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「25対1は介護医療院には行かず、20対1へ」── 3月8日の定例記者会見

Posted By araihiro On 2018年3月9日 @ 11:11 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,役員メッセージ | No Comments

 「介護療養病床のほとんどが介護医療院に移る。25対1は介護医療院には行かず、上を目指して20対1への転換を予定している」──。日本慢性期医療協会は3月8日の定例記者会見で、今年2月に実施した「介護医療院への転換に関するアンケート結果」を示しました。会見で武久洋三会長は「4月からの半年間は様子を見ながらになるだろう。移るとすれば9月ごろからではないか。ほかの病棟などについて同時改定による影響を見た上で介護医療院に移るというステップを踏む所が多いと思われる」と見通しました。

 調査対象は、医療療養病床25対1または介護療養病床を持っている日慢協の会員病院で、224病院から得た回答を集計しました。調査結果によると、医療療養25対1(6,797病床)のうち、医療療養20:1に転換する意向があるのは3,677床(54.1%)で、未定は2,187床(32.2%)でした。また、介護療養病床1万2,754床のうち、介護医療院Ⅰ型のサービス費(Ⅰ)への転換意向は5,926床(46.5%)、未定は4,256床(33.4%)でした。

 調査結果を説明した池端幸彦副会長は「利益率を考えれば、当初はⅡ型のほうが若干良いのではないかと当協会は予想をしていたが、今のところは現在の施設基準を踏襲したⅠ型の(Ⅰ)にする意向が強い」との認識を示した上で、「今後、シミュレーションを通して若干変わるかもしれない」とコメントしました。

 以下、同日の会見要旨をお伝えいたします。会見資料は、日本慢性期医療協会のホームページ(http://jamcf.jp/chairman/2017/chairman180308.html)に掲載しておりますので、こちらをご参照ください。

3月8日の定例記者会見2

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いよいよ7対1の山を崩すことになる

[武久洋三会長]
 ようやく同時改定も終わり、詳しい通知も出た。各病院は収支がどうなるか気になるところだが、今回の改定は基本的にアウトカムを出す、よくやった所を評価するというポリシーが明らかに出ている。逆に言うと、一生懸命に今までやってきた病院は大丈夫だろうというスタンスで皆さん、とらえているようだ。

 われわれがもともと言ってきたような嚥下リハビリ、排泄リハビリ、低栄養・脱水など、いろいろなことが介護保険にも導入されている。リハビリテーションの評価をはじめ、いろいろな面で非常に大きな改定だが、日慢協が基本的なこととして常に実践してきたことを折に触れ、いろいろな所で発表してきたことで、お目に留まったことがあるとしたら非常に幸いだ。

 いよいよ7対1の山を崩すことになる。7対1は30万床くらいあると思うが、本当の急性期医療を提供する場として国は考え、10対1との差をつけようとしている。地域の一般病棟ということで、13対1や15対1は地域包括的な部分を担うことになる。将来を見渡すと、7対1だけが急性期になり、10対1以降は地域包括、昔でいうサブアキュートのような病床に持っていきたいのだろうという思いが表れた改定である。

 一方、慢性期医療については、慢性期の治療をする所でなければいらない。20対1には当然、重症の患者さんがたくさんいる。われわれの協会の会員病院の多くは20対1である。25対1は2016年まで医療区分の50%の条件がなかった。このため、状態の軽い人を入院の対象とし、20対1と1日650円の差で非常に楽な経営をしてきた療養病床の25対1もあったと思うが、今後はなくなっていく方向だろう。

 日本慢性期医療協会は慢性期に命を懸け、きちんと治し、日常生活にお戻しすることを目指して、在宅医療も含め、こつこつとやってきた。それが少しずつ実ってきたと思っている。これが改定に関する感想である。

