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障害者病棟、「療養病床にも門戸を開いて」 ── 9月8日の会見で武久会長

Posted By araihiro On 2016年9月9日 @ 2:43 PM In 会長メッセージ,協会の活動等,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は9月8日の定例記者会見で、平成30年度の同時改定に向けた要望を中心に見解を述べ、障害者病棟について「療養病床にも門戸を開いていただきたい」と訴えました。武久会長は、「一般病床の障害者病棟は4.3㎡の10人部屋でも認められている。あまりにも狭い環境でも認められている」と指摘し、療養病床からも障害者病棟を申請できるよう求めていく構えを見せました。

 この日の主な会見内容は、①30年同時改定への要望(Ⅰ)、②第24回日本慢性期医療学会 in 金沢 開催案内──の2点で、①について武久会長が現時点における考えを説明しました。

 武久会長は、同時改定に向けて6項目の要望を提示。慢性期医療を中心に提供する病院ができるだけ早期にリハビリテーションを実施できるような「リハビリテーション改革」や、身体合併症を有する認知症患者に対するケアの評価などを挙げ、「EBMのある結果を出すことによって、厚労省の皆さん方にご理解を賜っていくという手法を今後も採りたい」と意欲を示しました。

 ②については、10月27・28日に石川県金沢市内で開催される「第24回日本慢性期医療学会」の学会長を務める仲井培雄常任理事(芳珠記念病院理事長)が学会の概要を説明しました。

 仲井学会長は冒頭、学会テーマである「慢性期医療と創る未来 ──医療・介護とまち・ひと・しごと──」の背景を解説。「認知症や要介護高齢者が激増するなか、治す『従来型医療』から、治し支える『生活支援型医療』への転換が進んでいる」との認識を示し、「院内や地域内における多職種協働が重要である。まさに当協会が目指す『良質な慢性期医療がなければ、日本の医療は成り立たない』を実現するチャンスもある」と学会の成功に期待を込めました。

 以下、この日の会見の模様をお伝えいたします。①について武久会長が見解を述べた後、②について仲井学会長が説明、質疑応答をはさんで再び武久会長が資料の補足説明をしましたが、質疑応答の部分はカットしてあります。また、実際の発言に若干の修正が加えられておりますので、あらかじめご了承ください。

 会見資料は、日本慢性期医療協会の公式ホームページ(http://jamcf.jp/chairman/2016/chairman160908.html)に掲載してありますので、ご参照ください。
 

[武久洋三会長]
 本日の記者会見は、10月27・28日に金沢で第24回日本慢性期医療学会が開かれるので、そのご案内を兼ねている。

 それから、平成30年度の同時改定への対応はすでに始まっているので、最初に私から、資料の1「30年同時改定への要望(Ⅰ)」についてお話をさせていただき、資料の2「第24回日本慢性期医療学会 in 金沢 開催案内」については、金沢学会の学会長である仲井先生にご説明いただきたいと思っている。

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【9月8日の定例記者会見の主な項目】

 1.30年同時改定への要望(Ⅰ)
 2.第24回日本慢性期医療学会 in 金沢 開催案内

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 まず資料1について。1ページをご覧いただきたい。これから日慢協としてどういうことを主張していくか。

スライド1
 

■ 障害者病棟、療養病床からも申請できるように

 当協会で調べたところ、20対1は重症者が非常に多いので、なかなか20対1の看護師の数では対応できないということがある。3年ほど前に調べた結果だが、16.5対1ぐらいの加配をしていることが分かる。

看護師の加配結果
 今度、25対1がいわゆる「病院内施設」や「(病院内)住居」になるのであれば、20対1に、さらに上のレベルの15対1もつくっていただけたら、現場としては大変ありがたい。こういうことも要望したいと思っている。

 また、障害者病棟は、今は一般病床からでないと認定されないが、当然、超慢性期でありケアが重要なことに鑑みて、療養病床からも申請できるようにされたい。医師の数は32対1配置としても当然いいわけである。

