- 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト - http://manseiki.net -

「病床機能転換による試算」の結果を公表 ── 2月9日の定例会見

Posted By araihiro On 2017年2月10日 @ 6:10 PM In 会長メッセージ,協会の活動等,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会は2月9日の定例記者会見で、「病床機能転換による試算」の結果を公表しました。①老人収容所型の慢性期病院、②良質な慢性期機能を持つ病院、③ケアミックス病院、④自称急性期病院──について、新類型への転換パターン別に収支を試算したところ、11パターンのうち10パターンで増収となりましたが、「自称急性期」の1パターンのみが減収となりました。これを受け武久洋三会長は「急性期と自認している病院は、どちらにシフトしてもかなり厳しい結果」とコメントしました。
 
 試算によると、「老人収容所型の慢性期病院(200床)」は667万円~2,046万円の増収となりました。25:1の医療療養病棟100床と、介護療養病棟100床ある病院が、医療療養の50床を20:1の「医療療養病棟1」に格上げして、介護療養100床をすべて「新類型Ⅰ─2」(50床)と「新類型Ⅱ」(50床)に転換する点も共通ですが、25:1(50床)の転換先を3パターンに分けました。その結果、15:1の「回復期リハ病棟2」に転換した場合は2,046万円の増収となりました。
 
 また、200床のうち100床が20:1の「医療療養病棟1」、50床が25:1の「医療療養病棟2」、50床が30:1の「介護療養病棟」というケース(良質な慢性期機能を持つ病院)の場合について、3つのパターンに分けて試算したところ、すべてのパターンで増収となりました。パターン別に、365~1,776万円の増収が見込まれています。
 
 さらに、ケアミックス型の病院でも増収となりました。「7:1」(50床)と、10:1の「地域包括ケア病棟1」(50床)、25:1の「医療療養病棟2」(50床)、30:1の「介護療養病棟」(50床)を持つ病院について、7対1の50床と地域包括の50床はそのままで、25:1の「医療療養病棟2」と30:1の「介護療養病棟」の転換先を3つに分けて試算しました。その結果、すべてのパターンで増収となりました。309~1,596万円の増収が見込まれています。
 
 一方、「自称急性期病院」の一部では減収となりました。一般病床10:1を150床、13:1の回復期リハを50床持つ病院について、10:1を7:1に格上げした場合には271万円の増収となりますが、150床の10対1のうち100床を医療療養1(50床)と新類型Ⅰ─2(50床)に転換した場合には、279万円の減収となりました。
 
 以下、同日の会見の模様をお伝えいたします。なお、会見資料は、日本慢性期医療協会のホームページ(http://jamcf.jp/chairman/2017/chairman170209.html)に掲載しておりますので、こちらもご参照ください。
 

■ 回復期、慢性期へ、どんどんシフトしていく
 
[武久洋三会長]
武久洋三会長20170209 本日は、多数お集まりいただき、ありがとうございます。平成30年度の同時改定がだんだん迫っている。病床転換が平成30年4月から始まる。それから、2025年に向かって病棟の転換が進む。急性期から回復期、慢性期へ、どんどんシフトしていけという厚労省の方針である。

 こういった時代に生きていくのは、医療の現場にとって大変厳しい。こういう厳しい状況の中で、地域の住民により良い医療を提供するにはどのようにしたらいいか。日夜、それぞれの病院の先生方は大変な思いをしておられることと思う。

 そこで日本慢性期医療協会としては、療養病床を有する会員病院が多いこともあり、また療養病床の転換という国の大きな政策もあるので、これに向かい、これをよしとするか反対するかということも含め、前回はいわゆる新類型の「Ⅰ─1」および「Ⅰ─2」について、シフトした場合に良くなるのか悪くなるのかという試算もさせていただいた。

 本日は、2025年の病床機能区分を見据えた収支予測をお示ししたいと思う。すなわち、高度急性期、急性期、回復期、慢性期といった機能区分の中で、いろいろな病床に転換していくことによって病院の収支がどうなるかということをシミュレーションさせていただいたので、そのことについてまず説明する。

 また、3月に慢性期リハビリテーション学会を開催するので、学会長の熊谷賴佳先生から後ほどご案内させていただく。

============================================

【本日の主な項目】

 1. 病床機能転換による試算について
 2. 第4回慢性期リハビリテーション学会について

============================================
 

■ 7対1は9,000万円、医療療養2と比べて3倍以上
 
 それでは、まず1番の「病床機能転換による試算」についてご説明する。1ページをご覧いただきたい。病床機能転換による試算の前提として、病院1カ月・50床あたり収入金額を設定している。介護療養は「要介護4・多床室」ということで試算した。各種加算や食費、住居費等も仮定の金額を設定している。
 

