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天下分け目のダブル改定! 慢性期医療はどう変わるか ── 第25回日本慢性期医療学会①

Posted By araihiro On 2017年10月20日 @ 11:11 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,官公庁・関係団体等,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会は10月19・20日の両日、「地域が創る慢性期医療 ──新たな医療への挑戦──」をテーマに、「第25回日本慢性期医療学会」を仙台市内で開催しました。1日目のシンポジウム1は、「天下分け目のダブル改定! 慢性期医療はどう変わるか ~地域を守る高度慢性期・慢性期救急の夜明け~」をテーマに開催。厚労省の医療課長や中医協で分科会会長を務める大学院教授、急性期病棟、地域包括ケア病棟、慢性期病棟の経営者がそれぞれ講演し、同協会副会長の池端幸彦氏が座長を務めました。
 

■ 3つの時間軸で地域の実情に応じて対応 ── 迫井氏

01_迫井正深(厚生労働省保険局医療課長) 厚生労働省保険局医療課長の迫井正深氏は、2025年をターゲットとした医療・介護改革の全体像について講演。そのなかで医療現場に必要な視点や考え方を示し、なかでも「地域ごとに考えていく」ことの重要性を訴えました。

 冒頭、迫井氏はこれからの医療・介護の課題に関して、「私見」と前置きしたうえで、①“日本型少子高齢社会”の到来、②ケアニーズの変化と多様性、③技術革新と保険制度の調和─3つの視点を提示しました。

 ①については、「まず人口構成の問題。いかに私たちは激動の時代に生きているかを考えていかないといけない」と警鐘を鳴らし、生産人口が減少していくなかでのマンパワーの確保、そのなかでの高齢化とその先の高齢者人口の縮小などを指摘。そのうえで「高齢化の進展は地域ごとに大きくばらつきがあり、大都市圏はこれからだが、地方ではすでにピークを迎えているところもある。地域医療構想、地域包括ケア、すなわち地域ごとの政策が必要」と強調しました。

 ②のケアニーズの変化と多様性では、感染症から生活習慣病への疾病構造の変化、認知症や老老介護、単身世帯の増加などを挙げ、「さらに、社会的入院の減少による入院受療率の低下など医療へのニーズも変わってきている」と指摘。その象徴として高齢者の軽症・中等症の患者の救急搬送が増えている現状を紹介したうえで、「救命救急センターのような施設とこの状況のバランスをどう図っていくか」と問題提起し、地域の二次救急における地域包括ケア病棟の有効活用などを示唆しました。

 ③については、オプジーボに代表される科学技術の進歩と保険制度をどう調和させていくかという視点を示したほか、医薬品やデバイスの進歩だけでなく、「ビッグデータやAIの活用などによる生産性向上も重要。遠隔診療の進展などで、医師と患者さん、医療機関と患者さんとの関係も変わってくる」と展望しました。

 迫井氏は、これらの課題への対応として、現時点での需給ミスマッチ、2025年に象徴される需要拡大のピークに向けた体制整備、2040年以降の縮小トレンドに向けたソフトランディングという地域の実情に応じた短中長期の3つの時間軸を提示。そのうえで改革の考え方の基本構図として、「体制転換と生産性向上」と「生活の視点と地域力の導入」の2つを挙げました。

 具体的な対応策としては、「地域包括ケアシステムの推進が大きな柱」と指摘。システム構築を図っていくなかで、「急性期、回復期、慢性期の機能調整と連携、すなわち地域医療構想をどう進め、地域包括ケアにつなげていくか」と述べ、「地域ごとに医療・介護をどう提供していくかが問われている」と重ねて強調しました。

 最後に迫井氏は自身を“花咲じいさん”に例え、「私の役割は、財源を有効に使い、いろいろなご意見をいただいなかですばらしい花を咲かせていくこと。ぜひともご協力とご理解をいただきたい」と締めくくりました。
 