 療養病床からは地域包括ケア病棟も申請できる、回復期リハ病棟も申請できる。なのに、超慢性期ともいえる障害者(病棟)だけは申請できないというのはどう見ても矛盾があるのではないかと思う。そのため、ぜひ、こういうことについても、要望していきたいと思っている。

 それから、ご存じのように一般病床の障害者病棟は「4.3㎡の10人部屋」でも認められているという現状がある。あまりにも狭い環境でも認められているということは、療養病床にも門戸を開いていただきたいということである。
 

■ できるだけ早くリハビリに参入できる改革を

武久洋三会長20160908 リハビリテーション改革について。今年4月の改定では、FIM利得27点ということで、いわゆるリハビリの質というものを問題にしていくんだという厚労省の確固たるスタンスがうかがえた。

 これについては、6カ月間という期間を3カ月でクリアしたら54点ということになるので、短期間で非常にいい結果を出しているところを評価するということだと思う。これについて、当協会としてもリハビリに対しては、方向性としては包括制を認めてほしい。

 それから、6カ月とか3カ月というのは、すべて「病気が発生してから」になる。急性期病院、一般病床等で2カ月も3カ月も経ってから療養病床に送られてきた場合には、残りが1カ月とか3カ月しかない。その間で十分なリハビリ効果を出せと言われても、これはなかなか厳しい。

 皆さんもご存じかと思うが、脳血管障害などは、最初は「弛緩性麻痺」といって神経が駄目になって、ダラーンとしているわけだが、1カ月以上過ぎていくと「強直性」といって、拘縮してきて関節が固まって、非常にリハビリがやりにくくなる。

 その時期を過ぎてから、われわれのところに来てリハビリしても、なかなか十分な成果がないということもあるので、できるだけ早くわれわれがリハビリに参入できるように、という改革をお願いしていこうかと思っている。

 そのためには、やはり調査が必要である。日慢協は常にいろんな調査を実施し、またトライアルし、その結果を常に厚労省側に提示している。EBMのある結果を出すことによって、厚労省の皆さん方にご理解を賜っていくという手法を今後も採りたいと思っている。
 

■ 認知症対策の評価、「EBMを提出したい」

 認知症については、(厚生労働省・社会保障審議会の)介護保険部会でも話をしていたが、現場では認知症だけの患者というのはほとんどいない。若年以外はほとんど、どこかの身体合併症を持っており、認知症と身体合併症が一緒になっている。

 特に、低栄養と脱水という状態が認知症に伴っている。この場合には、低栄養や脱水を改善したら認知症が少し改善するというような事実もある。認知症については、認知症疾患医療センターのみ今は評価されているので、できれば慢性期医療に対しても、認知症の治療に対して評価していただきたい。

 それから、この資料には書いていないが、今年11月の記者会見では「慢性DPC」についての具体的なプランをお話ししたいと思っている。今、鋭意、(当協会の)委員会で検討しているところである。

 その中で認知症について申し上げると、認知症は最初、医療区分の中に5点入っていたが、2年後に認知症の点数がなくなった。認知症の症状がどんなに強くても、医療区分は1のままということになっており、現場では認知症対策に非常に悩んでいるのが現状だ。

 夜中の病棟の詰所に行くと、認知症の車いすに乗ったおばあちゃんが点滴しながら詰所の中に3~4人いることがある。夜勤の看護師も大変である。このような状況に対して理解してほしいし、評価してほしい。この点についてもEBMを提出したいと思っている。
 

■ 研修を受けた介護職員が看護師の代わりを

 また、喀痰吸引の研修が行われている。喀痰吸引というのは当然、療養病床でも、経管栄養の方がたくさんいる。このため、20対1の看護配置では対応がなかなか十分ではないということもある。そこで、介護職員の中でこういう研修を受けた人に、できれば病院の中でも活躍していただけたら大変ありがたい。

