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「平成29年度第6回入院医療等の調査・評価分科会」 出席のご報告

Posted By araihiro On 2017年8月25日 @ 1:52 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 平成29年8月24日、「平成29年度第6回入院医療等の調査・評価分科会」が開催され、池端幸彦副会長が委員として出席いたしました。同分科会で行われている「入院医療等における実態調査」の結果に基づく平成28年度診療報酬改定の検証および検討は、いよいよ二巡目に入りました。
 
 今回の分科会の議題は、「一般棟入院基本料」「入退院支援」「地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料」の3点。委員による意見交換では、▽看護師にとって大きな負担となっている「重症度、医療・看護必要度」の測定項目を既存のDPCデータ等で置き換えることはできるか、▽入退院支援をより効果的なものとするために、医療と介護の連携をどのように整合させていくか、▽地域包括ケア病棟の機能を、急性期病棟から転棟・転院する患者を受け入れている病棟と自宅等から患者を受け入れている病棟とで分けて考えるべきか、についてとくに議論が集まりました。池端幸彦副会長は、地域医療に自ら携わる医師の視点から、以下の意見を述べています。

「平成29年度第6回入院医療等の調査・評価分科会」 出席のご報告2
 
〔池端幸彦副会長の発言〕

◇ 「重症度、医療・看護必要度」の測定項目とDPCデータによる診療報酬請求情報や診療内容等との相関を検証するという試みは、一般病棟7対1における「重症度、医療・看護必要度」のカットオフ値(25%)に該当しない患者の状態像の数値化につながるのであれば、とても有意義であると思う。というのは、「重症度、医療・看護必要度」のカットオフ値に該当しない75%の患者であっても相応の医療が必要であり、また、C項目(手術等の医学状況)の評価対象となる日数を経過した患者がすぐに退院できるというわけでもなく、それらの患者の状態像がデータとして明確になれば、「元気に病棟を動き回っている患者なのではないか」という見方をあらためて払拭することになるからである。ただし、現場の作業量の負担を考慮すると、評価指標を新たにしてすべてを置き換えるというのではなく、検証によって有効なデータがあれば適宜採り入れることとし、平成30年度の同時改定時にはここまで、その次の改定時にはここまでと、段階を区切って制度設計を進めていくべきである。

◇ データ提出加算における「ADLスコア」(様式1)と「重症度、医療・看護必要度」のB項目(患者の状況等)はいずれも患者の日常生活機能を把握するものなので重複させる必要はないのではないか、と武井純子委員(社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)が述べていたこととの関連で、患者のADL(日常生活動作)については急性期と慢性期とで大きな違いはないと思うので、是非、療養病棟を含めたADLの評価方法の統一を検討していただきたい。

◇ 「患者の入院にあたり、担当の介護支援専門員から『情報提供は受けていない』という病院が3~5割程度みられたのはとても不可解である」との筒井孝子委員(兵庫県立大学大学院経営研究科教授)のご指摘には、私もまったく同感である。当院のある福井県では、県の主導により、医師も含めた多職種協働で「福井県版入退院支援ルール」を昨年4月にとりまとめ、患者が入院するに際し、病院担当者と介護支援専門員が原則3日以内に相互に必ず情報・連絡を取り合うようにしたところ、50%程度であった情報提供率が80%以上に上昇したということはすでに何度かご紹介していると思う(「福井県退院支援ルール」についてはこちら)。県全域を適用範囲としていることが特徴であるが、これがなぜ今までなかなか進まなかったのかというと、居宅介護支援事業所側は、介護報酬上、「入院時情報連携加算」や「退院・退所加算」を算定することができるが、病院側は、診療報酬上、算定要件のハードルが高い「退院支援加算」が患者の退院時に1回に限ってしか認められていないということが少なからず影響していると思う。筒井委員も言われたように平成30年度は診療報酬と介護報酬の同時改定でありチャンスなので、入退院支援に係る加算が医療と介護でうまく整合されれば、連携は一気に進むように思う。入退院支援が充実することにより、患者がどの状態まで回復すれば退院できるのかという目処をつけることができるので、治療計画も患者にとってよりふさわしいものとなる。退院前カンファレンスを退院の直前に行うだけでは入退院支援として不十分なので、患者が入院中の早い段階から介護支援専門員も共に治療を考えていくような体制の整備を目指してはどうか。

◇ 地域包括ケア病棟は、「急性期からの受け入れ」「在宅・生活復帰支援」「緊急時の受け入れ」の3つの機能を併せ持つというイメージで設けられた病棟である。たしかに、地域包括ケア病棟に入棟する前の患者の居場所をみると、急性期病棟からの受け入れと自宅等からの受け入れに機能が二分化されてきているともいえるので、自宅等から入棟した患者の医療的な状態が不安定な傾向にあるということから、「救急・在宅等支援初期加算」で評価しようという提案について反対するものではない。しかし、「急性期病棟からの転院・転棟患者」を受け入れる病棟(ポストアキュート機能)と「自宅等からの入院患者」を受け入れる病棟(サブアキュート機能)とで機能を二極化してしまうと、結局は以前の亜急性期入院医療管理料1と2に逆戻りしてしまうことになってしまうのではないか。当初イメージされた「急性期からの受け入れ」「在宅・生活復帰支援」「緊急時の受け入れ」の3つの機能を地域の実状に応じて要領よく提供していくのが地域包括ケア病棟に期待された本来の役割であり、そのパフォーマンスをよりよくするために、平成28年度の診療報酬改定では手術が包括範囲から除外されたのは周知のとおりである。地域包括ケア病棟については、機能ごとに分断していくのではなく、本来期待された3つの機能を地域で適切に提供し、地域包括ケアシステムを支援できる使い勝手の良い病棟として育てていくべきであろう。

 他の委員からの主な意見には、「『重症度、医療・看護必要度』の測定について看護師の業務の負担が危惧されているが、システムを導入しなければ測定できないような複雑な仕組みもさることながら、医師が看護師に任せきりにしていて、ほとんど協力していないということこそ問題なのではないか」(筒井孝子委員)、「地域包括ケア病棟では現在、『重症度、医療・看護必要度』のA項目(モニタリング及び処置等)とC項目(手術等の医学的状況)が施設基準となっているが、患者のADL(日常生活動作)の変化をみるためにはB項目(患者の状況等)も測定するべきである」(武井純子委員・社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)、「退院支援加算の算定要件となる患者が退院困難な要因として、『生活困窮による無保険、支払い困難』など通常は福祉的なサポートで手当てされるべきものが、たまたま医療機関で発現した場合についてまで医療保険でカバーすることになるのは若干違和感がある」(菅原琢磨委員・法政大学経済学部教授)、「地域包括ケア病棟に求められる機能は元々『在宅・生活復帰の支援』であり、急性期病棟から受け入れた患者の在宅復帰と在宅で軽度急変した患者の在宅支援とで目的自体に違いはない。たしかに医療資源投入量は後者の方が多くなるが、両者を分けて報酬に差をつけるかどうかは慎重な検討を要する」(神野正博委員・社会医療法人財団薫仙会理事長)などがありました。

 *平成29年度第6回入院医療等の調査・評価分科会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
  ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000174881.html
 



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