■ 療養病棟でもDPCデータによる分析が必要 ── 武藤氏

02_武藤正樹(国際医療福祉大学大学院 教授) 中医協の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」の会長を務める国際医療福祉大学大学院教授の武藤正樹氏は、同分科会の議論を踏まえ、2018年度診療報酬改定のポイントについて講演しました。

 武藤氏は最初に、次期診療報酬改定のポイントとして、①7対1病床の要件見直し、②地域包括ケア病棟、③療養病床とDPCデータ加算──の3つを提示。①に関しては、7対1入院基本料の評価指標を示し、2016年度改定における重症度、医療・看護必要度の厳格化の背景について「本当にA項目とB項目だけで急性期の患者像を表しているのかという反省からのものだった」と解説しました。

 また、厳格化の影響により7対1病床が1年間で1万2,000床減少したことを紹介したうえで、平成28年度入院医療等の調査で、理由として「重症度、医療・看護必要度の基準を満たせないため」が最も多く、その転換先としては地域包括ケア病棟入院料1が一番多いとの結果を紹介しました。加えて、2番目に多い「休床している」という回答に武藤氏は注目し、「休床で重症者の該当率を調整し、急性期を維持しているのだろう」と分析しました。

 ②の地域包括ケア病棟については、同病棟の機能について解説したうえで、「届出病床数が急増し、併設状況も10対1病床から7対1病床、回復期リハ、療養病床とバラエティに富んでいる。この組み合わせの違いによって、地域包括ケア病床の性格がだいぶ変わってくる」と指摘。そのうえで、地域包括ケア病床における患者の流れを示し、「自院の急性期病棟の受け皿として利用されているケースが一番多い」「自宅等から来た患者さんのほうが医学的に不安定である」といった状況を伝えました。

 また、こうした状況を踏まえて同分科会で出された意見を提示。「自宅からの患者については負担がかかることが確認できた。何らかの評価を検討してもいいのではないか」、「地域包括ケア病棟は創設当初の3つの機能を育てていくことが大事」などの意見を紹介しました。問題視されやすい自院からのポストアキュートが多い点については、武藤氏自身も「あまり機能ごとに評価を細分化していくと幅広い機能を持つ地域包括ケア病床の特徴が薄らいでしまうという懸念もある。この辺は慎重に議論していきたい」と述べるにとどまりました。

 3つ目のポイントとして挙げた「療養病床とDPC提出加算」では、療養病棟入院基本料の届出状況、各療養病棟入院患者の医療区分の割合、一定期間における医療区分の変化、医療区分間の要介護度や認知症の有無などを示すなか、「医療区分2、3から医療区分1へ軽快している人もいる。しかも療養2のほうが軽快する割合が高い。もう少し詳細を調べたい」と述べたのに加え、「DPCデータで医療区分別の1日当たりの平均点数を比べると、医療区分1と医療区分2、3の間には差があるが、医療区分2と医療区分3の間ではあまり差がない」と指摘。そのうえで「だからこそDPCデータを精緻に分析していくことが必要であり、データ提出加算を拡充しようという議論になった。しかし現状では療養病床のデータ提出加算の算定は4分の1にとどまっている」との課題を示しました。

 最後に武藤氏は、慢性期におけるDPCデータの提出に関して、複数疾患を発症し経過が長いなどの患者特性や慢性期医療にとって必要のない項目があるといった問題意識を踏まえ、慢性期病棟におけるデータ提出項目案を提示。「特徴的な症状・状態の有無を入れるなど、DPCの慢性期バージョンをどうつくっていくか」と今後の議論の方向性を示唆しました。
 

■「アウトカムが整備されれば、日本の医療は大きく変わる」── 副島氏

03_副島秀久(熊本県済生会支部長) 急性期病院の立場から「縮小する急性期医療と病院の生き残り戦略」と題して講演した熊本県済生会支部長の副島秀久氏は、「地域完結型医療を目指すには、慢性期などとの連携、つまり一連托生のようなところがある」と述べ、機能分化と地域連携の重要性を訴えました。