2月9日会見資料01
 

 そうすると、介護療養の収入は1カ月2,194万円ぐらいになる。医療療養2は2,550万円、医療療養1は3,150万円、回リハ2は5,250万円となる。これを見ると、7対1は9,000万円。医療療養2と比べて3倍以上の収入がある。

 人件費については右側に書いてある。法定人数の1.1倍の職員を配置したと仮定している。そして、リハビリスタッフPT・OT・STの配置については、介護療養は患者1人1日あたり1単位のリハビリを実施できるスタッフを配置するとした。

 医療療養は、患者1人1日あたり4単位実施、地域包括ケアは3単位、回リハ2は4単位、回リハ1は5単位、7対1・10対1の一般病床は1単位と仮定した。材料費・経費については、右下の表に書いてある。このような形で試算をした。
 

■「老人収容所型の慢性期病院」はどう動いたらいいか

 2ページをご覧いただきたい。「老人収容所型の慢性期病院(200床)」について、3つのパターンを挙げている。25:1の医療療養病棟が100床と、介護療養病棟が100床あるとする。このような200床のベッドを持っている病院は30年4月以降、どう動いたらいいか。
 

2月9日会見資料02
 

 3パターンに分けて試算しているが、200床のうち「医療療養2」の50床を20:1の「医療療養病棟1」に格上げする点は、①~③すべて共通である。また、介護療養の100床をすべて「新類型Ⅰ─2」(50床)と「新類型Ⅱ」(50床)に転換する点も共通である。

 25:1の去就については、中医協でこれから議論すると思われるので、具体的なところはまだ分からないが、「将来的には施設にシフトさせよう」というのが厚労省の中枢部の考え方であろう。

 まず、パターン①について。医療療養の1病棟を20:1に上げ、もう1病棟を回リハの2に上げる。残りの100床を新類型Ⅰ─2と新類型Ⅱとした場合である。

 パターン②の場合も、医療療養25:1の50床を20:1の医療療養1に上げる点は同じであるが、もう1つの医療療養25:1病棟を新類型Ⅰ─1にする。介護療養は新類型Ⅰ─2、新類型Ⅱに転換する。

 パターン③も、医療療養25:1を20:1に上げるが、もう1つの医療療養を新類型Ⅰ─2にする。介護療養の100床は、パターン①②と同様に、「新類型Ⅰ─2」(50床)と「新類型Ⅱ」(50床)に転換する。
 

■「老人収容所型」のパターン①は、2,046万円の増収

 3ページをご覧いただきたい。パターン①の人件費について。
 

2月9日会見資料03
 

 転換の前後で、人件費総額が6,824万円から124万円増の6,948万円となる。PT・OT・STが9人増えるということもあり、ほかでは下がるが人件費全体では1カ月で124万円増える。

 4ページをご覧いただきたい。パターン①の収支差を示した。
 

2月9日会見資料04
 

 転換前の収支差は、現状では1カ月69万円しかないが、転換後は2,115万円もある。転換前後で、2,046万円の増収となる。すなわち、25:1の医療療養100床と介護療養100床よりも、パターン①のように変えたほうが、かなり得だということが言える。医療療養を回リハにするので、PTとOTが転換前よりも多く必要になるが、このような結果となった。
 

■「老人収容所型」のパターン②は、667万円の増収

 パターン②と③は、150床が新類型である。新類型が多くなるので、当然のことながら人件費は下がる。パターン②の場合は、人件費の総額6,824万円は5,716万円となり、人件費が1,108万円マイナスとなる。
 

2月9日会見資料05
 

 収支差はどうか。6ページをご覧いただきたい。1カ月69万円の収支差額が、734万円に増える。
 

2月9日会見資料06
 

 現状のままよりも、パターン②のほうがむしろやりやすい。パターン①のように回リハに上がるのは敷居が高いかなという場合には、20:1を1つ取って重症の患者さんをここに集める。そして介護療養を新類型Ⅰ─1とⅡに転換すれば、それでも1カ月667万円の増収になる。
 

■「老人収容所型」のパターン③は、822万円の増収

 パターン③は、50床を医療療養20:1に上げる点はパターン①②と同様である。介護療養100床を「新類型Ⅰ─2」(50床)と「新類型Ⅱ」(50床)に転換する点も同じである。