 本日は、1~3についてお話しさせていただく。

【3月8日の記者会見の内容】

 1.介護医療院への転換に関するアンケート結果について

 2.病床数はこうして削減できる
   病床面積基準を統一すべきである

 3.お任せリハからの脱却を目指せ!!
   これからは“リハビリ力“がポイント
   「リハビリテーションに強くなろう」講座開催のご案内

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 まず、「介護医療院等への転換意向に関するアンケート集計結果」の結果をお示しする。今年2月に実施した非常にホットなものであり、25対1の病院に対するアンケートである。池端副会長にご説明をお願いしたい。

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25対1から20:1への転換意向は3,677床(54.1%)

[池端幸彦副会長]
池端幸彦副会長3月8日の定例記者会見 今年2月、介護医療院の内容等が発表された後に実施されたアンケート調査であるとご理解いただきたい。

 調査対象は、医療療養病床25対1または介護療養病床を持っている日慢協会員の医療機関で、回答病院数は224病院。病床数は1万9,551床で、このうち25対1が6,797床、介護療養病床が1万2,754床となっている。

 医療療養25:1の病床数を基準に見ると、6,797病床のうち医療療養20:1に転換する意向があるのは3,677床(54.1%)で、未定は2,187床(32.2%)だった。

 介護療養病床の病床数を基準に見ると、介護医療院Ⅰ型のサービス費(Ⅰ)への転換意向は1万2,754床のうち5,926床(46.5%)、未定は4,256床(33.4%)だった。

 利益率を考えれば、当初はⅡ型(転換老健相当)のほうが若干良いのではないかと当協会は予想をしていたが、今のところは現在の施設基準を踏襲したⅠ型の(Ⅰ)にする意向が強いということである。今後、シミュレーションを通して若干変わるかもしれないが、そのような結果が出た。

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 次のページに詳しい数字が出ているので、ご覧いただきたい。医療療養病床25対1については、93病院(6,797床)のうち20対1に転換を予定している62病院(3,677床)の大多数が2018年中に転換を希望している。

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 次のページは介護療養病床。163病院(1万2,754床)のうち、Ⅰ型のサービス費(Ⅰ)への意向が68病院(5,926床)で、2018年中の転換を予定しているのは約半数の2,834床となっている。あとは来年、再来年ということで、8割以上はこの3年の間に転換の意思がある。これはある程度、予想通りになっている。

スライド3

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 25対1の転換に関しては、先ほどの課長通知等でもあったように、複数の療養病床を持っている所に関しては、全体として8割をクリアしなければならないということで、複数の病棟で別々に5割以上と8割以上ということはできない。これも含め、今後、転換の意向が若干変わってくるのではないかということを、当協会としても注意深く見守っていきたいと思う。

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介護医療院への転換、「半年間は様子を見ながら」

[武久会長]
 4ページをご覧いただきたい。介護療養病床のほとんどが介護医療院に移る。25対1は介護医療院には行かず、上を目指して20対1への転換を予定している。このように明らかな差が出ている。

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 厚労省の意図としては、すべての介護療養病床を早めに介護医療院に移したいということであろう。今回の調査結果などから考えると、介護医療院に転換するのは今年度中に2万床まで行くかどうかだと思われる。4月からの半年間は様子を見ながらになるだろう。移るとすれば9月ごろからではないか。というのは、ほかの病棟などについて同時改定による影響を見た上で介護医療院に移るというステップを踏む所が多いと思われるからだ。1年間で2万床くらいではないかと見ている。

 25対1の医療療養病床からは、介護医療院には行かないという所が未定も含めてある。来月、また詳しく述べたいと思っているが、医療療養病床の入院料は医療保険から出る。医療療養病床から介護医療院に移ると、医療保険から介護保険に担当保険が変わるため、小さな市町村であれば財政に与える影響が大きい。例えば、50床または100床が医療保険から介護保険に移ると、介護保険料が2倍、3倍に高騰する可能性がある。

 医療療養病床25対1から介護医療院への転換を考える上で、こうした問題があるということを、私どもは厚労省の担当局に伝えている。これについては、まだはっきりとした回答を頂いていないが、われわれもよく調べた上で、現状について4月の記者会見で発表させていただきたいと思っている。

