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「平成29年度第2回 入院医療等の調査・評価分科会」 出席のご報告

Posted By araihiro On 2017年6月8日 @ 6:17 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 平成29年6月7日、「平成29年度第2回入院医療等の調査・評価分科会」が開催され、当協会から池端幸彦副会長が出席いたしました。同分科会では、入院医療について平成28年度診療報酬改定の影響を調査・検証するため、「入院医療等における実態調査」を平成28年度と平成29年度の2か年で実施することとなっており、今回の分科会では、平成28年度調査結果(速報)の概要が報告されました。
 
 慢性期入院医療について調査・検証の対象となる改定内容は、①療養病棟入院基本料2の施設基準における医療区分2・3の患者割合に関する要件の追加、②医療区分の評価方法の見直し(「酸素療法」「頻回の血糖検査」「うつ症状」の定義の明確化)、③療養病棟における在宅復帰機能の評価に関する施設基準の見直し、④障害者施設等入院基本料等における脳卒中患者の評価の見直し、の4点。池端幸彦副会長は、委員による意見交換の中で、次の意見を述べています。

〔池端幸彦副会長の発言〕

池端幸彦副会長平成29年6月7日◇ 一般病棟7対1における在宅復帰率の平均が、施設基準の80.0%を大きく超える92.5%であったことから、在宅復帰率という考え方自体を疑問視する向きもある。しかし、在宅復帰率は、一般病棟だけでなく、地域包括ケア病棟および療養病棟にも施設基準として設定され、現場ではどの病床種別においても、在宅復帰機能強化加算をとる努力をし、患者の自宅での生活を目指していこうという取り組みが確立してきている。もし、在宅復帰率という考え方を見直すというのでれば、一般病棟から療養病棟までをすべて見とおした上で根本的な検討が必要であり、十分なデータに基づいて議論すべきである。一般病棟の調査結果だけをみて判断することはできない。

◇ 一般病棟7対1の退棟先は「自宅」が約70.0%を占め、「療養病床」にはほとんど退棟していないという結果であった。他方、地域では、療養病棟が在宅復帰機能強化加算をとるのは非常に難しい、との声をよく耳にする。平成28年度の改定において療養病棟の在宅復帰機能強化加算の施設基準は、「一般病棟等から入院し、自宅等に退院した年間の患者数」によって算出されることとされ、病床の機能分化が推進されているにもかかわらず、患者の流れがやや逆行しているようにも読み取れる。

◇ 「これからの退院支援は、単身世帯への対応が不可欠である」という筒井孝子委員(兵庫県立大学大学院経営研究科教授)のご指摘は、まったくそのとおりである。たとえ単身の高齢者であっても必ずどこかに身元引受人がおり、往々にしてその身元引受人は遠方に居住しているため、面会日等の調整が困難な場合が多い。身元引受人とコンタクトが取れないとしてもその意向を確認しないわけにもいかず、支援が思うように進まないというもどかしさを日々実感している。

◇ 「入院料ごとの平均在院日数」を見ると、療養病棟入院基本料1で265.4日、療養病棟入院基本料2で243.5日となっており、医療施設調査による平成26年の医療療養病床の平均在院日数が147.2日となっているのを大きく上回っている。この落差は、医療療養病床には回復期リハ病棟や地域包括ケア病棟を併せ持っている病棟もあり、それらを含めると150日前後の平均在院日数となるが、今回の実態調査の結果は、あくまで療養病棟だけを取り出した平均在院日数であるという理解でよいのか。もしそうであるとすれば、入院料ごとに見た場合であっても、療養病棟の平均在院日数は減少傾向にあるといえるのか。

⇒(中谷祐貴子・厚生労働省保険局医療課課長補佐の回答)
ご指摘のとおり。今回お示ししているのは、療養病棟入院基本料を届け出ているもののみでの平均在院日数になっており、また、療養病棟入院基本料だけの変化を経年的に見ても、平均在院日数は減少傾向にあるといえる。

◇ これは感想、嘆きなのだが、今回の実態調査の結果から、入院料ごとの一日平均単価は急性期病棟の3分の1から4分の1、回復期リハ病棟の2分の1以下であるにもかかわらず、高齢でかつ認知症のある患者を多く診て、その上、最も低い看護配置基準で一定割合以上の医療区分2および3の患者に対応しなくてはならないという療養病棟の姿が、はっきりと浮かび上がってきたように思う。現場はパンク寸前で、もう目一杯だという訴えもあり、大袈裟ではなく、医療区分2・3の患者割合を満たそうとする院長はいつ闇討ちにあってもおかしくないという状況にある。療養病棟がとても重要な機能を担っているのは間違いないので、今回の結果をよくご理解いただいた上で、ご検討をお願いしたい。

◇ 本分科会が実態調査を実施する傍ら、平成28年度の病床機能報告制度から、レセプトに病棟コードを記載することになったため、病床種別ごとにかなりのレセプトデータが集積しているのではないか。本分科会における入院医療の検証・検討にあたって、それらのレセプトデータを活用していくという予定はあるのか。

⇒(中谷祐貴子・厚生労働省保険局医療課課長補佐の回答)
病床機能報告制度は医政局の主管によるもので、直接のリンクはなく、行政内部でデータを参照するということはあるかもしれないが、本分科会の資料として利用することは今のところ予定していない。

⇒(迫井正深・厚生労働省保険局医療課課長の回答)
病床機能報告制度は元々、地域における効率的かつ効果的な医療提供体制を確保するという地域医療構想の策定に資するものであり、保険局医療課としては、医療のあり方や実態を把握するという観点から、診療報酬については当分科会が実施する実態調査の結果を踏まえて検討していくのが原則であることに変わりはない。病棟の情報(病棟コード)の取り扱いについては、全省を挙げて考えていくべき今後の検討課題である。

 他の委員からの主な意見としては、「療養病棟の退棟先で目を引くのは、自宅でしかも在宅医療の提供なしの比率が高い点である。これは、療養病棟が、一般病棟から在宅に直接復帰できない患者を多く受け入れ、その後、在宅医療が必要のないところまで患者を回復させているということに他ならない」(神野正博委員・社会医療法人財団董仙会理事長)、「療養病棟における患者の入棟元と退棟先については、20対1と25対1とに分けた分析が必要である」(尾形裕也委員・東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)、「一般病棟7対1の病床利用率が80.0%を切っているのは病床が余っているためではなく、平均在院日数を短縮せざるを得ないためであろう。いずれにしても、退棟先の患者の病態像を精査し、一般病棟7対1の地域における役割を明らかにしていかなければならない」(石川広己委員・社会医療法人社団千葉県勤労者医療協会理事長)、「一般病棟7対1から10対1に変更する際の経過措置として病棟群単位の届出が認められているが、現に届け出ている施設は8施設にすぎなかった。やはり、7対1、10対1、13対1の患者像をきちんと把握し、患者像の実態に看護配置を合わせるという本質的な議論が求められよう」(島弘志委員・社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院病院長)などがありました。
 

〇平成29年度第2回入院医療等の調査・評価分科会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000166759.html
 



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