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「第72回 社会保障審議会介護保険部会」 出席のご報告

Posted By araihiro On 2017年6月22日 @ 2:35 PM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 平成29年6月21日、「第72回 社会保障審議会介護保険部会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。

 ※ 資料はこちら → http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000168726.html 

 会議では、平成30~32年度までの第7期介護保険事業(支援)計画の「基本指針(案)」について確認が行われました。

 「基本指針(案)」は、平成29年5月26日に国会で成立した介護保険関連法の改正法の内容、平成28年12月の「第70回介護保険部会」の意見書、平成28年12月に改正された上位規範である医療介護総合確保方針、「一億総活躍社会」・「規制改革実施方針」・「骨太の方針」といった政府の方針や国会の議論を反映した政府の動き、平成29年の「第71回介護保険部会」で話し合われた内容、といった5つの考えを反映して作成された、との説明が事務局より行われました。

 「介護指針(案)」の資料は新旧案が上下で併記された形式で提示され、主な追加項目の意図についての説明が行われました。

 追加項目については自立支援や、「地域共生社会」と「地域包括ケアシステム」との関係性、医療計画との整合性の確保、市町村や都道府県のPDCAサイクルの仕組みづくりや都道府県の支援体制といった条文が追加されたことが説明されました。

 各委員からの意見では、介護職員の処遇に関する問題や、項目が全体的に増えるため市町村での業務が増えるのではないかといった懸念、そして介護医療院について、現在は診療報酬である医療療養25対1の病床が介護医療院に転換する際に市町村や都道府県の計画の量を超えた場合に転換できないことが起らないような対策をとって欲しい、などといった要望・意見が出ました。

 本会議での武久洋三会長の発言は以下の通りです。

【武久洋三会長からの発言】
武久洋三会長_平成29年6月21日介護保険部会 基本指針にはあまり大きく扱われていないが、今回の改正で一番の大きな変化は「介護医療院」の新設であると思う。資料の33頁に介護医療院の記述があるが、「介護療養」から「介護医療院」への移行は保険の財源上はそのままであるものの、「医療療養25対1」から「介護療養」に移行した場合に、その病院のある市町村の介護保険料が急騰するということになる。また以前開かれていた療養病床の在り方等に関する特別部会でも一般病床から介護医療院にぜひ移行したいという意見もあり、医療療養からの転換ニーズもかなり強いものがあると思われ、10万床くらいの介護医療院への転換もあるのではないか。

 今までは市町村が保険者となって介護保険に対応していたが、介護医療院が施行された後では、例えば一つの小さな市である病院の100床が介護医療院に転換したとするとその市の保険料は急騰してしまい、とても対応できない。そこで末端の事務は市町村が行うが、保険者には都道府県がなるべきではないかと思う。

 今回の介護医療院の新設はとても大きなイベントである。医療側は診療報酬が下がるので国全体としてはよいことであるが、介護保険の部分としては急騰するというアンバランスをなんとかしないことには、制度が成り立たないと、私は思っている。

 病院の側では、急性期病床を厳密化してしっかりと減らしていこうという流れがあって、一部の病床は介護医療院にシフトすることで全体の病床数を減らしつつ、病院として残った病床も機能分化して急性期から地域包括ケア病棟や回復期リハ、慢性期といった病床に再編しようという流れになっている。

 そこで介護保険の側も変化していかないといけないと思う。
 現状、老健は40万床近く、特養は50数万床ある中で、老健は在宅復帰の施設、特養は終の住処であると考えられている。しかし、今後は一つの市に一つの老健があったとした場合、100床全てが在宅復帰のための従来のような役割だけではなく、特養的な要素と医療的な要素、そして在宅復帰の要素について、地域の多様なニーズに見合った役割を、一つの老健でもっぱら担わないといけないと思う。
 要は地域地域によって、病院施設か否か、施設併設か否か、また単独なのか否か、というロケーションや状況に応じた多様な機能を持たなければ、市民のニーズに応えられないと思う。
介護保険の制度は変わったが、運用に関してはかなり考えていかなければ、今後はなかなか厳しいものがあると思う。

 私は介護医療院が始まると市町村によって介護保険料の格差が生まれるのではないかと危惧を抱いている。来年の改定に間に合わなくてもよいので、今後ご意見をいただければと思っている。
 



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