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「第140回社会保障審議会 介護給付費分科会」 出席のご報告

Posted By araihiro On 2017年6月8日 @ 5:44 PM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 平成29年6月7日(水)、「第140回 社会保障審議会介護給付費分科会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。会議では下記の議題が話し合われました。

 1.平成30年度介護報酬改定に向けて
  (訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、口腔・栄養関係)
 2.平成29 年度介護従事者処遇状況等調査の実施について
 3.その他

(第140回介護給付費分科会 資料)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000167241.html
 
 今回の介護給付費分科会では事務局より、まず平成30年度介護報酬改定に向けて、「訪問リハビリテーション」の論点として下記の5項目が提示されました。

○訪問リハビリテーションの効果的・効率的な実施を促す観点から、訪問リハビリテーションの実施状況についてどのように考えるか。
○退院後の利用者や、状態の悪化している利用者等について、必要に応じて早期に訪問リハビリテーションが導入できるようにしていくことが重要と考えられるが、どのような方策が考えられるか。
○訪問リハビリテーション計画に沿ってリハビリテーションを提供していくにあたり、その質を担保・向上する観点から、訪問リハビリテーションの作成及び実施にかかる医師の関与の更なる促進についてどのように考えるか。
○訪問リハビリテーションの質を担保・向上する観点から、訪問リハビリテーションの実施にかかる社会参加の更なる促進についてどのように考えるか。
○医療と介護の連携を円滑にする観点から、医療保険・介護保険においてリハビリテーションに係る計画書等のあり方についてどう考えるか。

【武久洋三会長の「訪問リハビリテーション」に関する発言】
武久洋三会長_平成29年6月7日 介護保険というのはほとんど慢性期医療が担当する分野であり、急性期以外の回復期を含めた医療を慢性期医療とすると、従来はリハビリを提供する側としては、急性期の治療が終わったら早く回復期などのリハビリに患者を送って欲しいという姿勢であったと思う。
 しかし私は、リハビリは病気の発症時からすぐ始めるものがリハビリであり、急性期リハビリからしっかり行うことが、後々の介護保険のサービスの利用や診療に関する費用の効率化につながるので、重要だと思っている。

 さて訪問リハビリの論点の上から1番目と2番目について、訪問リハビリが退院後2週間以上も行われないという状況は、その間に患者が転倒をしたらどうするのかなどの危険性を考えると、理解できない問題である。
訪問リハビリでは、患者の退院に際して、事前に担当医やリハビリ職(PT・OT・ST)が患者宅の状況を見て、退院後に戻る部屋やベッドの位置、使用する機器などを決めて、退院後にはどのようにリハビリを行うかの方針についてコ・メディカルを中心に考え、退院時には一緒に寄り添って帰宅して、すぐに訪問リハビリを始めるということが重要ではないか。

 老健局も事前にスケジュールなどの計画を立てるように推奨し、報酬にもなっているが、現実としては進んでいない問題がある。居宅に戻る前の様々な準備に対して、もう少し手厚く評価する必要があるのではないか。
リハビリは最初が肝心で、すぐ始めるのが重要である。訪問リハビリが始まる前から準備に動くということを、評価の主体としていただきたい、ということを要望したい。

(補足発言)
 論点1・2番目と最後の5番目に関連して申し上げるが、先ほどの私の発言で退院2週間後では遅すぎる、退院前から介入して始めるべきだと申し上げたが、どうして訪問リハビリの開始が2週間後からなかなか早くならないのか、という問題点の理由についてお話したい。

 例えば健康な高齢者が急に脳卒中になったとする。高度急性期病院に搬送され、その後回復期を含む慢性期医療の現場に移りリハビリテーションを開始し、そして退院するが、もともと健康だったので当然のことながら要介護認定を受けていない。その際にいつ要介護認定の申請をするか、というのが重要である。とにかく要介護認定は申請してから、認定まで時間がかかりすぎる。
 要介護認定がわからない段階では、居宅サービス事業者の訪問リハビリを受けるのにはいくらかかるか等、色々な面で不安がある。

 もう一点、最後の5番目の論点の「医療と介護の連携」について、慢性期・ポストアキュートの病院の地域連携室などでは入院した時から要介護認定を申請することや、ケアマネジャーに事前に依頼をしておく必要がある。
平成28年度診療報酬改定で病院にケアマネジャーが来た場合は、病院側に評価されるようになった。しかしケアマネジャーは評価されない、というおかしな問題が起こっている。
 ケアマネジャーが患者のいる病院に何度も訪問しやすい制度を整え、在宅に帰りやすいような環境を整える必要がある。医療と介護の要であるケアマネジャーへの施策は不安がある。

