることをどう評価していただくか、これがわれわれとしても勉強になる。

 本日の記者会見は、2つの項目がある。①4.3㎡/床の病床は6年以内に廃止してはどうか、②老健から介護医療院への転換を認めてはどうか──の2項目である。

 まず①について説明する。1ベッド当たり4.3平米の基準値は古い基準である。医療や介護の改革が進められる中で、医療療養病床25対1が6年後に廃止になり、介護療養病床がなくなるなど、いろいろなことが動いている。15年前に一般病床の広さは6.4平米になっているが、15年経っても、いまだに4.3平米が残っている。

 皆さん、ご存じのように、一般病床は2003年に4.3平米から6.4平米になっている。療養病床は、1992年の療養型病床群の創設時から6.4平米で4人部屋までとなっている。しかし一般病床では15年もの間、経過措置で認められているのが4.3平米である。もうそろそろ、6年以内に廃止してはどうか。

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4.3平米と6.4平米では1日最大5,200円の差が付く

 地域包括ケア病棟は、一般病床からも療養病床からも算定が可能である。地域包括ケア病棟は1から4まである。病床面積が6.4平米の地域包括ケア病棟は1・2を算定できて、4.3平米しかないところは3・4しか算定できない。

 地域包括ケア病棟1から4の要件を比較すると、「自宅からの入院が1割以上」「緊急入院が3カ月で3人以上」「在宅医療の提供」「看取りに関する指針」などとある。3と4は4.3平米でもいいが、1と2は6.4平米以上なければいけない。

 地域包括ケア病棟の4.3平米と6.4平米では、1日最大5,200円の差が付く。5,200円×30日で、1カ月に15万6,000円の差が付く。15万6,000円×12カ月とすると、1年間で187万円。31日の月も入れると1年で1床当たり200万円近い差が付く。100床で考えると1億8,720万円、10年間では18億7,200万円となる。

 100ベッドで年間1億8,720万円以上の差が付いている。このお金で病室環境の改善をせよ、すなわち4.3平米から6.4平米にせよという優しい思いやりではないか。6.4平米にするならこの金額で改装の費用は十分に出る。どうして動かないのか、不思議でならない。

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1人1部屋、病気になって入院したら6人部屋

 4.3平米の6人部屋が20室あるとすると、全部で120床。これを6.4平米の4人部屋に変更すると80床となる。現在、全国の病床利用率は、75%を切ってきている。4.3平米の6人部屋の空床はもっと多いと考えられる。

 120床の病床利用率60%は72床。80床の病床利用率90%は72床。どちらが将来有利かを考えてはいかがだろうか。6年以内に4.3平米の6人部屋以上は認められなくなるか、大幅な減算が予想される。

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07_記者会見資料(平成30年11月8日)

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 病院は長らく低医療費政策で、厳しい現状にある。4.3平米の120床が6.4平米の80床になるとき、何らかの救済措置があってもいいのではないかと想定される。保険点数上、狭い所と広い所が全く同じ1日分の入院料というのは、もうそろそろ厳しいと考える。6.4平米の4人部屋になってから21年も経って、まだ続いていたら、これはおかしい。

 終戦から既に73年経つ。1950年ごろまでは、6畳一間に家族4、5人が寝ていたが、いまや田舎へ行っても、経済的に裕福でなくても、みんな1人1部屋。ところが、病気になって入院したら6人部屋となる。とても狭い。これは国が認めている。朝起きて、隣に手を伸ばせば、向こうのベッドの人と握手ができる。いつまでもこれでいくのか。

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10年以内に約40万床減ることも覚悟を

 地域包括ケア病棟だけが6.4平米と4.3平米に5,200円の差を付けられた。厚労省は全国の病床削減を強く進めており、都道府県の地域医療協議会に指導をしている。現在、約90万床の一般病床のうち、4.3平米の病床が24万床あると仮定して、これを6.4平米に転換すると、病床数は24万×6分の4で16万床になる。すなわち、8万床の病床削減となる。

 地域医療計画により各都道府県の二次医療地域で、県によっては2025年までに全部で3,000床から4,000床のベッドを削減することが決まっている。介護医療院に転換すると病床ベッドではなくなるため、その分、ベッドが減る。これが約10万床。4.3平米の一般病床を6.4平米にすると約8万床削減であり、合計約18万床の減少となる。

 現在、90万床ある一般病床の病床利用率は75%を切ってきている。今後、どんどん利用率が下がる可能性がある。これが将来、3分の2の66.7%になると仮定すると、約9%の病床利用率の低下となってくる。

 療養病床は、約30万床のうち約10万床が介護医療院に転換すると約20万床となり、このうち6年以内には、25対1の療養病床が廃止される。20対1の療養病床が少し増えると仮定しても、一般病床70万床、療養病床20万床、病院病床は全部で90万床となる。現在より約30万床の削減となる可能性がある。

