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「平成29年度第5回入院医療等の調査・評価分科会」 出席のご報告

Posted By araihiro On 2017年8月5日 @ 4:52 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 平成29年8月4日、「平成29年度第5回入院医療等の調査・評価分科会」が開催され、池端幸彦副会長が委員として出席いたしました。同分科会では、「入院医療等における実態調査」の結果に基づき、平成28年度診療報酬改定の影響について検証が行われております。

 今回の分科会の議題は、「療養病棟入院基本料」「障害者施設等入院基本料等」「有床診療所入院基本料」の3点。当協会の中心的課題である「療養病棟入院基本料」については、▽施設基準としてDPCデータの提出を義務付けるべきか、▽療養病棟入院基本料2(25対1)の平成30年度以降の在り方をどのように考えるのか、に議論が集中しました。

 池端幸彦副会長は、療養病床に求められる医療区分2・3の患者割合に段階的できめ細かな基準の設定を提案するなど、以下の意見を述べています。
 

〔池端幸彦副会長の発言〕

◇ 診療行為をすべて出来高とした医療区分別の1日当たりの平均点数(入院基本料を除く)は、医療区分2と3とであまり差がないという結果であった。この結果から、療養病床にもDPCデータの提出を義務付け、行われている診療行為をより詳細に分析するべきだ、という意見が出てくるのはもっともなことであり、私も療養病床における診療行為が「見える化」されていくことには賛成である。その反面、多くの療養病床が比較的小規模であることからすると、DPCデータの提出を一律に義務化してしまっては、施設基準のハードルを一気に引き上げてしまうことになるのではないかという危惧も感じている。療養病床にDPCデータの提出を義務付けることによって、病床運営に過度の負担となることのないよう十分な検討が必要である。
そこで、検討材料の一つとして、データ提出加算を算定している療養病床のうち、地域包括ケア病棟等で算定が義務付けられている病床と、義務はないが算定している病床との比率を提示していただきたい。私個人としては、算定が義務付けられている病床がほとんどを占めているのではないか、という印象を持っている。

◇ 療養1(20対1)については、入院患者の9割が医療区分2・3であり、重症度の高い患者を診ているということはすでに定着してきている。一方、療養2(25対1)については、入院患者の約4割が医療区分1で、介護療養病床と重複する患者像が多いことなどから、とくに医療区分2・3の入院患者が5割以上であることという要件をクリアできない病棟については、早期の廃止を求める意見も強い。しかし、入院患者の5割以上を医療区分2・3とする要件は平成28年度の診療報酬改定で導入されたばかりであり、5割に満たないといっても、3割5分から5割未満に分布する病棟もあるので、もう少し長い目で経過を見るべきではないか。

◇ 療養2(25対1)は今、療養1(20対1)に移るか、あるいは介護医療院に転換するかのせめぎ合いの渦中にある。療養1(20対1)への移行を阻む最大の要因は、何といっても、入院患者に占める医療区分2・3の割合を8割以上とする要件であろう。この医療区分の要件はすべて1日単位であり、例えば肺炎患者であれば、入院時に医療区分2であったとしても、その肺炎が治癒した日からすべて医療区分1と評価されことになるので、入院患者のほぼ全員が医療区分2・3の患者であってはじめてクリアできるかできないかという厳しい要件なのである。医療区分2・3の患者をどの程度引き受けるかは、病院体制や地域の事情などにもかかわる問題である。これまで「5割以上」の要件にも苦慮していたところに「8割以上」の要件をそのまま課すのは、無理を強いることになりはしないか。これからの療養病床には、急性期後の受け皿となる医療機能がより一層求められることは論をまたないので、既存の体制を有効に活用していくという観点からも、入院患者における医療区分2・3の患者割合の条件については、段階的できめ細かな基準の設定を提案したい。

