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「医療区分の抜本的な改革をやるつもりはあるか」── 中医協の入院分科会で池端副会長

Posted By araihiro On 2018年10月18日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は10月17日、入院医療に関する調査について審議した厚生労働省の会議で「次の改定に向けて医療区分の抜本的な改革や見直しをやるおつもりが今回、医療課にあるのか」と迫りました。これに対し厚労省保険局医療課の森光敬子課長は、医療区分の設定などに「特に矛盾があれば変えざるを得ない」と理解を示しながらも、「いまの所はまだ抜本的に何かを変えるということで検討しているものはない」と答えました。

 厚労省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の平成30年度第2回会合を開き、当協会から池端副会長が委員として出席しました。

 厚労省は同日の会合で、入院医療について今改定の影響を調査するためのスケジュールを示すとともに、調査に協力する医療機関宛に配布する「調査票」を示し、委員の意見を求めました。

 この日の分科会では、各委員から設問や選択肢などに関する指摘がありましたが、最終的には座長一任の形で了承されました。
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02_尾形裕也分科会長_20181017

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 厚労省は、今回の議論などを踏まえて調査票を修正し、最終版を11月上旬の中医協・診療報酬基本問題小委員会に提示する予定です。中医協総会で正式に了承を得られれば調査に取りかかり、来年3月ごろに調査結果が報告される見通しとなっています。
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01_調査スケジュール

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意見を反映できずに議論を終えてしまう

 
 厚労省の説明によると、調査結果が出るまでの約半年間、入院医療分科会が開催される予定はありません。このため、次期改定に向けた具体的な調査内容(調査票)に関する同分科会での審議は、今回が最初で最後となりました。

 質疑の前半で、池端副会長は今後のスケジュールについて確認。「約半年間、この分科会が開かれないとすると、その間は、療養病床の医療区分等々の抜本的な改革などを議論できないまま次の改定を迎えてしまう。われわれの意見を全く反映できずに、議論を終えてしまう可能性がある」と危惧し、厚労省側の見解をただしました。ほかの委員からも、今後の議論の進め方に関する意見が出されました。

 これに対し厚労省の担当者は「委員からお尋ねいただいている各ワーキング・グループとの関係や、この分科会全体で今年度どのようにしていくかについては、また改めてご相談の上、ご説明していきたい。今日は、それをご説明できる資料を用意できていない」と理解を求めました。

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03_事務局_20181017

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医療区分、「10年以上経って制度疲労もある」

 
 入院医療について同分科会が担当する調査は全部で7項目あります。このうち2018年度調査は4項目、19年度調査は3項目となっています。この日の分科会では、18年度実施分の4項目に関する調査票が示され、これについて各委員が意見や要望などを述べました。

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04_調査項目

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 会議の開始から1時間半が経過し、主な意見が出尽くした終盤になって、尾形分科会長が「そのほか、ご要望や全体を通じた意見があれば」と発言を促しました。

 池端副会長は「療養病床の医療区分に関しては、10年以上経って制度疲労もあるので抜本的な改革を求める意見がこれまで出ていたが」と切り出し、今後の見直しに向けた厚労省の考えを尋ねました。

〇池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)
 全体的なことで冒頭でも少しお話をいたしましたが、今回、2020年改定に向けての入院医療分科会ということで一応、確認をしておきたいと思います。
 療養病床の医療区分に関しては導入から10年以上経ち、前回(16年度調査)、前々回(14年度調査)から分科会において「制度疲労もあるので抜本的な改革を」という意見が出ていましたが、前回改定のときに、改定に向けた調査結果から、医療区分1と2・3は、ある程度、きちんと整合性があるという結論になりました。一方、医療区分2と3の区別はデータを分析しても、「重症度がちょっと違う」「段階的になっていないね」というような資料も出てきました。
 次の改定に向けて医療区分の抜本的な改革や見直しやるおつもりが今回、医療課にあるのか。それとも、いや、やっぱりもうこれはある程度、少しずつ微調整で次もいくのかということを質問したい。
 というのは、今日この段階で決めないと、来年3月に同分科会が開かれる時には、「改定まで、もう時間がないから」ということで、また先延ばしになってしまう。
 医療区分に関して、「基本的に整合性を保てるのでこのまま当分いきます」ということなのでしょうか。そのへんについて、そろそろ結論を出していただかないと、療養病床を運営している者としては、「また変わるんじゃないか」と不安を持つ先生方もたくさんいらっしゃる。結論を出さなくても結構ですが、現時点での医療課としてのお考えがあれば聞かせていただきたいのですが、いかがでしょうか。

〇厚労省保険局医療課・森光敬子課長
 いますぐにここで回答するということはなかなか難しいところではあると思います。ただ、医療区分の設定などに特に矛盾があれば、それは変えざるを得ないと思いますし、変えるための検討をしなければいけないと思っています。一応、これまでの経緯を把握しているところでは、「抜本的に見直しを」というご意見はあったけれども、データを見たところでは大きな矛盾はなかったと理解しております。
 今回、もし何か検討するのであれば、「より適切なものがある」というご提案とか、そういうものがあれば広く受け付けたいと思っておりますけれども、いまの所はまだ、「抜本的に何かを変える」ということで、検討しているものはございません。

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05_全体風景_20181017

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「医師の指示の見直し」に関する設問は削除へ

 今回の調査では、対象となる施設の種類に応じて、調査票をA~Fの6種類に分けています。具体的には、急性期病院に対する調査には「A票」を使い、慢性期医療を中心とする病院には「C票」「D票」を使います。

