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療養病床の転換策で7項目の課題を提示 ── 8月18日の記者会見

Posted By araihiro On 2016年8月19日 @ 11:50 PM In 会長メッセージ,協会の活動等,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会は8月18日の定例記者会見で、療養病床の転換策について7項目の課題を提示しました。このうち「一般病床からの転換」について武久洋三会長は、「一般病床の中には『4.3㎡の8人部屋』といった劣悪な療養環境の病床も存在する」と懸念し、「一般病床から一度、療養病床に転換してから施設に転換するのが適切ではないか」との考えを示しました。

 この日の会見では、①「療養病床の在り方等に関する特別部会」への日慢協のスタンス、②ターミナル・看取りの定義──の2項目が示され、①について武久洋三会長が現時点での見解を述べ、②については池端幸彦副会長が当協会の方針などを説明しました。
 

【平成28年8月18日の定例記者会見の内容】

1. 「療養病床の在り方等に関する特別部会」への日慢協のスタンスについて(第2報)

 (1)一般病床も転換できるようにするのか
 (2)3つの型のどの型が良いか
 (3)病床転換施設と老健の整合性
 (4)6.4㎡、4人部屋が最低基準に
 (5)長期(数年)か短期(3~6ヶ月)か
 (6)低負担金での利用を
 (7)医師・スタッフの体制は

2. ターミナル・看取りの定義について
 ・ 一人の看取りに実に多くのスタッフと時間が必要である
 ・ 高齢者の心肺蘇生はしない方が良いのか?

 ※ 資料は日本慢性期医療協会のホームページ(http://jamcf.jp/chairman/2016/chairman160818.html)に掲載しておりますので、そちらをご覧ください。

 以下、同日の会見要旨をお伝えいたします。

[武久洋三会長]
 現在、厚生労働省の社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」では、今後の療養病床の在り方等について検討が進められている。本日の会見資料をお配りしてあるので、ご覧いただきたい。

 本日の会見では、まず「療養病床の在り方等に関する特別部会」に対する当協会のスタンスについて皆さまにお話しして、ご理解を賜りたいと思っている。

 また、ターミナルや看取りの定義についても、当協会の見解を述べたい。ターミナルや看取りの定義は、それぞれの立場で都合よく解釈されているように思う。国としての共通の定義というものが逡巡していない面がある。そのため当協会としては、厚労省が示した「人生の最終段階における医療」という考え方に沿って、誠実に取り組んでいきたい。この点については、当協会の池端副会長からご説明を申し上げる。

 本日の会見内容は、主にこの2点である。
 

■ 一般病床からの転換、「いったん療養病床に転換してから」
 
[武久会長]
 まず、「療養病床の在り方等に関する特別部会」への日慢協のスタンスについて述べたい。皆さんも何度か取材されていると思うが、この特別部会の議論では、「一般病床からも転換させてくれないか」というご意見が一部の委員から意見が出ている。

 すなわち、施設への病床転換は療養病床のみか、それとも一般病床にも広げるべきかという議論がある。この問題について、私は「一般病床から転換してもいいのではないか」という発言をさせていただいた。

 ただ、手順としては、いったん療養病床に転換する必要があるのではないかと考えている。結果的には一般病床からの転換を認めることにはなるが、一般病床から一度、療養病床に転換してから転換するのが適切ではないか。

 なぜならば、一般病床の中には「4.3㎡の8人部屋」といった劣悪な療養環境の病床も存在する。こうした劣悪な一般病床をそのまま施設に転換することを認めるのは、ちょっと問題があるのではないかと思っている。従って、一般病床から療養病床に一度転換した後で、何年間かという期間は別として、転換したほうがいい。
 

■ 療養病床の在り方、「3つの型」のいずれが良いか
 
 社会保障審議会の特別部会での議論に先立ち、厚生労働省の「療養病床の在り方等に関する検討会」が今年1月に「新たな選択肢の整理案」を取りまとめた。

 それによると、医療機能を内包した施設系サービス(医療内包型)として、「案1-1」と「案1-2」が示された。また、医療を外から提供する居住スペースと医療機関の併設(医療外付型)として、「案2」が示されている。これら3つの型のどの型が良いか。
 
