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特定看護師の現状について調査結果を報告 ── 9月13日の定例会見

Posted By araihiro On 2018年9月14日 @ 11:11 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会は9月13日の定例記者会見で、特定看護師の現状に関するアンケート調査の結果を公表しました。会見で武久洋三会長は、研修を修了した特定看護師から「フォローアップ研修をしてほしい」などの要望が寄せられたことを報告。「今回のアンケート結果を踏まえて研修や実習の見直しを行い、フォローアップ研修を定期的に開催していきたい」との意向を示しました。

 この日の会見のテーマは、①特定看護師の現状について調査結果報告、②第26回日本慢性期医療学会(鹿児島)のご案内──の2項目。

 このうち①については、当協会の特定行為研修を修了した特定看護師を対象に実施したアンケート調査の結果を報告。今後について武久会長は「日本看護協会と協調しながら優秀な看護師さんに現場で実践していただくように努力したい」と述べました。

 ②については、10月11・12日に鹿児島で開催される「第26回日本慢性期医療学会」について、藤﨑剛斎学会長(国分中央病院理事長)が概要を説明。事前の参加登録がすでに2,000人を超えていることを伝えた上で、「参加者の数では目標を大幅にクリアしているので、あとは中身であったり、いかにして来場される人たちをもてなしていけるかということも考えていかなければいけない」と抱負を語りました。

 以下、会見の要旨をお伝えいたします。会見資料は、日本慢性期医療協会のホームページ(http://jamcf.jp/chairman/2018/chairman180913.html)に掲載されておりますので、ご参照ください。

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20180913会見全体

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鹿児島で初の学会、参加予定数は2,000人超

[池端幸彦副会長]
 では、ただ今から平成30年9月の定例記者会見を始めたい。

[武久洋三会長]
 診療報酬が4月に改定されてから半年目を迎える。各現場でいろいろな問題も出てきている。当協会では、平成30年度の診療報酬改定から半年が経過した時期に、会員病院を対象とした影響度調査を実施する予定である。結果が出たら、皆さん方にご報告したい。

 また、すでにご案内しているように、10月11・12日に鹿児島で「第26回日本慢性期医療学会」を開催する。遠路ではあるが、ぜひご参加いただければ大変ありがたい。厚労省から前医療課長の迫井正深審議官がご参加されるほか、老健局老人保健課の眞鍋馨課長など、重鎮の方々にご出席いただく。

 参加予定数は2,000人を超えている。地方で行われる学会としては珍しいのではないか。本日は、学会長である藤﨑剛斎先生にお越しいただいているので、まずは今学会についてご説明していただき、その後に特定看護師についてお話をさせていただく。

[藤﨑剛斎学会長(国分中央病院理事長)]
藤﨑剛斎学会長_20180913会見 本日はご多忙の中、このようにたくさんお集まりいただき、本当に感謝している。10月11、12日と、城山ホテル鹿児島(旧城山観光ホテル)で、第26回となる日本慢性期医療学会を開催する。鹿児島での開催は初となる。

 幸いにも、事前の参加登録がすでに2,000人を超えている。当初の予想では、もうちょっと少ない1,500あるいは1,600を考えていたのであるが、非常に喜んでいる。

 参加者の数では目標を大幅にクリアしているので、あとは中身であったり、いかにして来場される人たちをもてなしていけるかということもやはり考えていかなければいけない。開催まで、「もう1カ月しかない」と考えるのか、あるいは「まだ1カ月ある」と考えるかだが、私は後者である。残りの1カ月を精一杯頑張り、「大成功」とまではいかなくとも、「なかなか良かったのではないか」という声を1人でも多くの方からお聞きしたいと考えている。

 鹿児島でお待ちしている。記者の皆さま方は参加費が無料であるので、ぜひおいでいただければと思う。よろしくお願い申し上げる。

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特定行為研修の修了者、日慢協と日看協が突出して多い

[武久会長]
 看護師の特定行為研修を実施する機関として、8月31日付で19機関が新たに指定された。厚生労働省も非常に力を入れているようで、予算もたくさん取っている。

 資料の2ページ以降は、看護師の特定行為研修を実施する機関の一覧表である。日本慢性期医療協会が実施する特定行為は9区分、日本看護協会は14区分となっており、全体の中では多い。

