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第71回社会保障審議会介護保険部会 出席のご報告

Posted By araihiro On 2017年2月28日 @ 8:01 PM In 会長メッセージ,官公庁・関係団体等,審議会 | No Comments

 平成29年2月27日、「第71回社会保障審議会介護保険部会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。会議では、平成30年度~平成32年度までの第7期介護保険事業(支援)計画の「基本指針」について、意見が交わされました。

 2月27日現在、国会に提出中の介護保険法改正案(地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案)の内容を踏まえた基本指針では、厚生労働省の基本指針に即して市町村が介護保険事業計画を、都道府県が介護保険事業支援計画を定めることになっております。

 また平成30年度から開始する第7期介護保険事業(支援)計画は医療計画(診療報酬改定)と同時に行われるため、計画の整合性や一体的な作成体制の整備などを進めることも位置づけられています。

 基本指針の検討にあたって考慮されるべき要素としては、自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化等の取組の推進、医療・介護の連携の推進、地域包括支援センターの機能強化、都道府県や市町村における支援計画作成において整合性を確保するために関係者による協議の場の設置、介護離職ゼロに向けた対策、介護保険事業(支援)計画上での介護療養・医療療養病床からの転換支援の継続などが挙げられました。
 また医療計画と介護保険事業(支援)計画との整合性や、PDCAサイクルの確保などが基本的事項に盛り込まれています。

 なお基本指針の作成にあたっては、従来は厚生労働省内部にて策定していましたが、今回から介護保険部会の委員の意見を交えた上で策定を行うこととなり、委員からは前進と評価する意見が出ました。

 本会議での武久洋三会長の発言は以下の通りです。

【武久洋三会長からの発言】
第71回介護保険部会2 大きく分けて二つの要望ならびに質問を申し上げたい。

 まず参考資料4(地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案のポイント)の2頁にある要介護認定率について、埼玉県和光市の要介護認定率が大分県や全国平均に較べて半分しかないことが気になる。全国的には認定率が増えているのはともかくとして、和光市や大分県の認定率が10年前から減っている理由は、状態の改善なのか、保険料の上昇抑制による条件を厳しくしたことが理由なのか、どちらなのだろうか。

 後者の条件を厳しくしたことが理由であれば、参考資料3の5頁にもアウトカム指標についての言及があるが、条件を厳しくすることが果たして市民が納得できるものなのか、苦しめるものなのか、考える必要があるのではないか。

 前者の状態の改善という点では、参考資料3の5頁にあるアウトカム指標は要介護度が改善認定に対する評価にもなると思うので、非常に重要だと思っているが、前回(第70回)の介護保険部会でも申し上げたが、状態が良くなると提供サービスが減るため、利用者側も提供側も喜ばない側面がある。

 これはどう考えてもおかしい。そこで平成30年度に介護と医療の同時改定が行われるので、要介護度で状態の改善がなされることにインセンティブをつけるなど、介護と医療がきっちりと連携して、状態の改善による要介護率の低下を目指した制度を作っていく必要がある。この機会を逃すと次は6年後になるので、平成30年度改定に向けて非常に重要なことだと考えている。

 次に資料1(基本指針について)の6頁にある、見直し案、一の3にある「在宅医療の充実」についてお聞きしたい。見直し案に考慮すべき要素の項目に「コーディネーター等の具体的活動」という記載があるが、コーディネーターとは具体的にどの職種を指すのか。個人的には医療と介護の中間にいるケアマネジャーではないか思う。

 医療介護総合確保促進会議でも委員から現状のケアマネジャーに対して不満が多く出されていた。現在のケアマネジャーの受験は介護・福祉からの出身が8割近くを占め、制度開始当初は多かった医師や看護師などの医療系ケアマネジャーが、2006年の7対1病棟の開始に伴い看護師が病棟にシフトし、非常に少なくなっている。

 現在、主任ケアマネジャーが3名いたら特定事業者として居宅が評価されるようになっているが、基本指針を見ると、医療系ケアマネジャーが在籍していれば評価をするということを考えていかないといけないのではないか。

 なぜなら平成30年度の診療報酬改定では療養だけでなく、一般病床からも10万床近い病院が新類型の介護医療院に移行することが見込まれている。その際にはどんな薬剤を飲んでいるのか、どんな病状なのか、屋外に出て大丈夫なのか、などが判断できる医療系ケアマネジャーが必要になるであろう。

 「介護の前には医療があり、介護の後には医療がある」という状況で、介護医療院への移行で重症患者が介護の分野に移ってくることになると、医療系ケアマネジャーの育成は喫緊の課題ではないか。平成30年度の医療・介護同時改定まで担当者の方には制度設計をしっかりと組み立てて欲しい。

 最後に事務局に二つ質問をお伺いしたい。
 ①資料1の6頁にある「コーディネーター等」とはどういう職種を想定しているのか。

【質問に対する事務局からの返答】
 「コーディネーター等の具体的活動」のコーディネーターとは、医療と介護の連携を図るケアマネジャーではなく、生活支援コーディネーターを指す。生活支援コーディネーターは平成26年度の制度改正の際にできたもので、特定な職種ではなく日常生活を支援する体制の整備を行う、地域の住民の助け合いを盛り上げていく人たちを指すもので、医療介護の連携とは関係のないものとご理解いただきたい。

 ②資料1の15頁にある「在宅医療連携の核となる人材(医療と介護の両分野に精通し、各分野における連携を推進できる人材等)」とはどういう職種を指しているのか。

【質問に対する事務局からの返答】
 在宅医療連携の核となる人材については、総合確保法に基づく総合確保方針に記載されたものを写したもので、職種の特定なども含めまだ具体的には決まってはいない。武久委員の①の質問でご指摘いただいた医療介護の連携を行っていく役割に近いものであると思うが、具体的な内容はまだ決まっていないので、今後、関係部署と協議の上、これから練っていき数ヶ月後に形にする予定である。

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 なお武久会長のご発言の後には日本介護支援専門員協会会長の鷲見よしみ先生より、ケアマネジャーと医療の連携は課題として認識しており、研修のカリキュラムでも平成28年度から医療との連携ならびに地域の中で取り組める人材育成に重点的に力を入れている、というご発言がございました。

 厚生労働省 第71回社会保障審議会介護保険部会掲載ホームページ
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000153161.html
 



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