 また、要介護認定の申請をした後、一次判定の結果を事前に通知できないだろうか。要介護認定が受けられるかどうかわからない状況では、事業所として利用者にどのようなサービスを行っていくか、判断に躊躇してしまう。
 しかし私は介護認定審査会の委員を長年務めているが、審査会で一次判定を覆すことは申請30件のうち2・3件程度しかない。それも二段階覆すことはほとんどない。
 そこで事前に介護認定審査会が開かれていない未確定の状況であることを伝えつつ、一次判定の内容を通知しておけば、プランを早期に立てやすくなると思う。

 また入院中から要介護の審査員が病院に訪問して、対象者の調査してもらうようにする必要があると思う。退院してからの調査ではタイムラグが非常に大きい。
 給付管理票を作らないといけない関係もあるし、医療と介護の連携を進めるために老健局で協議されて、期間が短くなるよう上手く調整していただきたい。
 システム上のタイムラグによって、本人の回復に大きな影響があるということは由々しき問題なので、この問題に関する医療と介護の連携について、ぜひ改善をお願いしたいと思う。

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 次に平成30年度介護報酬改定に向けての「居宅療養管理指導」ならびに「口腔・栄養関係」の議題について、下記の論点が事務局より提示されました。

《居宅療養管理指導」の論点》
○利用者の居住場所に応じた評価について、平成28年度診療報酬改定では、在宅時医学総合管理料等の算定要件を見直し、居住場所や単一建物での診療人数等に応じたきめ細かな評価等が行われたことを踏まえ、報酬体系の簡素化にも配慮しつつ、医療保険と介護保険との整合性の観点から、どのように考えるか。

《口腔・栄養関係の論点》
○介護保険施設における適切な口腔衛生管理の普及、充実を図るため、歯科医師、歯科衛生士の活用や歯科医療との連携についてどのように考えるか。

(栄養関係)
○施設における栄養管理体制についてどのように考えるか。例えば、
・入院率の低下や在宅復帰率の向上に資する栄養ケア・マネジメントの推進
・医療・介護の施設間における栄養管理の連携の推進等を図るための方策として、どのような仕組みが考えられるか。
○在宅要介護者の自立支援には低栄養予防が重要であり、低栄養傾向の者も一定数存在する中、通所サービスとして栄養改善サービスを推進するには、どのような仕組みが考えられるか。

【武久洋三会長の「居宅療養管理指導」に関する発言】
 まず居宅療養管理指導について、参考資料3の3頁「居宅療養管理指導の算定状況」につて、支給限度額に入らないのでもっとたくさん利用されていると思われたが、管理栄養士の利用が少ないようだ。

 自院の例ではあるが、管理栄養士は栄養施設で献立作りやカロリー計算などの栄養管理を行うのは好きだが、病棟の患者状況を見たり、検査をチェックしたりして、栄養状態表を作成して欲しいと伝えても乗り気ではない。外来患者の栄養指導はするものの、入院患者になると消極的で、ましてや在宅療養患者になると関心が乏しい。ぜひ、この分野をもう少し手厚くして欲しいという要望がある。

 あと在宅時医学総合管理料(在総管)のようなケースと本当の自宅に退院している患者との数の統計データをとっているだろうか。集合施設がメインで資料作成されているようだが、本来は自宅に帰るのが原則だと思うので把握されていれば教えて欲しい。

(厚労省からの統計に関する回答)
 居宅療養管理指導についての、いわゆる集合住宅系と在宅に関するデータについては現在、手許にない。集計できるかも含めて今後検討していきたい。

【武久洋三会長の「口腔・栄養関係」に関する発言】
 資料3の24頁を見ると介護施設から、体調が悪くなり病院に入院して、手術や治療の後にまた施設に戻ってくると、低栄養で状態が悪化していることがある。一体なにをしていたのか、ということになる。
 私は医師の立場でもあり、両方がわかるので言わせていただくと、臓器別専門医は悪いところを治すことに一生懸命注力するあまり、患者の栄養や水分についての処置が遅れがちになる。
 急性期から慢性期に軸足を移す過程で初めて、臓器の病気は治しても、患者が生きていく上での栄養と水分を摂ってもらうことがより重要であることに、やっと気づくというレベルである。
 これは医学教育の問題もあるかもしれないが、目に見える病気を早く治すことに目が行く余り、例えば熱が出たらカロリーも水分も消化するのに、充分な栄養と水分を投与しない、といった問題があり、そういった処置のまずさが介護保険から在宅にずっと引きずられていく。老健局の方もご理解いただいていると思うが、残念ながら栄養に関する問題の元凶は医療の現場にもある。

 急性期の臓器別専門医の時点から栄養や水分の問題も考えていただければ、慢性期に来る患者もだいぶ減るのではないか。もともとから低栄養や脱水の人を作らないというような強い姿勢で臨まないと、悪い部分があれば医療側に任せなさいという姿勢では、いつまでたっても治らない。

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 平成30年度介護報酬改定に向けての3つの議題が終了した後、最後に「平成29年度介護従事者処遇状況等調査」の実施に向けた、今年度の調査票案と変更点の説明、今後のスケジュールの説明と委員からの意見交換が行われました。
 



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