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第129回社会保障審議会・介護給付費分科会出席のご報告

Posted By araihiro On 2016年6月2日 @ 10:02 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 平成28年6月1日、第129回社会保障審議会介護給付費分科会が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。

 1.平成27年度の改定検証調査の最終報告について
 2.平成28年度の改定検証調査の調査項目について
 3.その他

◇武久洋三会長の発言
 「平成27年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」の結果を見ていると、介護保険制度が開始した当初と今とでは、状況がまったく異なっているとあらためて感じる。まず、制度開始からこの15年間で、サービスの種類がかなり増えた。しかも、よく似たサービスが多いにもかかわらず、認可も監査も個別に行われている。例えば、看護小規模多機能型居宅介護と小規模多機能型居宅介護では何が違うのか。どちらかに統一しても差し支えないと思うのは私だけではないだろう。通所介護と通所リハビリについても、医療と介護を連携させ結びつけていこうという時代に、わざわざ分ける必要はあるのか。

武久洋三会長_平成28年6月1日 「リハビリテーションと機能訓練の機能分化とその在り方に関する調査研究事業」の資料にあるとおり、通所介護によるリハビリにも、作業療法士や理学療法士が入っている。では、リハビリテーションと機能訓練、それぞれの定義の違いは何か。福祉系では機能訓練と言い、医療系ではリハビリテーションと言い、非常に分かりにくい。平成30年度同時改定に向けて医療と介護の継続的な利用を目指す上で、医療と福祉で同一の機能を指すサービスについては、できるだけ一本化していただければありがたい。今後の調査は、こうした視点を盛りこんで行っていただければと思う。
また、基準該当サービスも、全国にどのくらいあってどのように使われているのかが分からない。整合性はどうなっているのか。平成30年同時改定までには、分かりやすいように整理してほしい。

 「中山間地域等におけるサービス提供の在り方に関する調査研究事業」についてである。中山間部はもともと住む人が少なく、したがって要介護者も少なくなる。民間事業者はもちろん、社会福祉法人であっても、利益が出ないと分かっている所でわざわざサービス提供を行うことはしないだろう。しかし、いくら数は少ないといっても、サービス提供がなければ生活できない人たちは確かにいる。そういった時、行政側はどういうサポートができるのか。気の毒ですね、で終わらせるわけにはいかない。

 「居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の業務等の実態に関する調査研究事業」についてである。資料からも分かるとおり、介護支援専門員に要求される業務はあまりにも多い。ケアプランに記載した事業所がプラン内容どおりの提供を行っているかの管理・監督まで業務に含まれている。専門員証更新の要件となっている研修時間も非常に長く、負担になっている。
 ケアマネジャーは様々な方面から「業務ができていない」「レベルが低い」と言われ続けている。あれもこれもと業務項目を多く押しつけておいて、充分できていないから研修をもっと厳しくして、一週間もの研修をするようになどという。ここまで研修を強要する職種は、他にないだろう。

 前回調査の検討の際にも出たと思うが、まずケアマネジャーは自分の抱える業務に優先順位をつける必要があるのではないか。医療と介護を考えたとき、鍵となるのはケアマネジャーである。だからこそ、ケアマネジャーには色々な業務をしてほしいという要望があるのだろうが、ここまで膨れ上がるのは問題である。

 もう一点、ケアマネジャーの業務について申し上げたい。真面目なケアマネジャーが、時間をかけて一生懸命ケアプランを立てたとする。それを利用者の家族に提示すると、サービスはいらないからヘルパーだけ来てくれればいいとケアプランの書き直しをさせられるようなケースは、一体どのくらいあるか。それに対し、ケアマネジャーの信念に基づいて、この利用者のためにはこういうケアプランが必要ですと一言でも返せば、すぐ別のケアマネジャーに取って代えられてしまう。非常に厳しい環境の中で仕事をしているのがケアマネジャーである。こうした側面はもっと理解されねばならないと思う。