 医療療養病床から介護医療院に移りたいと思っても、社会的・経済的な要因で阻害されることがあるとすれば問題であり、できる限り解消するように努める必要がある。この問題については、日本慢性期医療協会のマターである。われわれとしては率先して、他の団体に先んじて対応したいと思っている。

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4.3平米の経過措置が17年も続いている

 本日2番目の項目、「病床数はこうして削減できる」ということについてお話しする。現在、日本のすべての病床の面積は1床当たり6.4平米とはっきり決まっている。これは平成13年3月までに許可を得て開設した病院に対するものだが、一般病床においては、現在でも病床面積が1床当たり4.3平米、何人部屋でもいいことになっている。これは経過措置となっている。

 8ページをご覧いただきたい。

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 平成13年の各都道府県知事宛ての厚生労働省医政局長通知の「一般病床について」と題する項目の中で、「病床の床面積は内法(うちのり)で患者一人につき六.四平方メートル以上とすること」とはっきり書かれている。しかし、「一部屋につき何人」とは一切書かれていない。

 真ん中のあたり、「療養病床について」の項目をご覧いただきたい。「病室の病床数は、四床以下とすること」とあり、病室の広さは1人につき6.4平米で、4人以下の部屋と決まっている。ということは、一般病床は1人当たり6.4平米だけれども、10人部屋でも20人部屋でも認められるということだと思われる。

 確かに、一般病床の一部には、例えばICUのように広い所に10ベッドぐらいある場合も考えられる。しかし、一般病棟の病床において6.4平米の10人部屋はさすがに現在はないと思われる。ただ、17年前に一般病床も6.4平米ということが決まっているにもかかわらず、経過措置として4.3平米、何人部屋でもいいということが現実にまだまだある。経過措置というものは本来、短期間に限った措置であるはずなのに、17年も続いている。それなのに、国は「病床を減らしたい」と言う。これは勝手ではないか。

 
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4.3平米と6.4平米、病床面積基準を統一すべき

 現在、7対1一般病床は4.3平米の8人部屋であろうと、6.4平米の4人部屋であろうと、入院基本料は全く同じである。

 地域包括ケア病棟では2014年度改定時に、病床面積6.4平米以上が地域包括ケア病棟入院料の1とされ、入院料2との差は1日5,000円、月15万円の差になっている。一般病棟ではこのような形になっていないが、2年後には病床面積基準を統一すべきだと思う。

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 4.3平米を仮に6人部屋とすると、4.3かける6で25.8平米になる。この25.8平米を、今の標準である1人当たり6.4平米で割ると4.03。すなわち、4人部屋ということになる。4.3平米の6人部屋を6.4平米の面積に合わせると、4人部屋になる。

 12ページ。

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 療養病床を除く精神病床と一般病床の合計である約122万床の4分の1、すなわち30万床がまだ4.3平米だと仮定した上で、今の基準である6.4平米に合わせるとすると、約30万床の病床が20万床になるということで、10万床減らすことができる。つまり、基準を守っていただければ直ちに病床数を減らすことができる。

 既に17年前に基準が6.4平米と決まっているにもかかわらず、隣のベッドの人と手をつなげるような狭いところで、経過措置が17年も続いている。明らかにおかしいのではないか。日本は他の国に比べて人口当たりの病床数が圧倒的に多い。アメリカの5倍以上。平均在院日数も日本は圧倒的に長い。病床数が多すぎれば、ダラダラと必要以上に平均在院日数が延びる。

 一般病棟入院基本料の稼働率の推移を見ると、10対1と13対1は75%を切りそうな状態であり、稼働率が非常に低くなっている。このようにどんどん空いてきている4.3平米の病床数は、公には出されていない。4.3平米の8人部屋、10人部屋が全体のうち何ベッドあるのか、許可ベッド数の中で何床あるのか。こうしたデータを厚生労働省は一切公表していない。地域包括ケア病棟を2014年に創設したときに、4.3平米と6.3平米との間に1日5,000円の差を付けたが、それ以外は変更していない。