01_8月18日会見資料3ページ
 

 この図は、皆さんも何度もご覧になっていると思う。この3つの型は、あくまでも「概念」として出されているだけであって、具体的に細かな事項が決まっているわけではない。

 この3つの型の中で、われわれが特に関心を持っているのは、「案2」である。すなわち、病院内の病床転換施設と老健との整合性をどうするのかという問題である。

 療養病床の転換先である「施設」とは、「介護療養型老建施設」なのか、それとも全く新しい形の施設なのか。「施設」として制度的に位置付ける場合には、介護保険が適用されるのであろうか。今後、この点に関する検討も必要になってくるだろう。

 「医療内包型」にするのか、「医療外付型」にするのか、いずれにしても、現在の介護療養型医療施設の構成をそのまま転換先の施設にもってくるのは不適切であると思っている。

 病院内であれば当直医がいるはずなので、転換先の施設に専属の医師がいるかどうかということについての適否も、今後、非常に重要になると思っている。
 

■ 老健との整合性をどうするか、非常に重要な問題
 
 老健に関して、少し説明したい。老健は主に、3つの種類に分かれる。すなわち、①病院併設型、②診療所併設型、③単独型──の3種類である。

 このうち①は、敷地内または病院建物内にある場合があるので、こういうケースの場合には、病院内で病床転換した施設と老健とがどのように違うのかが問題になってくる。

 この点に関連して、老健について当協会の会員病院の状況を調べた。資料15ページの「日慢協の会員病院が併設している老健・特養の数」をご覧いただきたい。

02_8月18日会見資料15ページ
 

 日慢協の会員1,040病院のうち、老健を有するのが686件となっており、老健が非常に大きな部分を占めていることがお分かりいただけると思う。

 老健に関する団体としては、全国老人保健施設協会(全老健)があるが、日慢協としても当協会内に「老健部会」などを設置して対応していかなければならない時期が来るのではないかと思っている。

 平成24年度の介護報酬改定では、「在宅強化型老健」「在宅支援加算型老健」が創設された。その推移を調べた全老健の資料を一部編集したものをお示しするので、ご覧いただきたい。

03_8月18日会見資料9ページ
 

 円グラフの中で、赤い部分が「在宅強化型老健」、オレンジの部分が「在宅支援加算型老健」である。右から2つめの円グラフをご覧いただきたい。約3年前の平成25年10月時点では、「在宅強化型老健」と「在宅支援加算型老健」を合わせた割合が32.3%であったが、全老健のホームページによると今年7月時点では26%に減少している。

 すなわち、この3年間で在宅復帰型の老健がかなり減っている。ここが非常に大きな問題となっている。なぜ減っているのか。「在宅復帰を進めると、空床が発生してしまう」という問題もあると思うが、4分の3が「従来型」であることを考えると、病院内で病床転換した施設と老健との整合性をどうするかが非常に重要な問題になってくると思っている。
 

■ 病院内の施設や住居、できるだけオンコール体制で対応
 
 資料5ページの「療養病床等の概要」をご覧いただきたい。医療療養病床、介護療養型医療施設、老人保健施設、特別養護老人ホームを比較している。

04_8月18日会見資料5ページ
 

 このうち、特別養護老人ホームの面積は「10.65㎡以上」で、最も広い面積となっている。これに対し、療養病床は「6.4㎡以上」、老健は「8.0㎡以上」である。

 皆さんご存知のように、ユニットケアというものは個室であるために負担金が高い。1カ月10数万円の自己負担金が掛かるため、生活保護を受けている方々は入居できないという状況にある。このため、「6.4㎡の4人部屋」ということで負担金を安くする状況がつくれれば低所得者にとっても朗報である。

 ただ、何年にもわたって長期入所できる施設にするか、むしろ半年までの施設にするか、という点も考慮する必要がある。この点については、半年以上、入所している場合には減算の対象になるような施設にしたほうがいいのではないか、ということも考えている。

