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第130回社会保障審議会・介護給付費分科会出席のご報告

Posted By araihiro On 2016年6月16日 @ 9:03 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 平成28年6月15日、第130回社会保障審議会介護給付費分科会が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。

 1.平成28年度介護従事者処遇状況等調査について
 2.その他

◇武久洋三会長の発言
 昨年度に続き、介護従事者処遇状況等調査が行われることになっている。個人としては、職業に貴賎はない以上、皆同じ給与額で良いと思うこともある。だがもちろん、大学院等で長い時間をかけて勉強してきた人の給与が高くなるのは当然のことである。
 私の事業所でも介護職員の給与を上げたところ、介護職の人材が集まっても、今度は調理員の確保に困るといった問題が出てきた。かといって、介護職員の給与を上げて処遇を良くしようということで国がお金を出すという提案なのに、それを断るという発想が、事業者側のどこから出てくるのか。これで介護職員の給与が上がるとすれば、非常に良いことではないのか。もちろん制度の枠組み内で進める以上、加えて介護報酬も下げられる一方という状況の中では、介護職員だけ給与を格段に上げるといった、極端なことをするのは難しいだろう。調理、掃除、洗濯、事務等の職種も少しずつ上げていくことになる。
 しかし、介護職員はモノを扱うのではなく、人間に対してサービスを行っている。給与が高く設定されるのは当然である。私の事業所でも、処遇改善加算ですぐに給与を1万3000円上げた。だから今だと、夫婦で介護職なら合わせて月50万円くらいの収入になる。処遇改善加算で、介護職員の給与は変わる。そう考えると、他の職種とのバランスを考えた際の収支を見て、処遇改善加算の届出はやめようというのは、納得がいかない。平成28年度調査においては、届出をしていない事業所から詳細な理由を聞く必要があるだろう。基本的に、事業者側が処遇改善加算の届出をしない理由はないはずである。他の職種との兼ね合いも含め、介護職員・介護施設の環境整備の向上に取り組んでいかなくてはならないと思う。

 資料4「ニッポン一億総活躍プラン(抄)」15ページの「「介護離職ゼロ」に向けた取組の方向」について述べたい。この中に、「「介護離職ゼロ」の実現に向けて、昨年末の緊急対策において、介護の受け皿を38万人分以上から50万人分以上へ拡大することなどを盛り込んだ」とある。単純に50万人分の受け皿を増やすとなると、100床の特養なら5000施設が必要となる。日本を100区画で分けたとして、1区画(人口120万人規模の県に相当)には、50もの特養を作らねばならなくなる。しかもこれは、すでにある特養にプラスして50施設必要ということである。
 しかし、都会ではすでに、施設をオープンしてもスタッフが集まらずにどうにもならないといった状況がいくらでもある。昨年の出生数は100万人で、これまで1年1万人単位で減ってきているので20年後には80万人しか生まれないことになる。人材の確保は非常に重要でありながら、若年層の人口は減少一方である。だからこそ以前から申し上げている通り、元気な中高年が虚弱な中高年を支えうるシステムを作らなくては立ち行かなくなる。
 看護教育にしても、看護大学をどんどん作って看護のレベルを上げるのはいいことだと思うが、現役高校生の数がどんどん減っていくのだから、将来的には大学進学者数も少なくなっていく。そうした観点もふまえ、元気中高年が医療・介護の分野で活躍できるような何らかのノウハウを考えていただければ、2040年の高齢者人口ピークも乗り越えることができると思う。ぜひ、検討していただきたい。

希望する介護サービスの利用(介護基盤の供給)

 47ページ「希望する介護サービスの利用(介護基盤の供給)①高齢者の利用ニーズに対応した介護サービス基盤の確保」について述べたい。ここで、自立支援と介護の重度化防止の推進として、「看護教育のICT化を通じた業務の分析・標準化を進める。これにより適切なケアマネジメント手法の普及を図るとともに、要介護度の維持・改善の効果を上げた事業所への介護報酬等の対応も含め、適切な評価の在り方について検討する」とある。
 実際に現場にいると、書くべき書類の量がとにかく多いと強く感じる。これは、記録をしていないと監査の時に厳しく指摘されるからである。監査では、記録の内容ではなく量だけを見て、少ないか多いか判断されることが多い。量だけで判断されると、結局すべて書かざるを得なくなってしまい、現場の負担となる。ポジティブデータ、ネガティブデータの両方あるうち、ポジティブな方だけ記録しておけばいい場面であっても、ネガティブデータでも何でも全部記録するということになってしまう。とりわけきびしいのがケアマネジャーで、きちんと記録していないと減算である。減算までされてしまう職種はケアマネだけかもしれないが、ここまで記録を徹底していれば、どうしても定時には帰れない。
 ICT化するといっても、記入事項が減らなければ手間は変わらない。現状の負担が少しは軽くなるよう考えてほしい。そうしないと、書類仕事に追われて現場に出る職員の数が減ってしまうことになる。ぜひ厚労省から、記録業務をコンパクトかつ効率的にすることで、職員が現場に出られる時間が充分とれるような方向性を示していただけるとありがたい。

○第130回社会保障審議会介護給付費分科会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000127488.html
 



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