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06_2018年度調査全体の概要

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 「A票」「B票」に関する質疑では、日本医師会や病院団体の委員から「医師の指示の見直しに関する設問の『1ー3』は不要ではないか」との意見があり、「1-3」を削除することで合意しました。ただ、「医師による診察(処置、判断含む)の頻度」という類似の項目(1-2)は残します。

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07_医師の指示の見直し

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 厚労省の担当者は「今回、(設問)『1-3』を削除することについて事務局として特段、『どうしても』というこだわりを持っているところではないので、ここでのご意見を踏まえて、『1-3』は不要ではないかということであれば『1-3』は削除ということで、よろしいかと思っている」と応じました。

 池端副会長は、「医師の指示の見直し」の頻度に関する設問に対して医療系の委員が拒否感を示していることに理解を示しながらも、これまでの調査との整合性を図るために「1─3」を残す必要性を指摘しました。

【池端副会長の発言要旨】
  「1-3」に関しては、私も前回の改定に向けた議論の中で意見を述べさせていただきました。この「1-3」という設問によって、「医師の指示の見直しがほとんどないということは、療養病床はほとんど何も医療をしていないのではないか」などと言われたこともあります。しかし、むしろこのような設問のほうに問題があるということを指摘させていただきました。
 そうした議論を踏まえて、前回の調査では「1-2」(医師による診察の頻度)という設問をつくっていただいた経緯があります。 ただし、それ以前の調査結果との整合性が不明な点もあり、「1-2」「1-3」の両方を残すことになったと記憶しております。ですから、(その後の経過を考えて両設問に齟齬がないと判断できれば、)私自身は今回は「1−3」は無くしてもよいのではないかと思っています。

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身体拘束ゼロに向けた取組の発信も「慢性期の役割」

 池端副会長はまた、慢性期医療に関する「C票」「D票」に関する質疑で、身体拘束ゼロに向けた取組等に関する調査に言及し、「夜間看護加算を届け出ている病棟だけに質問するのではなく、すべての病棟に対して質問してもいいのではないか」と提案しました。

 厚労省が同分科会に示した調査票では、夜間看護加算の届出状況について尋ねた上で、「夜間看護加算を届出ている」を選択した場合に限定して、身体拘束等の廃止などに向けた取組を質問しています。

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08_身体拘束

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 池端副会長は、療養病床を持つ病院では身体拘束の廃止が進んでいることを指摘し、「こうした取組をどんどん発信していくことも慢性期の役割だと思う」と述べました。

【池端副会長の発言要旨】
 急性期病院において身体拘束の制限を進めることは、患者さんの安全を守るためのリスクマネジメントとの関わりで非常に難しい点もあろうかと思います。
 一方、療養病床を持つ病院においては、身体拘束の廃止がかなり進んでいると思います。この調査票では、夜間看護加算を取っている病棟にだけ質問していますが、できれば療養病床に関しては、すべての病棟で質問していただいて、現状、どういう体制があるのかを調査してほしいと思います。
 身体拘束の廃止や抑制など、こうした取組をどんどん発信していくことも慢性期の役割だと思いますので、夜間看護加算を届け出ている病棟だけに質問するのではなく、すべての病棟に対して質問してもいいのではないか、と思いますので、ご検討いただければと思います。

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ACPの調査、「質問の仕方を変えてもいいのでは」

 
 今回の調査では、新たに「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」に関する設問が加わりました。患者本人の意思が「確認できる場合」「確認できない場合」などについて、意思決定の支援状況などを調べます。

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09_ACP

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 この設問について、池端副会長は「本人の意思確認ができれば当然、01に丸を付けて、確認できなければ02に丸を付ける。01から03のすべてを考えることがACPの基準に沿った考え方なので、ACPを実施している病院では、01から03のすべてに丸が付く」と指摘し、「むしろ01が何割いるか、02が何割いるか、03が何割いるか、という設問のほうが有用なデータになるのではないか。少し、質問の仕方を変えてもいいのではないか」と提案しました。

【池端副会長の発言要旨】
 ACPは今改定で要件化されました。そのため、このような質問の仕方ですと、本人の意思確認ができれば01に丸を付けて、確認できなければ02、それでも難しい場合は03に丸を付けます。01から03のすべてを考えることがACPの基準に沿った考え方なので、ACPを実施している病院では、01から03のすべてに丸が付きます。このような質問に、どのような意味があるのかなという気もいたします。
 むしろ、療養病床に入った患者さんのうち、01が何割いるか、02が何割いるか、03が何割いるか、という設問のほうが有用なデータになるのではないでしょうか。
 今回示された設問では、「3つの要件をちゃんとやっていますよね」と丸を付けるだけのことになってしまいます。あとで調査結果のデータを活用する目的を考えますと、少し質問の仕方を変えてもいいのではないかと思います。

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入院患者票、「記入方法に関する説明を入れてはどうか」

 
 このほか、池端副会長は慢性期病院の入院患者票について、「主病名・副病名等についての記入方法に関する説明を入れてはどうか」と提案しました。

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10_主病名

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 患者の基本情報に関する「主傷病および副傷病」の設問について池端副会長は、DPCデータの提出による加算を取得していない病院にとって記入が難しい面があることを指摘し、工夫を求めました。

【池端副会長の発言要旨】
 01から06の書き方ですが、データ提出加算を取っている病院では、このような記入に慣れていると思いますが、データ提出加算を取っていない療養型の中小病院もまだまだ多いので、「医療資源」とか「医療資源2」などの欄に、どういう病名を入れたらいいか分かりにくいかもしれません。
 そのため、少し丁寧に、主病名・副病名等についての記入方法に関する説明を入れていただけるとありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

                          (取材・執筆=新井裕充) 



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