 パターン③は、医療療養25:1の50床を「新類型Ⅰ─2」に転換した場合で、人件費は1,617万円減るが、収支差額は891万円となり、十分な収支差があると言える。転換前よりも822万円の増収になる。
 

2月9日会見資料07
 

2月9日会見資料08
 

■「良質な慢性期機能を持つ病院」について3パターン

 これらに対し、「良質な慢性期機能を持つ病院(200床)」について、3つのパターンを考えてみた。9ページをご覧いただきたい。
 

2月9日会見資料09
 

 200床のうち、100床が20:1の「医療療養病棟1」、50床が25:1の「医療療養病棟2」、50床が30:1の「介護療養病棟」と仮定する。介護療養50床を「新類型Ⅰ─2」に転換する点はすべて共通である。

 パターン①は、13:1の「地域包括ケア病棟1」を1つと、15:1の「回リハ病棟2」を1つ、「医療療養病棟1」を1つにして、残りを「新類型Ⅰ─2」にする場合を想定した。

 パターン②と③は、100床を「医療療養病棟1」にして、介護療養50床を「新類型Ⅰ─2」にする。両者の違いは、200床のうち50床を「地域包括ケア病棟1」にするか、「回リハ病棟2」にするかである。

 このうち、パターン②は、100床ある「医療療養病棟1」のうち50床はそのままで、残る50床を13:1の「地域包括ケア病棟1」にする場合である。

 パターン③は、100床ある「医療療養病棟1」のうち、50床を「回リハ病棟2」にして、残る50床をそのままにする。また、医療療養25:1の50床を医療療養20:1に上げる。介護療養は新類型Ⅰ─2とする。

 パターン①はかなり頑張らないと難しいが、③はもうちょっと頑張ればできるのではないかというようなシフトである。
 

■「良質な慢性期病院」のパターン①は、1,776万円の増収

 まず、「良質な慢性期機能を持つ病院」のパターン①について、人件費総額を比較した。10ページをご覧いただきたい。
 

2月9日会見資料10
 

 パターン①の場合は、「回リハ病棟2」に転換する関係でPT・OT・ST14人が33人と、19人プラスになるので、人件費が1,213万円増えるが、次の11ページのように収入も増える。
 

2月9日会見資料11
 

 1カ月あたり218万円の利益であったのが、1,776万円増の1,994万円となる。なんと2,000万円近い利益になる。このような方向にシフトしていくことが理想型であるかなという試算が出ている。
 

■「良質な慢性期病院」のパターン②は、365万円の増収
 
 次に、パターン②について見てみる。パターン②は、「医療療養病棟1」の100床は変わらない。地域包括を一つ取って、介護療養を新類型Ⅰ─2にする。この場合、人件費は459万円増えるが、13ページのように、1カ月218万円の利益が583万円になり、365万円の増収となる。やはり地域包括ケア病棟を取ったり、新類型に転換したりするほうが有利である。
 

2月9日会見資料13
 

■「良質な慢性期病院」のパターン③は、1,719万円の増収
 
 パターン③も、「医療療養1」の100床はそのままだが、15:1の「回復期リハ2」を取る。PT・OT・ST14人が25人と11人増えるので、人件費が470万円増えるが、収入も2,348万円増える。従って、1カ月あたり1,937万円の収支差が出る。転換後は、1,719万円の増収となる。
 

2月9日会見資料15
 

■「ケアミックス病院」のパターン①は、309万円の増収

 続いて、16ページをご覧いただきたい。200床のケアミックス病院について、3つのパターンを考えてみた。
 

2月9日会見資料16
 

 「7:1」を1病棟と、10:1の「地域包括ケア病棟1」を1病棟、25:1の「医療療養病棟2」と30:1の「介護療養病棟」を持つ。こういうケアミックスの病院があると仮定する。7対1の50床と地域包括の50床はそのままで、25:1の「医療療養病棟2」と30:1の「介護療養病棟」の転換先を3つに分けて考えてみた。
 
 このうち、パターン①は25:1を20:1の医療療養に上げて、介護療養を新類型Ⅰ─2にする。パターン②は、医療療養2を医療療養1に上げず、新類型Ⅰ─2にする場合。パターン③は、医療療養2と介護療養を回リハ2と医療療養1にする場合である。17ページをご覧いただきたい。
 