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7対1の山、10対1の山が崩れ、急性期病床が削減

 平成30年度改定では、7対1・10対1の一般病棟入院基本料が再編・統合され、「長期療養」「長期療養~急性期」「急性期」の3区分となった。

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 真ん中の部分は「長期療養~急性期医療」としている。「回復期」とは書いていない。その理由は、17ページのように考えると分かる。

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 18ページ。現状は、「高度急性期」「急性期」が77.2万床、2025年の推計では53.1万床となっている。

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 これを見ると、急性期を約25万床減らしたいということが分かる。この25万床は回復期に持っていきたいと思っているのだろうが、回復期はやはりリハビリテーションというイメージが強く、急性期の病床は回復期になかなか移ってくれない。

 今後は、7対1の山、10対1の山が崩れ、地域包括ケア病棟になり、だんだんとそちらにシフトしていくという形で、厚労省が計画している急性期病床の削減方向に動いていくと思われる。

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リハに医師が関与することを現場に強く求める

 3番目の項目について述べる。今回の介護報酬改定では、リハビリテーションマネジメント加算が見直された。

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 リハビリテーションマネジメント加算について、現行の訪問リハビリテーションでは60単位、150単位であったものが、最大420単位という、非常に大きな単位をもらえるようになる。これは、リハビリテーションに医師が関与することの重要性を現場に強く求めたと理解している。

 すなわち、医師の詳細な指示とは、利用者に対するリハの目的と、リハ開始前または実施中の留意事項、やむを得ずリハを中止する際の基準、リハにおける利用者に対する負荷などの指示について、リハビリテーションマネジメント加算の算定要件として明確化し、別途評価する。

 また、通所リハビリテーションでも、現行の230単位(Ⅰ)や1,020単位(Ⅱ)が非常に大きく評価されている。ということは、医師はリハビリ療法士に対して明確にきちんとした指示を出すべきであり、出せるようにしなければいけない。

 しかし残念ながら、一般の医師はなかなかリハビリテーションの知識がないため、「お任せリハ」と言われている現状がある。PTやOTに「適当にやっておいてくれ」という状態では、こんなにたくさんの報酬は頂けない。日本慢性期医療協会では、リハビリが苦手な医師にはきちんと研修を受けていただき、きちんとした指示を出していただこうと思っている。

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“リハビリ力”がポイントになる

 21ページ。リハビリテーションマネジメント加算Ⅱも見直された。

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 医師はスマートフォン等のテレビ電話機能を活用して会議に参加してもよいというように、非常に緩和していただいている。後期高齢者の入院患者は急性期も含めて8割になろうとしている。やはり後期高齢者が日常生活に戻るためには、リハビリテーションが必須のアイテムである。ここを国は非常に強く推しているということだと思う。

 22ページ、回復期リハビリテーション病棟入院料1~6。これは皆さんもよく見ておられると思う。

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 この中で、入院料1や2を取ろうとすると、医師の指示や医師の観察が非常に重要となってくる。これからは“リハビリ力”がポイントになる。そこで当協会では、「おまかせリハからの脱却を目指せ!!」ということで、「リハビリテーションに強くなろう講座」を開催する。

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 これまでリハビリにあまり携わってこられなかった医師やリハ療法士の責任者の方々にぜひ参加していただき、リハビリテーションの指示の出し方、また受け方、相談の仕方などについて1日かけて学んでいただく。

 3月18日に開催する研修会では、日本リハビリテーション医学会の理事長である久保俊一先生や、京都府立医科大学リハビリテーション医学教室の石田和也先生、また南高井病院院長の西尾俊治先生、博愛記念病院リハビリテーション部長の池村健先生が講師を務める。私も少しお手伝いをさせていただき、リハビリテーションが苦手な方にリハビリテーションの知識を持っていただくための研修会を行うことになっている。

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 本日の記者会見の内容は以上である。

                           (取材・執筆=新井裕充)

 



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