 介護療養型医療施設について平成27年度の介護報酬改定では、「療養機能強化型A」と「療養機能強化型B」が新設された。このA型とB型をそのまま「案1-1」と「案1-2」に入れることは、なかなか困難なことになるのではないかと予想している。例えば、50床の療養病床を転換した施設に1人の医師が専従で配置されるのかどうか。病院であれば医師がいるはずだろう。そこで、医師の専従要件をどう考えるべきかについても非常に重要な問題であると考えている。

 看護職員の配置についても問題となる。老健の場合は100人に対して8人なので、それよりも多くするのか、少なくするのか。多くするとして、100人に対して10人にすれば10対1ということになる。

 病院は施設に比べて、医師や看護師の配置が充実している。このため当協会としては、病院内施設および病院内住居については、できるだけオンコール体制で対応できるような施設にしたほうが、コストも掛からずに国民のためになるのではないかと思っている。

 以上、「療養病床の在り方等に関する特別部会」への日慢協のスタンスについて述べた。現在、当協会ではこのように考えている。
 

■ 精神科医と総合内科医の共診が症状回復につながる
 
 2つめの「ターミナル・看取りの定義」については、当協会の池端副会長からご説明したいと思うが、その前に、6月30日の記者会見の内容について、少々説明が不十分な点があったので、ご質問を頂いている。そのため、改めてご説明を申し上げたいと思う。

 現在、精神病床について病床の削減が課題となっている。平成28年度の診療報酬改定では、精神病棟における退院支援や地域移行の推進などを目的として、「地域移行機能強化病棟入院料」が新設された。4年間は点数が高い病棟にするが、4年後にはベッドを減らしてくださいということ。これはいわば、戦後の「減反政策」のようなもので、「お金を保険から出すが、ベッドを減らしますよ」ということである。

 最近では効果のある薬も出てきており、統合失調症の入院患者さんが少なくなっているということもあって、この「地域移行機能強化病棟入院料」を算定するかどうかは別として、ベッドを減らしていこうという病院も少なからず存在する。

 そうした状況の中で、現在、最も足りないのは中等度や軽度の認知症と身体合併症とを併せ持つ患者さんの行き場である。このような患者さんの行き場が不足している。このため、そのような患者さんは一般病床や療養病床、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、グループホーム、特養、老健等に散らばって治療しているという現状がある。

 認知症については、精神科の先生が非常に詳しいし、また身体合併症については、内科系の先生が詳しい。そこで、この2人の共診が必要ではないかと考える。軽度の認知症については、精神病院で治療することも考えられるが、精神科医も内科医もいるような「認知症病棟」のような所で治療してほしいというような希望もあると思う。

 精神科病院の中には、「ベッドを減らそう」と考えている病院もあると思うが、「減らそう」と思っている病院が減らすのではない。精神科のベッドを減らす方針の病院がそのままベッドを廃止すると、病院の運営にも影響が出てくるだろう。むしろ、減少する病床を軽度・中等度の認知症で身体合併症のある患者の専門病床として転換することができれば、患者にとっても朗報ではないかという意味である。

 精神科病床というよりは、専門病床として新しく病床の機能を明記した一般病床としていただければ、そのような患者の精神病院内専門病棟への入院が促進されることになると考える。このような患者は、精神科医と総合内科医が共診することが症状回復につながると期待している。趣旨としては、「減少する精神病床を転換するように」という意味で述べさせていただいたので、誤解がないようにお願いしたい。

 では、ターミナル・看取りの定義について、池端副会長からご説明を申し上げる。
 

■「人生の最終段階の医療」の専門家としての責務と役割は大きい
 
[池端幸彦副会長]
 ターミナル・看取りの定義について、私からご説明したい。会見資料「人生の最終段階における医療について 〜『終末期医療』からの変遷〜」をご覧いただきたい。

 ※ 資料は、日本慢性期医療協会のホームページ(http://jamcf.jp/chairman/2016/chairman160818.html)「池端副会長 会見資料」に掲載しております。