2月9日会見資料17
 

 パターン①の人件費について転換前後を比較すると、医療療養を20:1に上げて、新類型を50床取った場合には、人件費は284万円減る。

 収支差額は、1,094万円から309万円増えて1,403万円になる。医療療養を20:1に上げて新類型を取ったほうが、25:1の介護療養よりはいい。
 

2月9日会見資料18
 

■「ケアミックス病院」のパターン②は、492万円の増収

 パターン②も、7:1と地域包括ケア病棟はそのままにした場合であるが、医療療養2と介護療養を新類型Ⅰ─2と新類型Ⅱにする。人件費は1,310万円減るが、20ページのように収入も1,167万円減る。
 

2月9日会見資料20
 
 しかし、人件費や材料費の減りが多い。従来は1カ月あたり1,094万円の利益が出ていたが、492万円増えて1,586万円になり、収支が改善するということになった。
 

■「ケアミックス病院」のパターン③は、1,596万円の増収
 
 パターン③も、7:1と地域包括ケアはそのままであるが、医療療養の25:1を回リハ2、医療療養の20:1とする。回リハにしたため、PT・OT・ST20人から14人増えて34人になり、人件費が1,393万円増えるが、21ページのように、収入も3,656万円増える。1カ月のトータル1,094万円であったのが1,596万円増えて、倍以上の2,690万円になる。ということで、こういう改善のほうがいいだろうと思う。
 

2月9日会見資料22
 

■「自称急性期病院」のパターン①は、271万円の増収
 
 最後に、「200床の自称急性期病院」について考えてみる。「急性期」を自称するものの、実質は慢性期等も取っている病院の場合である。150床が10:1病棟で、50床が13:1の回復期リハの病院を想定する。
 

2月9日会見資料23
 

 2つのパターンを考える。13:1の「回リハ病棟1」を50床、20:1の「医療療養病棟1」を持つ点は同じであるが、パターン①は、10:1を7:1に格上げする。

 パターン②は、10:1の病棟50床はそのままで、13:1の回復期リハ病棟と20:1の医療療養病棟、あとは新類型Ⅰ─2とした場合である。

 パターン①は、人件費が48万円増える。また、収入が減るが支出も減る。1,905万円の利益が2,176万円になり、271万円の増収となる。
 

2月9日会見資料25
 

■「自称急性期病院」のパターン②は、279万円の減収
 
 パターン②は、一般病棟10:1、回リハ13:1、医療療養1、新類型Ⅰ─2とする場合。人件費は2,434万円減るが、収支も1,905万円から1,625万円に減る。279万円の減収となる。急性期の形をしている病院は、病床転換についてメリットが少ない形になっている。
 

2月9日会見資料27
 

■ 急性期と自認している病院は、かなり厳しい

 最後、28ページにまとめを書いた。
 

2月9日会見資料28
 

 自称急性期的な地域の中小民間病院はたくさんあるが、実際上はベッドがかなり空いている。自分の病院は急性期だと自認している病院が「空床が目立つから」と言って病床機能を回復期や慢性期に変えたとしても、今までは急性期としてやってきたわけであるから、きちんとその機能にふさわしい医療ができるかということが問題である。

 今までさんざん馬鹿にしてきたポストアキュート機能、すなわち療養病床や、そういうところを自らやっていくことができるのかということと、ましてや介護医療院に転換してどんな介護や療養ができるのか未知数である。

 いずれにしても、慢性期病院の場合は、シフトしたほうが利益率は良い。急性期と自認している病院の場合は、どちらにシフトしてもかなり厳しいという結果が出ている。

 ただ、これは現在での点数であるので、30年4月に恣意的にどうするかは別として、私は、新類型に移ってほしいという気持ちが高いと思うので、やはり現在の点数を下げて新類型のほうが有利なようにもっていくのではないかと思っている。

 一般病床の中でこの新類型に行くようにしているが、これは30年ではなく、3年後の33年と予想しているが、6年間の予想をすると、病棟の機能転換をすることが必ずしもマイナスではない。自称急性期的な、地域のいわゆる一般病院的なところにしても損ではない。ベッドが空くようであれば、こういう考えもできるのではないか。

 本日の資料の中には高度急性期などは入れていないが、最近では500床の市民病院が地域包括ケアを取ったり、回リハを取ったり、小さい公立病院では療養病床も取ったり、障害者病棟を取ったり、いろいろな形になってきている。そこまではスペシフィケーションしていないが、4つのパターンで試算をしてみた。皆さま方のご意見もお聞きしたいと思う。以上である。