 全病床数は現在、精神病床を入れて約155万床。このうち約120万床が一般病床、その他病床である。精神病床が34~35万床ある。精神病床も約10万床ぐらい減少する可能性もあり、全病床としてはこの10年以内に合計約40万床減ることも覚悟しなければいけない。

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2030年までの約10年間の変化に付いていけるか

 病院とは治療をする所であり、長期療養する場所ではない。今回の改定でも、そのように宣言されている。すなわち、20対1の医療療養病床は医療区分2、3が8割以上、5割以上の25対1は6年間で廃止する。長期に療養するという所はもう病院ではなくていいという宣言である。

 したがって、一部の難病や重度障害者のための病棟は残るが、全病床は110万床台になる可能性がある。やがて精神病床を除く病床は急性期約30万床、回復期と呼ばれる地域包括の所が約40万床、慢性期が約20万床という時代に近々なることを覚悟しておかないといけない。

 療養病床の代わりに介護医療院をはじめ特養や老健、さらには居住系の施設が増加してきている。2030年までの約10年間の変化にどう付いていけるかが医療・介護事業者のターニングポイントとなる。

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老健から介護医療院に転換できるように

 続いて、本日のテーマ②について説明する。老健からも介護医療院へ転換できるようにすべきではないか。まず、福祉医療機構が11月5日にアンケート調査の結果を発表したので示す。

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ページ17_記者会見資料(平成30年11月8日)

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 当協会の老健委員会でも調査を実施した。18ページをご覧いただきたい。改定前と改定後を比較した。赤い部分は、「ベッド稼働率75%未満」「ベッド稼働率75%以上80%未満」である。

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ページ18_記者会見資料(平成30年11月8日)

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 これを見ると、「超強化型」はなんと20%が「ベッド稼働率80%未満」で、「ベッド稼働率90%以上」が48.0%。「在宅強化型」は、「ベッド稼働率85%以上90%未満」が58.3%。「基本型」では、「ベッド稼働率90%以上」が約7割を占めている。

 19ページを見ていただきたい。「超強化型」は稼働率が95%以上のところもあるが、85%未満、75%未満と、稼働率がバラついている。

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ページ19_記者会見資料(平成30年11月8日)

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 下の表、3年前と比較した稼働率の推移を見ると、全体としては約40%が稼働率が低くなっている。「超強化型」で稼働率が低くなっているのは23.3%。しかし、「在宅強化型」「加算型」「基本型」「介護療養型」は全体として稼働率が低くなっている。

 老健を分類すると、「病院併設型」「福祉施設併設型」「単独型」「都市型」「地方型」となる。介護医療院が創設されたことにより、老健は病院からの在宅復帰先から外れることになった。このため、老健のすべてを同一機能に集約するのはなかなか厳しい。今回の調査結果からもそのように見ている。したがって、ぜひ老健から介護医療院にも転換できるようにしてほしいというのが今日の主張である。

 老健には医師がいるのに、入所者が熱を出してもレントゲンを撮れない。この老健がどうなっていくか、会員のうち600人が老健をもつ日慢協としては非常に心配である。

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極端に狭い病床は既に寿命を終えた

 まとめとして、一般病床の4.3平米の病床は近い将来なくなる可能性が高いということを考えて対応しなければいけない。狭い大部屋で、普段いる住まいよりも極端に悪い環境で病気を治すと言っても、非常に厳しい。日本は高度経済成長しているわけであるから、医療機関もその人たちに合わせて環境を良くしていくというのは必須の課題である。

 病院は療養の場所ではなく治療をする場所である。療養病床は、医療区分2・3が8割以上という厳しい決まりである。慢性期治療病棟以外は認められない。「療養」という概念が病院から消えていく。老健からも介護医療院へと転換させるべきである。

 太平洋戦争が終わって、5年から10年間の間に病院の建設ラッシュになり、その時に建てられた病院が1985年の地域医療計画ができた頃に駆け込み増床等を行った結果、病床数が増えた。この頃に建築された病院は2020年で既に35年から40年経っている。これから病院を改築する際には病床を削減していかなければいけない。

 2040年まで高齢化は進行する。病床は削減されるが、その代わりに居住系介護施設が増加する。2040年以降は病院も居住系施設もさらに減少していく。このように大きな転換期を迎えている。われわれはそういう時代の真っただ中にいる。

 在宅が非常に重要視されている。在宅医療のほとんどの部分、99%は慢性期医療である。日頃から診ている患者さんが急に熱を出した、急に調子が悪くなったからといって、すぐに大学病院や大きな救急医療センターに救急車で運ばれるというのはどう考えてもおかしい。在宅患者の近くで慢性期医療を担う多機能な病院が、高齢者の軽度・中度の救急患者を引き受けなければいけない。そうでなければ日本の医療は持続しない。今、大きな転換期にさしかかっている。極端に狭い病床は、もう既に寿命を終えたとわれわれは思っている。私からの説明は以上である。

                          (取材・執筆=新井裕充) 



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