◇ 療養1(20対1)における死亡退院は約4割であるが、そのすべてが静かな看取りというわけではない。療養病床には、急性期から移ってきた患者やICU(集中治療室)への転院を望まない患者に対して精一杯医療を提供し、結果として、死亡に至ったというケースがかなりあるのである。しばしば、死亡退院をそのまま看取りであると受け取っている向きから、療養病床には死亡退院が多いのに「看取り介護計画書」を立てなくてよいのですか、と言われることがあり、治療もせずターミナルケア加算を多くとっているのではないかという見方をされては甚だ不本意なので、一言申し上げたい。

◇ 医療区分上、リハビリテーションは、「リハビリテーションが必要な疾患が発症してから30日以内」を医療区分2と評価されているため、療養病床にとってリハビリテーションの提供は非常に悩ましいものとなっている。というのは、急性期で発症し、療養病床に転院してきたときにその時点で1か月以上経っていると、リハビリテーションを提供したとしても医療区分1として評価されることになって、医療区分2・3の患者割合に関する要件を満たすことが困難になってしまうからである。医療区分2・3の患者割合に関する要件を継続していくのであれば、「30日以内」をせめて回復期リハビリテーション病棟並みに60日なり90日なりに延長していただくか、リハビリテーションを提供する患者は一定期間、医療区分2・3の患者割合から除外して考えるなど、リハビリテーションの提供を躊躇することなく患者の在宅復帰に取り組めるよう考慮していただきたい。

◇ 有床診療所が果たす役割は重要であると言われて久しいが、その施設数は年々減少傾向にある。この理由をまだ十分にあぶり出せていないのではないか。私が地域で受ける感触では、有床診療所を運営する医師の高齢化と夜勤ができる看護師の成り手不足が重なって廃業に至るパターンが多いように思う。また、スプリンクラー設備必置問題や施設基準上の書類が膨大で医療監視を受けるのがとても面倒だ、という声もよく耳にする。有床診療所を本当に重要であると考えるならば、その実態を根本から洗い直し、戦略的なアプローチが不可欠である。ただし、医療機能等を把握していくにしても、有床診療所にDPCデータの提出を義務付けるのは現実的ではないので、レセプトデータを駆使していくことになる。
 有床診療所が年々減少していく中で、仮に、有床診療所の機能を他の施設類型が担うとすれば、それはやはり地域に点在する療養病床にということになるであろう。このように考えると、施設基準を一部満たしていない療養2(25対1)を一斉に廃止しようとするのではなく、必要で有効なものに変容して活かしていくという発想を持つべきなのではないか。新設される介護医療院の議論においては、療養2(25対1)と有床診療所はおそらく俎上に載せられるので、それぞれの患者像を考察するとともに、医療区分2・3以外と定義されている医療区分1の見直しも是非検討していただきたい。

 他の委員からの主な意見には、「概ね医療区分3、2、1の順に患者の状態が不安定で、医療の提供頻度も高かった、ということからすれば、医療区分を見直す必要性はそれほどないように思う」(神野正博委員・社会医療法人財団薫仙会理事長)、「医療区分1における『医学的な理由のため入院医療が必要又は入院が望ましい患者』の割合は47.1%であったが、地域医療構想ガイドラインでは、医療区分1の患者の70%を在宅医療等で対応する患者数として見込むこととしている。この両者の関係をどのように捉えていくのか」(同委員)、「病床の機能分化を進めていく上で、療養病棟と一般病棟とで別々の指標を用いて患者を評価するというのはいかがなものか。同じ指標を用いれば患者の状態を比較しやすく、より状態に合った転院を実現できる。『重症度、医療・看護必要度』をそのまま療養病棟で使用するのが難しければ、ADL区分の項目だけでも合わせることはできないか」(武井純子委員・社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)、「医療区分が1から2、3と上がるにしたがって医療および看護の提供頻度も高くなっているのに、なぜ、1日当たりの平均点数では医療区分2と3とでほとんど差が見られなかったのか。医療と看護の提供頻度ではなく、1回あたりの診療行為を単価で見ると、医療区分2と3で差はないということか」(菅原琢磨委員・法政大学経済学部教授)などがありました。

 *平成29年度第5回入院医療等の調査・評価分科会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000173464.html
 



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