 この点については、介護施設や在宅等の介護の分野では認められているが、医療の分野では在宅でも病院でも認められていない。厚労省内に医療と介護の連携政策課もできたわけだから、ぜひお願いしたい。

 というのは、看護師は看護師特定行為という研修が行われており、研修を受けた行為についてお医者さんの代わりをすることができる。だが、介護職員はたんの吸引等の研修を受けても、医療の分野では看護師の代わりをすることはできない。従って、一部については認めていただけたら大変ありがたいということもあり、そういうことも順次お願いしていこうと思っている。

 以上、30年の同時改定への要望についてご説明した。今年中に、いろんなことをある程度、要望して、具体的な資料と共に提出していきたい。来年の夏までには、大きな骨子がだいたい決まる。

 医療と介護の同時改定ということで、9月の記者会見については診療報酬に関する要望ということで、介護保険に関しては次回の11月にお話ししたいと思う。今のところはこのようなことを考えている。先ほどの理事会でも話をして了解を得ている。

 それでは、仲井会長から金沢学会についてのご説明をさせていただきたい。よろしくお願いいたします。
 

■「第24回 日本慢性期医療学会 in 金沢」を開催
 
[仲井培雄学会長(医療法人社団和楽仁 芳珠記念病院理事長)]
仲井培雄学会長20160908 皆さん、こんにちは。本日はお集まりいただき、ありがとうございます。来る10月27日木曜日、28日金曜日に石川県金沢市で「第24回 日本慢性期医療学会 in 金沢」を開催する。

 私は、本学会の学会長を拝命した。副学会長には、石川県慢性期医療協会の宮崎俊聡協会長と、菊地勤副協会長が就任した。場所は、金沢駅のすぐ横にある石川県立音楽堂と、ホテル日航金沢で行う。

 学会のテーマは、「慢性期医療と創る未来 ──医療・介護とまち・ひと・しごと──」である。このテーマを設定した理由は何か。

 日本は今、人口減少、少子化、超高齢社会、地域間格差の拡大に直面しており、これらの課題を地域ごとに解決して東京一極集中を是正し、2060年以降も人口規模1億人弱を維持しようと、「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」が掲げられた。

 認知症や要介護高齢者が激増するなか、治す「従来型医療」から、治し支える「生活支援型医療」への転換が進んでいる。次世代のために国民皆保険を堅持し、国の財政負担の軽減も達成しなければならない。

 加えて今年度中に出そろう地域医療構想の策定や、地域包括ケアシステムの構築などにより、効率化や質の担保が期待されている。セーフティネットや雇用を含む社会保障としての医療・介護への期待も大きい。

 一方、医療介護の現場は院内チーム医療と地域包括ケアシステムが大事である。認知症があってもなくても、本人の選択や、家族を交えた心構えなど、老い方や人生の最後の迎え方などに尊厳を持った対応が必須であるし、院内や地域内における多職種協働が重要である。

 特に、認知症やリハビリ、栄養管理、多剤併用など包括的な対策が要諦だと思われる。地域包括ケア病棟、医科歯科総合診療、看護師特定行為研修など新たな可能性も含め、各地域の地域医療構想の目指す2025年度の理想の姿に向かうことが求められている。まさに当協会が目指す、「良質な慢性期医療がなければ、日本の医療は成り立たない」を実現するチャンスである。

 学会のテーマである、「慢性期医療と創る未来 ──医療・介護とまち・ひと・しごと──」を探求するために、たくさんの有識者にご賛同いただき、プログラムを作成した。
 
 記念シンポジウムは、「慢性期医療と創る未来 ~地域医療構想のありたい姿」と題して、厚生労働省医政局地域医療計画課の佐々木健課長にご登壇いただく。産業医科大学医学部公衆衛生学教授の松田晋哉先生、当協会の武久洋三会長にもシンポジストをお願いをしている。

