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「第2回在宅医療及び医療・介護連携に係るWG」 出席のご報告

Posted By araihiro On 2016年9月3日 @ 4:18 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 平成28年9月2日、「第2回在宅医療及び医療・介護連携に係るワーキンググループ(WG)」が開催され、今回は、構成員の池端幸彦副会長に代わり、井川誠一郎常任理事が参考人として出席いたしました。議事は、(1)在宅医療に関する見直しの方向性について、(2)高齢化に伴い増加する疾患の対応について、の2点です。
 

(1)在宅医療に関する見直しの方向性について

 前回のWGにおいて池端幸彦副会長は、7項目にわたって意見を述べ、とくに以下の4点を強調して主張いたしました(池端幸彦副会長の前回の主張についてはこちら)。

◇慢性期機能及び在宅医療等の需要の将来推計にあたっては、「療養病床のあり方検討会」で示された「新類型」のあり方を踏まえるべきこと
◇在宅医療の実績を「在宅死亡者数」だけで評価するのではなく、現場での取り組みを実績としてきちんと捉えるべきこと
◇医療と介護との連携においては、病院の主治医とケアマネジャーとの連携が早い段階から必要であること
◇在宅医療を推進する施策は、サービス提供者側に向けたものだけではなく、サービスの受け手側である地域住民や基幹病院である急性期病院の医師へのアプローチが不可欠であること

今回、厚労省から示された「見直しの方向性について(案)」を見ると、池端幸彦副会長の意見がほぼすべてにわたり取り入れられていることがわかります。

見直しの方向性について(案)①

見直しの方向性について(案)②

見直しの方向性について(案)③

 井川誠一郎常任理事は次のように発言し、地域におけるケアマネジャーの重要性について、池端幸彦副会長の主張をさらに補足いたしました。

(井川誠一郎常任理事の発言①)
 
井川誠一郎常任理事 角野文彦構成員(滋賀県健康医療福祉部次長)がお示しになった大津市のモデル事業や、前回当協会副会長の池端幸彦がご紹介した福井県の「退院支援ルール」の県や医師会、ケアマネジャーの連携は、私は非常に重要であると考えている。在宅医療を長く維持していく上で検討すべき課題は、ストラクチャーだけではなく、在宅医療の質にあるということは自明である。この在宅医療の質というものを考えていくときに、患者が受けている医療や介護の情報のすべてが1か所に集約されていることは非常に大きな意味を持つ。我々慢性期病院が急性期病院からの肺炎等の患者を受け入れる際に問題となるのは、その急性期病院における肺炎の情報しか伝わってこないという点である。患者の情報がケアマネジャーに集約されていれば、肺炎に至る以前の既往歴の状態やADL、QOLなどについても把握することができる。このことは投薬の過剰投与も同時に防止でき、有澤賢二構成員(日本薬剤師会常任理事)が提案されているポリファーマシー対策にも資するのではないか。是非、医療と介護の連携施策において、この点を強調しておいていただきたい。

 他の構成員からは、「在宅医療の提供体制については、在宅医療を直接行うかかりつけ医だけではなく、在宅療養支援診療所を含む有床診療所や中小病院、24時間対応の訪問看護ステーションが必須であることを明らかにするべきである」(鈴木邦彦構成員・日本医師会常任理事)、「医療計画と介護保険事業計画とは事業年度が異なっている。とくに介護保険事業計画は2025年の地域包括ケアシステムの構築に向けた目標が設定されているので、齟齬が生じないようしっかり整合性をとってほしい」(中林弘明構成員・日本介護支援専門員協会副会長)、「在宅医療の実績を把握するのにあたり、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)を活用すれば、実際の訪問診療数はかなりの範囲で把握できるのではないか。また、医療と介護の連携がテーマなので、国から都道府県、市町村に至るまで、行政の連携を是非とも強化していただきたい」(猪口雄二構成員・全日本病院協会副会長)、「在宅医療で対応可能な患者像を急性期病院の医師や看護師にご理解いただくための研修には、座学の研修だけではなく、実際に訪問してみるという体験型の研修を採り入れていただきたい」(斉藤訓子構成員・日本看護協会常任理事)などがありました。
 

(2)高齢化に伴い増加する疾患の対応について
 
 今回のWGでは、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)やフレイル(高齢者の虚弱)についても議論されました。現在、医療計画には、医療法および医療法施行規則に規定されている5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)・5事業について、患者動向や必要となる医療機能、各医療機能を担う医療機関等の名称等を記載することとなっています。しかし、5疾病・5事業以外で今後確実に増加するロコモティブシンドロームやフレイル、誤嚥性肺炎などについては、医療計画の中での位置づけがまだ明確となっておりません。
 井川誠一郎常任理事は、岩本幸英参考人(九州大学名誉教授・九州労災病院院長)および飯島勝矢参考人(東京大学高齢社会総合研究機構教授)によるプレゼンテーションを受けた意見交換の中で、以下の意見を述べました。
 

(井川誠一郎常任理事の発言②)
 
 飯島勝矢参考人から提示されたフレイルモデルは、死亡に至るまでの4つのフェーズ(「剛健」「プレ・フレイル」「フレイル」「要介護」)をわかりやすく模式化したもので、とてもなだらかな経過を辿っていくように見える。しかし多くの症例では、フレイルに至る経過のどこかで何らかのイベントがあり、患者の身体機能が急激に落ちるというのが通常なのではないか。そのイベントの代表的なものが入院である。我々慢性期病院に急性期病院から転院してきた際にすでに低栄養、廃用となっていることも多い。急性期病院から転院してくる患者の半数近くがアルブミン値3.5以下であったとも言われている。肺炎等で急性期病院に1週間入院すると、絶食と安静によって筋力が落ち、リハビリもままならず、アイアトロジェニック(医原性)とも言えるフレイルに陥ることになる。フレイルに至るのはあっという間だが、フレイルから健康状態に戻るのは非常に難しい。このことを医療関係者に十分に注意喚起し、フレイルの急激な悪化をできるだけ防いでいかなければならない。

フレイルモデル
 
 2回にわたって開催された本WGの意見は、親組織である「医療計画の見直し等に関する検討会」に報告され、第7次医療計画の作成指針に盛り込まれることとなっています。

○第2回在宅医療及び医療・介護連携に係るワーキンググループの資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000135473.html
 



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