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「平成29年度第4回入院医療等の調査・評価分科会」 出席のご報告

Posted By araihiro On 2017年7月22日 @ 9:38 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 平成29年7月21日、「平成29年度第4回入院医療等の調査・評価分科会」が開催され、池端幸彦副会長が委員として出席いたしました。主な議題は、「地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料」と「回復期リハビリテーション病棟入院料」についてです。

 今回の分科会で議論の切り口となったのは、筒井孝子委員(兵庫県立大学大学院経営研究科教授)による以下の2つの問題提起でした。

○地域包括ケア病棟には現在、ポストアキュートとサブアキュートの機能が求められているが、今後もこの2つの機能を併せ持っていくということでよいのか。
○回復期リハビリテーション病棟は、回復という機能に特化していくことができるのか。

 池端幸彦副会長は、地域医療の実際および医療と介護の連携の視点から、次の意見を述べています。

〔池端幸彦副会長の発言〕

20170721池端先生写真◇ 地域包括ケア病棟は元々、亜急性期入院医療管理料1と2の機能を果たすことが期待されてはじまったものであるが、地域包括ケア病棟と療養病棟を併設している病院と高度急性期病棟と地域包括ケア病棟を併設している病院とでは、対象とする患者像は当然異なる。また、病院経営者の考え方によっても、「自宅等から患者を受け入れ在宅療養を支援する機能」をどの程度果たしていくのかは変わってくる。例えば、肺炎患者については、急性期病棟を併設していればまず急性期病棟で受け入れ、状態が安定してから地域包括ケア病棟に移すことになるであろうし、地域包括ケア病棟が院内で最も密度の濃い医療を提供できる病棟であれば、少し無理をしてでも地域包括ケア病棟で治療をした上で在宅復帰を目指していくことになるであろう。もしかすると、一般病棟7対1と地域包括ケア病棟とで重症度がほぼ同じくらいの患者を診ているということがあるのかもしれない。これが医療効率の観点から適正といえるのか。院内で最も密度の濃い医療を提供できる病棟が地域包括ケア病棟である場合について、その患者像の詳細な分析が必要である。

◇ 入院医療等調査の平成28年度の結果からすると、何名かの委員から指摘があったように、地域包括ケア病棟における手術の実施状況はやや物足りないようにも見える。しかし、手術や麻酔に係る費用が包括範囲から除外されたのは、調査が実施されたわずか3か月前の診療報酬改定からなので、実際の実施状況は、平成29年度の調査結果を待たなければ判断できないのではないか。手術は通常、急性期病棟を併設していればそこで実施するであろうが、院内で最も密度の濃い医療を提供できる病棟が地域包括ケア病棟である場合には、手術が包括範囲から除外されたことによってパフォーマンスが上がったということもある。平成28年度の調査結果だけをもって、手術を包括範囲から除外したことの是非を云々するのは時期尚早である。ただし個人的には、骨折・外傷の患者が半分近くを占めているにもかかわらずその手術さえも実施していないとなると、必要な手術はすべて急性期病棟で済ませ、あまり労力をかけずとも利益を得ているのではないか、との憶測を呼ばないともかぎらないので、何らかの整合性をとる必要性は感じている。

◇ 平成28年度の診療報酬改定によって、500床以上の病床を持つ保険医療機関の地域包括ケア病棟の届出は1病棟までとされたが、地方のある市民病院の院長先生は、「とても使い勝手がよい病棟なのであと3病棟くらい設けたいのだが、病床数を減らすに減らせない。何とかならないだろうか」と嘆いておられた。回復期リハビリテーション病棟も療養病棟もあまりない地域では、地域の医療を自己完結しなくてはならないという事情があることを是非ご理解いただきたい。病棟群制度にも絡む難しい問題ではあるが、そのような声もあることを述べさせていただく。

◇ 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料は、退院の日から起算して3か月以内は週12単位まで、3か月以後は週6単位まで算定されることになっているが、あくまで要介護被保険者以外の患者を対象にしたものであり、要介護認定を受けた患者については介護保険のリハビリテーションに移行していくことになっているのではなかったか。そのため、回復期リハビリテーション病棟で集中的に提供されていたリハビリテーションが、退院後、要介護認定を受けた途端に急激に落ち込んでしまい、患者のADLの低下を招いてしまっていると痛切に感じている。このギャップをソフトランディングに導く方策を医療と介護の両方で考えていくべきであろう。

 他の委員からの主な意見には、「地域包括ケア病棟の入棟前の居場所を見ると、急性期病棟からの受け入れと自宅等からの受け入れに機能が二分化されていることが伺えるので、評価を分けて考えていくべき」(本多伸行委員・健康保険組合連合会理事)、「地域包括ケア病棟にポストアキュートとサブアキュートの機能を求めるのであれば、その施設基準として、重症度、医療・看護必要度のA項目(モニタリング及び処置等)とC項目(手術等の医学的状況)だけでなく、患者の日常生活機能を示すB項目も追加するべき」(筒井孝子委員)、「人口規模が小さく、医療資源も少ない地域では、一つの医療機関が多様な機能を担わなければならず、当然、自院での転棟が多くなる。一方、都市部では、他院からの受け入れが多くなるべきなのかもしれない。いずれにしても人口規模別の考察を要する」(藤森研司委員・東北大学大学院医学系研究科公共健康医学講座医療管理学分野教授)、「回復期リハビリテーション病棟における患者の状態は、看護必要度(A項目)や日常生活機能評価(B項目)、アウトカム評価によって把握されるが、いずれも入棟時と退棟時のデータなので、退棟に至るまでの経過を把握できるような評価も必要なのではないか」(武井純子委員・社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)などがありました。

*平成29年度第4回入院医療等の調査・評価分科会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000171237.html
 



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