 皆さんご承知にように、平成27年3月に厚生労働省はこれまでの「終末期医療」を「人生の最終段階における医療」に改め、その普及啓発リーフレットを作成し、公表されている。これは、人生の最終段階における医療のあり方について、患者・医療従事者ともに広くコンセンサスが得られる基本的な点について確認し、平成19年にガイドラインとして策定したものを改めて、「終末期医療」という言葉を使わずに、事実上撤回して再発表したものであると解釈している。

 このガイドラインは2つの項目から構成されている。1つは、「人生の最終段階における医療及びケアの在り方」という項目。ここでは、患者が医療従事者から十分な情報と説明を受けた上で話し合いを行い、患者本人による決定を基本として医療を進めることが重要であることなどを規定している。

 2つめは、「人生の最終段階における医療及びケアの方針の決定手続」である。この項目では、方針決定の際の話し合いのプロセスをきちんと示している。患者の意志が確認できるか否か、できない場合にはどのようにするか、判断の方法などを定めている。

 そして、その普及啓発の一環として、「人生の最終段階における医療体制整備事業」が進められている。ただ、現状を見ると、事業参加医療機関には、なぜか高度急性期医療機関と在宅医療関係者が大半を占めている。

 しかし実際には、在宅患者の「ときどき入院」に際して、その方に寄り添いながら医療・看護・リハビリ・介護等を一体的に提供し、なおかつ入院患者の実に4割以上の看取りを実践している、われわれ慢性期医療機関こそ、「人生の最終段階の医療」の専門家としての責務と役割は大きいものであると考えている。
 

■ 人生の最終段階、「しっかりとした医療・ケアの提供を」
 
 資料の4ページに、ガイドラインのリーフレットをお示しした。左下をご覧いただきたい。「人生の最終段階における医療」の表記について説明がある。
 
05_8月18日会見資料4ページ
 

 厚生労働省では、従来「終末期医療」と表記していたものについて、今後は「人生の最終段階における医療」という言い方に変えたということである。では、人生の最終段階における医療とケアのあり方はどのような内容であるか。このように書かれている。

 まず1つめとして、「医師など医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行い、患者本人による決定を基本とした上で、人生の最終段階における医療を進めることが最も重要な原則である」とされている。

 そして2つめは、「『人生の最終段階における医療』における医療行為の開始・不開始、医療内容の変更、医療行為の中止などは、多専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきである」とされている。

 この「慎重に」との部分であるが、ただ単に「終末期だから」とか、「高齢だから」という理由で、「医療はもういいのではないか」とするのは、「人生の最終段階における医療」ではないという趣旨である。しっかりとした医療と、そして話し合いがなければいけないということが示されていると理解しているが、最近の風潮として、こうした観点が欠けているのではないかと強く懸念している。

 3つめは、「医療・ケアチームにより、可能な限り痛みやその他の不快な症状を十分に緩和し、患者や家族の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療とケアを行うことが必要である」とされている。すなわち、「終末期だから医療を行わなくていいのだ」ということではなくて、しっかりとした医療・ケアを、その人に合った医療・ケアを提供すべきだということが書かれている。
 

■「アドバンス・ケア・プラニング」の理念で取り組む
 
 資料5ページには、人生の最終段階における医療体制整備事業を、6ページに参加医療機関を示した。これを見ると、参加医療機関には高度急性期病院が目立つ。慢性期医療機関がちょっと少ないような印象を受ける。

06_8月18日会見資料6ページ
 

 当協会は前回の7月21日の定例記者会見で、「入院患者とターミナルの医療提供状況に関する調査結果」を公表した。調査によると、医療の内容によっては「入院中」よりも「死亡前7日間」のほうが多くの処置が行われている状況が明らかになっており、予想以上に充実した医療を提供していることが判明した。

 そこで改めて、慢性期医療を担う私たちが、「人生の最終段階における医療」のエキスパートとして、高齢者自身に寄り添い、一人ひとりのニーズにマッチした決定プロセスとしての多職種協働によるチームアプローチの下に、看取りも含めた最終段階にふさわしい、過不足のない医療提供を目指したいと考えている。それはまた、後ほどお示しするように、高齢者の救急医療の実態を含めた医療経済の観点に照らしても、そうあるべきではないだろうか。