 副島氏はまず、急性期医療を選択していくうえで、①急性期医療需要の減少、②病床機能の分化・明確化、③地域完結型医療──の3つを念頭に入れていく必要性を指摘。①については、全国と熊本県の医療介護需要予測指数を示し、「熊本県の医療需要は5%ほどしか伸びない。しかもそれは高齢者医療の需要であり、急性期は伸びない」と急性期医療の需要減少を示唆しました。

 また、②関連病床機能報告と必要病床予測の問題点として、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の定義が「いずれもあいまい」と切り捨て、「あいまいな定義から出発するとあいまいな議論になる。受療率と現時点での平均在院日数を使う限り、現状追認になるだけで、実際よりも多く推計することになる」と警鐘を鳴らしました。

 続いて、医療提供体制の国際比較を提示。日本は欧米に比べて100床当たりの医師数、看護師数が際立って少なく、急性期病床の平均在院日数が長くなっている点を示したうえで、済生会熊本病院の100床当たりの医師数45人(日本全体14.5人)、平均在院日数9.5日(同19.2日)などを紹介し、「きちんとした急性期を行うにはそれなりの人手が必要。多くの病床に人員が薄く配置されているために効率的な急性期医療ができない」と日本における急性期医療の課題を指摘しました。

 一方、副島氏は、済生会熊本病院が地域から期待されている役割として重症度、緊急度が高い「高度急性期」を挙げ、長年にわたって医療資源の集中と前方連携による集患に注力するかたわら、重症度の低い患者は逆紹介と後方連携の推進で対応してきたことも紹介。連携については、11のアライアンス病院とのネットワーク強化を付け加えました。

 さらに、このアライアンス病院の2,111床の病床機能動向についての分析結果も公表。2014年から2017年の3年間で、一般病床の割合が27.9%から18.4%に減少する一方、亜急性期病床(地域包括ケア病床)は、4.1%から14.3%に増加し、「熊本は機能分化が進んでいる」と評価したうえで、「きちんと予測を出していくと各病院の自己選択が起こる」と指摘しました。

 副島氏は、病床機能報告による2014年と2025年の予測から、あらためて「急性期病床は大きく減少する」と強調。そのなかでも大都市部は急性期を維持しやすいものの、「慢性期医療へのアクセスが悪くコストも高い。今後、東京などの急性期、慢性期のあり方が大きな議論になる」と予測しました。

 最後に労働力需給推計を示し、「生産人口の減少で労働力が急速に減少するが、これはすべての産業の課題。そのため生産性を上げていかないといけないが、日本はアメリカの60%にとどまっている」と指摘。そのうえで、医療の価値を高めていく条件として、アウトカム(有用性、満足度、便益)の最大化と、コスト(社会的コスト、副作用、時間コスト)の最小化を挙げ、「アウトカムの測定は難しいが、アウトカムとコストの正確なデータが整備されれば、日本の医療は大きく変わる」と展望しました。
 

■“懐の深い”地域包括ケア病棟が地域医療の支えに ── 仲井氏

04_仲井培雄・地域包括ケア病棟協会会長 地域包括ケア病棟の代表として登壇した地域包括ケア病棟協会会長の仲井培雄氏は、「最大で最強の地域包括ケア病棟」をテーマに講演。同協会の調査資料等を駆使して、地域包括ケア病棟の地域医療における重要性を訴えるとともに、課題解決に向けた要望・提言を発表しました。

 仲井氏は直近の地方厚生局の解析データで、地域包括ケア病床が2,011病院、推計64,400床となったことを紹介。急性期、回復期、慢性期のいずれの病床からも届出が可能であることに対し「3つあるから機能がわかりにくいと思うか、3つあるから懐が深いと思うか。もちろん私は後者」と同病床の特徴を示唆しました。

 また、地域包括ケア病棟の周辺機能を含めた4つの病棟機能を改めて紹介。なかでも在宅・生活復帰支援については、「院内多職種協働と院外多職種協働、さらにそれを結び付けていく機能が必要」と指摘したうえで、患者を生活者の視点でとらえ、病院と地域を一体と考えて、切れ目ない医療介護を提供するPerson Flow Managementの概念を提示しました。加えて、それを実現し、スムーズに連携を図っていくために全国・院内地域内共通の生活支援評価票の必要性を訴えました。