 このほかにシンポジウムが6つある。シンポジウム1は、「その人らしい暮らしを支える多職種協働」。シンポジウム2は「地域包括ケア病棟とつくる地域包括ケアシステム」。シンポジウム3は「介護療養病床のあり方を考える」と題して、鈴木健彦・厚生労働省老健局老人保健課長にご登壇いただく。シンポジウム4は「認知症 新オレンジプランの実践」をテーマに、宮腰奏子・厚生労働省老健局認知症施策推進室長にお願いした。シンポジウム5は「慢性期医療におけるリハビリテーションのあり方」。シンポジウム6は「医療・介護とまち・ひと・しごと」。

 最後に、記念講演は「可能性の無視は最大の悪策」というテーマで、高野誠鮮氏にお願いをしている。石川県羽咋市にある妙法寺の住職でありながら立正大学の客員教授や地域力創造アドバイザーをされている。元石川県羽咋市の職員で、限界集落に陥った神子原地区の地域再生で著名な方で、まちおこしのドラマのモデルにもなった方である。

 メディアの皆さまには、取材がスムーズに行えるように、開会式、閉会式だけでなく、すべてのシンポジウムと記念講演に席を設けているので、ぜひお越しいただきたい。北陸新幹線が開業し、さらに元気になった金沢の「まち」で、全国から慢性期医療に関わる「ひと」が集い、私たちの「しごと」である慢性期医療の質向上について語り合う。思いを言葉にし、言葉を形にしていただければ幸甚である。どうぞ皆さん、よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございます。
 

■ 機能別の病棟・施設が病院内にできるのではないか
 
[武久会長]
 それでは、資料の2~4ページについて説明したい。

 資料2ページをご覧いただきたい。このような歴史的な経緯があるということ。
スライド2
 
 3ページをご覧いただきたい。平成22年度の厚生労働省調査と平成27年度の日慢協調査の結果を比較した。平成22年度調査は、厚労省の老健局と保険局が合同で実施した横断調査である。
 

スライド3
 
 これを見ていただければ分かるように、「一般慢性期(13対1+15対1)」よりも、「医療療養病棟(20対1)」のほうがはるかに重い患者をみているということが分かっている。

 もう一つ特記すべきことは、22年調査の時は療養病床から老健に転換するという動きがあった。その時に転換した「介護老人保健施設(療養型)」は、気管切開や酸素療法、喀痰吸引、経管栄養などの人がある程度入所されていたのが、27年度になると「老人保健施設(従来型)」よりもむしろ軽い人をみている。

 すなわち、転換した施設は5年間で完璧に「施設」に埋没しているということが分かる。このことから言うと、いわゆる病床転換して施設になった場合には、現在の介護療養型医療施設の患者よりも、より施設にフィッティングした患者さんに、何年かの間には落ち着いてくるのではないか。

 むしろ、重症者はレベルアップした院内の、他の機能の病棟のほうに収れんしていく。それなりの機能別の病棟ないし施設が病院内にできるのではないかと思っている。
 

■ 療養病棟の入院基本料、「整合性を付けていただきたい」

 4ページをご覧いただきたい。
 
スライド4
 

 現実問題として、障害者病棟の中でも医療区分1の患者が圧倒的に多いということで、難病の場合にはこの医療区分とは違うが、一番上の「療養病棟入院基本料1」が、いかに重症の患者を診ているかということである。

 この4つの比較をすると、「療養病棟入院基本料1」はかなりスタッフも頑張っていると思う。このへんのところの整合性を、ぜひ付けていただきたいということもわれわれの要望として充実させていこうと思っている。

 第24回日本慢性期医療学会が10月の末27・28日に金沢で開催される。皆さんは東京におられると思うが、新幹線に乗ったらすぐなので、ぜひ取材に来ていただけると大変ありがたい。本日はどうもありがとうございました。

                           (取材・執筆=新井裕充)
 



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