 日本慢性期医療協会の研修を修了した特定看護師は、1期生が44名、2期生が22名、3期生が28名、4期生が25名、合計で119名となっている。今月末に修了する5期生29名を合わせると150名近い特定看護師が日慢協の特定行為研修によって誕生している。多くの養成機関がある中で、日本看護協会と日本慢性期医療協会の修了者は突出して多い。

 6ページ、黄色い部分をご覧いただきたい。看護師の特定行為として認められている21区分38行為のうち、日慢協で実施しているのが黄色い部分で、9区分16行為となっている。

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06_2018年9月13日の会見資料

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アンケート調査を実施、回答率は97%

 当協会には看護師特定行為研修委員会がある。委員長は矢野諭副会長が務めている。同委員会は今年8月、特定行為の実施状況についてアンケート調査を実施した。

 7月1日からの1カ月間について、特定行為ごとに「実施患者数(人/月)」「延べ実施回数(回/月)」を記入してもらい、実施患者数が「0」の特定行為については、その理由を回答していただいた。

 自由記載欄では、「看護師特定行為研修の修了者として、新たに担うようになった業務内容や活動内容をお書きください」との質問や、「特定行為実施上の問題点や課題等をお書きください」、「当協会の看護師特定行為研修の指導体制全般についてご意見等をお書きください」、「当協会のフォローアップ研修にどのような内容を期待しますか。ご自由にお書きください」という質問をしている。回答者数は105名。退職者と休職者がいるので97%の回答率であった。

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特定行為の実施、最多は「気管カニューレの交換」

 特定行為の実施状況は11ページをご覧いただきたい。最も多かったのは「気管カニューレの交換」で64.4%となっている。

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11_2018年9月13日の会見資料

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12_2018年9月13日の会見資料

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 このほか、「中心静脈カテーテルの除去」41.7%、「褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去」37.9%。「脱水症状に対する輸液による補正」24.8%などだった。

 13ページをご覧いただきたい。特定行為の実施状況を実施率の高い順に並べ替えた。

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13_2018年9月13日の会見資料

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 上位はかなりの確率で行われているが、下位の部分については非常に少なくなっている。人工呼吸器に関する項目が全体的に実施されていないのは、呼吸管理をしている患者が少ないからではないかと思われる。

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特定看護師は院内で中心的な役割を担う

 14ページをご覧いただきたい。特定行為を実施しなかった「その他」の理由を挙げている。

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14_2018年9月13日の会見資料

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 最も多かったのは、「管理業務中心で病棟業務に従事していないため」という理由である。特定行為研修をスタートした当初は、病院を代表するような看護師が参加したからではないかと思われる。

 次いで多かった理由は、「医師が常時院内におり、医師の管理のため」となっている。医師が主に重症者を管理しているから特定看護師まで指示が来ない。

 次いで、「特定行為実施体制が整っていない」、「自分の業務とのタイミングが合わず、調整がつかなかった。通常業務との両立が難しい」、「業務量(夜勤等)が多く、実施できない」、「手術室での症例であり、病床業務が多忙で実施できない」、「人工呼吸器がないため、人工呼吸器に係る行為は実施できない」、「薬剤を投与する前に薬剤が薬局より払い出される必要があり、医師の処方箋がないと払い出しができない。薬剤投与するまでのシステムが構築できていない」など、このような理由が挙げられている。

 15ページをご覧いただきたい。特定看護師として新たに担当することになった業務内容や活動内容を挙げている。気管カニューレ交換、褥瘡切除などの手技に関する業務、異常の早期発見などの主治医への報告、連携施設入所者の血液データチェック、食欲不振・脱水などの早期対応など、特定看護師としての行為を行うこと以外に、院内でかなり中心的な役割を担っていることが分かる。

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15_2018年9月13日の会見資料

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実施上の問題点は、「医師の理解が得られない」

 16ページ、実施上の問題点に関する主な回答を挙げた。

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16_2018年9月13日の会見資料

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 特定看護師の業務について医師の理解が得られないという回答が多かった。常勤医師の理解は得られてきたが、非常勤・当直医師の理解が得られない、あるいは訪問看護の場合、外部医療機関の主治医などに理解してもらえないという回答があった。かかりつけ医に十分理解してもらえないこともある。これは説明不足もあると思う。