池端副会長8月18日の記者会見 そこで当協会では、いわゆる「アドバンス・ケア・プラニング」の理念に沿って、ご本人の生命・生活・人生に寄り添いながら、慢性期医療を中心とした必要十分な「人生の最終段階における医療」を、すべての国民に対して率先して広く提供していくことをここに提言したい。

 補足:「アドバンス・ケア・プラニング」についてご存知の方も多いと思うが、簡単にご説明する。「アドバンス・ケア・プラニング」は、「将来の意思決定能力低下に備えて、治療方針・療養についての気がかりや、自分が大切にしてきた価値観を、患者・家族と医療者が共有し、ケアを計画する包括的なプロセス」と定義されている。

 そのポイントは、1つに一人ひとりの将来の目標を立てるために、自分の気がかりや価値観について、元気なうちから家族や医療者に伝えて相談するという点。2つめとして、「アドバンス・ケア・プラニング」は、内容を自分一人で決めて、書面に記しておくというのではなく、周囲の人と話し合って決める「プロセス(手順)」のことを言う。短時間の経過や周囲の状況によって、決めた内容が変化する可能性も高いので、繰り返して話し合うことや、内容を変更することを認めている点も特徴である。当協会では、この考え方に従って、「人生の最終段階における医療」にしっかりと取り組んでいきたい。
 

■ 刻々と変化する意志に沿い、必要十分な医療を提供
 
 前回の記者会見でご紹介した「日慢協会員病院におけるターミナル治療アンケート」をご覧いただきたい。亡くなる1週間前に、これだけのしっかりとした医療が提供されている。
 
07_8月18日会見資料11ページ
 

 決して医師のみの判断で提供しているのではなく、ご本人やご家族と十分に話し合った上で、いろいろなことを考えながら、刻々と変化するご本人やご家族の意志に沿いながら、必要十分な医療を提供している結果であると評価している。

 資料12ページをご覧いただきたい。「退院/退所後の行き先」について各施設を比較している。
 
08_8月18日会見資料12ページ
 

 この右上のグラフを見ると、病院の介護療養型医療施設での死亡者は35.1%ということで、介護療養型医療施設での看取りは4割近くに上っている。これに対して、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)が70.7%となっている。退所の理由は「死亡者」だが、施設内で看取りをしているケースはわずかであり、病院に送られて死亡したために退所の理由が死亡になった場合が7割ということである。
 

■ 慢性期病院や在宅医らがチームで取り組む
 
 13ページをご覧いただきたい。「年齢階級別の1人当たり医療費及び平均収入」を示した。
 
09_8月18日会見資料13ページ
 

 前回の会見でもご紹介したように、75歳を境に、ブルーの部分の「入院」医療費がどんどん増えているが、1人当たりの平均収入は60歳以降になると徐々に減っていく。では、「入院」医療費の内訳はどうか。80歳や90歳の高齢者が急性期病院に長く入院しているために、高齢者の「入院」医療費が増えていると考えられないだろうか。在宅療養中の高齢者や、特別養護老人ホームに入所している高齢者らが高度急性期病院に救急搬送されているケースが少なくないのではないか。

 そうした状況の中で、われわれ慢性期医療を提供する病院が在宅や施設にいる患者さんに寄り添いながら、長期療養中の患者さんに寄り添いながら、本当に必要な医療をどこまで提供するかということを真剣に考える必要もある。

 高度急性期病院に送られた患者さんは、高度な医療の提供を望むだけではなく、リハビリテーションや緩和的な医療などを望む場合もある。その人にとって必要な医療は、年齢や病状などによって画一的に判断されるべきではない。患者さんの背景や環境、これまでの経緯などをしっかり理解した上で判断する必要もある。

 とすれば、こうした判断は高度急性期病院よりもむしろ、患者さんやご家族と長きにわたってお付き合いしている慢性期の病院や在宅医らがチームで取り組んだほうが望ましい場合もあるだろう。これこそが「人生の最終段階における医療」ではないかということを強調しておきたい。
                           (取材・執筆=新井裕充)
 



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