 続いて、3月に開催予定の「第4回慢性期リハビリテーション学会」について熊谷先生からご案内を申し上げる。
 

■ 3月に「第4回慢性期リハビリテーション学会」を開催
 
[熊谷賴佳学会長(京浜病院・新京浜病院理事長)]
熊谷賴佳学会長20170209 第4回慢性期リハビリテーション学会の学会長を務めさせていただく。3月18、19日の2日間、パシフィコ横浜会議センターにおいて、第4回慢性期リハビリテーション学会が開催される。今回の演題数は286題を予定している。

 今学会のテーマは、「慢性期リハビリテーションが地域包括ケアを推進する」ということで、特別講演1では厚生労働省医政局地域医療計画課長の佐々木健先生にお話しいただく予定である。座長は、慢性期リハビリテーション協会の会長も務める武久会長にお願いする。

 シンポジウム1は、「発症直後から生活復帰を目指すには―急性期~回復期の時期を中心に―」と題して開かれる。

 シンポジウム2は、「在宅療養を推進するリハビリテーション」と題し、在宅を行っている開業医、かかりつけ医の立場の先生方と共に、在宅医療連携担当の調整窓口の相談員を含めたシンポジウムが開かれる。

 シンポジウム3は、「人工知能AI(Artificial Intelligence)のリハビリテーションへの応用開発」と題し、シンポジストに東京工業大学イノベーション研究推進体の特任教授である小杉幸夫先生、セントケア・ホールディングの執行役員である岡本茂雄様をお呼びし、AIの利用と現状についてのシンポジウムが開かれる。

 シンポジウム4は、「身体疾患及び認知症がリハビリテーションに及ぼす影響」と題し、大田区眼科医会の会長であるたまがわ眼科クリニックから關(せき)先生がご参加されるほか、東京都健康長寿医療センターの歯科口腔外科部長の平野先生が、歯科口腔との関わり合いが認知症またはリハビリテーションに及ぼす影響を話す。ナグモ医院の南雲先生は在宅医の立場から、身体疾患や内科疾患を持つことによるリハビリテーションの影響、もしくはそれが認知症に及ぼす影響についてお話しいただく。

 シンポジウム5は、「認知症リハビリテーションとは」と題し、私がシンポジストを務める。「認知症リハビリテーション」という言葉はあまり聞き慣れないとは思う。認知症というものは、外の世界との交通、コミュニケーションが取れなくなった状態であると認識し、その交通、コミュニケーションをもう一度取り戻すのがリハビリテーションの意義である。

 また、そういうリハビリテーションは身体活動、いわゆるマッスルトレーニングのような筋肉活動だけがリハビリではなく、認知症の人がどのような能力が残存しているのか、どのような人生や生活習慣を送っていたか、家族を交えてアセスメントを行い、本人の残存機能と感情にしっかりと焦点を当てた個別性の高い丁寧な認知症リハビリテーションが必要となる。人間回復と社会復帰をするために、どのような取り組みが必要か。認知症リハビリテーションの発展に資するシンポジウムになることを期待したい。

 最後のシンポジウム6は、「地域包括ケアの実現には慢性期リハビリテーションの継続が不可欠」と題し、蒲田医師会の地域包括支援センターの大屋さん、大田区の糀谷羽田地域福祉課で介護認定調査員をしている上野さん、山王リハビリクリニックの理学療法士の友清さんにより、在宅に戻るとリハビリの継続がいかに困難かということについて話し合っていただく。

 急性期または回復期までは頑張ってリハビリテーションをしても、在宅に戻るとやはり介護の手や人手が足りないという状況で、またその状況に置いておかれることにより、せっかく回復した身体機能を失う、または後退することがまま見られる。どのようにしたらその機能を維持できるか、在宅でもやはりリハビリは必要であるという概念から、地域包括ケアの中のリハビリの位置付けということを議論していただく。

 そして特別講演2として、医療経済研究機構の所長であり厚生労働省社会保障審議会の会長でもある西村周三先生に「医療経済学者が語る10年後の日本―医療・介護保険は続くのか―」と題してご講演いただく。少しセンセーショナルな見出しが付いているが、2025年、今からもう8年後に迫ったが、日本の医療や介護保険は果たしてもつのかということについて西村先生は警鐘を鳴らしている。非常に厳しい見通しがあるということを、このシンポジウムで聞かされるのではないかということを今から期待している。

 以上、私から慢性期リハビリテーション学会についてのご案内をした。

                           (取材・執筆=新井裕充)

 



Article printed from 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト: http://manseiki.net

URL to article: http://manseiki.net/?p=4480

Copyright © 2011 Japan association of medical and care facilities. All rights reserved.