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第59回社会保障審議会介護保険部会出席のご報告

Posted By araihiro On 2016年6月4日 @ 11:03 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 平成28年6月3日、第59回社会保障審議会介護保険部会が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。
 
 1.介護人材の確保(生産性向上・業務効率化等)
 2.その他の課題①
 3.その他

◇武久洋三会長の発言
 2015年6月に出された保健医療2035提言書は、医療の現場にいる者にとって参考にすべきものであるが、人材不足の対策についての記載がまったくなかった。だが本日は、「介護人材の確保」として議題に取り上げていただいている。非常に良いことだと思う。
 20年前から昨年まで、出生数が毎年約1万人ずつ減ってきており、現在20歳の人口は約120万人である。少ない若年層で増加する高齢者層を支えるという構図は破綻している。
 そして、65歳の人口は約220万人である。75歳の人口は約120万人で、これは25歳人口とほぼ同数である。そして、55~75歳の人口を合計すると3500万人となる。大学を出た優秀な人々や、退職してもまだまだ元気な人々がたくさんいる。このうち1%でも医療・介護に来てくくれば、それだけで人手が35万人分増えることになる。
 EPAの看護師や介護福祉士は年間の合格者数が数十名単位で、今後どれだけ数を増やしたとしても、数万単位まで増えることはないだろう。まずはこの元気中高年の方々に、本格的に医療・介護の現場に入っていただくようにするのが現実的である。
 今年の看護師国家試験合格者は、約5万5000人であった。うち看護大卒は1万7000人で、准看護師合格者の1万7000人と同数であった。現在は、看護師、准看護師の専門学校よりも看護大学を進めていく流れになっているようだが、高校生の数がどんどん減少している以上、大学を多く作るのは現実的ではない。元気中高年が看護・介護の現場に入っていくには、まず夜間の準看コースや介護福祉士コースで学んでもらうのが現実的だろう。すでに大学を卒業している人たちがこれから看護大学に行くとは考えづらい。大企業では、高学歴者も含めた大量リストラもどんどん起きており、そうした人材の使い方を考える時代になっている。3500万人の元気中高年の活用について、ぜひ国をあげて考えていただきたい。

 2000年の介護保険制度創設以来、介護認定審査会の委員長を務めてきた。最近では、一次判定の審査が介護認定審査会で変更されるのは全体の1割程度であり、制度創設当初からだいぶ減っている。しかし要介護認定調査において、コンピュータによる一次判定ですべてを決定するのは難しいだろう。都道府県では、介護保険審査会といって、利用者が不服のある場合に申請できる制度があるが、これはほとんど利用されていない。その点も考えると、不服がある場合や新規の申込、また要支援から要介護に上がる際はコンピュータでの一次判定だけではなく、二次判定の審査が必要だろう。また、主治医意見書をIT化するようにしていただきたい。この16年で介護保険の対象者は1000万人以上増加している。効率化を考えなくては、制度自体が立ち行かなくなるだろう。

資料3「介護保険適用除外施設における住所地特例の見直しについて」

 資料3「介護保険適用除外施設における住所地特例の見直しについて」である。障害者支援施設などは、地域によって偏在がある。一部の地域に過大な負担がかかるのは適切とは思えない。上記の論点のとおりの対応をしていただければと思う。

 資料4「介護保険総合データベースの活用について」である。これからの医療・介護では、個人のデータを幼少期から高齢者となるまで、トータルで把握するやり方が必要になってくる。急性期から慢性期まで一貫してフォローできるような形でのデータの蓄積は、今後必須である。もちろん、データ管理はIT時代の世界共通の課題である。ここは日本のⅠT業界が対応してくれるだろうが、いずれにせよ安全なデータ管理のもと、医療も介護も一本化され、公明正大、公正中立が保たれるようなシステムが求められていくだろう。

○第59回社会保障審議会介護保険部会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000126427.html
 



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