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「第101回社会保障審議会医療保険部会」 出席のご報告

Posted By araihiro On 2016年12月1日 @ 11:28 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 平成28年11月30日、「第101回社会保障審議会医療保険部会」が開催されました。当会からは委員として武久洋三会長が出席いたしました。

 医療保険部会では、「骨太2016経済・財政再生計画改革工程表」の指摘事項にもとづいて議論が行われてきました。2016年末までの議論の取りまとめが予定されている各事項について、これまでの議論をもとに厚労省より見直しについての具体案が提示され討論が行われました。
 
1.高額療養費制度の見直しについて
 高額療養費制度は、家計に対する医療費の負担が過度なものにならないよう、医療費の自己負担限度額を定める制度です。この制度において、現役世代に対しては所得に応じた支払い区分が設定されていますが、70歳以上の高齢者に対してはそうした区分が設けられておりません。これまでの部会では、負担能力に応じた支払いを求める方向性で議論が進められてきました。

 今回、厚労省からは、負担の公平性を考慮したものと、より高齢者への配慮を優先するものと2種類の具体案が提示され、委員の間では意見が分かれましたが、急変によってタンス預金を促すことへの危惧や、医療へのアクセス抑制の懸念などから、一律に負担増とするのではなく段階的な導入を求めて調整を行っていくこととなりました。

2.保険料軽減特例の見直しについて
 75歳以上が加入する後期高齢者医療制度では、現在、低所得者や、子供などに扶養されている人を対象に、保険料が最大で9割軽減される特例措置がとられています。本則では7割負担とされている負担が8.5ないし9割まで軽減される特例措置については、これまで廃止の方向性で議論が進められてきました。

 今回の議論では、均等割の軽減措置について段階的に廃止していくか、別途議論されている「介護保険料軽減の拡充」「年金生活者支援給付金の支給」と時期を合わせて廃止を行うかについて議論が行われました。

 武久会長は、後期高齢者への医療提供の在り方について触れ、次のように発言されました。
 「75歳頃から疾病率が上がってくる。そうした後期高齢者の入院患者さんが急性期・慢性期のどちらに入っているのかという割合を調べてもらったが、8割以上が急性期であり、1日につき約4万5千円の医療費が、それも長期にわたって使われていることがわかった。
 現在、75歳以上の入院患者は約70万人とされている。そのうち20万人には高度急性期の医療が必要と仮定しても、残りの50万人が地域包括もしくは療養病床に入院したならば、高度急性期に入った場合に比べて1人1日あたり、2万円の差が出てくる。この差額を365日で考えた場合、3兆6千5百億円の医療費が浮く計算となる。仮に、高度急性期の入院医療費4万5千円が3万5千円となるだけでも、1年で1兆6千5百億円が節約できる。
 こうした考え方を、費用の削減と言うか、効率化と言うかは考え方次第であるものの、後期高齢者の医療費のほとんどが、急性期の長期入院患者で費やされているという現状がある。こういった現状にメスを入れ、後期高齢者への医療の提供システムに大きく手を加え、改革を行うことについても考えていただきたい」と述べられました。

3.入院時の生活費について
 現在、医療保険部会では、65歳以上の療養病床入院患者に対して居住費・光熱水費の負担を求める方向性で議論が進められています。今回の部会では施行時期や段階的実施のスケジュール案が提示され、委員から意見が募られました。
 
 療養病床だけではなく、一般病床や精神病床においても長期入院患者が存在することを鑑み、一定期間以上の長期入院患者には居住費負担を求めるべきとする意見が出る一方で、そもそも入院は望んでするものではないため、医療の必要性の高い医療区分2.3の患者に対してこのような負担を求めるべきではないといった意見も出され、委員の間では意見が分かれました。
 
4.子ども医療費助成に係る国保の減額調整措置の在り方について
 子どもの医療費に対する助成の在り方については、前回の部会において助成を行う方向性で議論がまとまり、今回の部会では厚労省側から具体的な見直し案が提示されました。これに対して、委員からは「対象は未就学児とされているが、本来であれば義務教育の期間中は助成すべきではないか」「国の施策は自治体の施策に対して事後的であり、子どもを育てることについて政治の上で十分議論されておらず、国策として子育てを支援することについて正面から議論を行って欲しい」といった意見が述べられました。
 
 その他、金融資産保有状況を考慮した負担の在り方や、かかりつけ医普及のための外来時定額負担の導入など、これまで医療保険部会で議論された内容について、いつごろから、どのような範囲に適用するかの具体案が提示されました。
 
 医療保険部会では、年末に向けて意見のすり合わせを行っていく方針です。
 



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