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「第65回社会保障審議会介護保険部会」 出席のご報告

Posted By araihiro On 2016年10月1日 @ 5:43 PM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 平成28年9月30日、「第65回社会保障審議会介護保険部会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。

1.介護予防の推進
2.地域支援事業の推進
3.ニーズに応じたサービス内容の見直し

◇武久洋三会長の発言
 2000年に介護保険制度が開始する以前は、介護が必要とされる人々には市町村が独自に対応していた。措置制度として、社会福祉協議会等に対応を委託していた。実質、社協は市町村とつながっているようなものなので、現在の状況はこの当初の状態に返りつつあると言える。
 もともと介護には、自助、共助、互助、公助の観点があったが、介護保険制度が「すべて公助でやってあげますよ」という形でスタートした。当時は国にも公助で対応できるという自信があったのだろうが、予想に反して要介護者が急増し、予算が膨れ上がった。さらに、2008年からは人口減少に転じている。特に地方では高齢化と人口減少によって大変なことになっている。
 昔は、隣同士で助け合う「互助」が珍しくなかったが、その頃の高齢化率は1ケタにとどまっていた。だが現在の高齢化率は25~26%にのぼっており、互助だけでは限界がある。だから、市町村が主導で地域支援事業を行うという以前の状況に返っていくにしても、何らかの新しい視点が盛り込まれる必要がある。そうした意味でも、マイケアマネジャーとして利用者に担当のケアマネジャーを決めておく方が、スムーズにいくのではないか。
 地域包括支援センターについてであるが、これは市町村が独自に行っているケースもあれば、委託しているケースもある。市町村の規模が大きいと、独自にやっていることが多いように思う。小さな村などでは、委託されたセンターにしっかりした方が携わっていることが多いので、そうした方がいなくなったら急に厳しくなるということはあるだろう。規模の小さい市町村については、国の重層的な支援が絶対に必要である。
 私の法人でも委託を受けて地域包括支援センターを運営している。こちらもプライドがあるので、スタッフの中でもとりわけ良く働くメンバーに担当させるなど、一生懸命対応した。だが現場からは、やればやるほど忙しいという声が上がってくる。それを考えると、ボランティアやインセンティブによる誘導に頼るよりは、地域の町内会、老人会、婦人会といった既存の組織による協力を考えるべきではないか。要支援者であれば、町内規模の対応でも充分カバーしていけると思う。また、市町村から委託された地域包括支援センターでは、自治体の力が小さいほど単価が下がっていくことになる。それでもこのセンターがつぶれたら他に事業所はないというケースもありうるので、そうした場合は都道府県でフォローしていくべきではないかと思う。

 インフルエンザや肺炎にかかった際、特養にいても在宅にいても、治る病気は治すのが当然というのは共通認識であろう。特養では、基本的に100人の入所者に対し3名の看護師がついていればよく、看護師が当直する必要もない。したがって特養の夜間帯は、当直の介護職員が通常業務をしているかたわらで、亡くなる入所者が出てくることになる。施設によっては介護職員を多く配置して、看取りの必要な入所者を担当させている場合もある。このような看取りを、どのように定義していくか。
 40代であろうと90歳を超えていようと、治せる病気は治すべきである。だが治る病気の場合は、特養にいるより、医療機関に入院した方が治る可能性が高い。ただ特養の入所者が入院してしまうと、その分特養のベッドが空いてしまうので、減収となる。この点について、どのように考えるか。このような状況では、特養側としては病気になった入所者は施設内で診てもらいたいと思うのが当然だろう。入所者が病院に入院してもある程度の収入を確保できる仕組みが必要になってくるのではないか。
 特養は終の棲家であるという言い方がされているが、私としては少々疑問である。状態が良くなったのなら、家に帰っていいのではないか。ただし在宅に帰った後でも、必要があれば、入所していた特養をショートからでも必ず利用できるよう約束しておかねばならない。特養の利用者であっても、在宅への流れを許容・促進するのは大事だと思う。
 この20~30年で、特養は非常に増えた。それ以前は、一般病床の特定除外、療養病床が社会福祉施設の代わりといった社会的入所のための施設という面がかなり大きかったが、介護保険制度の開始にともない特養も整備され、現在の形に至っている。入所者の家族には、特養にいてもらう方が経済的にも安心だし、よその病院などあちこちに行かれるよりはいいと考える人もいるので、結果、治る病気が治せないという状況に陥る場合もある。こうした現状に対しては、誠に忸怩たる思いである。
 小規模多機能型居宅介護で居宅サービスを提供できるようにという意見があったが、その場合、ケアマネジメント的な対応ができるコーディネーターの存在はますます重要になってくる。ところが現行の制度では、入所する施設ごとに担当のケアマネジャーが代わり、ケアが細切れになってしまう。医療保険では、病院のカンファレンスにケアマネジャーが入れば加算がつくといったことも進んでいるので、今後もケアマネジャーができるだけ病院に入りやすい流れを作り、ケアマネジャーについては一人の利用者がどの施設に入っても担当できるようにすることで、利用者を早く在宅に帰すようにする。さらに、一度特養に入ったらそのまま退所しないという視点を改める時期に来ているのではないかと思う。

○第65回社会保障審議会介護保険部会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000138300.html



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