 患者や家族に特定行為自体を拒否されるという場合もあるようだ。医師が常時いるため、病院での特定行為の必要性を感じないという回答もいる。このほか、「通常業務中に特定行為ができない」、「決められた業務以外には時間がなく、実施できていない」、「特定行為を行うことに不安がある」、「実施する特定行為に偏りがあり、実施できていない行為に対する知識・技術不足などもあり、医師から任せてもらいにくい」といった回答が寄せられた。

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「他院との意見交換が大変良かった」との声も

 17ページは、当協会の看護師特定行為研修の指導体制に関する主な回答である。

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17_2018年9月13日の会見資料

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 e-ラーニングやレポート作成、スクーリング、実習、グループワークなどのカリキュラムが充実しており、講師による直接の技術指導や他の病院の受講生との意見交換ができて大変良かったという回答が多かった。また、「フォローアップ研修をしてほしい」などの要望もあった。

 18ページ、スクーリングはこのような感じで実施している。

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18_2018年9月13日の会見資料

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 今後、当協会のフォローアップ研修にどのような内容を期待するかについては、「実施できている行為の再確認」や「実施できていない行為のシミュレーション」、「新たに追加となった区分(PICC挿入、中心静脈カテーテル除去)の研修」、「他院の修了生との情報交換」、「事例検討会」、「最新の情報が欲しい」などの回答があった。

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自治体によって研修受講の補助に差がある

 厚労省は特定看護師の制度に対して非常に力を入れている。都道府県に要請して、特定看護師の研修を受ける人に対して最大20万円を補助する事業などを実施している。いろいろな特定行為に対して補助をしていただける状況になっており、これが年々増えている。ただ、自治体によって特定行為研修の受講に関する経費の補助に差がある。

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21_2018年9月13日の会見資料

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 スライドの左側をご覧いただきたい。当院のある徳島県においても看護師の特定行為研修の受講を促進している。県内には研修施設が少なく県外での受講となるため、受講を促進するために経費を補助している。補助率は2分の1で、受講者1人当たり上限120万円となっている。非常に優遇されている。

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日本看護協会と全面的に協力・協調していく

 今後、日本慢性期医療協会は日本看護協会と全面的に協力・協調していく。特定看護師の制度がより良いものとなるように厚労省に協力し、特定看護師が特定行為を適切に行えるように努力していく方向で話し合う予定である。本日、この記者会見が終了した後に日本看護協会と特定看護師について話し合いを行う予定となっている。

 当協会では、現在の看護師特定行為に対する問題点として、以下のように考えている。23ページをご覧いただきたい。

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23_2018年9月13日の会見資料

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 「指示する医師の状況」や「勤務する病院で対象患者が少ない状況」、「行えている特定行為の種類がまだ少ないこと」、「特定看護師の地位や報酬」などを挙げたい。

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病院や施設、在宅等で活躍ができるように

 当協会は10月27・28日にフォローアップ研修を開催し、講義と実技研修を実施する予定になっている。当協会の特定行為研修を修了した特定看護師が対象ではあるが、ほかからの参加も認める。

 特定看護師制度はこれからの高齢者の増加に対して、医療の中で重要な資格である。病院や施設、在宅いずれの場合でも十分な活躍ができるよう日本看護協会と協力しながら取り組んでいきたい。

 10月27・28日のフォローアップ研修は初の試みということもあって、かなり多くの方が参加されると思う。厚労省も非常に力を入れているので、日本慢性期医療協会では特定看護師について力を入れていきたい。

 特定看護師は、ICUのように非常に多忙な現場で医師のヘルプとして活躍するだけでなく、慢性期や在宅における訪問看護等の重要な業務を担う。日本慢性期医療協会では、慢性期の入院医療と在宅医療全般、介護施設等での特定看護師の活躍に非常に期待している。今回のアンケート結果を踏まえて研修や実習の見直しを行い、フォローアップ研修を定期的に開催していきたい。

 日本看護協会には認定看護師という制度があるが、認定看護師は1行為に対する認定である。そのため、特定看護師として前面に出すときにはどういう形にするかということも含め、本日これから話し合いをしに行く予定になっている。前向きな話し合いができればいいと思う。特定看護師は看護師であるから、やはり日本看護協会と協調しながら優秀な看護師さんに現場で実践していただくように努力したい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 



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