 仲井氏は、さらに地域包括ケア病棟の機能等に関する調査から得られたデータをもとに、地域包括ケア病棟を有する病院の3つの病院機能(急性期ケアミックス型、ポストアキュート連携型、地域密着型)の強みと弱みを紹介し、そのうえで、「経営への期待も大きく、ある程度の成果も伴っている。院内急性期病棟から患者を受け入れることに対して、病病連携を阻害するとの意見があるが、さまざまな地域ニーズに応え、かつ在宅・生活復帰支援を充実させていれば、大きな問題はない」との見解を示しました。

 一方、平成29年の調査で見えてきた課題として、①地域包括ケア病棟を活用して地域ニーズに応えたいが届出が困難、②在宅・生活復帰支援がさまざまな理由で充実していない─の2点を挙げ、平成30年度診療報酬改定に向けて、緊急時の受け入れの評価や医療介護福祉に関する情報共有を推進していくための入退院支援の評価の2つを要望したことを紹介。さらに平成30年以降の改定に向けた提言として、「生活復帰支援機能のアウトカム評価」、「地域における地域包括ケア病棟を有する病院のあり方」を示しました。

 なかでも在宅・生活復帰支援機能が抱える問題として、「復帰支援へ懸命に取り組むほど利益が出にくい」と分析。そのうえで「発症前の状態と比較した、退院時あるいは在宅復帰時の改善率(アウトカム)を評価していくためにも、全国・院内地域内共通の生活支援評価票が必須になる」と重ねて指摘しました。
 
 最後に仲井氏は、「地域ニーズに合わせて機能を柔軟に変えられる地域包括ケア病棟を最大限に活用しなければ、地域包括ケアシステムと地域医療構想は成り立たない」と明言し、今後もその育成に向けた意欲を示しました。
 

■ 慢性期医療はターミナルでなく治療の場 ── 武久氏

05_武久洋三(日本慢性期医療協会 会長) 「療養病床は慢性期治療病棟としてしか評価されない」。シンポジウム1の最後に登壇した日本慢性期医療協会会長の武久洋三氏は冒頭でこのように切り出し、激変する医療・介護環境のなかでの慢性期医療の将来像、療養病床がとるべき道筋を指し示しました。

 武久氏は、最初に厚労省の資料を示し、“7対1病棟の重症度、医療・看護必要度の非該当患者の36%はA・B・Cの全得点がゼロだった”ことを取り上げ、「中途半端な自称急性期病院は客観的な指標により、淘汰される。意識を変えないといけない」と警鐘を鳴らしました。
 
 そのうえで、日本の病院は高度急性期病院 (広域急性期)と地域多機能型病院の2つにわかれていくと予測。地域多機能型病院として、地域包括ケア病床、回復期リハビリテーション病床、高度慢性期病床などを挙げ、その条件として、①「ケア力」と「リハビリ力」の強化、②地域の救急患者受け入れ強化、③患者はすべて受け入れる、④退院先の確保、④在宅療養支援機能の強化─を挙げました。

 また、急性期病院から療養病床へ入院してきた患者の多くが脱水や低栄養、電解質異常、高血糖など、さまざまな機能が低下している現状を明らかにする一方、「厚労省は、療養病床や慢性期医療を矮小化し、その必要性を認めている人は少ないという被害者意識を持っている」との認識を示しました。武久氏はその根拠として、「医療療養病床に入院する65歳以上の患者の居住費の見直しで、月1万円ほど余分に支払わされる」と指摘。そのうえで、博愛記念病院における地域包括ケア病棟の重症度、医療・看護必要度は平均38.5%、在宅復帰率は8割など自院の実績を紹介しながら、「実際は意欲のある慢性期の医療チームが、急性期での不十分な治療から患者さんを救おうと必死になっている」と訴えました。