 「介護保険サービスにおける認知症高齢者へのサービス提供に関する実態調査研究事業」についてである。介護保険部会でも申し上げたとおり、認知症はいったいどこの科が診るべきかという問題がある。最近の認知症患者は、身体合併症を抱える人が多い。その場合、認知症で精神科にかかってしまうと、内科医がほとんどいないため、身体合併症は二の次にされることになりかねない。やはり、認知症を専門に診る内科系の診療機関、あるいは精神科医と総合診療医とが連携して認知症を診るような体制の整備が、今後必要となってくるだろう。認知症のサポート医等、様々な制度によって内科医でも認知症を診るようにはなっているが、やはり精神科医の助けがなくては難しい面もあると思う。
 次回調査では、認知症の利用者の身体合併症についての質問項目もいれてもらいたい。併せて、何科の医師が主治医になっているかという点も聞いていただきたい。今後、認知症は介護保険でも医療保険でも目玉となってくるので、今のうちからこのあたりの実状をよく把握しておくべきだろう。

 生活支援においては通所介護での機能訓練の方が効果的だという意見もあるようだが、そもそもリハビリテーションとは日常に帰るための技術である。リハビリテーションでは、生活支援も当然行っている。もし不十分であったとしたら、PT、OT、STは反省しなければいけない。いかに利用者を日常に早く帰すかというのがリハビリテーションの本筋であるから、それをPT、OT、STよりも機能回復訓練のスタッフの方が得意だと考えるのはおかしいだろう。
 通所介護でも、療法士をスタッフとして雇うところがたくさんあるということは、通所介護の現場も療法士の助けを必要としているということである。もう少し、機能訓練とリハビリテーションが同義のものとなるよう近づけていくのが正しいあり方かと思う。

 維持期リハビリテーションを介護保険サービスの通所リハビリテーション等に移行していくということで、維持期リハビリの点数は約半分に減算された。しかし、医療機関でのリハビリに対する利用者の信頼はかなり厚い。介護保険のリハビリと何が違うかというと、まずマンツーマンで行うという点があるだろう。医療保険から介護保険へのリハビリの移行をスムーズに行うためには、維持期リハビリと通所リハビリのレベルが同じくらいであることが条件になってくるのではないか。現状では、そのための整備が不十分であるように思われる。
 実態を把握するために、一度、医療保険で提供する維持期リハビリから介護保険で提供する通所リハビリに移行した利用者を対象に、満足度調査をすればいいのではないか。維持期リハビリと通所リハビリを比較する形となり、聞きにくいかとは思うが、アウトカム評価の観点からも必要なことである。
 今回の診療報酬改定では、回復期リハビリ病棟のアウトカム評価として、算定日数上限あたりのFIM利得を平均値27点以上とするよう決まった。ここまで具体的にするかはともかく、ADLのような何らかの評価項目やEBMがある方が、移行しやすいだろう。

 「介護保険施設等における利用者等の医療ニーズへの対応の在り方に関する調査研究事業」についてである。長い年月にわたり特養を運営していると、利用者はだんだん重症化してくる。例えば、体調を悪くしたので医療機関に紹介し、胃ろう等の処置を受けて戻ってくる場合も、医療機関を紹介した手前、重症なので戻ってきても受けられませんとは言えない。そうして引き受けているうちに、だんだん重症者が増えていく。現在の特養の配置基準では、利用者100人に対し看護師3人なので、やはり施設外の医療提供に頼らざるを得なくなる。
 かつて、医師が特養に出向いて乱診乱療をした問題があった。それ以後、特養では再診料も何も算定できなくなってしまい、提携病院以外から医師に来てもらうことがしづらくなった。常勤の配置医を置いても保険診療ができず、往診は別の医師が来ることになる等、入所者にとっても厳しい制度が今でも続いている。医療機関が来やすく、医療を提供しやすい制度を整えるようにしてほしい。
 特養と連携している医師の意見も聞くべきだと思う。急性期病床数を絞り、慢性期も今後は認知症の対象患者の病棟しか認められなくなっていき、施設や在宅で診ていく方向に向かえば、老健や特養にしわ寄せが行くことになる。そうした状況を汲み取るような質問項目を設定していただければと思う。

 ○第129回社会保障審議会介護給付費分科会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000126190.html
 



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