 さらに武久氏は、日本呼吸器学会が「成人肺炎診療2017」で高齢者の肺炎に対して積極的な治療を控える選択肢が明示されたことについて違和感を表明し、同院の肺炎患者203人の経過と予後について、「肺炎の発症回数に関係なく9割以上がよくなっている」と強調。「何歳だからもうターミナルということはない。その個人の体力や病状により回復できると思えば治療して改善するのが医療の役割だ」と述べました。

 今後の病床区分については、「すでに病床は機能別に病床が定められており、これからもさらに機能分化は進む。一般病床と療養病床に分類しておく必要はなくなった」と一般・療養の病床区分の廃止を求めたうえで、新たな病床別分類案を提示しました。

 一方、リハビリのあり方についても「包括評価の時代にきている。単位数評価からアウトカム評価への切り替えが必要」と言及。嚥下・排泄リハビリの重要性を強調し、膀胱直腸リハビリの実施によって5割の方が在宅復帰し、また積極的な嚥下訓練で38人の方が経口摂取になったなどの実績を紹介しました。

 最後に武久氏は、「急性期指標により急性期病床を半減」「中途半端な急性期病院の平均在院日数を短縮し、日本の総入院日数を半減」「健康寿命と平均寿命の差を半減」「定年を70歳にして元気中高年を活用」など日本の医療機関が生き残る条件を提示し、慢性期病院に対しては「地域多機能型病院を目指せ」とエールを送りました。
 

■ 患者をどれだけ治すかというアウトカム評価の時代に

06_池端幸彦座長S 講演後のディスカッションでは、まず座長の池端氏が、医療課長の迫井氏に対して「地域医療構想と診療報酬改定は違うとおっしゃっているが、一方で寄り添うとも話されている」と両者の関連について質問しました。

 これを受けて迫井氏は、ナショナルデータベースやDPCデータなど診療報酬を活用するにあたって得られる情報を地域医療構想に活用していく視点と、地域医療構想を進めていくにあたっての財政的な裏付けの視点の2つを提示。「関心があるのは後者だろう」と前置きしたうえで、「地域医療構想を見据えて地域ごとにどう考え、動かしていくのか。それが動くときに診療報酬が邪魔をしないことがまず1点。もう1つは逆に現場が動くことを想定していないのに報酬が振り回すことはあってはならない。その2つの側面をとらえて“寄り添う”と表現した」と説明しました。

 また、講演で武藤氏が指摘した慢性期医療におけるDPCデータのディスカッションに関連して、武久氏は「患者は病気をよくするために病院に来る。病気を治して患者が日常に戻るということが評価されるのは、病院として当然ではないか」と述べ、病院はターミナルの場ではなく、治療の場であることを改めて強調しました。また、「最近は明らかにそういう空気に変わってきた」と付け加え、そのパフォーマンスを図っていくためにもデータの収集に取り組んでいく必要性に言及しました。

 議論が白熱したのは、機能ごとのリハビリについて。副島氏は自院の取り組みとして、アウトカムにウェイトをおいた脳卒中や大腿骨頚部骨折の連携パスの運用を紹介し、「アウトカムベースにすることで、患者も急性期や回復期のリハスタッフもモチベーションが上がる」とそのメリットに言及。また、その際の課題として「用語や記述の方法なども連携先と揃えなければならない。そういう意味では急性期から慢性期までの標準化した評価軸も必要」と指摘しました。

 これを受けて仲井氏は、自院で実践しているPOCリハビリを紹介。「オンデマンド、かつ単位数に縛られないリハビリにより、スタッフのリハビリに対する意識が変わった。地域包括ケア病棟におけるリハ包括のよさを実感している」と述べました。また、POCリハにより、「認知症の方のリハを効率よくできる可能性がある」と示唆しました。

 武久氏は、「点数がつかなければリハビリをしないという考えを改めたほうがいい。9単位以上は保険ではみてくれないが、それ以上したらいかんと誰もいっていない」と指摘。そのうえで、「患者の身体を良くして地域の評判を得ることで病院を成り立たせていく発想に変えていくべき」とリハビリのアウトカム評価の重要性を強調し、このディスカッションを締めくくりました。

                           (取材・執筆=新井裕充)

 



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